キヴォトスおじさん   作:小説好きー

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メガドライブミニ2を購入しました
エイリアンソルジャーは面白いですね自分はRTAとかでしか見たことがなかったんですけど関節の動きが良いと思います。


おじさんvs風紀委員。

『陽介先生大丈夫ですか!?』

 

 追撃砲の直撃を防いだアロナが陽介に語り掛ける。

 アロナのバリアはすさまじく塵一つすら陽介に当たっていない。

 改めてアロナのバリアの凄まじさに関しつつ陽介は周りを見渡す。

 

「無事か…大将…」

「ああ、なんとか…」

 

 陽介は先に大将の無事を確認した後アル達便利屋68に目を向ける。

 

「無事か?陸八魔さん」

え、えぇ、無事よ先生。あの先生この態勢はちょっと、早く…

「えっ!?なに!?なんだ!?聞こえない」

 

 現在の陽介はアルを押し倒している態勢である。

 陽介自身咄嗟の判断だったためにアルになにか不順な考えは一切ないのである。

 アル自身もさっきの陽介の言葉と今の陽介の態度からそういったことはないとわかっていても陽介に押し倒されている今の状況は年頃で異性への耐性があまりない彼女からしたらとても恥ずかしいのだ。

 

「ちょっとハルカ、なにをしてるのよ!?」

「…なにやってるの…」

「いえ、違うんです。私が爆破する前に爆発が来たんです…」

 

 ムツキ達は爆破の元凶であるハルカを責め立てる。

 しかしハルカからすれば自分とは違うの事実なのですこし泣き目である。

 

「取り合いず、瓦礫を退かそう。疾風駆送(ワーグレント スラドセルド)

 

 陽介は風の魔法で瓦礫を浮かす。

 浮いた瓦礫と一緒に大将やムツキ達も浮くが魔法の調整でムツキ達を降ろし大将をお姫様抱っこの姿勢で受け止める。

 

「大丈夫か…大将…」

「あぁ、だい、丈夫だ……」

 

 陽介は再度大将に安否の声を確認するが大将の様子はあまりよろしくない。

 

「アロナ!ここから近い病院の座標を出してくれ!」

『はいっ。ここからですと〇〇地区の病院が受け入れ可能です』 

「なら、病院に連絡してくれ。負傷転送を頼む座標セット!!」

 

 陽介はアロナに連絡のお願いして魔法で病院の座標まで大将を飛ばすのだった。

 

「みんな無事か」

 

 大将を送り届けた陽介は便利屋の面々を降ろす。

 

「え、えぇ。先生が庇ってくれたおかげでなんとか…」

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!

「…落ち着いて、ハルカ落ち着いて…」

「先生に向けてどうするのよぉ。アルちゃんもハルカを抑えるのを手伝って」

 

 アルはさっきの陽介に押し倒されたことが脳裏に残っているのか例え陽介がそういう意図がなかったとしても指輪のことも含めて思わず顔を赤くなる。

 それを察知したハルカはすさまじい表情で陽介に向けて銃を向ける。

 カヨコとムツキがなんとかハルカを抑えようとするが無意識なのか風の魔法で瓦礫が浮いておりいつ陽介に向けて飛んできてもおかしくない状況だ。

 

落ち着きなさい!ハルカ!!

 

 ムツキに促されたアルが陽介を庇う形でハルカの前に出る。

 アルの言葉と同時に突然アルの背後が光り輝く。

 光は柔らかく滲むように広がり、後光が射すように輝いていた。それは眩しく目を焼く光ではなく、まるで暖炉の火のような温かみを湛えた金色の輝きだった。

 

「ア、アル様ぁ!!」

 

 アルは穏やかな微笑みを浮かべてハルカにゆっくり近づく。

 アルはハルカの手を取ると、暖かな光がハルカを包み込む。

 

「大丈夫よハルカ」

「で、でもあの人はアル様を…」

「いいのよ。勝手に勘違いした私が悪いの。それに今はこの状況から抜け出すのが先決よ」

「……はい」

 

 アルの囁きにハルカの荒々しい息が鎮まる。

 

「おお、何が起きたかわからないけどアルちゃんすごっ」

「…これも魔法なの先生?」

「ああ、秩序(コスモス)の魔法の効果だな。ああやって心の平穏を与えることができるんだ。ただここまでの効力は陸八魔さんが持つ生来の優しさだろう」

 

 

 

「「先生!」」

 

 二つの声が重なり陽介を呼ぶ。

 陽介が声の方向に振り向くと大きな犬に乗っているノノミと大きな猫に乗っているアヤネが陽介に向かって来る。

 大きな犬と猫は貌の魔法で変身したシロコとセリカだ。

 

「あ、シルバーヴァレット…」

 

 シロコ達とは別の方向から便利屋の新しい社員で役職はアル直々に運転手に任命されたシルバーヴァレットが駆ける。

 紫関の爆発とアルの光を目印に来たのだろう。

 

「あんたたち!!!よくも…こんなひどい真似を」

 

 猫から戻ったセリカは殺気をアル達に向ける。

 状況証拠を考えれば便利屋が紫関を爆破したと判断するのは当然だろう。

 

「………」

「………」

「………」

 

 シロコ達も無言の圧力をアル達に向ける。

 

「あちゃー、なんか誤解されてるね」

「まあ、ちょっとタイミングズレちゃったけど、どうせいつかは白黒つけなきゃいけないし相手だし」

 

 るカヨコとムツキはやる気のようだ。

 

『先生!砲撃が再び来ます。武装は50mm迫撃砲。3km東の場所に多数の兵士を確認、一個中隊の規模です』

「わかった。疾風断刃(ワーグレント グラッカ)

 

 辺りは一発触発の空気の中にアロナからの通信が入る。

 すぐさま陽介は魔法で追撃砲を迎撃する。

 大きな爆発が空中で鳴り響く。

 爆発により煙幕が辺りを包む。

 

