私立! バイオレンス学園!! 作:明るく楽しく暴力系ヒロインを!
翌朝のことです。宮本さんとの大画面による視聴会は本人が滅茶苦茶ハマった為、門限近くまで付き合わされることになりました。
その後で課題の処理やら何やらに追われた為、教室に向かうオイラの体は半ば夢の中にいました。そんな進行方向に立ち塞がる複数の生徒達。全員が漏れなく斜視で、何処かしらに絆創膏やら包帯を装着しています。
「オマエが雷霆の知り合いの大西だな?」
「はい。知り合って1日目ですが。どちら様ですか?」
「オレの名は『三田 電人(さんだ ぼると)』。早速だけど、雷霆をおびき出す為の人質になって貰うぞ!」
可哀想に。親からそんな無茶苦茶な名前を付けられたばかりにグレて、こんな所に流れ着いてしまったんですね。
オイラは男子生徒でありますが、喧嘩なんてからっきしなので彼女達にあっと言う間に簀巻きにされてしまいました。
「あのですね。友人になってから1日しか経っていないオイラが人質になると思いますか?」
「いいや。アイツは必ずやって来る! そういう奴だ! 何故なら、オレはアイツと小学生の頃からやり合っているからな!」
「なんだ。雷霆さん、もう友達いるじゃないですか」
名前的にも属性的にも近そうですし、お似合いですね。
かくして、オイラは教室に辿り着くことも無く拉致されてしまった訳ですが、良かったかもしれません。ちょうど寝不足だったので、目を閉じることにしました。
――
「オラァ! 雷霆はど……」
「うるせェ! 死ね!」
乱暴に教室に圧し入って来た生徒は雷霆を呼び出そうとしたが、別の生徒から灰皿を投げつけられて強制中断させられていた。
「て、テメッ。何しやがる!?」
「雷霆のバカに餌与えてんじゃねーよ!! 折角、大西に構って大人しくなってやがんのによぉ!」
斜視の上、顔面にタトゥーが刻まれまくったトライバルみたいな女に詰め寄られたので、伝令役の女子は縮こまってしまった。しかし、彼女は三田のパシリとしての勇気を振り絞った。
「雷霆が来たら伝えておけ! 大西はアタシ達が拉致ったってな!」
「大西君を!?」
これに反応したのはキョロキョロしていた宮本である。堪らず駆け寄って来たが、伝令役としては誰? と言った状態である。
「なんてことをしてくれたんですか! 大西君とは昨日の動画を語り合うのを楽しみにしていたって言うのに!」
「じゃあ、雷霆を連れて来るんだな!」
「では、場所を教えて下さい。雷霆さんが来たら向かわせますから!」
伝令役の女子は一安心していた。灰皿投げられた時はくじけそうになったが、何とか目的を達成できそうだと。
「今は使われていない倉庫で待っているぜ!」
と言った所で、宮本はスマホを取り出してコールをしていた。オンフックにして、ワザとらしく会話をした。
「はい。こちら宮本加奈です。校舎内の使われていない倉庫で複数の女子生徒が男子生徒を監禁しています。至急、補導をお願いします」
「おぉい!?」
まさかの権力行使に伝令役の女子生徒も慌てた。ここは単身で乗り込んで来る所ではないのかと。そして、取り戻す為のバトルが始まるのではないかと。
「許せません! 私の大西君との時間を奪ってからに! 喧嘩して終わらせるだけじゃなくて、補導させて、事件の凶悪性を吹聴して! 今後の学園生活を立ち行かなくなる位に追い詰めてやりますからね!!」
「おい! 誰か宮本を止めろ!!」
先程まで伝令役の女子に詰め寄っていたトライバル系女子が宮本を抑え込んでいた。暴力を振るい慣れていると加減も分かって来るが、普段から振るっていない人間は加減が分からない。
朝から教室が喧々囂々としている中、正に渦中の人物である雷霆が暢気に教室に入って来た。
「よう! なんか、朝から楽しそうだな! 何してんだ?」
「ら、雷霆! 助けて! 三田さんが補導されちまう!」
堪らず伝令女子が泣きついた。パニック状態にある彼女を慰める様にして、雷霆は目線を合わせていた。
「落ち着けって。どうした?」
「お前を誘き出す為に大西って野郎を人質に取ったら、あの女が通報しやがったんだ! 許さねぇ! お前をハメようとしただけなのに!」
何から何まで許される要素が無いので、通報されるのも道理なのだが、こうして被害者ぶることができるのは面の皮がマントル層位に分厚いと言わざるを得なかった。
「あ、雷霆さん。彼女達と知り合いなら、彼女達の悪口と悪行を教えて下さい。先生方に通報して罪を重くする材料に使うので!」
気のせいか、いつもより嬉々としている様に見えた。普段は見せないテンションを披露する宮本にクラスメイト達がドン引きする中、雷霆は伝令役女子の手を取った。
「よっし! さっさと連れていけ!」
「雷霆さん? 何言っているんですか。先生達が補導してくれますよ?」
「そうじゃねぇ! これはアタシに挑まれた喧嘩だ! 大西を助けに行けるんだぜ! マリオだ! マリオ!!」
キャッキャと楽しそうにしている姿を見て伝令役女子は笑顔を浮かべていた。すぐさま、彼女の手を引いて『こっち!』と言いながら、教室から出て行った。すれ違う様に入って来た炎王院は首を傾げていた。
「なんですの?」
――
