ゲヘナで目的を果たした陽介は電車でアビドスに向かっていた。
幸いにも販売機の操作が日本と変わらなかったおかげで陽介はスムーズに切符を購入しホームに来た電車へ乗り込む。
「切符~。切符を拝見いたしま~す」
「ここにあります」
「どうも~」
右手に握った改札鋏をカチカチと鳴らすハイランダーの生徒に、駅で買ったアビドス行きの切符を渡す。
小さな穴が1つ開けられた切符を受け取り、通路を少し進んで通路側の座席に座る。乗客の数は少ないが、快適な長旅が出来そうだ。
「まだ改札鋏を使ってるところがあるのか」
『先生のところでも使われているのですか?』
アロナに話しかけられた陽介は携帯を取り出しアロナとは電話しているという形をとる。
中年男性の独り言ほど怪しいものは中々ないからだ。
「改札鋏は俺が生まれるよりもずっと前に使われていたな今はもっぱら電子だよ。ミレニアムみたいな感じだったかな。てっきりキヴォトスの電車は全部あんな感じだと思ってたんだけどまさか人が確認するという前時代的なことをしているのがあるなんてなぁ」
『おそらくゲヘナだからでしょうね。ゲヘナでは爆破がよく起きるので路線列車の破損率が相当高いですから機材を使うより人を使った方が安くなりますからね』
「えっ? あそこそんなに治安が酷いの!?」
『はい。先生が風紀委員の校舎に来た時も温泉開発部が暴れていたようですからね』
「温泉?温泉開発で暴れるってなんだ?」
ゲヘナの治安の悪さを考えれば機材を使うより、人を使った方が安いと考えられているであろう事は当然である。だからと言って人を使うのもその電車の乗務員が少々気の毒ではと陽介は思うのだった。
『それで、アビドスに戻ったらどうするのですか先生?』
「やっぱり借金返済についてだなミレニアムに鑑定をお願いした指輪の価値が5億もあるんだ。小鳥遊さんは拒否するだろうけどどう考えても子供が背負うべき借金じゃないからな。残りは俺が教えた呪符の作成で生計を立てれば借金を返済することは夢じゃないだろう」
『そうですね。呪符の作成といい相変わらず魔法の規格外さを痛感しますね』
「とはいえ近いうちにミレニアムの子たちに魔法について聞かれるから多分その時の呪符についても教えることになりそうだから別に稼ぐ手段を考えないとな」
『そうですね先生』
そうして陽介はアロナと会話をしていると陽介たちの座席の一人の少女が通りかかる。
「車内販売です。いかかですか」
「コーヒーはありますか?」
「1つ150円です」
「これで」
「はいどうぞ」
少女は商品がたっぷり詰まったかごを押して、陽介の前に止まる。
陽介は財布から200円を取り出し少女から50円のお釣りと缶コーヒーを受け取る。
「おお、これは良いな」
飲んだ瞬間に焙煎の香りが鼻腔を駆け抜け、まるで淹れたてのコーヒーを彷彿とさせた。ブラック特有の潔い苦味が舌を刺し、深みと酸味が陽介の口の中に広がる。缶コーヒーとは思えない、驚くほど洗練された味わいだ。雑味はなく、喉を滑り落ちるたびに、鋭くも澄んだ余韻が心を静かに揺さぶった。
『このコーヒー。結構美味しいって有名なものみたいですね』
「いいなこれ。今度たかふみ達の分も買おう」
そうして陽介はアロナと楽しい会話をしつつ窓の外の光景を眺めていると車内に足音が響く。
それも1つではない、陽介がふと通路に向けると二人のロボットが陽介たちのいる車両に入ってくる。
「あれは確かこの前、俺たちにミサイルをぶつけたやつらの…」
『先生。あれはカイザーのPMC兵士です』
「カイザーって小鳥遊さんたちの借金相手か、なんでこの車両に?アビドスに何か用があるのか?」
『……陽介先生!、車両のドアがロックされました!?』
「えっ?」
アロナの報告に陽介は驚く。
いったいなんのためにと陽介が周りを見渡すとさっきまで陽介に対応していた少女がいないことに気づく。
どうやらこのロックは機械の不具合ではなく意図的に起こされたものようだ。
乗客が陽介と二人のPMC兵だけの車両で陽介がおもむろに立ち上がる。
陽介の行動に二人のPMC兵が陽介を挟むように立ち塞がる。
二人の手にはアサルトライフルが握られておりアサルトライフルが陽介に向けられる。
