悪役令嬢の猫   作:時雨オオカミ

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めでたしめでたしとかいうやつ

 目を覚ますと、私はどこかの部屋で寝かされていた。

 隣を見れば一緒に毛布がかかって眠っている愛しい夫の姿がある。

 びしょ濡れだったはずの体はすっかり乾いており、涙で濡れたあとの残るノワールがぴったりと私の体にくっついているのだ。

 

「起きた?」

「よ、良かった……!」

 

 視線を上げると、そこにはほっとした様子のキール……王子の弟と、リリアがいた。そして、窓辺には見覚えのある青い鳥が籠の中に入っている。どうやら見失ってしまっていた青い鳥は無事にリリアが保護することができたようだ。

 

 これには私も安心した。約束は約束である。私は青い鳥だけは狩りで食べない。そして、彼女の大切なものだというから、義理立てをして守りもする。だから、見失って他のなにかに襲われる前に見つけないといけないと必死になって探していたのである。見つかって、安全な鳥籠の中に入ったというのならもう安心だろう。

 シアンの短絡的な『野生で生きたほうがきっと幸せね!』という方針にはほとほと困らされてしまった。あれで賢いようで肝心なところで我がご主人は頭が弱いのである。

 

 彼らは私に申し訳なさそうに謝罪してきた。早くに姉、ミリアを引き取らなかったことを。彼女が遅かれ早かれこうなることは分かっていたけれども、自分の存在でストレスを与えているとはシアンに気づいてほしくはなかったのだという。確かにシアンはミリアに執着を見せていたから、王子のときのように都合よく解釈をしたり、己に不都合なことは聞かないふりをしていたことだろう。我がご主人が顔が良いだけのとんでもなくヤバイ女だということは私も痛いほどよく分かっている。

 

 それから、頼りにならなそうなニールに代わってキールがこっそり後継としての勉強をしっかりとしていることを告白してきた。そんなこと猫の私にはとんと分からないが、まあ、ニールが国を背負うよりはキールのほうがしっかりしていそうという感想は出てくる。

 

「僕たちは気づくのが遅すぎた。だから、償っていかなくちゃやらない。青い鳥の犠牲をもとに成り立っているこの国も、まだ変われるはずだからね。彼女を元に戻す方法を探すんだ。青い鳥一人に幸不幸を預けているのは間違ってる」

「ええ、そうしましょう。協力してくれるのね、キール」

「もちろんだよ」

 

 新たな聖女リリアと、第二王子のキール。二人が手を取り合い笑い合う。

 しかし、キールの言葉にはどこかで覚えがあった。誰から聞いたのであったか。

 鳥籠の中でバタバタと暴れる青い鳥がうるさいが、なんとか思い出そうとする。

 

 ……ああ、そうだそうだ思い出した。

 ニールだ。ニールが私に愚痴を言うとき、よく言っていた言葉である。夢で見た王子が言う言葉だかなんだかで、その言葉が好きだと。少し言い回しは違うようだが、そっくりだ。彼はキールがどんどん自分に似てくることに恐れをなしていたが、そうか。夢の中の言葉はきっとこのキールの言葉であったのであろう。

 

 こうして、リリアは姉を救うために。キールは国を変えるために動き出し、大冒険をすることとなる。

 

 のちに二人は青い鳥の祝福を解く方法を探す旅をして、救国の英雄と聖少女と呼ばれることになるのだった。

 

 もちろん、我がご主人は怯えきっているニールを夫にすることに成功して見事ゴールイン。

 

 ミリアは青い鳥から人間に戻ることはできたが、感情が高揚すると青い鳥に変身してしまうという後遺症が残った。その後は妹のリリア付きの侍女をしながら、その行動力と魔法の腕を活かして一端の冒険者として活躍するようになる。どうやら冒険者としての才能はあったらしい。リリアが誇らしげにしつつも拗ねて寂しそうに愚痴をこぼしていた。

 

 私はというと、水の中で溺れてダメかと思っていたが、しっかりと育った子猫が五匹産まれ、皆街の守り手として力をつけてすくすくと育っていった。

 

 さて、私はまだまだ甘えたい盛りの子どもたちの世話をすることに集中を割かねばなるまい。

 よって、私が城の中を歩き回っていろいろ見て回るのはしばらくなくなるであろう。見回りの必要が減ってようやくシアンとの時間を取れるようになったのだ。大丈夫、ノワールと子どもたちが立派に我が縄張りを守りぬいてくれるであろう。

 

 毎日子どもたちと見回りに行き、帰ってシアンと私の部屋までやってきたノワールと鼻先をくっつけて挨拶をしながらすり寄る。

 

「ずっと一緒にいようね、スノウ」

「もちろんだとも、ノワール。愛してる」

「おれも!」

 

 これにて、めでたしめでたし。

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