キヴォトスおじさん   作:小説好きー

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感想、誤字報告ありがとうございます。
誤字を少なくできるように日々頑張っていく所存であります


おじさんと便利屋68

「…それでは、アビドス対策員会の定例会議を始めます。本日は陽介先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な会議が…」

 

 アヤネは眼鏡をくいっと上げて他の対策委員会のメンバーや先生を見据える。

 しかし彼女の態度に対して他の面々の態度はよろしくない。

 なぜなら対策委員会の教室に似つかわしくない存在。白い大きな犬がそこにいるからだ。

 

 ワシャワシャ

 なでなで

 くんくん

 

 大きな白い犬に対して陽介は胴体を撫でながら犬の首筋に顔を埋め匂いを嗅ぐ。

 ホシノはお腹に顔を埋める。

 ノノミは頭を撫でている。

 

「何、やっているのよシロコ先輩」

 

 セリカはその光景にドン引きしている。

 セリカがドン引きしているのは白い大きな犬の正体がシロコだからだ。

 陽介と一緒に使える魔法を一通り検証して探したシロコは自身に貌の魔法に適性があることを知り早速使ってみたのだ。

 結果的にシロコは白い大きな犬に変化し、現在は陽介とホシノとノノミにモフられているのだ。

 

「はあ、よーしよしよしよし…かっわ…!」

「うへ~。シロコちゃんのお腹ふかふか~」

「シロコちゃん。ここ、ここが良いんですね~☆」

「わふ、わおーん」

「あ、あの、皆さん…」

 

 アヤネが三人に話しかけるが当の三人はシロコに夢中でアヤネの話が耳に入っておらずシロコに構いっぱなしだ。

 

「みなさん!!話を聞いてください!!!」

 

 結果、怒髪天を突いたアヤネの怒号が対策委員会の教室に鳴り響いた。

 

 

 

「「「すいませんでした」」」

 

 アヤネの怒声に気づいた陽介たちは正座しアヤネに謝罪する。

 

「ほんっとに!!もう!しっかりしてくださいよ」

 

 アヤネが怒りが収まらないのか言葉の一つ一つに怒りを感じられる。

 よく見ればうっすらと涙も見える。

 

「ん、ごめんアヤネ」

 

 アヤネの説教を陽介たちが聞いている最中にシロコが犬から戻りアヤネに謝罪する。

 そしてアヤネの顔から滴る涙を舌で拭い取る。

 

「ななななな、何をしているのですかシロコ先輩!」

「うわぁ、シロコちゃん大胆だね。おじさんにはそんなことできないよ」

「ん、アヤネから涙が流れていたから慰めないと思ったら気づいたらそんなことしてた」

「貌の精霊魔法の副産物だな。肉体を変化すると変化した肉体に精神が引き寄せられるんだ」

「それって、危険じゃないの!あのままだったらシロコ先輩は…」

 

 陽介の説明にセリカは犬から戻らなくなったシロコを想像し身を震わせる。

 

「いや、それは大丈夫だ。どうもシロコさんの変身魔法による精神の影響、特に犬に変身した時の影響は最小限だ。奥空さんを舐めたのだってちゃんと意識すればすることはない。今回のは初めてだったからシロコさんが油断してたことでああなっただけだから大丈夫だ」

「そうなんですか~。良かったねシロコちゃん。アヤネちゃんやホシノ先輩みたいに魔法が使えるようになって☆」

「ん、犬になった時すごくしっくりきたし、先生にホシノ先輩にノノミに撫でられてすごく気持ちよかった。ホシノ先輩とセリカも使えるんだしせっかくなら変身してみようよ」

「ぜったい!いや!!」

「いや~。おじさんはハヤブサだから犬のシロコちゃんや猫のセリカちゃんみたいにはいかないからいいかな」

 

 シロコは変身した時の心地よさを一緒に体感したく陽介との試行錯誤の結果。貌の魔法が使えることが判明したホシノとセリカに一緒にやろうと提案するがセリカは変身した自分がシロコと同じ目に合うことへの拒否感からとホシノは変身した自分の姿からシロコの提案を断るのだった。

 

「おっほん。それではこれより『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は挙手を!」

 

 アヤネがそう言い終えると真っ先にセリカが手を挙げる。

 

「はい、はいはい!」

「はい、一年の黒見さん。お願いします」

「……ねえ、苗字で呼ぶの、やめない?ぎこちないんだけど……」

 

 アヤネは苗字に呼びに慣れないのかアヤネを苦言を零す。

 

「でも、せっかくの会議だし……」

「いいじゃーん、おカタ〜い感じで。それに今日は珍しく、先生もいるんだしさ」

「珍しいというか、初めて」

「うんうん!委員会って感じがして、いいと思います!」

「まあ、先輩たちがそう言うなら……とにかく!」

 

 アヤネは先輩たちが賛成気味なこともあって、セリカの苗字呼びに納得する。

 みんなの前へと移動したセリカはみんなの前で意見を高らかに言う。

 

「対策委員会の会計担当として、現在の我が校の財政状況は破綻寸前としか言いようがないわ!このままだと廃校だよ!みんな、分かってるよね?」

「うん、まあね〜」

 

 セリカの言葉にホシノが同意しみんなが頷く。

 

「毎月の返済額は利息だけで788万円!私たちも頑張ってはいるけど、正直利息の返済も追いつかない。今までみたいに指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ。何かこう、でっかく一発狙わないと!」

「でっかく……例えば?」

 

 アヤネの質問に、セリカはにやりと笑みを浮かべてで鞄の中からチラシのようなものを取り出して陽介達に見せてくる。

 

