『うひょひょ〜!! ナイス暴力だったよ!! 改宗ポイントあげちゃうあげちゃう!!』とは我が神ムータン。前に会った時は喧嘩別れした気がするが、所詮は緑の狸。
暴力を捧げると尻尾を振って喜び、チャリンチャリンと改宗ポイントをくれる。そして、お楽しみの「ステータスオープン」だが……。
【 名 前 】 アズマ
【 宗 教 】 ムータン教
【 信 者 】 0
【 改宗pt 】 40
【教祖スキル】 神との対話/勧誘
うーん……。チンピラを一人片付けると改宗ポイントが10付与されるってことか……?
「アズマさん! ありがとうございますじゃ!!」
老婆が元々前屈みなのに、更に頭を下げて礼を言う。これは、改宗チャンスなのか? もう若い女の子なんて贅沢は言ってられない。
「いやいや〜! こちらこそいい暴力チャンスを頂いて助かりましたよ〜。ところで、ば〜ちゃんはさぁ、何か宗教入ってるの?」
「宗教ですじゃ? それは国教であるヴェートラ教ですが……」
「えっ……まだそんな古い宗教入ってるの……?」
「古い宗教……?」
「そーだよ〜。今は新しい宗教、新興宗教に入るのが流行ってるんだよね〜。実は俺もある宗教の教祖やってるんだよね〜」
「教祖様だったのですじゃ?」
「そうそう。今なら信者一号になれるけど、ばーちゃんどう? 軽い気持ちでやってみない?」
脳内で教祖スキル【勧誘】を意識しながら、老婆をムータン教に誘う。さぁ、どうだ……!? 頼む! 無になりたくない!!
「こんなババアでよければ……」
よっしゃぁぁあああ!!
『信者プラス1。改宗ポイントマイナス15』
システム音が信者の獲得を知らせる。やべぇ……。何故だか知らないが脳汁ドバドバ出てる。これ、滅茶苦茶気持ちいいぞ……!!
「教祖様……? 目がおかしくなっておりますじゃ……」
「えっ!? そんなことないよ!? ところでばーちゃん、2階で寝てるじーちゃんも信者になってもらっていいかな? やっぱり夫婦は同じ宗教の方がいいと思うんだよね〜。葬式の時揉めたりしても嫌でしょ?」
「葬式で揉める……? そんなことが……?」
「あるよ! めっちゃある!!」
「そうなんですじゃ……? それならちょっと爺さんに聞いてみましょうかねぇ」
婆さんは背中を丸めたままカウンターの奥の階段をゆっくりと上がっていく。俺もカウンターの中に入って後へと続く。
「あんた。起きとる?」
寝室の扉を開けて声をかけると、痰が絡んだような声で「お、起きとる」と返ってきた。爺さんだ。
「今ね、新しい宗教の教祖様がパウロ商会の奴等を追い払ってくれたんよ。爺さんからもお礼を言うて」
婆さんに手招きされて入ると、爺さんがベッドの上で上半身を起こすところだった。具合が悪いのは本当のようで、顔が真っ青だ。これ、大丈夫か? 死ぬんじゃね?
「パ、パウロ商会の奴等をお、追い払ってくれて、あ、ありがとうございます……」
爺さんは震えながら俺に頭を下げた。その横には猫がいて「ニャア」と鳴く。
「いやいや〜。お役に立てて良かったですよ〜。ところでじーさん。さっきばーさんにウチの宗教入ってもらったんだけど、どうかな? じーさんもウチくる?」
「しゅ、宗教ですか?」
「そ、しゅーきょう。最近新しく始めたんだよね〜。今なら信者第二号になれるけど、どうする?」
爺さんの青い顔に警戒心が現れる。しかし、俺が【勧誘】を意識してベッドを凝視すると、急に穏やかになった。
「お、老い先短い身ですが、よろしくお願いします」と爺さんは頭を下げる。そしてシステム音が鳴る。
『信者プラス2。改宗ポイントマイナス25』
えっ……? 信者プラス2……!? どゆことだ!! そして脳汁ドバドバ来たぁぁぁああ……!! 気持ちいいィィィィイイイ!!!!
「教祖様……!?」
「だ、大丈夫ですか?」
「ニァオ?」
二人と一匹の声を聞きながら、俺は余りの気持ち良さに意識を失った。