アビドス校門前。
そこに1台の現金輸送車が止まっていた。
今日は利息の返済日でドライバーが、返済額の確認をしている。
「…お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。すべて現金でお支払いいただきました、以上となります。カイザーローンとお取引いただき毎度ありがとうございます。来月もよろしくおねがいいたします」
話すべきことを話したドライバーは、車に乗りアビドスを去っていった。
「はぁ…今月もなんとか乗りきったねー」
「なんとかなりましたな」
「完済まであとどれくらい?」
「309年返済だよセリカちゃん…」
「アヤネちゃんよくパッと数字出るね…」
「所で、カイザーローンはなんで現金だけなんでしょう…わざわざ現金輸送車まで手配して」
「…そうだ、先生魔法であの車の行く先…」
「シロコ先輩、あの車襲っちゃダメだよ」
「そうだぞシロコさん。そういうことには魔法は使ってはいけない。後計画するのもダメだからな。したら精霊経由で教えてくれるようにしたから、もし実行したら魔法を使えないようにお願いするからな」
「だめ?」
「「だめ」」
「………わかった…」
シロコは目をうるうるとさせるが二人に通じず黙り込むのだった。
◇
「全員揃ったようですし二つの事案について報告を始めさせてもらいます。最初に昨晩の襲撃の件です」
カイザーローンに利息を返済した陽介達は教室に戻り会議を始めた。
会議の内容は主に二つ。
便利屋68とヘルメット団が保有していた兵器についてだ。
「改めて、私たちを襲った組織『便利屋68』という部活についてです。彼女たちはトリニティに学ぶ巨大学校のゲヘナ学園では危険かつ素行の悪い生徒たちとして知られています。」
「…ゲヘナ学園?」
「先生…まさかゲヘナを知らないの?」
「いや、知ってるよ…」
「先生、ほんとに知ってるの?」
「うん、知ってる。大丈夫だよ」
シロコの言葉に陽介はシロコ達に失望されたくないのか声を震えさせて知ってると嘘をつく。
陽介の脳内にはゲヘナのことを知らないことを知った時のシロコ達の反応の光景が浮かぶ。
『っはぁ~~~…!』
『ん、先生なのに知らないの…!?』
『ああそっか…先生17年間異世界に行ってましたからね』
『先生、就職どころかバイト経験もないから…』
『先生には社会人経がね~~…?』
『『『『『アッチャァ~…!』』』』』
(記憶の精霊よ俺の中にあるゲヘナの情報を出してくれ)
陽介は失望した目を向けてくるシロコ達が思い浮かびすぐに記憶再生の魔法でゲヘナの情報について出す。
「ゲヘナは自由と校風を校風している学校でな治安は良くないな。逆にトリニティは規律とかミッション系のお嬢様学校だろ」
陽介は記憶の精霊のおまけでトリニティのことも出たのでついでに説明する。
「ん、ゲヘナについては正解。でもトリニティは噂だけどいじめがある」
「この二つの学園は昔から対立しているんです。ゲヘナはトリニティのお嬢様のところが気に入らない。トリニティは野蛮な連中は見るのも嫌!ぐらい嫌ってるらしいんですよね」
陽介の説明にシロコはトリニティの補足を、ノノミが両校の対立について話す。
「話を戻しまして、彼女たちが運営している便利屋とは頼まれたことは何でもこなすサービス業者で……便利屋のリーダーはアルさん。自らを『社長』と名乗ってましたね。彼女の他に三人いましたが、それぞれにも室長、課長、平社員の役職をあてているそうです」
「いやぁーそれにしても社長に室長とか、本格的だねー」
「いえ、あくまでも『自称』なので……それでアビドスに潜伏していたようで」
「ゲヘナ学園では、起業が許可されているの?」
「いえ、調べた限りではそういった校則は確認できませんでした。おそらく非公認なのでしょう。なので次襲ってきたら今度こそ捕まえましょう。社長のアルが扱った魔法は先生曰く物理的な殺傷能力はないようですし、その時が来たら…」
「アヤネちゃんからすごい恨みがひしひしと感じる。なにかあったの?」
「校則違反ってことですね。悪い子には見えませんでしたが……」
ノノミの言葉に陽介もまた同意する。
あれほど柴関ラーメンを美味しいと言ってくれてアビドスの復興を応援してくれた少女を陽介は悪人だとは思いたくないのだろう。
「いえ、今はそんなことよりも先日アビドス高校を襲撃しセリカちゃん襲ったカタカタヘルメット団の兵器についてです」