「これ見て!」

「これって……⁉︎」

「ゲルマニウム?」

 

 そのチラシには『ゲルマニウム麦飯石であなたも一攫千金‼︎』と書かれていた。

 セリカが言っていた一発逆転というのはこれのことなのだ。

 セリカが持ってきているチラシにホシノ達が呆れているとセリカは話を進める。

 

「この間街で声をかけられて、説明会に連れて行ってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットを売ってるんだって!これね、身につけるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの三人に売って……どうしたのみんな?」

 

 セリカが意気揚々と話していると他の皆の顔が浮かない表情していることに気づく。

 

「却下ー」

「えーっ。なんで?どうして!先生みたいに魔法が込められているんだよ。これならアビドスの借金は解決できるよね!」

 

 そんな怪しいものを認められるはずもなくホシノによってセリカの案は却下された。

 しかしセリカは陽介の魔法のようにゲルマニウムブレスレットにも不思議な力があるに違いないと信じ陽介の方に目を向ける。

 しかし陽介はそんなセリカの目線に申し訳なさそうな表情を浮かべ言葉を紡ぐ。

 

「その、あれだ。このゲルマニウムには精霊の力やそれに類似した力は込められていないただのアクセサリーだ…」

「そ、そんな。私、2つも買ったのに…あ、でも私たちに魔法を掛けたみたいにこのブレスレットに幸運が上がる魔法を掛ければ」

「それはできるが仮に掛けたとしてほんの少ししか効果ないからそんなことするより幸運の精霊に愛された子の近くにいる方がいいよ」

「うう…」

 

 陽介の言葉にセリカはがっくりと落ち込むがすぐさま陽介の魔法による再起を図るが陽介の言葉に床に手が付くほど落ち込むのだった。

 

「ん? 先生、幸運の精霊に愛された子がいるってどういうこと?」

 

 シロコは騙されたセリカに気の毒に思いつつさっき陽介の言った言葉が気になり陽介に質問する。

 

「この間の紫関ラーメンで小鳥遊さんが日の精霊に気に入られているって話をしただろ。それで気になって他に小鳥遊さんみたいに精霊に好かれている子を聞いてみたらミレニアムには幸運の精霊に気に入られている子がトリニティには重力の精霊に気に入られている子がいるのを教えて貰ったんだ。あ、あとゲヘナとトリニティ両方に命の精霊の力を無意識に使ってる子もいるんだ。トリニティの子は自己回復特化でゲヘナの子はなんと命を生み出せるんだって」

「そういうのもいるんだ。強盗に使える精霊に気に入られている子とかいるかな」

 

 陽介の説明にシロコは興味深そうに反応し不穏な言葉が出る。

 残念ながら強盗から下は小声だったためか陽介には聞こえなかった。

 

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねえ〜。気を付けておかないと、いつか悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよー?」

「そ、そんなぁ……そんな風には見えなかったのに……せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに……」

「大丈夫ですよ、セリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走しますから」

「ぐすっ……ノノミせんぱぁい……」

 

 一方セリカはホシノ達に慰められていた。

 

「黒見さん。ちょっとごめんよ。記憶断片映写(イキュラス エル ラン)」

「なに、先生。えっ!?なにこれ!?」

 

 落ち込んでいるセリカの元に陽介が近づき記憶再生の魔法でセリカの記憶を映し出す。

 そこにはセリカと気のよさそうなロボットが談笑していてセリカがゲルマニウムブレスレットを2つ買っているのが見えた。

 

「ふーん。こいつがセリカちゃんにブレスレットを売ったんだ~」

「しっかりお礼をしないとですね☆」

「捕まえたら俺を呼んでくれ。精霊経由ですぐに駆け付ける。こういうのは大元をどうにかしないといけないから」

 

 陽介が見せた記憶映像を見たホシノ、ノノミは黒い笑みを浮かべる。

 陽介もまた二人に協力すると伝える。

 こうしてセリカにマルチ商法を持ち掛けた大元は近いうちにアビドスによって壊滅されたのちにヴァルキューレに一斉検挙されるのだがそれは別の話である。

 

「えっと、それでは……黒見さんからの意見はこの辺で……他にご意見のある方……」

 

 そんな光景を見ながら、アヤネは切り替えて会議を進めようとする。

 それに反応してホシノが元気に手を挙げた。

 

「はい!ほほほほーいー!」

「えっと、はい。三年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが……」

「うむうむ、えっへん!」

 

 アヤネの様子からして、あまりこういったことへの期待が薄いのだろう。アヤネの言葉には期待が感じられなかった。

 

「我が校の一番の問題。それは全校生徒がここにいる五人だけってことなんだよねー。生徒の数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金でもかなりな金額になるはずだよ」

「「「おお…」」」

 

 ホシノは学校の経営としてはまっとうな意見を出す。

 その言葉にシロコ達は感心し、拍手を出す。

 

「そういうことー!まずは生徒数を増やさないとね〜、まずはそこからかな~増えたら、議員も輩出できて、連邦生徒会での発言権も与えられるしね」

「鋭いご指摘ですが……でも一体どうやって……」

 

 しかしそのためにはアビドスには大きな問題がある。

 アビドス高等学校の生徒数が少ない主な理由は、多額の借金と砂嵐による地域の砂漠化の二つ。

 どちらの問題も解決しない限り、入ってくる新入生はかなり少ないどころか0だってありえる。

 しかし、ホシノが自信をもって発言をしたのならばそれを叶える手段があるのだろうと陽介は考える。

 

「簡単だよー。他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」

「はい⁉︎」

「小鳥遊さん!?」

 