「……柴崎陽介だな?」
銃口を陽介に向けながら、2人はゆっくり迫る人。陽介はいつでも魔法を使えるように警戒する。
「カイザー理事がお前を呼んでいる。一緒に来てもらおうか」
「
「なっ!?」
「
「ぐぎゃあぁぁ!!」
1人が陽介に銃口を突きつけた瞬間に、陽介は右手に光の剣を顕現させPMC兵士の腕ごとアサルトライフルを切断する。
さらに陽介は自身を中心に雷魔法を展開させPMC兵士をまるごと気絶させる。
「アロナ、ここからアビドスの距離を…」
陽介がアロナのアビドスまでの距離を算出させようと指示を出そうとした瞬間に車内が大きく揺れる。
甲高いブレーキ音と共に、陽介が今いる車両と進行方向側の車両が切り離されたのだ。
『陽介先生!列車が切り離されました!』
「はあぁっ!?」
『PMC兵士がさらに来ます!今度は部隊です!』
陽介が車両の繋がっている方へ振り返れば、奥には重装備で身を固めたPMC兵士が盾を構えて陣形を整えいつでも陽介と相対できるような姿勢になっている。
しかしいくら陣形を構えたところで陽介の光の剣の前にはまとめて破壊されるし飛翔すれば戦う必要事態がないのだ。
だが今の陽介にその選択はできない。なぜなら、
「アロナ、他に人はいるか!?」
『奥の方に先ほど先生にコーヒーを売ったハイランダーの生徒を含めて4人ほどいます』
「だったら!
攻撃の余波に巻きこまないために陽介は奥の車両に結界魔法を展開する。
グランバハマルの封印都市ルバルドラムの大規模結界のほどではないが重火器程度なら防げる。
「これで大丈夫だ。さっさと終わらせよう。
敵の誤射の心配が消えたことに安堵した陽介は機動魔法と風魔法を展開する。
これにより陽介は高い機動力を手に入れた。
両手で光の剣を構えた陽介はアロナにドアのロックの解除を指示する。
アロナによれば奥の最後尾までPMC兵士は全部で20人もいる。
アロナに合図を送った陽介はドアを開いた瞬間、大きく身を屈めて真っ直ぐ突進する。
PMC兵士は即座に盾と銃を構えるが、構えるよりも先に陽介が先頭へと攻撃する。
光の剣で一人ずつ確実に撃破する。
「
途中でアサルトライフルが破壊されたPMC兵士が通信を飛ばそうとするが闇の剣で通信は切断されさらには鎖の魔法で拘束する。これで車両の1つは攻略された。
「情報通りだ!魔法が出る前に撃て!!」
「散らばるな!固まって撃て!!」
後方車両の部隊がドアを開けた瞬間、陽介に向けて弾幕の嵐を打ち込む。
アロナがバリアを展開することで弾幕の嵐が無効化される。
この車両はさっきまでと異なり、左奥に飲食できるスペースがあるからか空間が広い。
さらに奥には厨房もある。
それに目を付けたPMC兵士たちが連中も集まっている。
だが目を付けたのはPMC兵士だけではなかった。
「
飲み水を操った陽介は水魔法でPMC兵士たちを拘束する。
「
拘束されたPMC兵士に向けて陽介は雷魔法を放ち数名のPMC兵士を気絶させる。
さらに奥へと進んでいくとPMC兵士達が陽介に向けてスモークを投げつける。
「
しかし陽介の風魔法によって煙幕は吹き飛ばされる。
スモークの意味がないと悟ったPMC兵士達が盾を構えて突進する。
「
突進してくるPMC兵士に向けて陽介は光の剣を分裂させて盾を破壊する。
「
盾を破壊されたPMC兵士たちがすぐさま銃を撃ち出そうとするが陽介の凍結魔法によって凍らされるのだった。
凍らされたPMC兵士たちの横を通ろうとする陽介に向けてカウンター席で隠れていたPMC兵士が陽介を撃つ。
「…
しかしそんなPMC兵士の決死の攻撃はアロナのバリアに防がれ陽介の拘束魔法によって拘束されるのだった。
「くそっ!ここまでだなんて…おいっ、なにをするつもり…俺はなにも喋ら…」
「君に聞く必要はない…
「ぐぎゃあああぁぁあああ」
悪態をつくPMC兵士の頭を掴んだ陽介は今回の襲撃の首謀者と目的を探ろうとするが残念ながら知りたかったことは知れずそのまま陽介は雷魔法でPMC兵士を気絶させるのだった。
「アロナ、こいつ以外に潜んでいる敵は確認できたか?」
『はい、敵性反応はさっき先生が気絶させた人で最後のようです。これで安全は確保できてます』
