アレイン王子とお菓子な怪物   作:生牡蠣

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ユニコーンオーバーロードクリア記念+仮面ライダーガヴ完結記念に書いてみたクロス。
需要は多分ない。

とりあえず序盤だけでも投稿してみる。


プロローグ

「やぁ!はぁ!!」

 

とある森の中。幼くも勇ましい掛け声と“ブゥン!”と言うような、棒で空を切るような音も何度も響き渡っていた。

音のする方向に目を向けると、そこには年端もいかない様な少年が一人、その小さい身体に合わせて作られたであろう木製の剣を振るっている光景が見える。どうやら一人で剣術の稽古をしている様だ。

 

その男の子は、この森の中には似つかわないと言えるほどに気品がある不思議な子であった。

サファイアの様な蒼い髪に幼いながらに凛々しく整った顔立ち、そしてまだ未熟ながらも上級騎士の指導を受けているという事が分かるキレのある剣技。それだけで明らかに普通の庶民階級とは立場が違う存在だという事が分かった。

 

「りゃぁッ!!……ふぅ、少し休むか」

 

ずっと剣を振っていて疲れが出たのか、少年は額に流れる球のような汗を手で拭いながらポツリと呟いた。

ただ汗を拭うだけの姿にすら高貴な印象を受けるのは気のせいではないだろう。

汗を拭きながら一息つく少年。ふと彼の視界の端に石造りの祭壇が映り、そちらに視線を移した。

森の中に建つそれは、木々の間から差す日の光の角度も相まって神秘的な風貌であった。

定期的に手入れもされているらしく、所々に苔が見られるが綻びやヒビの様なものは見られず、比較的綺麗な祭壇と言えた。

その祭壇の中央には、とある石像が祀られていた。

見るからに勇敢で慈悲深く、賢そうな馬。…いや、その額には立派な角が一本生えている。つまりは一角獣(ユニコーン)

そのユニコーンが地に伏し、そのすぐ側には美しい女性が寄り添っているというまるで神話の1ページを切り取った様な石像。

その美しい佇まいは、いかなる目の肥えた愛好家でも思わず息を漏らし、何時間でも見惚れ続けてしまえる。そんな魅力を秘めた像であった。

しかし、そんな像に対して少年は見惚れるどころか、どこか悲しそうな様子であった。

 

「………母上」

 

少年は今にも消え入りそうな声でポツリと呟いた。

 

少年の名は『アレイン』

 

大国、コルニア王国の正統なる()王位継承者である。

 

 

 

 

世界のどこかにある大陸。『フェブリス大陸』は5つの国家が形成されていた。

東南の山岳地帯・砂漠地帯を領土とする『ドラケンガルド王国』

南西の緑に覆われたエルフ・ダークエルフ達が住まう『エルヘイム』

北部にある獣人たちが治める寒冷地帯『バストリアス』

西部に位置し有翼人たちが多く住まう宗教国家『アルビオン教国』

 

そして、大陸の丁度中央を治める大国―――『コルニア王国』

 

この5国の中でもコルニア王国は大陸最大の国家であり、軍事力も優れているという強国であった。

その強大な軍事力を束ねるのは女王・イレニア。文武に優れた威厳ある王であり、女の身でありながらも自ら剣を取り戦場を駆け抜ける姿や、民にも寄り添った政策を打ち出すことから家臣からも、民からも人気がある王であった。

そんな女王が治める国だ。その繁栄はこれからも続くと誰もが信じていた。

 

 

だが、その平和も長くは続かなかった。

 

 

コルニア王国の将軍・ヴァルモアが突如として反乱を起こしたのだ。

ヴァルモアは優れた武将として名を轟かせており、他の貴族や騎士の家系からも彼に味方をする者たちが多く、気遣いた時にはイレニアに味方する者はほとんど残っていなかった。

それでも、イレニアは諦めなかった。僅かながらに残った家臣たちを束ね、ヴァルモアに立ち向かったのだ。

 

 

そして――――イレニアは討ち死。コルニア王国は滅んだ。

 

コルニアが滅んだ後、ヴァルモアは自らをガレリウスと名を改め、古代ゼノイラ帝国の王を名乗り国を再興。

コルニアが培った文化も、資源も、民も…全てがゼノイラ帝国に奪われてしまったのだ。

 