 ホシノの言葉に陽介とアヤネの声が同時に部屋に響く。

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコ押さなきゃバスから出られないようにするのー。うへへ~、これで生徒数がグンと増えること、間違いなーし!」

「それ、興味深いね。ターゲットはトリニティ?それともゲヘナ?ミレニアム?狙いをどこに定めるかで戦略を変える必要があるかも」

「お、えーっと、うーん。そうだなぁ~。トリニティ……?いやゲヘナ?ここはミレニアムにしよう。先生が言ってた幸運に愛された子をうちの生徒にしてギャンブルなり株なりで儲ければ借金を返せるし増えたお金で学校の設備だって立て直せる」

「というか、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかありなんですか!?それに、他校の風紀委員が黙ってませんよ!?」

「もし、それをするなら俺はアビドスのみんなと戦うことになるけどいいのか?」

「うへーやっぱそうだよねー?先生と敵対したくないしやっぱなしで……」

「やっぱそうだよねとかやっぱなし、じゃありませんよホシノ先輩……もっと真面目に会議に臨んでいただかないと……」

 

 ホシノの言葉に呆れた物言いをするセリカ、彼女の反応からしていつもこういった役割なのだろうと陽介は感じる。

 

「ねぇ、アヤネ。いい考えがある」

「……はい、二年の砂狼さん…なにをしているんですか!?ふざけるのもいいかげんにしてください!」

 

 アヤネが頭が痛いような表情をしているとシロコが挙手しアヤネがシロコの方へと顔を向ける。

 しかしシロコは貌の魔法を使い肉体を変化している最中であった。

 身長は10cmほど大きくなり、髪は伸び胸が大きくとシロコがこのまま成長したらどうなるかを表現したような姿に変化していた。

 この光景にアヤネはキレた。

 

「ん。違うのこれは私の案を具体的に説明するために必要だからしたこと」

「必要なことって一体何を?」

「ん、銀行を襲うの」

「はいっ!?」

 

 シロコの言葉にアヤネは再び声を上げる。

 

「確実かつ簡単。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」

「さっきから一生懸命に書いてたのはそれですか!?」

「5分で1億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた。貌の精霊さんお願い」

 

 そう言ってシロコはカラフルなニット帽を机の上に出し、貌の精霊にお願いすると見る見るニット帽の形は変化し覆面になった。

 

「いつの間にこんなものまで考えて……」

「おー、シロコさん早速魔法を使いこなしてるねぇ」

「これ見てください☆レスラーみたいです!」

 

 陽介はシロコが魔法を使いこなしているのに感心しノノミは緑の覆面を被り大はしゃぎする。

 

「いやぁ~、いいねぇ。人生一発でキメないと。ねぇ、セリカちゃん?」

「そんなわけあるかー!!!却下!却下ー!」

 

 シロコの言葉にゲルマニウムの件から回復したセリカが真っ先に反対する。

 そこからシロコ以外からは全員に反対されシロコの案は却下されたのだった。

 

「そんな……」

「気に病むなシロコさん。銀行強盗はともかくとして説明するために頑張ったんだろ。貌の精霊魔法で肉体そのものを変えるより自分の肉体を少し変えるには想像力が大事だからな。あそこまで肉体の変化とニット帽を覆面に変化させたのはすごい想像力だぞ」

「……先生…!」

「内容が銀行強盗じゃなければ、綺麗な光景なんだけどねぇ~」

 

 二人の姿にホシノは呆れた声を出す

 

「はぁ、みなさん……もうちょっとまともな提案をしていただかないと……」

「あのー!はい!次は私が!」

「……はい。二年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺はなしでご意見をお願いします……」

「はい!犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!アイドルです!スクールアイドル!」

「スクールアイドル?」

 

 ノノミの言葉に陽介は頭上に?マークが浮かぶぐらい首を掲げる。

 アイドルという単語事態は陽介は知っている。

 陽介が異世界に行く前の時代はアイドルブームが冬の時代ではあったが安〇奈美恵といったアイドルが人気で、陽介はタイトルだけだがアイドル戦士スーチーパイというゲームでアイドルがどういうものか陽介なりに知ってはいた。

 しかしそんな陽介だがスクールアイドルという単語は聞いたことがない。

 それもそのはず、スクールアイドルは2012年に流行りだし2015がピークと言われている、その当時、陽介は異世界にいたのだから知る由もないのだ。

 異世界から日本に帰ってもSE〇Aのゲームか動画投稿のことしか目を向けてなかった陽介にとってアイドルは異世界に行く前かSE〇Aと関係があった初音ミクぐらいしか知らないだ。

 

「そうです!アニメで見たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです!衣装はシロコちゃんや先生の魔法で実質タダですし、魔法をパフォーマンスとして披露して私たち全員がアイドルデビューすれば……」

「却下」

 

 ノノミは意気揚々と自分の計画を話すがホシノの鋭い声で止めさせられる。

 

「あら、これもダメなんですか?」

「なんで?ホシノ先輩なら特定のマニアに大ウケしそうなのに」

 

 ホシノの反対にセリカの反応は乗り気なようだ。

 

「うへ~、こんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」

「決めポーズも考えておいたのに……水着少女団のクリスティーナで~す♧」

「ダッサ!」

「えー…黒見ちゃんひどい……徹夜で考えたのに……」

 

 ホシノの辛辣な言葉の横でで、くるりと回って可愛い決めポーズを披露するノノミ。

 しかしセリカにダサいと断言されてノノミは落ち込むのだった。

 