「アロナ、後ろの乗客も連れてアビドスに向かおうと思うんだけどここからアビドスまでの距離はどれくらい?」
『大丈夫です先生。私が車両制御システムに侵入しましたので列車でアビドスに行けます』
「え、そうなの? すごいなアロナは」
『えへへへ~。アロナはすごいんですよ』
アロナの能力の高さに感心した陽介はアロナを褒めたたえ、陽介の言葉に有頂天な気分になるアロナだった。
◇
「君達、もう大丈夫だよ」
「ひっ!?」
列車の奥の車両へと到着した陽介は怖がらせないように笑顔で乗務員であるハイランダーの生徒達と相対するのだが、陽介の笑顔が怪しさしか感じ取れず陽介にコーヒー缶を売った少女が怯える。
一方で少女と一緒にいる薄緑色の髪をしているおそらく姉妹であろう二人の少女は虚ろな目をしていて、眼帯の少女は陽介に警戒の目を向けている。
「もう大丈夫だよ。怖い人たちはおじさんが倒したからね」
「あ、ありがとうございます…」
陽介の言葉に少女はお礼を言うがその後ろの少女は銃を陽介に向けている。
「大丈夫だ。俺は敵じゃない。ほらシャーレの証明書だ。実はおじさん、シャーレの先生でね、君たちを傷つけないからその銃を…」
バキューン
優しい口調でシャーレの先生だということを明かし少女たちを安心させようとする陽介だったが少女たちは関係ないとばかりに銃を発砲する。
「ナツミちゃん!? ミオちゃん!? スオウ監督官!? 一体何を!?この人は…!」
「君、ここから離れるんだ!」
ナツミとミオ、スオウの突然の強硬に少女が驚き止めようとするが少女の声が三人には届かない。
陽介は少女に流れ弾が来ないように退避することを指示する。
「君達、もう…」バキューン
「ねぇ、ちょっと話を…」バキューン バキューン
「もう、止め…」バキューン バキューン バキューン
「……
3人を説得しようとする陽介だったが何を言おうとしても銃を発砲する手を止めない少女に嫌気が刺したか陽介は魔法で拘束する。
「全く。人の話はちゃんと…あれ? この二人…まさか…
3人を拘束した陽介は呆れつつ少女たちに近づく、しかし陽介がナツミとミオを見るとどこかおかしな様子であることに気づく。
よくよく見ればナツミとミオのヘイローの上に天使の輪のようなものを見つけた陽介はかつてメイベルが生物の心と体を支配する身駆操作を思い出し闇の剣で術者との繋がりを切る。
「「……!?」」
「ゴバッ!?」
「術者は君か」
陽介の推測は見事に的中し闇の剣で術者との繋がりが切断されたナツミとミオは何かが切れたみたいに意識を失う。
それとは反対にスオウは二人みたいに意識を失うのではなく血反吐を吐いていた。
「生物の肉体と心を操る神聖魔法をなぜ君が使える?」
「……………………………」
「え!?はっ!?スオウ監督官が洗脳!?」
「何故、2人を操って俺を撃った?」
「……………………………」
陽介に問い詰められるスオウだが彼女は陽介に質問に答えることはなく黙秘を貫き陽介を睨む。
「しかたない。これは使いたくなかったけど…
黙秘を貫くスオウに対して痺れを切らした陽介は記憶探査の魔法で調べようとする。
ホシノやリンから他者に使うことは苦言を言われたがこの場合は致し方ない。
そうして陽介がスオウの頭に触れ記憶を探ろうとした瞬間。
ドガーンッ
長髪で浅葱色の髪をした身長が大きい少女が電車の天井を破壊して陽介を接近する。
「ああっぁああ!? うちの天井がぁぁあ!?」
「なっ!? くっ、
突然の事態に陽介にコーヒーを売った少女が絶叫する中、陽介は気絶した二人を含めた三人の少女の安全のために風の魔法で電車の外へと運び出す。
しかし浅葱色の髪をした少女はその隙を逃さず陽介に拳を叩きつける。
アロナは浅葱色の髪をした少女の行動に反応が追い切れずバリアの展開が遅れ、拳が陽介の腹へとのめり込む。
腹に攻撃を喰らった陽介はドアに吹き飛ばされる。
「……!」
「
追撃とばかりに腰に下げていた銃を取り出した少女は陽介に弾丸を打ち込もうとするが光の剣を顕現させた陽介はドアを切断し車両から脱出する。
少女は陽介に弾丸を繰り出すが陽介はドアを盾のように扱い銃弾が防ぐ。
「………」
「おい、さっさとこの鎖を破壊しろ」
