「ウェーイ!ドンペリ入れちゃってー…ムニャムニャ」
カウンターに突っ伏しながら気持ちよさそうに寝ている操さん。
「酔っ払って閉店まで寝る人って、本当にいるんですね。」
今日来るはずのバイトが急用で来られない為、今日突然ヘルプで入った僕は呆れていた。
「参ったなぁ。俺、今日ちょっと用事があるんだけどなぁ」
珍しく大将も困っている。
「操さん!起きて下さい。大将も困ってるし。」
と再度起こそうと試みる。
「…ん?…あ〜、ありゃ?あたひ、寝りゃってた…の?」
まだ寝ぼけている様だけど、何とか起きてくれたようだ。
「操さん、もう閉店ですよ。」
と僕が帰宅を促すと、
「…あ、も〜しょんな時間?へ、へへェー」
と言いながら、まだ傍らにあったおちょこをすすり、中に中に何も入っていないのを見て、次はお銚子をすする。
何とか数滴は飲めて満足したのか、
「それりゃあ、大ひょー、お勘じょー…」
と言って、立ちあがろうとする。
その途端、力が入らなかったらしく足首がグニッと曲がったかと思うと、そのままドッシーンと転んでしまった。
僕も大将も
「大丈夫ですか!」
と駆け寄るが、当の本人は、
「へへへェー、あひ、グネッらった」
と尻餅つきながらヘラヘラ笑っている。
「もう仕方がないなぁ」
と助け起こそうとすると、
「痛っ!あひ、痛ひ!立てらい!」
と足をバタバタさせて、駄々を捏ねだす。ついには、
「貞てぃん、おぶって!家までちゅれてって!」
と騒ぎ出す。
「もう、何言ってんですか。大人なんだから自分で帰って下さい。」
と嗜めるが、
「ヤーらぁー!歩けにゃい!おぶって!おぶって!」
とさらにゴネだす。
僕は助けを求めて大将の方を見るが、さっきからずっと時計を見ながら時間を気にしてる大将は、僕の肩にポンッと手を置くと、
「貞、すまねぇな」
えっ?!マジですか?…と聞こうと思ったけど、既に僕を見る目がマジだと告げている。
そして、
「片付けは俺がやっておくから」
と店の片付けを始めだす。
大将の俺はもう関係ないと主張する背中を
仕方なく、立てないと駄々を捏ねる操さんに肩を貸そうと近づく。
「酒臭っ!」
未成年の僕には近づくだけで酔っ払ってしまいそうなほど濃厚なアルコールの匂いが鼻をつく。
酔っ払っている癖にそういう事だけは聞き逃さず、
「あー!貞てぃん、臭ひっれ、言っらー!酷っ!貞てぃん、酷!」
と再び駄々を捏ね出す。
僕は埒があかないと、
「もおっ!操さん!ほらっ!肩貸しますんで。立ってください」
と急かす。
すると、
「やぁら、貞ちん、臭ひって言っら!」
寝転がったまま拗ねてそっぽを向く。
しつこいなぁと思いながらも、大将からのさっさと連れて行けという無言の圧力には抗えず、
「それは、ごめんなさい!臭くないですよ!ほら、ね?だから、そろそろ帰りましょう!ね?肩貸しますから」
と宥める。
「…」
数秒、操さんはそっぽを向いたまま
「…じゃあ、おんぶ…」
と呟く。
「えー!」
と助けを求めようと、大将に目線を向けるが、親指を立てそのまま連れて帰ってやれと合図を送ってくる。
ダメだ。いったいこの後何の予定があるのかは知らないが、今日の大将は全くアテに出来ない。
「はぁー。分かりました。おぶりますから…トホホ…」
観念して、操さんの横にしゃがみ込み、背中を向ける。
「やっらー」
機嫌が治ったのか、嬉しそうに声を上げながら、僕の首に手を回しながら背中に乗ってくる。
ムニュッ
背中に柔らかな物体が2つ背中に押しつけられる感覚。
その感触の正体に気付いた僕の全身に電撃が走る。
こ、これは!
おっぱい!
あの!中学に入ってからずっと恋焦がれていた!
ネットや写真で見る事しか出来なかったそれが!
今、まさに背中に密着しているのだ!
うおおおおぉぉぉぉ!!
最高に柔らかいぞぉーー!!
頭の中で歓喜の叫びを上げる!
憧れの二つの頂が!俺の背中で押しつけられ、潰れて動くたびにムニュムニュとその存在を主張する。
そして、不思議な事に、先程までただただ酒臭いだけの酔っ払いでしかなかった背中の操さんから、甘い女の子の香りまでしてくる。
誠におっぱいの魔力とは恐ろしい。
操さんを背負って歩きながら、無駄に高鳴る胸の鼓動をおさまれ、おさまれと念じるが、歩く度背中で形を変えるおっぱいの感触が邪魔をする。
鼻腔をくすぐる甘い香りに、背中の感触。
頭が沸騰しそうなほどの興奮を必死に抑えながら歩いでいると、突然、耳に酒臭い息が吹きかけられる。
「あっれぇー貞てぃん、わ、ら、ひ、で興奮ひてんの」
流石は色恋のプロフェッショナル。僕の猛り狂ったリビドーを察知したらしい。酔っ払い特有の悪がらみで思春期男子の純情を煽ってきやがる。
耳に息吹きかけられた時の酒臭さで少しは正気を取り戻せた僕は、
「幼気な高校生男子をおちょくらないで下さいよ。もう!」
とたしなめるだけの余裕は出来た。
「へ、へ、へー」
操さんが背中でニヤている声が聞こえる。
「ほら、馬鹿な事言ってないでちゃんと道案内して下さい。」
僕が興奮から冷めたのを察すると
「はぁーい」
とつまらなそうに返事をした。
案内に従い、しばらく歩くと、
「あ、あれ!あのマンひょんらよ」
背中の操さんが指を指す。
操さんの部屋のあるマンションは居酒屋から数分程度の距離にあった。
言われた通りのマンションの前まで行き、
「ほら着きましたよ。降りて下さい。」
と操さんに声をかけた時、突然
「飲みずぎだ…ぎぼぢわるい…」
とうめいたと思うと、そのまま僕の背中で
ヴェエエエェェェ
と腹の中をぶちまける。
「ぎゃあああぁぁぁー!」
操さんのそれをまともに頭の上から被せられ、僕は絶叫した。