「あのう……議論がなかなか進まないんですけど、そろそろ結論を……」

「それは先生に任せちゃおうー。先生、これまで出た意見で、やるならどれがいい?」

「えっ?……俺が決めていいの?」

「えっ!?この中から選ぶんですか!?もう少しまともな意見を出してからの方がいいのでは!?」

「大丈夫だよ〜。きっと先生が選んだものなら間違いないって」

「ちょ、ちょっと待ってください!なんでそう言い切れるんですか!?︎」

「まさか、アイドルになれなんて言わないわよね?」

「……」

 

 陽介の判断に任せることにしたホシノ達は陽介は見つめる。ノノミはアイドルをシロコは銀行強盗を選んで欲しいのか再度肉体を変化させ覆面を被り陽介の見つめる。

 そして陽介が考えた結果は

 

「このまま、悩んでもどれも良いものじゃないし、ご飯食べてもう一回考え直そう」

「「「ええぇ~…」」」

 

 

◇

 

 

「なんでもいいけど、なんでまたウチに来たの」

「ここのラーメンは絶品だからな。みんなで食べるならここがいいと思ったんだ」

「おっ、嬉しいこと言ってくれるね先生。褒めたところでチャーシューをオマケしてやるしかないよ」

 

 陽介の言葉に気分を良くした紫関の大将は意気揚々とラーメン作りに勤しんでいた。

 そうして時間が早いのか陽介たちしかいない空間で陽介が話す。

 

「ああ、そうだ。さっきの借金返済の件なんだけど俺なりに解決方法を考えてみたんだ」

 

 陽介の言葉にパっと陽介のほうを見るアヤネ。

 アヤネの顔は期待半分と不安半分といった様子だ。

 

「んへぇー。先生も考えてくれたんだねそれでどんなの?」

「さっきの話し合いでも出てたがアビドスの問題は大まかに言えば借金と砂嵐だ。借金が多い学校に態々来たいような生徒は地元愛が理由でもない限り来ないし、仮に借金を返せても頻繁に発生する砂嵐が来る学校に入学したいと思う生徒は極端だ」

「ん。そうだね」

 

 陽介の言葉にシロコが同意し、他の面々も頷く。

 

「そこで俺は砂嵐がどうにかできないか砂の精霊や風の精霊に聞いてみたんだ」

「そっかぁ。先生ならそういうことできるんだね」

「砂嵐が発生しなくなれば砂を除去してできる広大な土地に他の企業が来るでしょうし入学も増えること間違いなしですね☆」

 

 陽介の言葉にホシノとノノミを始めとし目を輝かせる。

 特にセリカはさっきまでの先輩たちの意見がまともじゃなかったのか砂漠でオアシスを見つけたような表情だ。

 

「期待しているところ悪いけど精霊曰く砂嵐はどうにかできないよ」

「そ、そうですか…」

 

 陽介の言葉にセリカはガックリと項垂れる。さっきまでの期待が大きかったのかその落ち込みようはすごい。

 

「精霊曰くアビドスの砂嵐の問題はくしゃみみたいなものなんだ」

「くしゃみ?」

「何故かは知らないが時たまアビドスの砂が増えてな。それで精霊がくしゃみをして砂嵐が発生するんだ」

「くしゃみ、くしゃみのせいでおじさん達は苦労しているのか…」

 

 陽介の言葉にホシノはやるせないような表情をする。

 

「そこでだアビドスの地域に対砂の防護結界を展開しようと思うんだ」

「防護結界?」

「異世界には対魔物のための防護結界があるんだ。記憶断片映写(イキュラス エル ラン)」

 

 陽介がそう言うと、記憶再生魔法で防護結界がどういうものなのかを見せる。

 そこにはタイタン、一つ目のサイクロプス、雲がドラゴンの姿になっているクラウドドラゴンと一目見ただけでとんでもない存在であることは分かる絵面であった。

 そして近くには一つの都市がある。そんな危険な場所に都市など自殺でしかないが都市の周りに覆っているものが陽介が言っていた防護結界なのであろう。

 これを見た限りだとこの防護結界のおかげでこの都市は安全なのだとホシノ達は感じ取れる。

 

「すごい。これが先生の言ってた防護結界これなら砂嵐からアビドスを守れる」

「ただ結界の張り直しは大変だから今度、アビドス高校が保有している自治区がどこまでか教えてくれ」

「はい!」

 

 陽介の言葉にアヤネは笑顔で頷く。

 結界を見たアヤネの反応から提案して良かったと陽介は感じる。

 そうして話を進めると今度は借金返済についての話になるが陽介は自信なさげに収納魔法から一つの指輪を取り出す。

 

「指輪?」

「ん、すごくきれい」

「よく見たら装飾の所の色が変化していますね」

 

 陽介の見せた指輪に三者三様な反応をするホシノとセリカとノノミ。

 しかしそんな三人の反応に対して陽介の反応はあまりよろしくない。

 

「これは異世界にあるダンジョンから手に入れた戦利品なんだ。この指輪の宝石は人魚の涙を魔法で結晶化させたものでリングには虹色珊瑚という時間によって色が変化する希少な素材が使われていて、異世界じゃこれ一つで城が建つほどなんだ」

「お城!?すごいそれならアビドスの借金が一気に減らせます☆」

「ダンジョン、そんなのがあるんだ。ダンジョンならリスクとリターンを考えると銀行強盗よりも良いのかな?」

 

 陽介の言葉にさらに目が希望に満ちていく面々をよそにホシノだけは表情は硬く、陽介に言う。

 