アヤネは机の上にカタカタヘルメット団から押収した部品を机の上に並べる。
「兵器って戦車とか俺の雷魔法を防ぐための防具服とか言ってたあれのことか?」
「はい。ですが連中が持っていた帯電防止の服については調べてみましたが製造販売元の特定はできませんでした。おそらくどこかで研究開発されたのを連中が盗んだのでしょう。次にカタカタヘルメット団が使っていた兵器についてです。先生が収納魔法で押収したものやセリカちゃんを襲撃してきた時に使用された部品は既に取引がされていない型番である違法部品を使っていました。生産が終わっている装備を入手する方法は、表立ったものは存在しません。…つまり、ブラックマーケットから仕入れたものと認定しました」
「そうなんだ。じゃあ、中々手に入らないSE〇Aのプレミアなゲームソフトとかハードとかもあるのかな?」
「SE〇Aがなにかはわかりませんが多分ブラックマーケットにはゲームは置いてないと思いますよ」
「そのブラックマーケットでも、便利屋68は騒ぎを起こしているそうです」
「つまりその共通点を探ってみよう!という話ですね?アヤネちゃん」
「はい。現状、他に有効な選択肢がないので、ひとまずの目標をそれに設定するのがいいと思ったんですが…どうでしょう、ホシノ先輩」
「いいんじゃなーい?んじゃ、早速行ってみようかー」
「買い物袋とか用意した方がいいですかね」
「いやショッピングに行くわけじゃないから…」
◇
陽介たちは空を飛びブラックマーケットへと向かっていた。
魔法を温存するために加速は使わず、ノノミはホシノの上にセリカはホシノの腕の中で、アヤネは陽介の背中にシロコは陽介の腕の中に捕まり飛行するのだった。
「ん。空を飛ぶの気持ちいい」
「そうだねシロコちゃん。おじさんも空を飛びながら日光浴するとすごく気持ちいいんだよ」
「でもまー冬はさみいから電車か車でいこうな!」
「ホシノ先輩、重くないですか?」
「大丈夫だよノノミちゃん。風の精霊さんの力で羽のように軽いから」
「改めて思うと精霊魔法の規格外さに驚くばかりですね。ところで先生、これってブラックマーケットに近づいたら騒ぎになるんじゃないですか?」
「その辺は大丈夫だよ奥空さん。念のため周囲の光を屈折させてはたから見ても認識できないようにしているから」
「認識阻害…ねぇ、先生…」
「シロコ先輩。だめだからね」
「…ん………」
シロコの言葉をセリカが差し込む。
そうして風の心地よさを感じつつ雑談していると陽介たちはブラックマーケットに到着した。
◇
-ブラックマーケット。
そこはキヴォトスの闇が集う場所である。
学園問わずに生徒が集まるその場所では違法品の取引。後ろ暗いお金の流れや実験が横行している危険な場所である。
規模は市場というより町といえるほどまで大きく、日々日々大きくなっているのである。
そこは連邦生徒会長の目が届かない楽園。
陽介たちはそんな世界に踏み込んだ。
「こ、これは!」
陽介達がブラックマーケットへと入り込んだ時、陽介はあるものを見つけ思わず足を止めてしまう。
それは特徴的な形をした銃だった。
腕がすっぽりと入るような持ち手、長い銃身は一見すれば銃というよりおもちゃのようであった。
「お、お客さん。お目が高いね。こいつはあのミレニアムで作られた代物でね。重さ約8kg、装弾数は一発だが銃身に弾丸を巻き付けることができてマシンガンのように打ち出せるんだ。今なら8万だけど、どうだい」
陽介が店の前で立ち止まったのを店主らしき人物が商品の説明をする。
「いや、ちょっと。今は…」
陽介はたじろぎながらも目的は買い物ではないから断ろうとするが店主の声がさらに上がる。
「お客さん、8万だよ。8万。普通マシンガンを買うならもっとするんだよ。分かってるの?」
「いや、あの…」
「ああ、もうわかったよ。実はなこいつは買うやつがいままでいなくてな、あんたみたいに立ち止まるやつもいないんだ。しかもでかいもんだから他の商品の置くのに邪魔なんだ。在庫処理だと思って5万で買ってくれないか。銃弾もおまけしてやるからよぉ。頼むようちを助けると思ってさ」
「…………」
結局陽介は店主の押しもあり買ってしまうのだった。
「うへぇー。それで買っちゃたんだね。先生」
「あの~。先生がよろしければ私が…」
「いや、実は前々からこういうのが欲しかったんだ。だから大丈夫だよノノミさん」
「ん。先生、震えながら言っても説得力ないよ」
こうして陽介は銃を手に入れた。