こうして全てを失ってしまったかに思えたコルニア王国。しかし、希望がないわけではない。

女王イレニアは戦いに赴く直前、信頼を置く騎士に自らの子を託したのだ。

せめて子だけでも生き残れるように。いつの日か残された家臣や民たちの希望になれるように。

 

その騎士に託させ、コルニア滅亡から辛うじて逃れる事に成功した王子こそ、アレインなのである。

 

 

「うぅ…!」

 

石像を見つめていたアレインはこれまでの事を思い出し、目じりが熱くなるのを感じた。

いくら王子とはいえ、まだ7歳の子どもだ。母親離れをさせるどころか、重すぎる運命を背負わせていい年ではない。本当は自分に課せられた使命や周囲の期待から押しつぶされてもおかしくはないし、逃げ出したとしても誰も責められないだろう。

 

しかし、アレインは涙をぐっと堪える。

泣いても故郷は、コルニアは救えない。母から託された思いを自分は成し遂げなければならないのだ。

泣いている暇があれば、絶望している暇があれば剣の腕を、戦術を磨け。いつかコルニアを取り戻せるように、自分を逃がした母の想いに報いる為に。

ふと、アレインは思い立つ。

そう言えば、自分と共にこの島に逃げ、面倒を見てくれている騎士から訓練の合間にと菓子を貰っていたのを思い出したのだ。

『大陸外からの行商人から買った珍しいもの』との言葉通り、アレイン自身も見たことがない色とりどりのソレに、内心踊っていた。

沈んだ気分も甘味を取れば少しはマシになるであろう。そう思い、アレインは自分のポッケに手を伸ばそうとした。

 

 

“…ブっ………シュっ……”

 

「………?」

 

ポッケに手を入れた瞬間、アレインの耳に奇妙な音が響き手が止まる。

この場には何度も来ているが、今のような音を聞いたのは初めてであった。

 

好奇心猫を殺すという言葉はあるが、子どもの好奇心は無限大。それはアレインも例外ではなかった。

アレインは耳を澄ませ、音のする方向へと一歩一歩近づいて行った。

 

 

「ガブッ!……シャクシャクッ……あむっ………」

 

歩みを進めて程なくして、アレインは森の中で何者かが胡坐をかいて座っているのを発見した。

身体つきからその人物は性別は男である事が分かった。

背丈は自分より少し大きい位…おそらく年齢も自分と同じくらいであろうか?

服装は…いや、下は辛うじて布を巻いているが上は何も身に着けていない、ほとんど全裸だ。……物盗りにでもあったのだろうか?この島ではあまり盗賊の話は聞かないが。

 

「ガブガブッ!…………まずっ」

 

半裸の少年はそんな事を言いながら夢中で口に何かを運んでいるようだ。

どうやら自分が聞いた音はこの少年の咀嚼音であったらしいとアレインは察した。

なんだ、ただ子どもが食事をしていた音かと安心半分拍子抜け半分という感情のアレイン。しかし、アレインは奇妙な事に気が付いた。

少年は何かを食べている様だが、少年の周りには何も食べ物がなかったのだ。

森にピクニックへ来た時に食べる様なサンドイッチも果物もない。食べ物を入れる様のバスケットすら見当たらなかったのだ。

流石におかしいと思いよく観察するアレイン。すると、少年は先ほどから地面に生えた草をむしり取り、口に運んでいる事に気が付いた。

 

(まさか、あの子は草を食べているのか…!?)

 

確かに、飢えを凌ぐために野草を食べる傭兵や民はいる。しかし、先日まで王宮育ちで飢えについての知識が乏しいアレインにとって、その光景は衝撃的であった。

初めて見る光景に、アレインの額から汗が流れる。

その汗が目に入りそうになり、アレインは瞬きをした。

 

 

 

 

「―――――ねぇ、さっきから何なの?」

 

 

そして次に目を開けた瞬間、アレインの身体に“ドンッ!”と強い衝撃が走り見ていた景色は一変していた。

目の前には泥や傷でボロボロだが整っている少年の顔が視界一杯に広がっていた。不思議な事に少年の背後には森の景色ではなく、代わりに青空が広がっていた。

それを認識した後に背中に痛みを感じた。その事から、自分は目の前の少年に押し倒されている事に気が付いた。

 

(―――いつの間に…!?)