『先生、この砲撃主が分かりましたゲヘナの風紀委員会です』

「ゲヘナの…風紀委員?」

 

 陽介はゲヘナという単語に思わず困惑するがすぐに思い出す。

 

「確か火宮さんが所属している部活だったよな」

「……っ、社長、ムツキ、ハルカ! 早く隠れよう、やつらが来た!」

「そういや指名手配犯だったな、お前たち」

 

 陽介の風紀委員という単語を聞いたカヨコが普段の彼女からは考えられないほど焦る様子を見せる。

 

「ごめん、先生。悪いけど逃げさせて。もしヒナが来たらいくら私たちでも勝てない」

「ヒナ?」

 

 陽介はヒナという単語を聞いて疑問を浮かべる。

 陽介はあまりキヴォトスの生徒を把握してないからかこの反応である。

 しかし陽介からみてもそれなりに実力のあるカヨコが迷いなく逃げの一手を選択するほどの強い相手なのかということは理解できる。

 

『陽介先生!通信回線を傍受できました!』

 

 アロナから連絡を受け陽介は通信を聞く。少しのノイズが流れた後聞き覚えの声が1つと聞き覚えのない2つの声が聞こえる。

 

『第二砲撃失敗しました。飛んでる最中に爆破。ターゲット、いまだ無事です』

『はっ?飛んでる最中に爆破ってなに? やっぱり胡散臭いものに頼るものじゃないね。ここから突撃するよ』

『……イオリ、精霊様に失礼なことを言ってはいけませんよ。それに便利屋が反抗してきた場合はどうします?』

『精霊様ってなんか変なカルト宗教に染まってるみたいだよチナツ。それにどうするも何も、捕まえるために来てるんだ。公務の執行を妨害する輩は全員敵だ』

『ならば、おとなしくしていてもらいたいものですね……それにアビドスへこちらの事情を説明するのが先かと……』

『説明?必要か、それ?』

『…………』

 

 声の一つは陽介も知ってるチナツの声だと判断する。

 通信を聴く限りは、風紀委員の狙いは便利屋であることが分かる。

 

「な、何っ?風紀委員会が便利屋を捕まえに来たってこと!?」

「まだわかりません・・・・・しかし私たちに友好的とは判断しかねます」

「確かに。砲撃範囲内には私たちもいた、あからさまにこっちを狙ったわけじゃないけど」

「そんな…」

「冗談じゃないっての!便利屋は私たちの獲物なんだから!何なの一体!」

「でもゲへナの風紀委員会は、他校の公認武力集団や、便利屋のような部活とは性質が異なります!一歩間違えれば、政治的な紛争の火種になるかもしれません…アヤネちゃん、ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

「・・・はい。普段なら、ここまで連絡取れないことはないはずなのに」

 

 ノノミはアヤネにホシノについて尋ねるがあまり期待はできないようだ。

 

「なら便利屋を捕まえるか?今からならなんとでもなるし」

 

 陽介はシロコ達に便利屋の捕縛を提案する。

 

「待ってください先生。風紀委員会が私たちの自治区ですでに戦術的行動をしたということは、政治的紛争が生じるということ…きっと、便利屋の皆さんが問題を起こしたのは事実です。しかし、だからといって、他の学園の風紀委員会が私たちの許可もなく、こんな暴挙を敢行してもいいという意味ではありません」

「その通りだわ!よくもこんなことを!これは私たちの学校を権利を無視するような真似よ!便利屋を罰するのは私たち!紫関ラーメンを壊した代償を払ってもらわないと!」

 

 陽介の提案にアヤネは外交的な観点から戦うことを選択する。

 セリカもまたそれに賛同する。紫関を爆破したのが便利屋だと誤解したまま。

 

「わかった。まずは音の精霊にお願いして警告を出そう。それでお前たちはどうするんだ?」

 

 アヤネ達が戦う意思があることに了承しアル達の方に振り向く。

 振り向いた時にはすでにアルを除く便利屋はシルバーヴァレットに乗馬していた。

 

「社長、急いで、私たちの姿が見られるよりも前に!」

 

 だがアルは左手の薬指に付けられた指輪に目が向きカヨコの話を聞いていないように見える。

 

「ねぇ、アルちゃん」

「……ふふっ。ふふ、あはははっ!」

「……社長?」

 

 突如アルが不敵な笑みを浮かべ笑い出す。

 

「ねぇカヨコ?あなたは私の性格、もうとっくに分かってるでしょう?」

 

 カヨコはアルの言葉にため息を吐きながらも、その顔に笑みを浮かべる。

 

「お気に入りのお店を壊されて、先生に依頼料を渡されて、先生に助けてもらったのに、おめおめと情けなく背中を向けて逃げる?ふざけんじゃないわよ。そんなド三流の悪党みたいなこと、私たち便利屋68がするわけないじゃない!」

「あはッ!」

 

 アルの言葉にムツキの顔が凶悪な笑みに変化する。

 

「あの生意気な風紀委員会に一発痛い目みせてやりましょう!!」

「素敵ですっ!アル様っ……!」

「先生、依頼料金を受け取ったわ。さあどんな依頼でもうけるわよ」

「じゃあ、シロコ達を手伝ってやってくれ」

「わかったわ!!」

「それじゃあ行くとしようか!」

「ええ!」

 

 アルの言葉に陽介はアル達に依頼を提示する。

 アルは依頼を受託し全員で風紀委員の元へと向かう。

 

『便利屋68、臨戦態勢に突入しました』

『はあ、面倒だな、たかが四人で。こっちは一個中隊級の兵力なのに。だけど、売られた喧嘩を買わないなんてことは、風紀委員会としてできない──総員、戦闘準備!』

『……ちょ、ちょっと待ってください。イオリ』

『ん?』

『便利屋68側に民間人が映りました。確認中ですので、お待ちください』

 