後日、たかふみとユウカに激しい説教を受けることになるのだがそれは別の話である。
◇
「それにしても☆すごい賑わってますね」
「ねぇねぇ、ホシノ先輩。ホシノ先輩も、ここに来たことあるの?」
「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー」
「ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!今度行ってみたいなー。うへ、魚……お刺身……」
「よくわかんないけど、アクアリウムってそういうのじゃないような…」
「皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される危険な場所です。何が起こるか分からないんですよ。何かあったら私が……きゃあ!?」
アビドスの郊外にあまり外出してなかったからかホシノ達が楽しく雑談する中でアヤネがホシノ達に警戒を促す。
すると突然銃声がなり響く。
「ん。銃声」
陽介達が銃声の方に振り向くと奥から特徴的なリュックサックを背負った少女が3人のスケバンに追いかけられていた。
「う、うわぁああ!まずっー!!つ、ついてこないでください!!!」
「そうはいくか!」
後ろを見ながら走っていた少女はシロコとぶつかる。
「わぁっ!ご、ごめんなさい」
「ん。大丈夫」
「あの制服は…トリニティの…」
「君、俺の後ろに隠れるんだ」
「あ、ありがとうございます」
陽介の促しに少女は頷き陽介の後ろに隠れる。
「なんだぁ?おまえらは!どけよ!あたしらはそのトリニティの生徒に用があんだよ!」
「わ、私の方には用は無いんですけど…」
「だろうなぁ!あたしらはおまえ拉致って、トリニティから身代金たーんまり貰ってやろうと思ってるだけだしな?良い財テクだろ?」
スケバン達はさらに陽介の方に目を向ける。
「どうだ。お前らも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は…」
「
「「ふぎゃぁ!!!」
スケバン達は会話している最中に陽介の雷魔法を喰らい気絶するのだった。
「よし、これで終わり」
「ん。瞬殺だった」
「いやー。容赦ないね先生。これにはおじさんも脱帽だよ」
「あ、先生奥から来てます」
そうノノミが指を差す方向に目を向けると今度は十数人ぐらいのスケバンが陽介達の元に向かってくる。
「ああ!カナコ、ナナコ!!くそお前らが…」
一人のスケバンが陽介達の方に銃口を向けると陽介達ももたスケバン達に銃を向ける。
互いに一触即発の空気の中、陽介は辺りを見渡す。
「あ、あれが良いな」
陽介は何かを見つけたのかセリカに狙撃をお願いする。
「黒見さん。あそこの配管に向かって撃ってくれないか」
「わかったわ。先生」
セリカは陽介の言われたとおりに配管を撃つ。
弾丸は見事に配管を破壊し、そこから大量の水が流れスケバン達の足元に流れる。
「はっ!どこを狙ってるんだよへたくそ。「
セリカが配管を撃ったことに狙いを外したと勘違いしたスケバンの一人が嘲笑するが突然水が蛇の形になりスケバン達に巻き付かれることに驚愕する。
「な、何だ!これは!!?」
「う、動けない」
「水なんだよなこれ、なんで…」
「ま、まさか、これは噂の…「
水蛇に拘束されたスケバン達が驚く中、陽介はスケバン達の持てへと歩き一人一人の頭に手を置いては記憶を消していく。
「ミチコー!てめっ それがシャーレの「
「この私がぁ!!「
スケバン達は倒れていく仲間を気にかけ叫ぶが拘束された彼女たちはなにもできずに次々と記憶を消されては倒れていく。
「ばっ」「ぽっ」「ハニャっ」「けにょっ」「お”っ」………………………
「ひっ、やだ。やめてくれ、や、やぁっ! やぁなの!!…」
「大丈夫。怖くない怖くないから。全部消えるからね?…恐怖も気持ち…全部…」
「あ、ああ、あぁ。や…やぁ…「
最後の一人にいたっては恐怖のあまりに幼児退行をするが陽介はそんな少女を安心させるようで微笑むが逆効果で涙が零れるが陽介にそんなのは関係ないとばかりに記憶を消されるのだった。
スケバン全員の記憶を消し終えた陽介はホシノたちの元へと歩き出す。
「ん。先生容赦ない」
「あれがシャーレの先生」
「あれ?君、先生のこと知ってるの」
少女の言葉に思わずホシノが反応する。