 

言葉には出さなかったが、アレインは驚愕した。

自分と少年の距離は開いていたはずだ。しかし、目を閉じた一瞬の内に距離を詰められたどころか、こうして自分は完全に無力化されてしまっている。

おまけに、いくら振りほどこうと腕を動かそうとしてもピクリとも動かない。まだ未熟とは言え、普段から身体づくりの為に訓練しており、同年代の子どもの中でも決して低くはない腕力を持ってしても、まるで巨岩を押しているかのように手ごたえがなかった。

 

「…人間の、子ども?………やっぱりここって、()()()()じゃないんだ」

 

状況はまだ飲み込めてないが、これはまずい。

何とかしてこの状況から脱出する方法を考えなければ……

 

「………ひっ!?」

 

この状況を脱するために周りを観察していたアレインは、少年の腹部を見て短い悲鳴を漏らした。

それもその筈である。少年の腹部には自分とは違い、ヘソもなければ肌もなかったのだから。

 

その代わりと言う様に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

胸の下いっぱいに広がる真っ赤な大口は、人間の子どもなんて丸呑みに出来そうなくらいに開き、骨をも砕きそうなくらいに鋭く尖った牙は人間の骨など簡単に砕いてそのまま食べてしまえるだろうという事が直感で分かった。

当たり前の事だが、人間の口は顔についている。では、目の前の少年は何だ?

自分は今、()()()()()()()()()()

 

「あっ……あっ……!」

 

「……やっぱり、俺は人間とは違うみたいね。………うん?なんだ、これ」

 

脳の処理が追い付かないアレインの反応を見て、少年は一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた。

しかし、すぐに何か興味深い物を見つけた様な表情になり、アレインの顔の横に手を伸ばした。

「おぉ、なんだ、この綺麗なの…?」

 

指に摘まんだ何かを見ながら、少年は呟いた。

それは鮮やかな紫の色。そして刷りガラスの様な不思議な透明感があった。

丸みを帯びた一見柔らかそうな形だが弾力があるらしく、少年は面白そうに指でプニプニと触感を楽しんでいるようだ。

 

少年が摘まんでいる物の正体をアレインは知っていた。

それは、自分が騎士からおやつ代わりにと貰った珍しい菓子。どうやら倒れた拍子にポッケから零れてしまった様だ。

確か名前は……

 

「――――グミ」

 

「おん?」

 

アレインが呟いた言葉を少年は聞き逃さなかった。

 

「グミ?これの名前?……ねぇ、これ何?」

 

「えっと……お菓子…「お菓子ッ!?」う、うん!?」

 

少年は『お菓子』というワードを聞いて驚いたような、歓喜した様な表情を浮かべた。

そして少年の反応に驚くアレインの反応を無視し、そのまま少年はグミを口に入れた。

 

口に運んで数回の咀嚼のちに飲み込む。

その後すぐに変化は訪れた。

 

「………ッ!…ッ!!」

 

少年は口元を抑えながらアレインから離れ、すぐ側にうずくまり始めた。

少年の怪力から解放されたアレインであったが、本日は心優しい性格な為少年の変わりように心配を覚えた。

 

「お、おい…大丈夫…?」

 

「………まい」

 

「………えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

「うっっっま~~~~~~い!!!!!」

 

心配するアレインをよそに、少年は勢いよく立ち上がりながら叫んだ。

 

「何これ!?甘くてッ!プニプニしててッ!!口の中ではじけるぅ~~!初めての味と食感!これ好きだぁぁぁぁ~!!」

 

突然食レポを始めた少年の様子にアレインは放心する。

 

「これ、何の味だろう!?……駄目だ、初めて過ぎて例えようがないよぉ!とにかく美味しい~~~!!」

 

美味そうにグミを食べる少年の姿は、自分と同世代の子ども達が嬉しそうにお菓子を食べる姿と何ら変わりがなかった。

確かに少年は自分とは違う。お腹に口があるバケモノなのかもしれない。

しかし、自分と同じように美味しい物は美味しいと思える。美味しい物で笑顔になれる。

その事実に、アレインは何処か安堵を覚えた。

 

「……ははっ、ねぇ君。良かったら、これも食べなよ」

 

「…えっ!いいのか!?」

 

「もちろん。………地面に落ちたやつで良ければだけど」

 

アレインはポッケから落ちた他のグミを集めて少年に差し出した。

アレインの手の中には紫、水色、オレンジ色と言った色とりどりのグミで溢れていた。

 