 チナツが便利屋以外にも人がいることに気づいたのか端末を開く。

 陽介はそんなことをつゆ知らずに音の精霊魔法でチナツ達に声を届ける。

 

「久しぶりだな、火宮さん」

『え……!? ……まさか、シャーレの陽介先生!?』

『ん? シャーレ? なんだそれ?ていうか、何この声?』

 

 イオリ反応を見る限り、どうやらシャーレの知名度は低いようだ。

 陽介の音の魔法に困惑するイオリだったがそこまで驚きはないようだ。

 

『……!イオリ、この戦闘は行ってはいけません!!』

 

 便利屋と一緒に陽介がいることに気づいたチナツはすぐにイオリに戦闘の静止を伝える。

 

『どういうことだ?』

『アビドス便利屋ともにこちらへ接近、発砲します』

 

 しかしそんなチナツの静止の声は空しく届かなかったのであった。

 

 

 

 

 無数の弾丸が陽介達に向かって発砲される。

 シロコ達は被弾上等とばかりに前へ進み陽介は防護魔法を展開する。

 ヘイローを持つ彼女達ならば問題なく耐えられるからだ。

 しかし、

 

ボガーン!!

 

「っつ!?」

 

 弾丸は被弾した瞬間に突然爆破を引き起こす。

 衝撃のあまりにシロコ達は後ずさる。

 さらに弾丸が撃たれるが陽介の防護魔法により防がれる。

 

「何よ。あれ?」

 

 アルは自分たちが受けた弾丸に困惑する。

 アルが知っている知識では風紀委員が榴弾を使用するしているなど聞いたことがないのだ。

 

「付与魔法だな」

「付与魔法?」

 

 しかしこの場にいる陽介は風紀委員の放った弾丸がなんなのか看破する。

 

「精霊魔法には魔法が込められた呪符というがある。おそらくあれは炎の精霊魔法が扱える火宮さんに作られたものだろう」

 

 特殊魔法弾丸【火弾】

 チナツにより作成された弾丸である。

 

「相変わらず飛んでもないね精霊魔法」

「どうする社長。唯でさえ数が多いのに火力が高いんだけど」

「大丈夫だみんな。耐炎護身(バライブート ザルシェリオン) 。これであの銃弾の爆破と炎はほぼ無効化できたと言ってもいい」

 

 呪符の解説に感心するセリカ。

 知らない内に風紀委員が強化されていることにアルに指示を求めるカヨコ。

 しかし対策をすぐに立てた陽介によって戦況の不利は解消されるのだった。

 

「陽介先生……こんな形でお目にかかるとは……」

 

 結果として言えばイオリ及びチナツ率いる風紀委員会の無力化に陽介達は成功した。

 元々便利屋やアビドスの実力が高い上に、通信をアルと陽介の闇の剣で遮断されさらには虎の子であろう特殊弾丸を無力化されては、今の風紀委員に勝ち目はないのだ。

 

「先生がそこにいらっしゃることを知った瞬間、勝ち目はないと判断して後退するべきでした……私たちの失策です」

「アビドス対策委員会の奥空アヤネです。所属をお願いします」

『それは私から答えさせていただきます』

 

 アヤネの言葉を遮るように風紀委員会の端末から、ホログラムで水色の髪で、左手にバインダーを持っている少女だ。

 

「アコちゃん……」

「アコ行政官……?」

「天雨アコ」

「こんにちは、アビドスの皆様。私はゲへナ学園所属の行政官、アコと申します。今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしようか?」

「アコちゃん、その…」

 

 イオリはアコに向かってバツが悪そうな顔を向ける。

 

「イオリ。反省文のテンプレートは私の机の左の引き出しにあります。こ存じですよね?」

 

 三者三様の答えが、風紀委員会の二人からとカヨコから聞こえた。

 

「……知り合いなのか、鬼方さん」

「行政官。風紀委員会のNo.2」

 

 陽介はカヨコに質問するがカヨコはあまり詮索されたくないのか天雨アコの素性だけを説明する。

 

『あら、実際はそんな大したものではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして……』

「本当にそうなら、そこの風紀委員たちがそんなに緊張するとは思えない。」

 

 目の端で縮こまるように緊張しているイオリを見て、シロコは呟く。

 

「だ、誰が緊張してるって!?」

 

 シロコの言葉が若干癪に触ったようで、咄嗟にシロコに喰いつく。

 

『先ほどまでの愚行は、私の方から謝罪させていただきます』

「なっ、私は命令通りにやったんだけど!? アコちゃん!?」

『命令に「まずは無差別に発砲せよ」なんて言葉が含まれてましたか?』

「い、いや……状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入……戦術の基本通りにって……」

『ましてや他の学園自治区の付近なのだから、きちんとその辺りは注意するのが当然でしょう?』

 

 アコの言葉にイオリはぐうの根も出ないのか黙り込んでしまう。

 実際はイオリの言う通り、アコはそういった命令を下したのだろう。

 しかしそれを言ってしまえば風紀委員会の立場が圧倒的に不利になるため、失態の原因を現場の責任ということだろう。

 

『失礼しました、連邦捜査部シャーレの先生』

 

 まるで部下の失態を真摯に受け止めているかのような態度を保ったまま、アコは続ける。

 

『私たちゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました』

 

 アコは便利屋へと視線を向ける。

 

『あまり望ましくない出来事もありましたが、まだ違法行為とは言いきれないでしょうし……やむを得なかったということでご理解いただけますと幸いです。まあ気を取り直してそちらのアビドスの方々は生徒会ということで、あっていますか? 』