「折角だけど、ごめんね先生、おじさん達は流石にこれは受け取れないかな。これは先生が頑張って手に入れたものなんでしょ。…そんな代物をおじさん達が易々と貰っていいものとは思えないんだ、だから、おじさん達にはこれを売り払って借金の返済に充てるなんてことできないかな」

「そっか、確かにそうですね」

「ん。私も同意」

「アビドスの砂嵐問題だけでも解決してくれるんですからホシノ先輩の言うようにこれ以上は先生に甘えるわけにはいきませんしね」

「それに」

「「「「それに」」」」

 

「こんなすごいもの恐れ多くてもらえないよ。唯でさえおじさんは先生に魔法の指輪を貰ってるんだから」

 

「わあ、見たことないぐらい先輩が震えています☆」

「まあ日本(向こう)だと存在しない素材でできてるから50円だったからこっちでも同じ価値の可能性があるから、そんなにおびえることはないよ小鳥遊さん」

「え?そうなの」

「今はミレニアムサイエンススクールに鑑定とか解析の依頼をしているからそれ次第だな。俺が苦労して手に入れたものだから結構の価値がついて欲しいけど」

 

 陽介たちがそんな風に会話しているとセリカがラーメンを運んできた。

 陽介たちは紫関のラーメンに舌鼓を打ち楽しんでいると店の扉ががらりと開く。

 開いた先には紫髪に帽子をかぶり銃を担いだ少女がオドオドとした態度で紫関ラーメンに入店してきた。

 

 「あ……あのう……」

 「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 「……こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 「一番安いのは……580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 少女はそう言うと扉を閉める。

 そしてすぐにガランと開くと少女を含めた4名の少女が紫関ラーメンに入ってきた

 

「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」

「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」

「そ、そうでしたか、さすが社長、何でもご存知ですね……」

「四名様ですか?お席にご案内しますね」

「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫だよ」

「一杯だけ……?でも、どうせならごゆっくりお席にどうぞ。今は暇な時間なので、空いてる席も多いですし」

「おー、親切な店員さんだね! ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。ついでにお箸を4善でよろしく。優しいバイトちゃん」

「え?1杯なのに4膳?…1杯を4人で食べるつもり?」

 

 セリカの言葉に紫髪の少女が震えだす。

「ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金が無くてすみません!!」

「あ、い、いや……!その、別にそう謝らなくても……」

「いいえ!お金が無いのは首がないのと同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません……!」

 

 どうやら紫髪の少女は大分ネガティブな性格なようだ。

 

「はあ……ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑……」

 

 紫髪の少女を白黒の髪の少女が宥める。

 

「そんな! お金がないのは罪じゃないよ! 胸を張って!」

「へ? ……はい!?」

 

 セリカが紫髪の少女に一切裏表のない、真摯な声で励ますように言う。

 

「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし! それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ? そういうのが大事なんだよ! もう少し待っててね。すぐ持ってくるから」

 

 激励するセリカの声に四人は呆然としたまま、立ち去るセリカを見つめていた。

 少女たちはセリカに陽介達の斜め前の席に座って会話していた。

 

「何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」

「まあ、私たちもいつもはそんなに貧乏ってわけじゃないんだけどね。強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」

「アルちゃんじゃなくて社長でしょ? ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ」

「ん? だってもう仕事終わった後じゃん? ところで、社長のクセに社員にラーメン一杯奢れないなんて」

「…………」

「今日の襲撃任務に投入する人員を雇うために、ほぼ全財産使っちゃったし……」

「ふふふ。でもこうして実際ラーメンは口にできるわけでしょ? それぐらい想定内、よ……」

 

 少女たちの『アルちゃん』と呼ばれた少女はどや顔をする。

 

「ぶっちゃけ、忘れたんでしょ?ねぇ、アルちゃん。夕飯代取っておくの、忘れたんでしょ?」

「…ふふふ」

 

 銀髪の少女の言葉にアルはただ微笑み目を逸らすばかりだった。

 

「…はぁ。まぁ、火力は私たちが担当して、耐久力があって前衛が出来る傭兵バイトに資金を注ぎ込むのは正しい。そこは同意する。でもそんなにアビドスって危険なの?」

 

 白黒髪の少女の言葉にアルはギクリと反応し黙り込む。

 

「多分アルちゃんもわかってないと思うよ?だからビビってたくさん雇ったんだろうしー♪」

「だ、誰がビビってるって!?全部私の想定内!失敗は許されない、あらゆるリソースを総動員して仕事に臨む。それが便利屋68のモットーよ!」

「初耳だねそんなモットー…」

「今思いついたに決まってるよ」

「うるさいわね!じゃあ今回の依頼を成功させて報酬が入ったら、すき焼きにするわ!だから気合入れなさいみんな!」

 

 そうして彼女たちがわいわいと雑談しているとセリカがラーメンを持ってくる。

 

「お待たせしました。紫関ラーメンです!!」

 

 アル達の机に上にラーメンがドンッと置かれる。

 それは並盛のラーメンというのは遥かに量が多すぎた。多くの麺に大量のトッピング。

 ざっとの10人前の量の驚くアル達。

 紫髪の少女がオーダーミスを確認するがセリカたちは問題ないと告げる。

 店から問題なしと確認がとれた少女達はさっそくとばかりにラーメンを小皿に分け食べる。

 そうしてあまりの美味しさに感想が出るアル達にノノミが近づき話しかける。

 そこからは陽介達も入り彼女達との楽しい雑談をし彼女達は店を後にするのだった。

 

「なななな、なっ、何ですって~」

 

 数分後、ノノミ達が自分たちのターゲットであることを伝えられアルが叫ぶのだがそれは陽介達には関係のない話であった。

 

 

◇

 

 

-夕方頃-

 