「あ、あ…ありがとうぅ!!お前、いい人間だな!」

 

少年は満面の笑みでアレインから両手いっぱいのグミを受け取り、夢中で食べ始めた。

『おぉ、色によって味が違うぞ!?』とか『こんなに美味いもんを毎日食べてるなんて、人間は幸せ者だな!』と幸せそうにグミを食べる少年。

そんな彼の姿を見ていると、アレインもなんだか不思議な気持ちになった。例えるならば、内側から優しい気持ちが膨らんでいくような、そんな感じだと思った。

 

「ウマウマ………うっ!」

 

しかし、そんな気持ちもすぐに奥の方へと追いやられてしまった。

グミを夢中で食べていた少年が突如お腹を押さえ、険し表情を浮かべ始めたのだ。

 

「ど、どうしたの…?」

 

「わ、わかんない……急にお腹に違和感が………」

 

少年の変わりように心配そうに声を掛けるアレイン。

流石に地面に落ちたお菓子を食べさせたのが悪かったのだろうか?だとしたら自分の責任でもあるし、町医者の所まで連れて行った方が良いだろうか?

 

「うっ…なんか、出る……!」

 

「ちょ!?こんな所で…」

 

“ゴロゴロゴロッ……!”

 

そんな音を立てながら、少年の腹の口から、いくつも何かが飛び出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「グミ~~~!!」」」」」

 

 

「………えっ」

 

その存在がそんな可愛らしい声を上げた瞬間、アレインの思考は止まってしまった。

少年の腹から出て来た物………というか、これは生き物…だろうか?

それは、まるで箱の様に四角い形をしており、中心部には目と思われる器官が確認できた。

大きさは手のひらサイズ、先程少年が食べていたグミよりも少し大きいくらいだろうか?

そんなよく分からない物が、アレイン達を取り囲むように現れたのだ。少なく見積もっても数十匹はいるだろう。

声を発する事から生き物だとは思うが……今まで見たことも聞いたこともない生物にアレインは困惑していた。

 

「…もしかしてお前ら………俺の眷属?」

 

「「「「「グミ~~!!」」」」」

 

困惑するアレインに対し、少年はこの存在についてある程度察している様に話しかける。

その問いかけに対し、小さい者達も『そうだそうだ~!』と言う様な反応を見せた。

 

「………君は、一体何なんだ?」

 

そんな反応をする少年に、アレインは問いかけた。

分からない事、聞きたい事は多い。腹に口のある少年、その腹から生み出されたヘンテコ生物……理解が追い付かないのも無理はないだろう。

そんな状況だからこそ、脳の処理が追い付いていないアレインは『何者なのか?』という簡単な質問をする事が精いっぱいだったのだ。

 

「俺の事?俺は………」

 

すると少年はしばらく俯き、何かを考え込むようなそぶりを見せた。

そんな様子が数秒続いた後、意を決したように少年は口を開いた。

 

「………ヴ」

 

「…えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――赤ガヴ。俺は、ただの赤ガヴだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

これが後に反乱軍を率いて故郷を取り戻し、大陸全土を救い『一角獣に導かれし解放王(ユニコーンオーバーロード)』と呼ばれる王と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――その王の隣で降りかかる困難を打ち滅ぼし、敵には恐怖(ビター)を、仲間には優しさ(甘さ)を持った強き戦士(バケモノ)

 

後に『フェブリス大陸の二口獣(グラニュート)』と呼ばれる怪物との邂逅であった。

 




どっちも神作過ぎて勢いで書いた。反省と後悔はない。
マジでどっちもおすすめだから皆様にも触れて欲しいわ…

ネタバレは控えるけど、実はどっちも暗い過去への復讐よりも大切なものの為に戦ったりお菓子に関係が深いおじさんキャラが出たりと共通点多かったりする。
これはクロスする前提の作品だわ…(勘違い)

見切り発車だから続くかは気分次第。
続くなら多分主人公君は『仮面ライダー』にはなれないと思う。よくてアナザーガヴじゃないかな?
クロス先が結構人同士の殺生激し目だけど…やっぱり子どものヒーローが生身の人間を殺しまくるのはなんか違うし、私自身ガヴにはそんな事して欲しくないからね。


ここまでご拝読ありがとうございました
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