「…生徒会はもう解散しています。事実上、私たちが生徒会を代理しています。残念ですが用件は受け付けれません」

『あら…?』

「…そもそも他学園の自治区での戦闘行為は自治権の観点から明確な違法です。何処の学園でも恐らくそうでしょう。例え便利屋のみなさんが私たちの学園で違反行為をしたとしても、それを対処するのは私たちの仕事です。処遇も私たちが決めます。なにより、今回便利屋のみなさんは、私たちアビドス対策委員会の、客人…のようなものですから。勝手な事をされては困ります」

『…なるほど。…他のみなさんも同じ考えのようですね』

「……」

(どうしよう全然わからない)

 

 難しい会話をしているであろうことは陽介にもわかるが肝心のその内容が陽介には入ってこないのであった。

「えっと、取り合えずとして便利屋をどっちかが裁くかでいいのか?」

 

 さすがに教師として聞き流すわけにはいかずに陽介は恥を覚悟で質問する。

 

『ええ、そう思って頂ければ、この兵力も便利屋のためなのですから』

「嘘をつかないで、天雨アコ」

 

 しかしアコの発言に陽介の後ろに潜んでいたカヨコが言い放つ。

 

『……嘘?』

「とぼけないで。最初からあんたが狙ってたのはこの状況だった」

『……面白い話をしますね、カヨコさん?』

「……最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、理解できなかった。風紀委員会が他の自治区まで追ってくる理由、それも私たちを狙って?」

 

 カヨコの指摘は最もである。

 確かに便利屋はゲヘナのテロリストとして指名手配されているがここまでの戦力を必要とするほど風紀委員が知る便利屋の戦力は脅威ではない。

 陽介は知らぬがゲヘナには便利屋を遥かに凌駕するはた迷惑なテロリストがいる。

 温泉開発部。美食研究会などは自分たちの目的のためなら学区外であっても平然と銃を発砲しているのだ。

 彼女たちと比べれば便利屋は言い方はあれであるがテロリストとしては優しい方である。

 後にたかふみや藤宮といった日本(向こう)の住人が聞けば「優しいテロリスト?」と困惑するものであるがキヴォトスはそういうものだと理解してもらうほかないだろう。

 結果として言えばアコはここまでの兵力をアビドスに突入するためにアコは便利屋を口実にしただけなのだ。

 しかし、これだけではまだ疑問が残る。

 なぜ天雨アコはアビドスにここまでの兵力を動かしたのか?

 彼女の本当の目的はなんなのか?

 

「こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない」

『…………』

「それに、私たちを相手するにしてはあまりにも多すぎるこの兵力。他の集団との戦闘を想定していたとすれば、説明がつく。とはいえ、このアビドスは全校生徒集めても五人しかいない……なら結論は一つ」

 

 そこでカヨコは言葉を区切る。

 

「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、陽介先生を狙ってここまで来たんだ」

「!?」

「な、何ですって!?」

「先生を、ですか…!?」

 

 カヨコの発言にシロコ達が驚愕の表情を浮かべる。

 

「え!?俺を?」

 

 陽介を驚く。

 陽介からしたらなにもしてないの指名手配されたようなものだ。

 

『ふふっ、なるほど。……あぁ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れてました。のんきに雑談なんてしている場合ではありませんでしたか……』

 

 アコはカヨコに目的を当てられた割には余裕をもって話す。

 

『まあ、構いません』

 

 アコがそう言うと後ろから無数の風紀委員が陽介達を包囲するように陣を作り上げる。

 

「12 時の方向、それから 6 時の方向… 3 時、 9 時…風紀委員会のさらなる兵力が四方から集結しています……!」

『まさか、シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし……まぁ、少々やりすぎかとは思いましたが、大は小を兼ねると言いますからね☆』

「……そうか、それで……なんで俺を狙った」

 

 陽介はホログラムのアコを睨む。

 

『そんな、怖い顔をしないでください?嶋崎陽介先生……事の始まりは、ティーパーティーでした』

 

 ホログラム越しからアコは軽く鼻で笑うような仕草をし、話を始める。

 

「ティーパーティー?」

『もちろんご存知ですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会のことです』

 

 陽介は一瞬ティーパーティーとはなにか疑問に浮かぶが銀行強盗をした日にヒフミがティーパーティーに報告するという言葉を思い出す。

 

『そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている……と。そんな話が、うちの情報部から上がってきまして』

 

 ホシノに無駄だと言われているのに知らせるとはあの娘は優しくてまじめだなと陽介は思う。

 

『当初は私も「シャーレ」とは一体何なのか、全く知りませんでしたが……ティーパーティーが知っている情報となれば、私たちも知る必要があります。それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました』

(確認するのが遅くないです……?)

(火宮さんも大変だな…)

 

 チナツはアコの確認が遅いことに内心で呆れる。

 仮にアコがシャーレ基陽介について知っていればこんな愚行を犯すことはないのにと思いながら。

 

『連邦生徒会長が残した正体不明の組織……大人の先生が担当している、超法規的な部活。どう考えても怪しい匂いがしませんか?』

 

 ホロフラム越しで陽介とチナツの表情を見たアコが少し煽るように説明する。 

 

(確かリンさん曰く『キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能。また、戦闘行為を含め、連邦生徒会長によって付与された権限のもとに、あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる』だったか」

 

 後にこのことをおじさんがたかふみや藤宮に話したら。

 

「「何それ、胡散臭い」」

 

 と言われたことを陽介は思い出す。

 政治について素人である二人からしても胡散臭すぎるのだろう。

 さらに言えばシャーレの詳細の情報は状況が落ち着くまで情報規制されてたのもあり胡散臭さは大きくなるばかりでもあった。

 アコからすれば過剰権力を持った危険因子だと思ってしまうもの無理はない。

 

『シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません』

「条約?」

 

 アコの発した条約という言葉に思わず陽介は訝しむ。

 いっそのこと本人がそこにいれば記憶再生の魔法で隠していることを全部曝け出せるというのにと陽介は歯がゆく感じる。

 