 校舎より南15km地点付近で大規模な兵力をアヤネが確認したことでホシノ達はすぐさま臨戦態勢に入る。

 陽介はさっさと終わらせるべく単騎で大規模な兵力を鎮めるべく窓から飛び降りようとするがホシノに手を止められる。

「なんだ。小鳥遊さん」

「これまで、先生に頼りっぱなしだったから今度はおじさん達だけにさせてよ先生がいなくてもおじさん達はなんとかできるから」

「そうか。わかった。駄目な時は呼んでくれ、すぐに駆け付けるから」

 ホシノの言葉に同意した陽介は椅子に座りホシノ達を見守ることにするのだった。

 

 

◇

 

 

 アビドスの市街地にてホシノ達とアル達が相対する。

 

「あれはラーメン屋さんの…」

「ぐぬぬ…」

 

 ノノミの言葉にアルはバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

「あははは、その件はホントありがと。でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」

「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 

 銀髪の少女と白黒の少女はセリカの激高に対してそう返す。

 

「なるほど。その仕事ってのが便利屋だったんだ。で、誰の差し金?」

 

 シロコはそう言いアサルトライフルを構える。

 

「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ。総員!攻撃」

 

 アルの突撃を契機にアビドスでの戦いの火蓋が切られた。

 

 

◇

 

 

 戦況は端的に言えばホシノ達の圧倒的であった。

 最初、ホシノ達と傭兵たちは塀に隠れ打ち合う。

 そんな状況の中、真っ先に動いたのはシロコだ。

 

「ん、変化」

 

 シロコがそう言うと足が狼のような足に変化する。

 狼の瞬発力を生かしたシロコは傭兵の銃弾を躱し傭兵たちの懐へと入り込みアサルトライフルを打ち込む。

 

「うわぁ!?なんだこいつ!?」

「怯むな!数はこっちが…ふぎゃぁ!」

 

 すぐさま体制を整えようとする傭兵たちだったがシロコの蹴りとアサルトライフルによる発砲で混乱は収まらない。

 突然の現象とシロコの強襲に傭兵たちの銃弾の雨が止まったホシノは風の魔法でノノミとセリカを連れ急加速で接近する。

 

「死んでください!」

 

 しかしホシノ達が接近することを読んでいたアルにより紫髪の少女ハルカにより爆弾が起動される。

 爆弾の衝撃にホシノは担いでいたノノミとセリカが吹き飛ばされる。

 

「良くやったわ。珍妙なことが起きたけど今のうちに叩き込むわよ!」

 

 アルの号令に他の傭兵たちがホシノ達を取り囲み、銀髪の少女ムツキと白黒髪の少女カヨコがノノミに襲い掛かる。

 

「諦めて、学校渡しちゃいなよ」

「そんな事させません」

 

 ムツキにノノミは銃弾の嵐をお見舞いするが近くにあった塀に隠れ銃弾から身を守る。

 

「今だよカヨコちゃん」

「ナイス、ムツキ」

 

 ノノミはムツキに集中していたせいか近づいてきたカヨコに気づかず至近距離のハンドガンがノノミに発砲される。

 ノノミは自身の銃を盾代わりにし剣のように振り回すが身軽なカヨコにはやすやすと避けられさらに発砲される。

 ノノミはすぐさま後ろへと避けたところでカヨコに対して銃弾の雨が襲い掛かる。

 カヨコも避けるが完全によけきれなかったのか一部被弾する。

 そのまま自身を撃った方向に目を向けると貌の魔法でツインテールを手に変化させ傭兵から奪った銃を2丁。変化させたツインテールに装備したセリカが対峙する。

 

「武器を捨てなさい!」

 

 セリカは両手に持つアサルトライフルをカヨコにツインテールで持つ銃でムツキに銃口を向け警告をする。

 

「うわ!なにあれ?さっきの子は足が犬になってるしこの子は髪が手になるなんてアビドスって変なところ」

「うっさい!いいから銃を…きゃあっ!?」

「セリカちゃん!!」

 

 カヨコの言葉にセリカは激高するがその隙をついたムツキがカバンを投げつけ爆発させる。

 突然の爆発による煙幕に視界が塞がった内にムツキとカヨコは後方にいるであろうアルの元へと走り出す。

 一方ホシノは爆発により盾をショットガンを手放し傭兵たちに囲まれていたが天性の才能と陽介に教えられた魔法で次々と傭兵たちを撃退する。

 途中自身の盾と銃を見つけたホシノは風の魔法で自身の手元へと運びだし、魔法により強化されたシールドバッシュで傭兵を吹き飛ばす。

 

バキュン!!

 

(頭を狙ったの盾で防ぐとかどんな反射神経よ!!)

 

 アルは遠距離から傭兵を薙ぎ払っているホシノに向けて狙撃をするがあっさりとホシノに防がれる。

 アルの狙撃に鬱陶しく思ったホシノは風の魔法で高く飛ぶ。

 高く飛んだ先で背中に翼を生やし、目をハヤブサの目に変化させる。

 人間の8倍の視力でアルを見つけたホシノは足をハヤブサの爪に変化させ風の魔法の強化込みでアルへと急接近する。

 それはまるでハヤブサの狩りのように。

 

「アル様!危ない!!」

 

 ハルカが敬愛するアルを突き飛ばしホシノの攻撃を喰らう。

 ホシノの攻撃を受けたハルカは自身の掛かった衝撃の強さのあまり気絶する。

 すぐさまアルはホシノに向けて発砲するがホシノの盾により防がれそのままホシノはアルに向かってシールドバッシュで突撃する。

 しかしアルはそれをジャンプすることで回避。自身のいた場所とホシノの身長のおかげで間一髪といったところだろう。

 回避したアルはすぐさまハルカを回収しカヨコ達と合流するべく走り出す。

 