陽介が車両から離れたことを見た少女は追撃するべく構えるがスオウの言葉で立ち止まる。
そのまま少女はスオウの元へと歩きスオウを拘束している鎖を破壊していく。
「さっさとここから離れるぞ」
スオウの命令に少女はスオウを抱える。
スオウを抱えた少女は飛び電車の屋上へと移動する。
「
しかし屋上には陽介は待ち伏せしていた。
二人の少女のようにスオウに操られている可能性を考えた陽介は闇の剣を顕現させ、圧倒的な速度で少女へと肉薄し闇の剣を振るう。
「なっ!?」
「…
しかし少女の展開したバリアにより闇の剣は反射される。
「なっ!?反射…ぐぎゃっ!?」
少女が使った技に困惑する陽介をよそに少女は陽介を蹴り上げる。
蹴り上げられた陽介の隙を突き少女はスオウを抱えたまま高く飛び上がる。
「逃がすか!
陽介は少女たちを逃すまいと風魔法で飛翔し少女の服を掴む。
「よし、これで…ごばっ!?……なッ!?」
しかし少女に反撃の蹴りを喰らった陽介は掴んでいた服が引き裂かれ砂漠に落ちていく。
陽介は反撃すべく少女の方に目を向けるが 切り裂かれた服の下、少女の肉体に大きな穴が開いていることに気づく。
「小鳥遊ホシノに伝えておけ、梔子ユメ、生徒会長の手帳を私は知っていると。知りたければ私を探して見…おい、もっと安定させ…おい!?そこは触る… 」
とんでもない光景に陽介が驚愕している中、スオウはホシノへの伝言を陽介に叫びそのまま少女ともに消えていくのだった。
◇
「………」
「「「「陽介先生!」」」」
スオウたちが消えた方向に陽介が目を向けていると反対方向から陽介の名前を叫ぶ声が轟く。
声の方向に振り向くとシロコ達が大きな隼に乗って陽介に向かって飛んでいるのが見える。
おそらくだが大きな隼の正体は貌の精霊魔法を使ったホシノだろうと陽介は考える。
「お前たち、どうしてここに?」
「実は先生が帰ってくるのを待ってたら電車に異常発生したと聞いてさらには轟音がしたのでそれでホシノ先輩が変身して私たちを運んでくれたんです」
「ドローンってなんで?」
「実は先生がアビドスに離れている間に飛んでもないことが発覚しまして、先生に連絡しても全く出なくて先生が帰ってきたすぐに話すために…」
「そうか」
陽介の質問にアヤネが答える。しかしその答えに陽介はさらに疑問が浮かびアヤネに問うがアヤネの答えにひとまず納得する陽介であった。
そこからアヤネは陽介がいなくなった間にアビドスに起きたことを話した。
陽介がゲヘナへ向かった後、風紀委員から賠償金が支払われさらには紫関ラーメンが廃墟となった場所には1億円が置かれていたという。
幸いなことに大将の身体は陽介が病院にすぐに転送したおかげですぐに入院の手続きをされ後遺症は残らなかったようだ。
このことにセリカたちは喜んだが大将がカイザーに退去通知が出されていてさらには。
「えっ!?アビドスの土地の保有者がカイザーなの!?しかもカイザーがアビドス砂漠でなにかしてるって空崎さんが!?」
「はい、大将のお見舞いの後、地籍帳を調べたら私たちの学校と一部の地区以外がカイザーの所有物だったのです」
「えっ、でも学区の自治区の所有権はその学校のものじゃ…」
「アビドス生徒会だよ…」
アヤネとの会話の中で疑問が出る陽介にホシノが苦々しい顔で答える。
「アビドスの生徒会?ていうかアビドスにそんなのあったのか?」
「2年前に解散したんだけどね。当時おじさんは副会長をしてたんだ」
「ホシノ先輩副会長してたの!?」
「まあ、当時は他の生徒会の人はほとんどやめちゃってね。おじさんが入った時は在校生が2桁しかで教員もいないし生徒会室なんてただの倉庫みたいなものだったんだ」
そうしてホシノはどこか楽し気なしかしどこか後悔している様子で話しを進める。
「当然そんな学校に引き継ぎ書類なんて立派なものなんてなかったし、当時は砂漠化を避けようとして移転を繰り返してた時期だったから前生徒会の書類関係はもう砂の中だしねぇ……まあそもそも、生徒会なんて私とその時の生徒会長だけだったし」
生徒会長という言葉が出た瞬間ホシノの顔がさらに暗くなる。
「その生徒会長は無鉄砲で会長なのに…校内でも随一のバカで……私の方だって嫌な性格の新入生でさ……私…は……ほんと…馬鹿みたい、何も知らないままさ」