『ですから、せめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で……といった形で…って、何をしているのですか先生!?」

 

 アコは説明が終わったとばかりに陽介の方に目を向けるが陽介はアコの話が長すぎるあまりにアコの話を聞きながら収納魔法で仕事の書類整理をしていた。

 陽介的にはマルチタスク的な感じでアコと相対していたつもりである。

 

『いや、ほんとに何しているんですか!?私の話を聞いてたのですか!?』

「いや、ほんとにすまん」

 

 アコは陽介の対応に青筋がでるほどに怒る。

 説明している最中にそんなことをされれば誰でも怒るものである。

 

「つまり…先生を連れて行くって?私たちがそれで「はいそうですか」って言うとでも思った?」

 

 陽介の前にセリカが庇う形で前に出る。

 セリカにつられてシロコ達も前にでる。

 

『本当は穏便に済ませたかったのですが……ふふ、やっぱりこういう展開になりますか。えぇ、仕方ありませんね、』

 

 彼女の号令と共に包囲している風紀委員が銃口を向ける。

 脅しではないということがひしひしと伝わってくる。 

 

『ゲヘナの風紀委員会は、必要でしたら戦力を行使することもあります。私たちは一度その判断を下せば、一切の遠慮をしません』

「さっきの戦いをみてこの数で勝てると思ってるの?」

 

 しかしシロコはさっきの蹂躙劇を知らないのか?とばかりにアコを煽る。

 

『確かに新弾丸である【火断】は使いものになりませんでしたし、数が上でもチナツさんの報告書通りなら陽介先生に数を揃えても無駄でしょう…』

「だったら引いてもらいますか?」

 

 アコの言葉にアヤネが撤退することを提案する。

 

『いえいえ、いくら数が意味をなさないとして現状ならという意味ですよ。イオリ例のアレを起動しなさい』

「…わかった…」

「待ってください。アコ行政官。あれはまだ調整が…下手したらイオリちゃんが…」

「大丈夫だよチナツ。仮に暴走してもこの数なら私を止められるよ」

 

 どうやらアコには秘策があるようでイオリに指示する。

 イオリはそれに了承、しかしあれの危険性を知っているチナツはイオリの安全を考慮し反対する。

 イオリはチナツを安心させるように微笑む。

 風紀委員の一人がイオリに籠手を渡す。

 

「いくよ…」

 

 イオリは籠手を右手に装着し籠手の装飾を回転させる。 

 

 ギョロ!!

 

 装飾部分を回転させるとそこには禍々しい目玉が開眼する。

 開眼した目玉はそのままイオリの手に喰い込む。

 食い込まれたイオリは心なしか肉体が少し肥大化し目は真っ赤に充血し血涙が流れている。

 

「……っ!?」

 

 先手を打ったのはイオリだ。

 籠手の力で圧倒的に上昇した身体能力で瞬時に陽介達の前に近づいたイオリは陽介達に攻撃する。

 まずイオリは一番の脅威である陽介を標的に思いっきり蹴りを入れる。

 

形貌 体躯 変躯(ザック トーラ キャトルフ)

 

 陽介は腕を竜に変化させその攻撃を受け止める。

 すぐさまシロコ達は銃をイオリへと向けるがシロコ達が発砲するよりも先にイオリは銃を振り回す。

 

「風の精霊よ…」

 

 陽介はイオリの振り回しに対して風魔法でシロコ達を後ろへ運ぶ。

 

「覚悟してね!!」

 

 イオリに対しムツキは爆弾を投擲。

 

「ふんっ!」

 

 しかしイオリは愛用の銃をバッドのように構えフルスイングで爆弾をムツキに返す。

 

「ふぎゃっ!」

 大きくフルスイングされた爆弾はムツキの腹に命中。

 強化された身体によって返された爆弾はムツキのお腹に当たると打ち返された威力が凄まじいのかムツキはクの字曲がり爆発する。

 

「死んでください!!」

 

 陽介に風の魔法を教えられたことでハルカは風の精霊の力で滑空。

 そのままイオリへと近づきショットガンを連続で発砲する。

 

「………」

 

 しかし被弾したイオリにはなんの反応もない。

 イオリからすれば痛くも痒くもないのであろう。

 

「ぐぎゃっ!?」

 

 そのままイオリは突っ込んできたハルカを蹴り上げ追撃の踵落としを食らわせようとする。

 

縛動拘鎖(レグスウルド スタッガ)牽操(スタッガ マグナ)

 

 しかし陽介の鎖魔法が足に巻き付き踵落としは無理やりずらされてしまう。

 そのまま蹴り上がりで飛んで行ったハルカをシルバーヴァレットが受け止める。

 足を拘束したイオリに対しノノミのガトリングを始めとした重火器が襲う。

 しかしイオリはガトリングを喰らってもびくともしないイオリはハルカにしたように攻撃すべくノノミに狙いを定める。

 

「来た!音の精霊さんお願いします!!。ああああああああっ!!!!