「なぁ。コイツ、大丈夫だよな? 運んでいる途中に頭を打ったりとかしていないよな?」
「はい! ちゃんと丁寧に運びました!」
拉致して来た大西は抵抗したり、不安になっている様子もなく寝息を立てていた。簀巻き状態で寝ているんだから、肝っ玉の太さが半端ない。
「だとしたら、とんでもねぇタマだ。ヘヘッ、やっぱり雷霆の野郎とダチになるだけのことはあるな!」
「単なる寝不足に見える気がするんすけど」
舎弟の1人が固い床に寝かせるのもアレかと思ったのか。頭の部分学生かばんをそっと置いてやるという、微妙な気遣いをしていると。扉が開かれた。
「来たな! 雷霆! コイツを助けて欲しくば、オレと……」
「三田。通報を受けて来た。お前達、何やってんだ?」
そこにいたのは雷霆ではなく武装した教師だった。この学園の教師達は素ででも生徒達を鎮圧できる力を持っているが、武装しているということは本気で黙らせに来たらしい。
「え……?」
「通報を受けて来たが、本当に大西が拉致されているじゃないか。大分計画的なことをやろうとしたようだな」
暴力系ヒロイン達の突発的な暴力は見逃される傾向に多い、バイオレンス学園であるが、計画性が高い物は話が別だ。
三田達も固まって動けなくなっている中、ドタドタと廊下を駆けて来る足音が聞こえた。間もなくして、本人が姿を現した。
「おー! 三田ァ! 待たせたな! アタシとマリオごっこしたかったのか!」
「どういうことだ?」
武装した教師が問うてきた所、一緒について来た伝令女子が早口でまくし立てていた。
「じ、実は! 三田さんがマリオごっこをしたいと言いまして! それで、大西さんに協力して貰っていたんですよ! 何も知らない人から見たら、ちょっと誘拐埒っぽく見えたかもしれませんね!」
教師からの反応が無い。シチュエーション的に三田の仲間と思われている以上、信じて貰うのは無理があるだろう。と、なれば教師が誰に問うか?
部屋の隅で簀巻きになっている大西を揺さぶった。パチリと目を開けて大きな欠伸をした後、三田と雷霆を確認した後、教師と向き合った。
「大西。お前はコイツらの遊びに付き合っていたのか?」
「はい。雷霆さんと友達になったので、彼女の友人がどんな人かを知りたくて、オイラも協力していました」
あまりにスラスラと出て来たので三田でさえ驚いていた。被害者である彼がこう言っているのだから、教師もできることは無かった。
「やるなら授業が無い日にやれ。1時間目の授業が始まるぞ」
と、言い残して教師も去って行った。残された生徒達が何も言えずに入る中、目を覚ました大西が言った。
「あの。誰か、この拘束解いて貰えません? 1時間目が始まりますし」
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何があったか。と言うのは、昼休みの時間。宮本さんに教えて貰いました。対応としては間違っていないはとは思うんですけど。
「スワッティングは止めましょうね」
「でも、実際問題拉致して監禁していたのは事実ですよね? おまけに決闘罪まで犯そうとしていましたし?」
宮本さんが動画を語るとき以外にノリノリになる瞬間を見つけました。どうやら、正論で人をボコボコにするのが好きみたいですね。
「でもよー。おかしくねーか? 三田が挑戦して来たのは、アタシだろ? なんで、宮本が解決しようとするんだ?」
「貴方達の事情に大西君は関係ないんですけど?」
宮本さんが雷霆さんを威嚇していますが、残念ながらチワワの威嚇位に効果が無さそうです。
「ですが、雷霆さんにそんな厄介なご友人が居られましたとは。喧嘩をするなら2人だけでやって下さいますか?」
「昔は結構やっていたんだけどよぉ。最近は誰からも絡まれるから、アイツと喧嘩すること少なくなっていたんだよな」
「なるほど。寂しくて、構って欲しかったんでしょうね」
湿度の高いヤンキー物って感じですね。でも、このままだと三田さんが消化不良で終わりそうな気がするし、またオイラにちょっかいを掛けて来るかもしれません。ならば、スッキリして貰いましょうか。
「よし。雷霆さん、放課後。オイラを掛けて三田さんと喧嘩をしましょう!」
「え? なんで、大西君が付き合うんですか?」
宮本さんから極当たり前なインターセプトを食らいましたが、ちゃんと理由はあります。
「このまま喧嘩できなかったら、またオイラが被害に遭うかもしれないので。ここはいっそ、ちゃんと決着をつけて貰う為、そしてオイラが見届け人になろうと思います」
「自分から喧嘩を焚きつけるとは。お前もバイ生らしくなって来たじゃねぇか!」
星野君が喜んでいますが、多分要らんことを考えてそうです。周りの生徒達も興味深そうにしています。やはり、暴力系ヒロインが血に飢えているのは事実ですね。
「おぉ! なんか楽しそうだな! 大西! アタシはどうすりゃいいんだ?」
「今から、果たし状を出しに行きます。ついて来て下さい」
早めに食事を終えて、三田さんがいるクラスに向かうことにしました。果たして、コレが正しいかどうかはさておき。シッカリと三田さんには燃え尽きて貰おうと思いながら、彼女達の教室へと向かいました。