素人童貞からはじめる脱童貞計画   作:ダブル亮禅

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2.計画始動

翌日、学校が終わるとまっすぐに近所の本屋に立ち寄って

アルバイト求人誌を手に入れた。

何はなくともまずは資金調達をしておこうという算段だ。

アルバイト先は飛田新地の周りで探そうと思う。

出来れば接客業。

第一目的はもちろん資金を貯める事だけど、

ワンチャン、バイト先に飛田で働くおねえさんが来るかもしれない!

いや来て欲しい!

ベ、別に下心があるわけじゃない。断じて違う!

ただ、僕には圧倒的に情報が足りないのだ。

飛田新地のことも、そこで働くおねえさんたちの事も何も知らない。

だから、これは情報収集なのだ!

彼を知り、己を知れば、百戦あやうからず

と孫子先生も仰っているじゃないか。

資金を調達する傍ら、情報をも手に入れる!

その為にも飛田新地のおねえさんたちも来そうな接客業!

バイト先のターゲットはこれで行こうと思う。

さっそくバイト情報誌を探すといい感じの場所に居酒屋がある。

電話を掛けると、いかにも居酒屋のおやじって感じの活きの良い

声が聞こえてくる。

にわかに緊張が体を走る。

「こ、こんにちは。求人誌を見たものですが、面接をお願いしたいのですが」

「お、バイトの希望かい。これはありがたい。人手不足でね。

とりえず、今日は仕込みと開店準備で忙しいから明日の15時くらいに店に来れる?」

「はい大丈夫です。直接お店に15時に伺えばいいですね」

「一応履歴書も書いてもって来てね」

「はい、それでは明日はよろしくお願い致します」

電話を切るとフウっと息を吐く。

多少たどたどしくはあったけど、

初めてにしてはなかなかうまくできたんじゃないだろうか。

とりあえず第一関門突破だ。

明日はいよいよ面接!

履歴書か、ひとまずコンビニに売っていた気がするな。

と、再び外に飛び出した。

履歴書を書き始めるが、志望動機のところで詰まる。

「これはさすがに正直に書いちゃダメだろな」

そりゃそうだ。童貞捨てる為に風俗通うお金がいるんですなんて

書いたら怒られる。少なくとも不採用間違いなしだ。

ぐるなびで面接先の居酒屋のページをさがし、メニューを見て「ここの焼き鳥が絶品だと聞いたので」と適当に書いておいた。

面接は開店前のお店の中で行われた。

「店長の浅利です」

と簡潔に挨拶する店長。角刈りの良く似合ういかにも調理人って感じの男性だ。

浅利さんは一通り履歴書に目を通すと、

「家この辺りじゃないんだね。学校が近いとかかな?」

うぐっ!なかなか痛いところを突いてくる。

まさか飛田が近いからです!なんて言えない。

「いえ、学校は地元の方なので近くはありません。

ただ将来この辺りの学校に行きたいと思ってまして。

それならバイトだけでも先にこの辺りにしておこうと」

面接序盤から嘘をつく事になろうとは…。

いや!卒業したら飛田と言う場所で大人になる為の勉強をしに行くんだから、あながち嘘ではない!…はず!

「へぇ、偉いね。で、志望動機が絶品の焼き鳥か!

嬉しい事を言ってくれる」

おお、好感触!

「という事はうちの店に来てくれた事あるんだ!

どう?何が美味しかった?」

「え、ええ…まあ。ははは…」

すみません!来たことありません。と心の中で謝る。

その様子に店長は

「本当に来たことある?」

と疑い出す。さすがは接客業!見る目がある涙

「すみません!じつはー」

もう観念して、自分の本当の志望動機や脱童貞計画の事を全て話す。

 

「ははん、お前さん、さては馬鹿だな」

全て黙って聞いてくれた後、店長は呆れた顔でそう言った。

返す言葉もなく、

「はい」

とうつむきながら呟く。

「まあいいや。雇ってやろう」

「へ?」

意外な返事に思考が停止する。

「お前さんの馬鹿な思い付きに、ここの仕事はいい薬になる」

そして少しイタズラっぽい顔つきになり、

「大人が酒飲んでくだ巻いてる姿なんて子供が見りゃ、

一発で幻滅しちまう最たるもんだからな」

とハハハと豪快に笑う。

「店には明日から出られるかい?」

「はい」

「あと、俺の事は店では大将と呼ぶように

「はい大将!」

飛田近くの居酒屋でのアルバイトが決まった。

次の日からアルバイトが始まった。

僕にとって初めての労働という事もあったけど、

居酒屋での仕事はかなりきつかった。

「貞、こいつを3番テーブル!」

「お兄さん、注文いい?」

「鳥雑炊まだですか?」

同時にいろんなところから声がかかる。

ちょいちょいプチパニックになりそうになるのを何とか落ち着かせて、

一人一人確実に対応していく。

こんな所で躓いている訳にはいかないんだ!

俺には壮大な計画を遂行するという目的がある!

それだけを心の支えに悪戦苦闘した。

その様子に大将も

「動機が不純だから少し心配してたけど、意外と頑張ってるな。

夢をかなえようって力は、やっぱりすごいな。」

と言いながら焼き鳥がてんこ盛りのった丼ぶりを俺の前に置く、

「へ?」

こんなオーダー通ってたっけ?何番テーブルに持っていくんだろう?

と考えていると、

「賄いだ。今お客さん落ち着いてきてるから、今のうち食っちまえ」

とニカッと笑顔を俺に向ける。

「あっざあーーすっ!!!」

ちょうど腹ペコだった俺は出された丼ぶりに食らいついた。

ガツ、ガツ、ガツ、ガツ…

一気に食べ終わり、

「ああ!この一杯のために生きてるな!」

という親父が晩酌する時発する言葉と同じセリフを口にする。

なるほど親父!今ならちょっとあんたの気持ちわかるぜ!

と少し大人になれた気がした。

次の日、ひそかに期待していたチャンスが意外に早くやってきた。

今日も頑張るぞと店に出勤して、店の開店準備をしていると

ガラリ

と店の扉が開く。

髪は明るめの茶髪でセミロングのウェーブ。服装はやたらとぶかぶかなTシャツにパンツスタイルのキレイな女性が入ってきた。

「大将、生チョーだい。生!」

開店前だというのにいたって当たり前のように注文を入れる女性。

「あいよ」

特に文句を言うでもなく普通に注文を受ける大将の様子に

「こちらメニューでございます。ご注文が決まりましたらお呼び下さい」

と、僕もいつも通りの接客を行う。

開店準備の続きをしようと厨房に入ると、

「貞、今入ってきた客見てみな」

と大将が小声で俺を呼ぶ。

「あれ、お前が話したがっていた“夜のおねえさん”だぜ」

ついに来た!

さあ、どうする俺!いよいよターゲットとのファーストコンタクト!

と一気に興奮したが、ふと気付いた。

女の子と何話せばいいの?

どう話しかければいいの?

そこで思い出す。僕は女友達が一人もいない陰キャだった事に!

僕の計画に「生身の女子との会話」という大きな壁が立ちはだかった。

 

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