 

 しかしノノミは待ってましたとばかり音魔法の音波攻撃をイオリに放つ。

 

「くっ!?」

 

 いくら身体が大幅に強化されていたとしても内部まで強化されていないイオリはあまりの痛みに悶絶する。

 

 そのまま追い打ちをかけるべくシロコとセリカが腕を変化させ攻撃しようとするが、

 

ババババババッ

 

 無数の弾丸によりその攻撃は阻止されてしまう。

 後ろに控えていた風紀委員とドローンが陽介達に向かって来る。

 

「ここは私が!!」

 

 アルはドローンに闇の力を込めた弾丸を発砲。

 さらに追加とばかりに放たれた弾丸は無数に別れドローンへと向かう。

 無数の闇の弾丸がドローンを通り過ぎる。

 

「なんだ、唯のコケ脅し…なんだ!?突然ドローンが落ちたぞ!?ハッキングか!?」

 

 別れた闇の弾丸がドローンを打ち落とすことなくただ通り過ぎたのを見て、風紀委員たちはコケ脅しと判断するが闇の力によって接続が切断されたためにドローンは無力化された。

 

「流石です。アル様」

 

 ハルカはアルの功績に自分のことのように喜びシルバーヴァレットで駆ける。

 風魔法が付与されたシルバーヴァレットはただ走るだけで風紀委員たちをなぎ倒す。

 

「いっくよ~カヨコっち」

「…私が調整するといっても適当に投げないでよ…」

 

 イオリによって吹き飛ばされたムツキだったが陽介の魔法により威力は軽減されていたためにすぐに戦場に復帰する。

 ムツキは陽介に教えて貰った炎の精霊の力を使い風紀委員の特殊魔法弾【火弾】のように瓦礫に魔法を刻み投擲する。

 投擲されたのをカヨコの音魔法で的確に風紀委員たちの方向に変更する。

 

ドガーン!!

 

 無数の爆発が風紀委員たちを襲う。

 

「行くよ!!シロコ先輩!!」

「ん。トレーニングの成果を見せる時」

 

 シロコはトレーニングの成果を見せるべく腕と足を変化させ風紀委員を次々と蹴散らしていく。

 

「私だって…」

 

 セリカはシロコのように肉体を変化するのではなく銃を変化させる。

 さらにはツインテールを鎖のように地面に刺し体を固定する。

 そうしてセリカは愛用の銃を対戦車使用に変化させ撃つ。

 高い威力と長い射程により風紀委員の砲撃部隊が撃破される。

 

「このままだとやばい。だったら…」

 

 イオリはこのままいけばさっきのように敗北すると考え陽介に向けて突進する。

 

氷嵐創映(レイベリオ ユール エルラン)

 

 陽介はイオリに向かって氷の嵐を放つがイオリは高く飛ぶことでそれを回避。

 そのままビルの壁を蹴り陽介を捕らえるべく急接近。

 

「貰った! あれ…?」

 

 勝負はあったとばかりに陽介に手を伸ばすイオリだったが陽介に触れたと思ったら手をすり抜け、さらにはそのまま陽介に衝突するはずがまるで幻のように陽介の体が消える。

 

雷槍顕現(ルガ ザスト リオルラン)

 

 陽介がさっき使った氷魔法は幻像を作り出す魔法である。

 幻像でイオリを翻弄した陽介は唖然としているイオリに向かって高出力の雷魔法を放つ。

 

ぐっ、ぎゃぁ!?

 

 高出力の雷を喰らったイオリはそのまま倒れる。

 倒れたイオリに陽介は籠手を取り外そうとするがどんなに力を込めてもイオリから籠手が外れない。

 

闇剣顕現(クローシェ ルギド リオルラン)

 

 陽介は過去の出来事から闇の剣を振ると何かが切れたことが確認できイオリから籠手を外すことができた。

 

「やはりこれはオートムと同じ…「動かないでください!!」」

 

 陽介がイオリから外した籠手を確認しているとチナツが陽介に銃を向けている。

 

「イオリちゃんから離れてください。そのまま一緒に来てください!」

「……」

「あの、先生、きゃっ!?」

縛動拘鎖(レグスウルド スタッガ)

 

 銃を向けるチナツに対し陽介は収納魔法から剣を射出。

 剣の勢いと切れ味でチナツの銃が切断される。

 そのまま鎖魔法でチナツを拘束した陽介はシロコ達の元へと行くのだった。

 

『……っなるほど、だいたい把握できました。シャーレの力、必要となるであろう兵力……予想を遥かに上回っています。……悔しいですが、素晴らしいですね』

 

 さっきまでの態度と打って変わり、真面目な態度でアコは陽介達に賞賛の言葉を並べ始める。

 

『決して甘く見ていたわけではないのですが、もっと慎重に進めるべきだったかもしれませんね。それでも、決して無敵というわけではありません。弱点も見えましたし……おおよその戦況は読めました』

「はぁ、はぁ、この状況でまだ攻めるのですか…?」

 

 陽介達に圧倒されている状況でもアコは攻撃の手を止める気はないようだ。

 それもそのはず。あの短時間でアコはシロコ達が使う魔法は体力を消耗するものだと見破ったのだ。

 

はぁ、はぁ。まだ、止めないの…?

 

 事実炎の精霊魔法の力で無数の瓦礫に爆破を付与したムツキは息が絶え絶えである。

 例えどんな状況であろう数の暴力というのは、優位なものである。

 もっとも仮にこれを突破するのなら相手の怪我を考えない前提ならば陽介一人で事足りるのだが生徒を傷つける判断をできない陽介には関係のない話である。

 故に陽介は風紀委員達を傷つけずに制圧するにはホシノの力が必要だと考えるが残念ながらホシノと連絡は付かない。

 

『この辺りをもう少し押していけば……折れるのは、時間の問題ですね。第八中隊。後方待機をやめて、突入してください』

『風紀委員会、第三陣を展開してきました!』

「はぁ……はあ……まだいるのですか」

 

 アコの言葉に後ろでドローンで支援したり陽介達に指示をしていたアヤネが思わず愚痴を零す。

 

「この状況でさらに投入……!?」 

「た、大したことないわよ! まだまだ戦えるんだから!」 

「それはそうだとしても……これはもう、アコの権限で動かせる兵力を超えてる。ということはこの襲撃、アコの独断じゃなくて、まさか……」

「……風紀委員長が?」

「えっ、ヒナが来るの!? 無理無理無理!? 逃げるわよ、早く!」

「いや、そうは言ってない……落ち着いて、社長……」

 