「は、はい。正義実現委員会の副委員長が先生のお世話になってまして、先生のおかげで魔法が使えるようになり一部の人は副委員長の影響で魔法が使えるようになったりしまして。ティーパーティーは先生に魔法の講義を依頼したくて何度もシャーレの依頼していたのですがまさかブラックマーケットで会えるなんて」
「いいですね☆魔法ー。私も使いたいな」
「私たちの検証で時間がかかってしまってせいでノノミ先輩だけ魔法が使えないですもんね」
「はい。なので今回のことが終わったら先生に検証してもらおうと思ってるんです」
そうしてわいわいと雑談していると陽介がホシノ達のもとに戻る。
「ふうー。みんな終わったよ。あの子たちの記憶は消しておいたからもう大丈夫。それでトリニティの君がなんで
「あ、あ、あの、その、まずはあるが、ありがとう、ございます。わ、私は私は阿慈谷ヒフミって言います!みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……実は、探し物がありまして。もう販売されていないので買うことのできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……」
「もしかして……戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学武器ですか?」
ヒフミの探し物をシロコ、ホシノ、ノノミの順に予想を好き勝手に言う。
「えっ⁉︎い、いいえ……えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです……」
「ペロロ……?」
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!」」
ヒフミは3人の予想に戸惑いを浮かべつつ何を探しているのかを携帯の画面を見せる。
画面には白目をむきながら舌を出している白く丸い鶏が口にアイスクリームがねじ込まれた
「限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ!ね?可愛いでしょう?」
「………………」
ヒフミはキラキラとした笑顔を陽介達に見せるが陽介達はなんとも言えない顔を浮かべていた。
「わあ☆モモフレンズです!私も大好きなんですよ!可愛いですよね!私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!」
ただ一人ノノミだけはどうやらヒフミの話が分かるようで、意気投合した二人はモモフレンズについて会話の花を咲かせていた。
「今の子って、こういうのが流行ってるのか」
「……いやぁ〜、おじさんには何の話かさっぱりだなー」
「右に同じく」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系にまったく興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若いやつにはついていけん」
「年の差、ほぼないじゃん…」
最近の流行りに付いていけない陽介とそれに同意するホシノとシロコ。
セリカはホシノの言葉に思わずツッコムのだった。
「というわけで、グッズを買いに来たのですが、先ほどの人たちに絡まれて……みなさんがいなかったら、今頃どうなっていたことやら」
「ん。ならお礼をすべき」
「え?お礼」
「おぉ、シロコちゃんナイスアイデア。それじゃヒフミちゃんにはおじさんたちにブラックマーケットの案内をお願いしようか」
「ちょっとシロコ先輩、ホシノ先輩。そういうのは助けた本人である先生の言葉でしょ」
「俺はそれでかまわない。町のことを聞くなら町の住人やそれに詳しいNPCに聞くのは鉄則だからな」
「ゲーム感覚で行動を決めるのはやめてください。先生」
そうしてヒフミの案内の下で陽介たちはブラックマーケットを案内してもらうのだった。
しかし探しても探しても一向に違法パーツは見つからず陽介たちは数時間の時間を消費するだけであった。
「
「ん。どう、先生?」
「ダメだ見つからん。ここまでしても見つからないとなるとそもそもブラックマーケットにはない可能性があるな」
陽介は魔法で違法部品の散策をするが魔法に反応はない。
「おかしいですね…ここまで何も情報が出ないなんて…」
「そんなに、おかしいのか?」
ヒフミの言葉に陽介が反応しホシノ達がヒフミに耳を傾ける。
「はい、はい……普通、ここに商品を卸すような企業は逆に開き直っているので、変に隠したりしないんです」
