「オススメですか?焼き鳥ですよ」 作:Tkmraeua2341
途中誤字のような所あるけど仕様です。
人は、自身の想像以上の事が幾度も起こると狂ってしまうらしい。
私は身を持ってそれを痛感した。
元々、私は俺だった。
九州の山中にある小さな村で怠惰に生きる醜い男だった。
何もやる気を起こさない癖に、自分は他人とは違うという根拠のない思い込みを抱えた、馬鹿な男だった。
しかし、それは証明する事が出来た…皮肉な事に、証明する相手が何処にも出来なくなるかわりにだが。
そこから葦の地へ生まれ変わるとは、誰が想像できようか。
それも、女として。
葦の地は、とても血なまぐさい土地だった。
田舎の村娘として育ったが、生まれる前に決まっていた許婚が戦死した。
私が9歳、戦死した相手が15歳の事である。
許婚がいた事にもその相手が死んでしまった事にも驚き、私の中にあった根拠のない余裕が消えた瞬間でもあった。
それから2年、畑仕事や害獣の処理を教わっていた父が戦死した。
知らせてくれたのは村長、許婚の戦死の時も彼だった。
誰にも見られぬように泣いていれば、私を見つけ出した兄によって頭を撫でられてしまった。
1年後、兄が敵将を取ったと喜びながら生首を持って帰ってきた。
母と害鳥の焼き鳥を作っていた最中の事だった。
3年後、仏師が来た。
村の皆で説法を聞いたけどよくわからなかった。
興味もないので山菜狩りに出ると変な霧に遭い、やっとこさ村に帰ってくると老けた母とオッサンと化した兄に抱きしめられた。
私は、いわゆる神隠に遭っていたらしい。
それからは取ってきた山菜と焼き鳥でささやかな宴をした。
ある意味貴重な体験だったと思う。
因みに仏師の姿が見えず聞いてみると、私を攫ったんじゃないかと疑われ兄に詰められたらしい。
その後、売り言葉に買い言葉で兄が激昂し仏師の首をハネたらしい。
そしたらびっくり首からムカデが出てきて大騒動、村の男衆が全員集まって相手が逃げ出すまでずっと殺し続けたらしい。
そんな化け物だったのなら私は喰われたと思わなかったのかと聞けば、嘘を言わせぬほど殺し続けた上で私のことを知らぬと言わせたらしい。
報復されそうで怖いな、なんて軽く考えた。
3年後、いい加減嫁に行かせなければと焦る母にせっつかれ、相手を探していたら知り合いの女性に腹を刺された。
刺した理由が、私が他の男へ嫁ぐのが我慢ならなかったからとか。
女同士だから結ばれることはないけど、来世で私かあなた、どっちかが男になれは良いだけだから。
そう女性が叫ぶと私の喉を掻っ切り、そのまま私に覆いかぶさるように倒れながらその凶器で彼女も命を絶ってしまった。
ここまで思ってくれる人がいた事にも驚きだが、だからといって無理心中しなくても。
享年18歳、俺の時より短くも濃密な人生だった。
だから、次があるとは考えもしなかった。
褪せ人、という存在がいる。
瞳が褪せてしまった、という理由で追放され、大きな戦争の後に呼び戻された追放者達の子孫の事だ。
呼び戻された地、狭間の地では様々な生き物が己の願い、想いのために争いあっており、褪せ人達も「大いなる目的」があったようだ。
その目的の為か、それとも追放者達の子孫だった為にか、褪せ人達はかなり低い立場だったようだ。
見かければ殺す。
とりあえず殺す。
褪せ人ゆえ殺す。
それ程に、褪せ人はこの地で生きづらい。
そして、そんな褪せ人には「祝福」が齎される物だという。
中には、狭間の地の外で死んだ後、その祝福が齎される事で死から復活し、狭間の地へと呼び戻されることもあるそうだ。
丁度、私のように。
リムグレイブ、エレの教会にて。
前にあった大きな戦争、破砕戦争によってか、この教会…だった場所はかなり荒れ果てていた。
屋根も御神体もなく、壁は半ば朽ちかけ、雨風を凌ぐことすら難しい有り様になっていた。
しかし教会の真ん中には白金色の祝福があり、祝福を挟んだ入口の反対側では鍛冶台と焚火を囲う人影があった。
「…おや、またあんたか。お得意様、いつものかい?」
「はい、矢を10本お願いします」
「相変わらずだな…ほら、これだ」
確かに10本受け取り、矢筒へ納める。
私は手持ちのルーンから200ルーン支払う。
この土地に来て、幾度となく繰り返してきたやり取りだ。
「…また出るのかい?」
「はい、この矢で狩った鳥で美味しい焼き鳥を作り、それを多くの人に食べてもらう。褪せ人としてあまりに滑稽でも、私がしたいことですから」
「そうかい…なら、俺も2本ほど貰おうか。準備が出来たらまた来てくれ…」