 ヒナの名前を聞いた途端アルが取り乱す。

 彼女の反応からして魔法が使えるようになったとしても勝ち目が見えない相手のようだ。

 

『さぁ、では……三度目の正直と行きましょうか。風紀委員会、攻撃を──『アコ』』

 

 突如アコの声に重ねるようにべつの声の通信が響く。

 たった一言でこの場の空気が凍り付く。

 気怠そうな、だがしかしどこか威厳を感じさせる声。

 

『……え? ひ、ひ、ヒナ委員長!?』 

「委員長?」

「今の通話相手が……? 委員長ってことは、風紀委員会のトップ……?」

 

 風紀委員の委員長の登場に、戦場は一時停止する。

 

「全員来るんだ、正直なにが起きているのか分からないけど今は俺の近くにいるんだ」

 

 どちらにせよ風紀委員の目的は陽介自身であることは明白。

 ならば全員を一か所に集めて最悪飛べばいいと判断した陽介はシロコ達を集める。 

 

『い、い、委員長がどうしてこんな時間に……?』 

『アコ、今どこ?』

『わ、私ですか? 私は……そ、その……えっと……、ゲヘナ近郊の市内の辺りです! 風紀委員のメンバーとパトロールを……』

「思いっきり嘘じゃん!」

「やっぱり、行政官の独断行動だったみたいですね……」

「まじかよ……」

 

 どうやらカヨコの予想通り、アコの独断行動だったわけだ。

 そしてアコの狼狽えようを見るに、風紀委員長のヒナはこういった作戦を容認する存在じゃないことに陽介達は安堵する。

 

『そ、それより委員長はどうしてこんな時間に……出張中だったのでは?』

『さっき帰ってきた』

 

 淡々と話す声に歩く音が混じったように聞こえる。

 

『そ、そうでしたか……! その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして……後ほどまたご連絡いたします! い、今はちょっと立て込んでいまして……!』 

『立て込んでる……? パトロール中なのに珍しい、何かあったの?』

『え? そ、それは……その……』

 

 いまだに見苦しく言い訳を続けようとするアコに、ヒナは切り裂くような追及する。

 そして、とどめと言わんばかりに、ヒナは言い放つ。

 

「『他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないようなことが?』」 

 

 陽介達の耳に革靴が地面を踏みしめる音が響く。 

 瓦礫の上で、見下すように立つ少女。

 白い髪をたなびかせ、紫を基調とした軍服を着こみ、毅然と堂々と陽介達の前に姿を現した少女の名は……

 

「……空崎ヒナ」

 

 彼女の放つ圧に陽介は思わずいつでも戦闘態勢に入れるように魔法を展開する。 

 

「い、い、い、委員長!? い、一体いつから!?」

「!!」

『……え、ええええっ!?』

「……アコ。この状況、きちんと説明してもらう」

「ゲヘナの風紀委員長……空崎ヒナ。外見情報も一致します、間違いなく本人のようです。ですが、ゲヘナ風紀委員長ということは……ゲヘナにおいてトップの戦闘力……この状況でそんな人物まで……」

「…………」

『そ、その……これは、素行の悪い生徒たちを捕まえようと……』

「便利屋68のこと? どこにいるの? 今はシャーレとアビドスと、対峙してるように見えるけど」

『え、便利屋ならそこに……って、い、いつの間に逃げたのですか!? さ、さっきまでそこにいたはず……!』

 

 どうやら便利屋はヒナが現れた途端にシルバーヴァレットに騎乗しさらにはハルカの風の魔法による強化でここから逃げたようだ。

 そんなことを知らないアコは、忽然と消えた彼女たちを探して目を白黒させている。

 アコはさっきまでの態度が嘘のように動転している。それもそのはず、現在の状況はヒナからすれば風紀委員会がアビドスと衝突し問題を起こしているようにしか見えないからだ。

 もしここに便利屋がいれば、ヒナに陽介を捕縛するための協力をしてもらうことができたが当の本人達がいないのならどうしようもできない。

 

『え、えっと……委員長、全て説明いたします』

「…………」

 

 便利屋を見つけることを諦めたアコは、明らかに縮こまった態度でヒナに弁解をしようとしている。

 しかし、ヒナはアコを無言で一瞥し、部下である風紀委員、対策委員会と順番に見ていき最後に陽介を見る。

 

 「いや、もういい。だいたい把握した。察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一環ってところね」

 

 今来たばかりとは思えぬ理解力に彼女は力だけではなく頭の回転が速いことに陽介はより一層警戒を強くする。

 

「でもアコ、私たちは風紀委員会であって、生徒会じゃない。シャーレ、ティーパーティー、それに連邦生徒会長。そういうのは『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)』のタヌキたちにでも任せておけばいい」

 

 辛辣とも取れる言葉で、ヒナはアコの行動を窘なめる。

 

「詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎していなさい、アコ」

『……はい』

「じゃ、あらためてやろう「縛動拘鎖(レグスウルド スタッガ)」……先生?」

 

 陽介はシロコを拘束する。

 いくらシロコが好戦的と言っても限度があるのだ。

 

「いい加減にしてくださいシロコ先輩!ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強者の中の強者ですよ! ここは下手に動かず、一旦交渉するのが吉です! どうしてそんなに戦うのが好きなんですかっ!』

「……ご、ごめん」

 

 アヤネの怒号に謝罪するシロコ。

 

「こちらアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね、初めまして。この状況については理解されてますでしょうか?」

「…………もちろん」

 

 アヤネの問いに、ヒナは目を瞑り沈黙してから、端的に言う。

 

「事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒たちとの衝突。……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

「それは……!」

「それはそうかも」

「それで?」

「私たちの意見は変わりませんよ?」

 

 黙り込むアヤネ。

 ヒナの言葉にいつでも戦闘態勢に入れるように準備するシロコ達。

 このままでは戦いの続きが始まるとばかりの空気の中のこの場にそぐわない声が響く。

 