「カヨコ、ムツキ!そっちはどう!?」

「追い詰めたと思ったけど全然だめ。あいつらの妙な力のせいで失敗した」

「いやぁ、まさかこんなことになるなんてね。ここは逃げた方がいいんじゃないアルちゃん」

「まだよ。まだ私にはあれがあるわ!」

 

 撤退を進言するカヨコに対してアルはまだ秘策があるといった反応を返す。

 

「えっ、アルちゃんもしかしてあれを使うの?」

「でも、社長。あれは詳細がわかってないんだよ」

「妙な力には妙な力よ。ここはあれに一発逆転を賭けるわ。ムツキ、ハルカを持ってて」

 

 アルはそう言うとハルカをムツキに任し自身はいつでもあれが使えるようにと銃を左手で持ち右手を構える。

 そうしている内にホシノたちがアル達の元へと集結する。

 戦況はアル達をホシノ達が囲んでいる状態。さっきまでとは逆の状態だった。

 

『戦況は分かっているでしょう。今から降参し依頼元を教えていただければ悪いようにしません』

 

 ホログラムのセリカがアル達へと警告を発しさらにアビドスから飛んできた複数のドローンがアル達を囲い込む。

 もはや勝敗は火を見るよりも明らかだった。

 しかし。

 

 

ヒュキッン

 

 アル達を囲んでいたドローンたちは突如アルが出現させた広大に広がる闇により突然停止し墜ちる。

 そこには左手に愛用の銃【ワインレッド・アドマイアー】を右手に闇が剣のような形状をした奇妙なものを装備していた。

 

 

◇

 

 

 アルがこの力を使えるようになったのは今から数日ほど前に遡る。

 

「ねぇねぇ。これすっごくかっこいいと思わない」

 

 アルが見せるのは陽介がキヴォトスに来て初日に起きたサンクトゥムタワー奪還の様子だった。

 そこでは陽介の魔法により身体が強化されたユウカ達は普段とは違う動きをしていた。

 銃弾を避けては銃を放ち時には蹴りを喰らわせたりと映画に出てくようなシーンが連想される。

 そういった光景はアルからすれば、

 

「すっごく、アウトローな動きだと思わない!?」

 

 大好物な光景だった。

 そこからアルはいかにこの少女達の動きがかっこいいのか語り始めた。

 そんなアルの姿にカヨコたちは辟易としていたがアルの生き生きとした興奮に水を差すわけいかないと話を聞くのだった。

 そうして話は陽介についてになる。

 

「この人、ねぇこの人見て、この人こんなに銃弾が飛び散っているのに銃を持たずに剣で戦っているのよ。銃弾を避けたり時には弾丸切ったりとかっこいいと思わない。私もできるようになりたいから今度剣を買ってくるわ!!」

「社長、流石にそれはないよ。普通銃弾の嵐の中で剣一本で戦うなんて、しかもこの人見た感じだとヘイローがないんだよ。こんなこと現実じゃありえないよ」

「くふふー、カヨコっちんもそう思うよね。だけどシャーレの先生は噂じゃ魔法が使えるようなんだしあながち嘘じゃないかもよ?」

「ううぅ、この剣、建物とか切ってますよね。こんなの向けられたら…」

「ちょっと話を聞いてるの!?」

「ごめん社長。それでなんの話?」

「だから剣よ剣。どんなのにしようって話よ」

「剣って。そうだねここは剣じゃなくてトンファーとかがいいんじゃない」

「剣よりも盾とかの方がいいんじゃない」

「わ、私はアル様にはなんでも似合うと思います」

 

 アルの言葉にムツキ達は剣以外の手段を提示する。

 もっとも彼女たちにはお金がないため、さっき出した武器案を達成することはできないため半分おふざけみたいなものである。

 

「もー。何よみんな、私は剣が欲しいの。あ、でもこの動画に映っている光輝くような剣じゃなくて漆黒な闇のような…」ブオン

 

 アルが右手で剣を振るような仕草をすると突然アルの手に剣の形をした闇が出現した。

 

「えっ?」

「「「えっ?」」」

 

「何よこれ!?」

 

 これがアルが奇妙な力基闇の剣が使えるようになった理由である。

 

 

◇

 

 

 突然の現象にホシノ達は警戒を強くする。

 一方でアビドス高校では突然通信が切れたことで急遽陽介がホシノ達の元へと向かっていた。

 そうしてホシノ達とアル達便利屋68が睨みあっている中、シロコが動く。

 

「シロコ先輩…」

「大丈夫だよセリカ。私に任せて」

 

 シロコの行動にセリカが不安げに話しかけるがシロコは大丈夫と言わんばかりに笑みを浮かべる。

 シロコは手に持っていたアサルトライフルを投げ捨てる。

 シロコの行動に降伏か?と訝しむアル達。

 そうしてアル達の前へと対峙したシロコは手を床に着きお尻を上に向ける。所謂ドックポーズである。

 

「ん。変身」

 

 シロコがそう言うとシロコは見る見る内に大きくなり毛は毛むくじゃらに顔は犬に代わる。

 そうして数秒が経ったのかシロコの姿は大型トラックもかくやな巨大な狼に変身していた。

 シロコがアル達に向かって突進する。

 アルは右手に持つ闇の剣をさっきのドローンの時よりもさらに肥大化させ迎え撃つ。

 シロコとアル。二つの力がぶつかる、

 

シュキン、シュン

 

「へぇっ?」

 

ゴッ!ドンッ!!

