鬼滅の伝説   作:織姫ミグル

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冒険日誌・三日目

 

 

調査日誌、三日目。

 

服装について。

 

新種の魔物は魔物にしては珍しく、きちんとした服を全身に着ている個体が多い。

 

ある程度の知性を持っているボコブリンでさえも褌一枚なのに、人間らしく衣服を着用していることから裸体でいることに対して羞恥心を抱いているのかもしれない。なんなら裸足ではなく草履まで履いている。

 

しかし、奴らの衣服はハイラル王国では全く見かけないデザインであり、近いもので言うとシーカー族達の服に見えるが、何かが違う。それはこの前に会ったシーカー族の研究者と教師も感じているらしく、言葉では言い表せない違和感があった。

 

服装が奴らの正体を解明する手掛かりとなる可能性がある。

 

保護した少女も新種の魔物同様のデザインの服を着ており、近いうちに服に詳しい専門家に意見を聞きに尋ねてみようと思う。

 

現段階での調査報告は以上となる。

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

別に買い物に来たわけではないのだが。

 

 

「もったいないダます!!」

 

「ム、ムー!?」

 

 

夜中もずっと営業している店から聞こえる叫び。

 

服屋と言うにはあまりに個性的、だがこれでもここが流行の最先端。

 

リンクは新種の魔物達が着ている衣服について調べるために現在ハテノ村の防具屋に来ているのだが、世界中のファッションを知り尽くして流行の最先端というにはあまりにも奇抜なデザインの服を着た“サゴノ”は少女の姿を見た途端に大興奮。 

 

少女が口枷してても一切気にしていないどころか、むしろもっと別のにしたほうがその綺麗な顔に光るものがあるとして彼女の顔面を触りまくっている。

 

 

「ファッションは自分を現す鏡ダます!! 竹で出来た口枷を咥えることでどこか危ない雰囲気を出していて一部の人からはとても魅力的に見えるダますが、個性を活かすためにもっとあ〜たにはふさわしいマスクがよろしいダます!!」

 

「ムゥ········」

 

「今のままじゃ到底百点を差し上げられないダます!! いますぐあ〜たはアタシの作った最新作のマスクに付け替え、そしてそこにさらに吹雪シリーズを参考にしたデザインの服に着替えれば、完璧な美少女が誕生して世の男達を魅了すること間違いないダます!!」

 

「あの········」

 

 

少々暴走気味のサゴノであったが、リンクはもうこれ以上の好き勝手は許さないとしてジト目を向ける。

 

 

「俺達、服を買いに来たわけでも試着しに来たわけでもなくて、この子の服のデザインについて聞きに来たんだけど」

 

「だァ〜から採点してみた結果この子にこの服で終わらせるのはもったいないと言ってるダましょう!? この日焼けというものを知らぬ純白な肌、まるで幻想的な銀世界の中に突如現れた精霊のよう。これほどまでに透き通った肌なのにそれを有効活用しないというのはあまりにも非道!! せっかくの貴重な資源が無駄になっちゃうダますッ!!!!!」

 

「いやだからそういうのじゃなくこの服の出どころとかッ!!」

 

「んなの知ったことかァアッ!! それよりも!! あ〜たの方も一体なんダますか!? 息を呑むほどの綺麗な顔をしておきながら古びたトーガに下履きって!! あまりにも時代遅れダます!! そんなんでアタシに意見するなんて百年早いダます!!」

 

「え、あ········いやこれはその、いつも着ている英傑の服が今日の朝濡れちゃったから乾かしてて········」

 

「二人とも改良の余地ありと見たダます!! 今日はアタシがちゃんとした服をコーディネートしてあげるダますから、その代わり納得がいくまで帰さないつもりなので覚悟しとくダますよ!!」

 

「なんでそうなるの!? この子の服がどこの国のものなのか聞きに来ただけなのに!?」

 

「素人はシャラーップ!! こんなにも素晴らしい素材が現れて黙ってられるかァ!! さあ、そうと決まればまずは採寸から!! 二人の肩幅、身幅、着丈、袖丈、ウエスト、ヒップ、股下を全て正確に測るダますから今すぐ衣服を全て脱いで!!」

 

「だからなんでだよ!? 服を買いに来たわけじゃないって言ってるじゃないか!? 真面目に答えてくれないんだったらいいよ!! 今日はもう帰る!!」

 

 

もう我慢の限界。

 

サゴノは興奮気味で我を失っているのか、注意しないと涎がだらだらと溢れ出してきそうな感じの邪悪な笑顔を浮かべてきたのでリンクは少女を連れて退散する。

 

少女の手を取って外へと出ようとした矢先、

 

 

「逃さねぇダますゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!」

 