「もちろん、すぐに行きますからね」
「…楽しみにしている…」
狭間の地へ来てすぐ、私はかなり混乱した。
天国なのかと思えば住人のほとんどに殺されかけ、逃げ回り走り回り転げ落ちた先で命の恩人、放浪商人のカーレに拾われた。
カーレからは、この土地の事、破砕戦争の事、安全な抜け道の事を教わった。
どうしてここまでしてくれたのかと聞けば、褪せ人と言えどここまで幼い子供を放っておけなかったのだとか。
…待ってほしい、私はチビではない。
身長は五尺(一尺は約30.3センチ、つまり五尺は約151.5センチ)を超えていたし、整っていたとはいえ日本人顔は別の国からは幼く見られる事が多いらしいからそれらのせいだろう、絶対そうだ、細いばっかりで肉のない身体のせいでは絶対ない。
なんだったか…あぁそうそう。
カーレに助けてもらった後、なんとか生き残り続けた私だが、余裕が出てくれば欲が出てくるというもの。
そして私が求めたのは、食欲だった。
だが、この土地では食事はそんなに重要視されて居ないようだった。
ここでの食事は、どちらかといえば薬のような、美味しいよりも食べた物の効能を重視された物が多かった。
ならば、私がすることは一つ。
美味しいを作る、だ。
さて、それでその美味しいだが、かなり難航した。
畑を作ろうと土地を耕し、石を捨て、野菜の種を植えるも、翌日にはまるっと全て元通りになっていた。
なんでや!!遺品としてもらった野菜の種が無駄になっただけやないか!!
…こほん、次に私は食べれる物を探すことにした。
ロアレーズン、ロアの実から作れる物だが、私達生きている者が食べようとすると何故か飲み込むことが出来ない。
かわりに食べる?所を見たのはクラゲの幽霊…霊体?だった。
カーレにクラゲのオバケがいると驚いて報告した際に、あのクラゲ達は死者たちの霊があの姿をしているだけだと教えてくれた。
何故クラゲなのかと聞けば、人の姿に成れるほど強く無かったのだろうと言われた。
後、なぜ終始生暖かい眼差しだったのか聞けば頭を撫でられて誤魔化されてしまった、おのれぇ…。
勇者の肉塊と亀首漬けというものを知った。
勇者の肉塊とは、香辛料と薬液に漬け込んだ獣肉の塊の事、亀首漬けは苦い薬液で漬け込んだ亀の首肉の事だ。
この2つの共通点は、薬液に漬け込んだ肉という事。
そして私は思ったんだ…薬液って、漬けダレでは?…と。
そんなことはなかった。
リムグレイブを歩き回りカーレのような商人に出会った。
やけに腰が低いのが気になったが、例の亀首漬けの事を聞き、ルーンですぐに購入後、それを食べながらどう作られたのか聞いた。
なお、食った感想は…うん。
それで薬液の事を聞いたが、草の他にも虫に粉末状にした骨と石も混ぜていた。
危うく手に持っていた亀首漬けを落としそうになったが、嬉しそうに教えてくれた商人さんの前だったので我慢した。
勇者の肉塊については、今までにあったことのない人…人?に聞いた。
壺人という、丸く大きな壺に手足のある見た目の方だった。
彼は、ある壺の方を探しているらしい。
その方は自らを「戦死の壺」と名乗るらしい。
なんと…うむ…。
恐らくこの壺の方は、友だった仲間達と戦に向かい、己一人のみ生還してしまった、と後悔されている方なのではないかと思う。
もしくは、戦に向かう大義を果たせずに、誇りを捨ててしまうような何かがあったのやもしれぬ。
その戦死の壺が作っていたのだとか。
…なぜ?壺はそれを食べるのか?
…そうか、食べないのか。
…手慰み、または趣味なのかもしれない。
まぁ…なんだ、ここまでの話を聞くにここでの食というのは保存食の事のようだ。
きっと長持ちさせる術を求める結果、このような事になったんだろう。
ならば、私はあるものを出そうと思った。
ある程度リムグレイブを歩き回った結果、比較的に手に入りやすい食材を見つけたのだ。
そう、鳥である。
彼奴らは少し高いところや崖際などを見れば必ずというほど居た。
試しに弓矢で射抜いて見れば一発で倒れ伏す有り様、そして肉も少なくない量取れる。
母よ、私はここであなたとの思い出の味を売りに出そうと思う。
焼き鳥だ。
「おや?同じ褪せ人ですか、奇遇ですね」
「そうだ、丁度焼けたので一本どうです?特別に一本はタダですよ」
「…そうでしょうそうでしょう、焼き立ては美味しい物です」
「…え?これはなんだ、ですか?」
「見たままの名前ですよ…
焼き鳥です」
わかったかな?
「戦死の壺」のことですよ。
こんなアレキサンダーは嫌だ…みたいなのに載ってそう。