「うへ、こいつはまた何があったんだか。すごいことになってるじゃーん」

「…………!」

 

 突然ホシノが陽介達の前に姿を現す。

 ホシノの登場に驚くシロコ達だったがそれ以上にヒナが驚く。

 

「ほ、ホシノ先輩!?」

「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててね〜、少し遅れちゃった」

 

 ホシノはアヤネに謝罪する。

 

「昼寝ぇ!? こっちは色々大変だったのに! ゲヘナのやつらが……」

「でも、もう全員撃退した」

「まだ全員ではないですが……まあ大体は」

「ゲヘナの風紀委員会かあ……便利屋を追ってここまで来たの?」

「…………」

 

 どういうわけかヒナはホシノを見た途端、唖然としているのか固まっている。

 

「うーん、事情はよく分からないけど、対策委員会はこれで勢揃いだよ。ということで、あらためてやり合ってみる? 風紀委員長ちゃん?」

 

 笑顔を浮かべてはいるが、どこか機嫌の悪そうなホシノはショットガンと魔法をすぐに構える。

 しかしヒナはそんなホシノに対し焦ることはなくさっきまでよりも軟化した態度でホシノに話しかける。

 

「……一年生の時とはすいぶん変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

「……ん? 私のこと知ってるの?」

 

 ようやく頭が落ち着いたのかヒナは、どこか懐かしさを滲ませて言う。

 しかし、ヒナとは対象的にホシノは首を傾げる、どうやらホシノの反応からしてヒナが一方的に知っているだけのようだ。

 

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから。特に小鳥遊ホシノ……あなたのことを忘れるはずがない。あの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど」

「…………」

「……そうか、そういうことか……だからシャーレが……」

 

 ヒナが随分と事情を知っているような口振りに、ホシノは訝しげな表情になるが、ヒナはそれを無視したまま頷いて、なにかに納得したような表情を出す。

 

「まあいい、私も、戦うためにここに来たわけじゃないから。……総員。撤収準備、帰るよ」

「えっ!?」

「帰るんですか!?」

 

 敵味方入り混じった困惑が飛び交う中、ヒナは堂々とした足取りで陽介たちの前まで近付いた後、姿勢を正し、それからしっかりと頭を下げた。

 

「えっ?」

「頭を……」

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドス廃校対策委員会に対して公式に謝罪する。今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する。建造物や治療費についても、こちらで補償する。どうか許してほしい」

「委員長⋯⋯」

「ま、待ってください委員長! あの校則違反者たち……便利屋はどうするんですか!?それにシャーレの先生はイオリさんを…」

 

 ヒナの言葉に風紀委員の一人が声を荒げるがヒナに睨みつけられて黙り込む。

 

「ほら、帰るよ」

 

 そう言ってヒナは他の風紀委員達を帰らせる。

 

「待ってくれ空崎さん」

 

 しかし陽介はヒナに静止の声を出す。

 

「何かしらシャーレの先生?」

 

 陽介の声に立ち止まったヒナに対して陽介は複数の呪符を渡す。

 

「これを渡したくて…」

 

 そう言うと陽介はヒナに1枚の呪符を渡す。

 

「これは?」

「君のところの褐色銀髪の子。すごい出血しているからこれを貼って欲しいんだ。これは回復の呪符でね。すぐに失った血を取り戻せるはずだ」

「出血って、もしかしてイオリはあれを使ったのね」

 

 陽介の言葉にイオリが何をしたのか分かったヒナは陽介から回復の呪符を受け取りそのまま撤収するのだった。

 

 

 

 

「いやぁ~。なんか大変だったようだね先生」

 

 ホシノが陽介に労い言葉をかける。

 

「もお~。ホシノ先輩。こっちは大変だったんですよ」

「ん。でもトレーニングの成果が出て良かった」

「そういうことじゃないと思うわよ。シロコ先輩」

「取り合えず今日はこのまま解散してまた明日話しましょう」

 

 そうワイワイと雑談しているホシノ達に陽介はどこか申し訳なさそうな顔をしながら話す。

 

「悪いけど俺、ちょっとゲヘナに行って来る」

「え?それはどうして?」

 

 シロコの質問に陽介はイオリから取り外した籠手を見せる。

 

「先生。これは?」

「これは俺が行ってた異世界。グランバハマルの魔獣なんだ」

「魔獣!?なんでそんなものがここに!?」

 

 陽介の言葉にセリカは驚愕の声を上げる。

 

「なんで、それをさっきの風紀委員長が来た時に聞かなかったんですか?」

「あの時は俺も疲れてたしそういうのを聞く空気じゃなくてうっかり」

「うっかりってとんでもないものが出てきたのにそれはないよ先生」

「ごめんって。まぁそういうわけだから明日、明後日はアビドスから離れるよ」

 

 その後陽介達は一度帰宅し眠りにつき早朝に電車に乗るのだった。




次回、ゲヘナに行きます

・特殊魔法弾丸【火弾】
チナツが弾丸に炎の精霊の力を込めて作られた弾丸。
爆発する弾丸
作られた数が多いので後日おじさんに伝えられて炎の精霊への対価としてキャンプファイヤーをするのだった。

魔鎧獣モータルアゴニー
オータムの切り札。
異世界おじさんⅨ巻47話のTIPSに記載されている
鎧の形をした(トラップ)魔獣
封印を解くと凄まじい力を得るが代償に全身の筋肉の肥大、暴走、大量の失血によって通常なら3分程度で死に至る。
キヴォトス人の耐久なら倍以上の時間で使用できるが常に出血するため長時間使用すれば大量出血で死に至る。
完全にデメリット踏み倒して使用するならオータムのように回復のごり押しか高い再生能力が必要。つまり一番使いこなせるのはツルギである。
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