そう言ってヒフミは一つのビルに指を刺す。
「例えばあのビル、あそこは闇銀行です。キヴォトスの犯罪の15%の盗品はあそこに流れているそうで、それを財貨に、武器を仕入れ、その武器で強盗や誘拐をし、またここに流す。この悪循環が、彼処では繰り広げられているそうです」
「ひえー…世も末だねぇ」
「…銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか…」
「はい。ブラックマーケットにおける銀行、というのは、まさに犯罪組織。その上、先程説明した治安組織もこの闇銀行を支援しているので…。下手な戦力では返り討ちになってしまうため、生徒会も安易に手が出せない領域になっています…」
「…アビドスの外では、こんな事になってたんだね」
「……みんな何かくる、隠れて」
「
陽介は氷の幻像魔法で全員を背景と同化させ近づいてきた存在に目を向ける。
そこには多種多様な火器を装着したオートマタが車を護送している。
「…ゴリアテですね…アレが護送………一体なにを…?…あれは…現金輸送車ですね…?」
オートマタが護送している車はホシノ達にとって見覚えのある車。
朝にやってきた現金輸送車だ。
「見てください、あの人」
「あれ…?な、なんで!?あいつは毎月うちに来て利息を受け取っている銀行員」
「あれ、本当だ」
「ほ、本当ですね!車もカイザーローンのものです!今日の午前中に、利息を支払った時のあの車と同じようですが…なぜそれがブラックマーケットに?」
「カ、カイザーローンですか!?」
アヤネの言葉にヒフミが驚愕だといわんばかりの大声を上げる。
「か、カイザーローンですか⁉︎」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンといえば、かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です……」
「有名な……?何かマズいところなの?」
「いえ……カイザーグループ自体は犯罪行為を起こしてはいません。ですが、合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振る舞っている多角化企業で……カイザーは私たちトリニティの区域にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの影響を考慮して、『ティーパーティー』が目を光らせています」
「『ティーパーティー』……あのトリニティの生徒会が、ね……」
ヒフミの言葉にホシノはどこか含みある言葉が出る。
「……もしかして、アビドスはカイザーローンから融資を……?」
「そんなことより、どう見てもカイザーは黒だ。ならば…」
陽介は右手に光の剣を顕現させる。
「小鳥遊さん。ここからカイザーまでどれくらいだ?」
「待ってください先生。一人でカイザーに突っ込むのは危険です」
「そうです。いくら先生の魔法で証拠を揃えたとしてもグレーとはいえカイザーを襲撃なんて下手したらキヴォトスで指名手配されてしまうんですよ」
「だが、これ以上小鳥遊さん達が汗水たらして稼いだお金を犯罪支援に使われるのは見逃せない。大丈夫だ、パッと記憶を見てくるだけだから」
「先生…」
「ならいい方法がある」
陽介たちはシロコの方向に一斉に目を向ける。
「ほんとか!?本当にどうにかできる方法があるのか!?シロコさん」
「ん。大丈夫。先生に危険な目に合うことがなくて尚且つカイザーの不正を手に入れる方法…」
「それは…」
「あの銀行を襲おう」
「「「「ええぇっ!?」」」」
シロコの言葉に全員が驚き反対するが、ホシノはシロコの意図を読み取る。
「…!なるほどなるほど……よーし!ねぇ、ヒフミちゃん」
「へ、あ、はい!?なんでしょう!」
「あぁいうのってさ、どう証拠掴むのがいいかな」
「えっと、そうですね。…闇銀行の仕様はわかりませんが、恐らく集金確認の書類を中で書いている筈です。それを確保出来れば証拠にはなると思いますが…」
「ふーん、なるほどねー…シロコちゃんその証拠を盗み出す!ってことだよね?」
「ん。その通り」
「ほんとに!明日は雨じゃないかな」
「とりあえずシロコちゃん、あれをお願い」
ホシノにそう言われシロコはカバンの中を探し始める。
ついでにシロコは貌の魔法で肉体を変化させる。
「
陽介もまたホシノの意図を読み取り魔法で服装を変化させる。