「小鳥遊さん…」
話を続けるたびにホシノの顔がさらに曇っていく。
「……ホシノ先輩が責任を感じることじゃない。昔の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散になった後……アビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ」
「う、うん……?」
曇っていくホシノにシロコが慰めるべく称賛の言葉をホシノに語りだす。
突然のことにホシノは目をぱちくりとする。
「……ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる」
「そうです。セリカちゃんを助けに行く時、真っ先に先頭に立ったのもホシノ先輩でしたし……」
「……うへ~、そうだっけ?」
続くシロコとアヤネの言葉ににへら、と笑みを浮かべる。
「よく覚えてな…」
「小鳥遊さんはいつもみんなを守るために前に出てるだろ」
「……」
「セリカさんが襲われた時も俺たちが風紀委員たちと戦って時だって小鳥遊さんは誰よりも焦り怒っている。いつも君は笑顔を浮かべていても君の内心は必至なんだろ…」
「…それは精霊が教えてくれたのかな先生?」
「いや、俺の経験からだ。ある村で俺に対して小鳥遊さんみたいに笑顔を向けていたけど内心では村を守るために俺の隙を伺っていた村長がそんな感じだった。俺が依頼を終わった後ぐらいに一人で罠を張って殺そうとしてきたよ。その村長からしたら依頼でもう魔法が使えないと思って襲ってきたようだけど。結果は俺に返り討ちにあったよ。魔法で拘束した時も「絶対におれの村民に手出しはさせないぞ。このオークが!」って捕まっているのに村を守るために殺意がすごかったよ」
「「「「「………………………」」」」」
陽介の言葉にホシノ達は思わず黙り込む。
陽介から会う村々でオークとして襲撃されたりと聞いていたが改めて聞くと重いのだ。
「小鳥遊さん。このままだと君はさっき言った村長みたいに一人で勝手に行動してとんでもないことになってしまう。シロコさんたちは君が守らなきゃいけないほど弱くないんだ。俺だって協力するしもっと他の人に頼るべきだ」
「先生…」
「それに一人で来られるより大勢で来られる方が厄介だし…」
「ねえ!先生!?最後のやつはいらないよね。もっとこうないの大変な依頼で他の人と協力したとかさぁ!?異世界の住民が先生を怪物扱いしてくるからないかもしれないけど!?」
「ん?あぁ、あるぞ」
「だったらそれにしなさいよ! 先生の話が色々重すぎて良いこと言ってるのに全然響かないわよ!」
「すまん。協力したのも結構あるけど襲撃とかの方が多くてつい…」
「ほんとによく生きて帰れましたね先生」
陽介の言葉に思わずアヤネがツッコミ、陽介に語られた異世界事情にノノミは感嘆するのだった。
「ん。ホシノ先輩は色々とダメなところもあるけど、尊敬はしてる」
「ど、どうしたのシロコちゃん!? 急にそんな青春っぽい台詞を……! おじさんこういう雰囲気、ちょっと苦手なんだけど!?」
「……や、なんとなく、言っておこうかなって思って」
陽介により気まずくなった空気に気にすることなくシロコは淡々とホシノに言葉を投げかけシロコの言葉にホシノは狼狽する。
「え、えぇ?」
シロコの真っすぐな言葉にホシノは困惑するがシロコの言葉にどこか含みのあることはホシノに分かった。
陽介にせいで空気が変な感じになってしまったがシロコの最後の言葉のおかげでさっきまでの悪い空気は払拭された。
どうかアビドスが対策委員会がホシノを繋ぎ止める鎖になって欲しいと陽介は心の中で思うのだった。
◇
「さて話を戻しまして学校の借金、このアビドスが陥ってる状況、そして私たちが先生と一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口。全てが少しづつですが、繋がり始めている気がします」
アヤネが進行役として一つ一つ要素をまとめていく。