「がぶぇあっ!?」

 

 

割と体は鍛えているつもりだったリンクの体が一撃でくの字に折れ曲がるほどのドロップキック、衝撃が飛んできた際に少女を掴んでいた手は離され、サゴノと共に外へと放り出される。

 

外で呼び込みをやっていたラズリが驚きのあまり悲鳴をあげたことなど露知らず、サゴノは何やら高速でポーズを変えながら腰を左右にくねくねさせて、

 

 

「あ〜たが焚き付けたんダます!! こんな、こんなにもアタシが感動するほどの美少女とイケメンが二人も揃ったんダます!! もうアタシの腕が鳴りすぎて今日どころか最低三日は眠ることなんてできそうにないダます!! その責任を取って二人にはアタシのデザインする服のモデルになってもらうダます!!」

 

「な、なに········このハイテンションぶり········? サゴノはこんなキャラじゃなかったはず────」

 

「よォおおおおおおおおおおおおおおしテンション上がってきたダますよぉおおおおおおおおおおおおお!! 今日はとことん研究して新しいデザインを編み出し、そしてこのハイラルに新たな革命を起こしてやるダますゥウウウウウウウウウウッ!!!」

 

 

呼吸困難のままのリンクであったが、言い終わる前にサゴノが近所迷惑も考えず絶叫。

 

口調どころか性格まで一八◯度変えたサゴノは転がっているリンクのトーガを掴んでは店へと戻っていく。リンクは最後まで手を伸ばして抵抗し続けたが、サゴノは構わず店の扉の鍵を閉める。

 

後悔しても遅かった。

 

ハテノ村の防具屋はしばらく店じまいの状況が続き、その間青年の悲痛な嘆き声が村中に響き渡ったという。

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

「········」

 

 

解放されたのは本当に三日後だった。

 

家に戻ってからもリンクはしばらくベッドでぐったりして動かなかった。

 

 

「ムー········」

 

 

眠りこけるリンクを見つめて、少女は軽くペシペシと顔をはたいた。

 

返事はなく、死んだように眠っている。

 

 

「ムー!!」

 

 

そんなリンクを見つめていた少女はベッドに座ると、寝ている彼の頭を自分の膝に乗せる。そしてそのまま彼の頭を優しく撫で、子守唄のように微かなハミングでメロディーを口ずさむ。

 

口枷に遮られているからどうしてもムー! という声で終わってしまうが、その声はとても優しく、苦しそうに寝ているリンクの顔に安らぎの表情が浮かんでくるほどだった。

 

少女はその顔を見ると微笑み、そのまま彼の頭を撫でて唄い続けた。

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

「·······何この状況?」

 

「スー·······スー·······」

 

 

リンクが目を覚ますと、そこは暗い家の中だった。 

 

疲れが効いているせいか体全体におかしな感触を感じながらも、リンクは目だけを動かして辺りを見回した。

 

今はどうやら夜中らしく、小さい夜風の音だけが家の中に響き渡る。

 

そこに混じって少女の小さな寝息が聞こえ、頭上を見てみるといつものように静かに眠っている彼女の顔があった。横倒しの状態で頬に当たる感触が妙に柔らかいことに気付き、今自分はこの少女に膝枕をされているのだと実感。

 

 

「·······」

 

 

少女の手はリンクの頭を先程まで撫でていたかのように置かれており、ずっと傍にいてくれたんだなと察して笑うと、いつまでもこの状態では膝が辛いだろうし、このままでは二人とも風邪を引いてしまうとして、ちゃんと布団に入って寝ようとするために起きあがろうとするが、

 

 

「え?」

 

 

頭が固定されているかのようにピクリとも動かない。

 

相変わらずな少女はいつもの通りに眠っており、それでもリンクの頭から手を離さない。まるで木の杭が頭にブッ刺されたのではないかと錯覚するほどに少女の手はリンクの頭を押さえつけ、いくら力を込めても抜け出せなかった。

 

寝ている状態でこれ!? と流石のリンクも驚愕して少女の顔を見ると、

 

何やら彼女の口枷から透明な雫が垂れてきて────

 

 

「!? ちょ!? ちょっと!! 起きて!! もしくは放して!?」

 

「スー·······スー·······」

 

「や、やばいやばいやばい垂れる垂れる!! 垂れるってッ!?」

 

 

うわあ!! とリンクは必死に抜け出そうとするが当然体は動かない。

 

少女は相変わらず幸せそうに寝ており、リンクも安心して眠れるようにその小さな手を彼の頭に置いている。

 

焦燥感のあまり頭以外の部位を懸命に動かしてなんとか抜けようとするリンクのその顔に、少女の口から放たれる透明な雫が落ちるのは時間の問題だった。

 

 

 

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