「よーしみんなー!準備できたかなー?」
「ん、準備完了」
「わ、私も被りました!」
「は〜い」
「いつでもOKよ!…所で先生は?」
「俺はここだ」
「先…せい!?」
ホシノ達が目を向けた先の陽介の姿に思わずホシノ達は驚く。
その姿は普段のスーツ姿とは違いまるで狼と人間が混ざり合ったような姿をしていた。背は2Mを優に超え、黒と灰色の毛に覆われた体は力強く、尖った耳が風を切り裂く音を拾っているようだった。顔には鋭い牙と、暗闇で光る赤い目が輝き、どこか恐ろしくも引きつけられる雰囲気を持っていた。身にまとった長いコートは風に揺れ、手に持つ大きな銃は、ただの武器ではなく、何か不思議な力を放っているように見えた。
だが、陽介の姿を一層異様にしていたのは、跨っていた馬の形をした機械だった。それは生き物の馬とは全く違い、冷たく輝く金属でできた、まるで未来から来たような存在だった。滑らかな体には傷や焼け跡があり、動くたびに低い唸り声を上げていた。この機械の馬に堂々と乗る陽介の姿は、まるでこの世のものとは思えない威厳を放ち、周囲に立つ全ての者を凍りつかせるような迫力でそこに君臨していた。陽介が視線を投げると、まるで時間が止まったかのように、周囲の空気が一瞬で重くなった。
「あの、先生、それは?」
重い空気の中、ヒフミが最初に声を上げる。
「銀行強盗をするからな。異世界で冒険者として活躍していた頃と違ってシャーレの先生という公的な立場だからどう見ても俺と思われないようにしようと思ってこの姿にしたんだ」
「ん。その馬も先生の魔法なの?」
「いや、こいつはこいつのおかげだ」
陽介は虚空から一本の剣を出す。
突然剣を出現したことに驚くヒフミだったがそれまで陽介の魔法を見ていたからかすぐにそういうものかと納得した。
「この魔剣の名前は王神剣と言ってな。こいつの能力は簒奪と付与でな…兵士を作ったり五感の共有ができたりと俺が異世界に帰還するうえで最重要アイテムなんだ…」
「先生は魔法以外にもすごい道具も複数持ってるんですね」
「よくよく考えればおじさんにくれたこの指輪のおかげでおじさんは飛べるようになったんだから、先生がそう言った道具を他にも持っててもおかしくないか」
「さらには、
さらに陽介は音の魔法を使う。発声練習を繰り返すうちに陽介の重厚な低音な声にほんの少し滑らかで高い音色が混ざり出す。まるで声の輪郭が柔らかく、鋭さを帯び始めたかのようだった。
「先生の声が…」
「よし、これで絶対に俺の正体に気づく奴なんていない!」(CV石〇彰)
「「「「ぶひょっ!!」」」」
陽介の完全に変化した声を聞いて思わずホシノ達が噴き出す。
今の声の陽介を想像して普段の陽介とは違いすぎるのだから。
「ん。確かにそれなら絶対にバレないね。先生私たちにもその魔法を掛けれる?」
しかしシロコはホシノ達とは違い噴きだすことはなく、陽介の案を称賛し陽介に魔法行使をお願いする。
「あ、それなら☆こんな感じでどうですか」
シロコの提案にノノミが笑いを堪えながら手を上げる。
それから数分程ホシノ達の声をどうするのか相談し合い声の調整をしたのだった。
◇
数十分後。
「うわぁ、なんというかすごいですね」
アヤネは目の前の光景に思わず天を見上げる。
「ふふふ、どうですかみなさん」(CV田中〇幸)
「うへぇー。おじさんの声がほんとにおじさんになっちゃたよ」(CV中〇譲治)
「ん。これで完璧」(CV大塚〇夫)
「うわ、自分の声と知らない声が重なるのって変な感じ」(CV大塚〇忠)
「う、うああ、わ、私…もう生徒会の人たちに合わせる顔がありません」(CV津田〇次郎)
アヤネには普段からは考えられないホシノ達の声がおかしく思わず笑いで震えてしまう。
「それじゃあ、行くぞみんな!銀行を襲いに!!」(CV石〇彰)
・CV石〇彰のおじさん
チェンクロと異世界おじさんのコラボ第一弾でおじさんの声を担当としている。
聞いた当時はおじさんに合わないなと思ったが後々石〇彰さんのほうがおじさんより年上と気づいて石〇彰さんまじかよと思った。
個人的には石〇彰さんの声の異世界おじさんも見たかった。
フィンギィの名前を間違えて覚えていて叫ぶCV石〇彰さんのおじさんを見たかった。
ホシノ達の声は作者の趣味です。
ノノミは音の精霊魔法を習得しました。
・ウルフガンブラッド
エイリアンソルジャーのボス。
馬はエイリアンソルジャーと違って純機械製。
王神剣と貌の精霊魔法の組み合わせで生まれた