「カイザーコーポレーションは、アビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法が無くなり、まだ手に入れていない最後の土地であるこの学校を奪うために、ヘルメット団を雇用していた・・・・・・!カイザーコーポレーションの狙いはお金ではなく土地だった、という結論で良いと思います!」
「ですね、バッチリかと。そうなると、次の疑問が出てきますが……どうして土地なんでしようか?ですね、バッチリかと。そうなると、次の疑問が出てきますが…… どうして土地なんでしょう?アビドス自治区は、もうほとんどが荒れ地と砂漠、砂まみれの廃墟になっているのに…」
「確かに・・・こんな土地を奪ったところで、何か大きな利益があるとは思えませんが…」
「たかふみ…俺の甥が言ってたんだが砂嵐の侵食や機器の摩耗が激しいから仮に土地を手に入られても道路、建物などのインフラを維持するコストの高さから純粋に土地が欲しいということはないのだろう」
アヤネのまとめに全員納得するがそれとは別でカイザーがアビドスの土地を求める理由が分からない。
陽介もたかふみが言っていたことも出し全員が頭を悩ませていると
「あぁもう!そんなことを考えるより直接カイザーに聞いた方が早いわよ!風紀委員の委員長が言ってたことが本当ならアビドス砂漠に行って直接この目で見ればいいって!」
全員で頭を悩ませているとセリカがみんなに発破をかけるように声を上げる。
「……ん、そうだね」
「……いや~、セリカちゃん良いこと言うねえ。こんなにたくましく育ってママは嬉しいよ。泣いちゃいそう。ティッシュちょうだい」
「な、何よこの雰囲気!? 私がまともなこと言ったらおかしいわけ!?」
「あ、あはは……そんなことは……でも、セリカちゃんの言う通りです」
セリカの言葉に対策委員会の面々は笑みを浮かべる。
この調子なら大丈夫だろうと陽介は内心で安心するがそれはそれとして気になることがあるからホシノ達に相談すべくを口を動かす。
「カイザーがアビドスの土地を手に入れるために借金をアビドスに背負わせたり、ヘルメット団を差し向けたのは分かるがカイザーが俺を襲撃した理由はなんだ?」
「襲撃って、あの轟音はカイザーの仕業なの!?」
陽介の言葉に思わずセリカが絶叫する。
「いや、あれは違うな。説明するより見てもらう方が早いな
そうして陽介はホシノ達に電車で起きたことを見せる。
「カイザー理事が先生に用事っていったい?」
「通常企業がこういったことをするなら事前に連絡をするはずなんですが、先生はなにかカイザーにしたのですか?」
「いや、とくに心当たりはないな」
「ん。それにしてもこの数をものともしない先生はすごい。私も魔法を使いこなせたらできるかな?」
そこから時間が経過し陽介がカイザーPMC兵士の蹂躙が終わりハイランダーの生徒と相対する場面へと移る。
「洗脳って、これも異世界の魔法なんですか先生?」
「相手の心と体を支配ってどこが神聖よ」
「いや、これは神聖魔法に分類されているけど向こうじゃ外法なんだ」
「なんでこの娘がそんな魔法を?もしかして前に行ってた精霊に気に入られたっていう」
「いや、この娘は小鳥遊さんみたいに精霊に気に入られているみたいな感じじゃない。気に入られているならもっと強力なはずだ。恐らくだが俺以外に魔法が使える奴がいて、そいつに教えられたのだろう」
「カイザーだけじゃなくて先生を狙った第三勢力って勘弁してよ」
場面が電車の天井を突き破って少女が現れたところへと移る
「なんで…」
「小鳥遊さん?」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
突如ホシノが取り乱す。
「小鳥遊さん!?」
「ホシノ先輩!?」
「落ち着いて下さいホシノ先輩!?」
突然のホシノの豹変に陽介とシロコが驚愕しノノミがホシノを落ち着かせようと声を上げるがホシノは落ち着くことなく陽介に掴みかかかる。
「ねぇ!?先生!?なんで!? なんでなの!?」
「落ち着くんだ小鳥遊さん!? 一体あそこになにが!?」
「なんで!?ユメ先輩が!?ユメ先輩が先生を襲ってるの!?」
今話からアビドス3章要素が入ります。
オリジナル展開を文章にするのは難しくてまた更新に時間が掛かるかもしれません