 

「「「ふぎゃあ!!」」」

 

 ぶつかることはなくそのままアル達はシロコの突進に吹き飛ばされるのだった。

 それもそのはず、アルの闇の剣は見えないものや繋がりを斬るもので物理的に斬れるものではないからだ。

 

「アオーン!!」

 

 シロコは勝ち誇ったかのように咆哮を上げる。

 そんなシロコにセリカが近づく。

 

「やったわね。シロコ先輩」

 

 シロコに近づいたセリカはシロコの足元で手に変化させたツインテールと一緒に万歳をあげる。

 そんなセリカの真似なのかシロコもまた片手をあげる。

 

「危ない!セリカちゃん!!」

 

 しかし、片手を上げたシロコの様子がどこかおかしいと感じるホシノだったが予感が的中したのかシロコの上げた手が思いっきりセリカに向かって下げられた。

 すぐさまホシノはセリカを吹き飛ばしシロコの振り下ろしを盾で受け止める。

 しかしあまりの威力にホシノ足が地面に埋まってしまう。

 

「シロコちゃん。何を!?」

 

 シロコに向かってノノミが声を上げる。

 それが今のシロコにとって獲物が自ら出てくるような行動だと知らず。

 

「うがぁああ!!!」

 

 ノノミに目が向いたシロコは今度はノノミに向かって突進する。

 アル達を吹き飛ばした攻撃がノノミに向かって来る。

 

「縛動拘鎖(レグスウルド スタッガ)」

 

 しかしそんなシロコの突進は陽介の発動した拘束魔法で口、足、胴を拘束される。

 シロコは抗おうと体を動かすがびくともしない。

 そんなシロコに陽介が近づく。

 

「…神意解放…奪え王神剣!」

 

 陽介の収納魔法から王神剣を取り出し神意解放でシロコの魔法を奪いのシロコを元の姿に戻すのだった。

 こうしてアビドスを襲った便利屋68との騒動は幕を閉じたのだった。

 

 

◇

 

 

「ん…」

 

 アビドス高校の保健室でシロコが目覚める。

 確か自分は傭兵たちとの戦いの最中ですごく大きい狼に変身したはずだと考えながら周りを見渡す。

 そこにはシロコを心配そうに見ている陽介を始めとしたアビドスの面々であった。

 

「先、生…わぁっ」

 

 シロコは今何が起こっているかを聞くべく陽介に話しかけようとするがシロコが話しかけるより先にセリカとノノミがシロコに抱き着く。

 

「良かった、元のシロコ先輩だ…」

「シロコちゃん…」

 

 二人はシロコが無事であったこと陽介から聞いた貌の精霊魔法による精神の変化により自己同一性が保てなくなる話を聞いており、もしかしたら二度とシロコと学園生活をおくれないんじゃないかと心配していたのだ。

 

「ん、ごめんねみんな」

 

 シロコは陽介に自身に何が起こったのかを説明されホシノ達に謝罪する。

 

「いやー。それにしてもシロコちゃんに後遺症がなくてよかったよ」

「ほんとにそうですね」

 

 ホシノとアヤネも安心する

 

「今後は気をつけるんだぞシロコ。対策会議みたいな大きさの犬なら問題ないけどさっきみたいにものすごい巨大な犬は精神をしっかり保たなきゃ大変なことになるからな」

「ん、ありがとう先生」

 

 陽介の言葉にシロコは感謝をのべ、ベッドから降りる。

 しかしベッドから降りたシロコは立つのではなく四足歩行で歩き出した。

 

「がっつり後遺症あるじゃないの!?」




・シロコ獣体
白い犬になったシロコ。
大きさは小型~大型までよりどりみどりである。
・シロコ大型体
シロコ*テラーの髪色がシロコと同じ色なだけで能力以外は大体一緒の体系。
・シロコ巨獣体
10Mぐらいおっきいい狼。
ただし既存動物ではないため魔炎竜になったおじさんみたいに精神がすぐに引っ張られる。
あの時セリカとノノミを襲ったのは「わあい、遊ぼう。遊ぼう」という犬の本能みたいなじゃれつきである

・セリカ獣体
シロコとできることは変わらず違うのは姿が猫なだけ
セリカが変更させたツインテールは生身の手ではくケモ的な手です

・ホシノ飛翔体
ホシノが貌の魔法でハヤブサに変身した姿。

ホシノがハルカに喰らわせた技は仮面ライダーオーズのプロミネンスドロップみたいな感じです。
上から引き撃ちしたほうが良いは禁句です

・陸八魔アルの闇の剣
アルが闇の精霊に気に入られたことで使えるようになった魔法。
気に入られた理由は後々に出ますが大した理由ではありません。

・王神剣
簒奪と付与の能力を持つおじさんが日本に帰還するための最重要アイテム
考えられる限りではプレナパテストの救出、ホシノテラーの救出RTAと重要なところで使えるのがありすぎてマガツをキヴォトスに転生或いは転移させようか考えた。
作者の脳内ではマガツはあの終わり方が美しいからこそ出すのは蛇足だvsグランバハマルに来た時は子供なんだ一生懸命に頑張った結果があの末路なんだから青い春を経験させようぜvs生徒に転生させて先生LOVEを煽ろうぜvsベアトリーチェの体を乗っ取っておじさん達と戦って最後に生徒の体を乗っ取っておじさんとキスさせて成仏させようぜ

・アビドスの砂問題
アビドスの砂漠化問題はこの小説では気づいたら砂が増えて精霊のくしゃみという設定にします
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