男装銭ゲバちゃんが行く! 金髪御曹司に狙われて困ってます 作:匿名(本物)
| 若様からラインが届きました |
| どんな内容だ? |
| 週末にデートをしたいとのお誘いです |
| どうすればよいでしょうか |
| 確認する、しばし待て |
「……はぁ」
白瀬にラインを送った後。
私は大きなため息をついて、スマホをベッドに投げ出した。
「あー疲れた……」
今日は日曜日。天気も良く、絶好の勉強日和だった。
だというのに私は金晴家の都合で、ナンパされる女の役として駆り出されてしまった。
急な仕事だったので苛立ったが、特別手当として十万円ほど貰えると聞いた。
そんなに貰えるならと、私は箪笥の奥に封印していた二年前のお洒落コーデを引っ張り出し。
白瀬から送られてきたナンパ作戦の企画書を読み込み、指定の場所に向かった。
その後、仕込み通りに金に釣られる卑しい女という役割を指示通りこなせたと思う。
「これ、どうすんの」
そして晩。私が家に帰り、ひと風呂浴びて勉学に勤しんでいた折。
| 今日は話を聞いてくれてありがとう |
| 良ければ来週、食事でもどう? |
若様はその卑しい女に、なんとデートを誘ってきたのである。
勘弁してほしい。嫌な予感がしつつ、私はその旨を白瀬に報告した。
「だけど考えてみれば、そうなるよね」
おそらくこれも、金晴家の想定の範囲内のはずだ。
私の役は、『金晴家の財産に釣られナンパされた』女。
金晴からすれば、遊んでも後腐れのない都合の良い女に見えるだろう。
「金晴君に遊ばれる女の役とか、やだなぁ」
おそらく本命の誘いではない。十中八九、お遊びの関係だ。
……お遊びなのは別に良い。本命扱いされる方が面倒くさい。
ただ、肉体関係を要求されると面倒くさいのだ。
私とて、花も恥じらう女子高生。麗らかな乙女心というモノを過分にして持ち合わせている。
金晴家に雇われた身とはいえ、そこまで付き合ってやる義理はない。
私にだって人生がある。断固として、断るべきだ。
| とりあえずデートに応じろ |
| 分かりました |
| 今、作戦を練っている。後ほど連絡する |
だが、我が家にはお金がない。
どれだけ私が意地を張ろうと、札束で頬をぶたれたら逆らえない。
まもなく返ってきた白瀬のラインを見て、私はげんなり肩を落とした。
貧乏人である私は、金晴家の奴隷。
せめて次の任務も、特別手当が出ることを祈るばかりである。
「安心しろ
「本当ですか」
翌日、学校。
私は校舎裏で白瀬に呼び出され、作戦を聞いた。
「名付けて『
「……はぁ、頭の悪い作戦名ですね」
「何だお前? 旦那様のセンスにケチをつける気か」
「素晴らしく知性と教養を感じる作戦名ですね」
私と金晴爽一のデート計画は、旦那様が練ったそうだ。
そこはかとなく不安を感じるが、雇い主なので逆らえない。
「それで、作戦の内容は?」
「お前は、しつこく金晴にお金の話をしてもらう。お小遣いはいくらだとか、預金はいくら持っているんだとか」
「ふむふむ」
「それで金晴にげんなりさせろ。そして嫌われるんだ」
「なるほど、お金に意地汚いような振りをすればいいのですね」
「演技せずともお前は意地汚い。自然体で会話してくれ」
なんだとこのやろう。
「それで? 私を嫌いになったとしても、金晴君の性格だとデートを投げ出したりしないと思うけど」
「大丈夫だ、途中でヤツの婚約者が登場する」
白瀬は私にそう告げ、一枚の写真を見せてきた。
おっとりとして優しそうな、深窓の令嬢っぽい女性が映っていた。
「この方が金晴君の婚約者ですか」
「ああ」
金晴爽一は婚約者がいるのにナンパに勤しんでいたのか。
私の好感度がガクっと下がった。
「婚約者がいてナンパとか、最低……」
「いや。旦那様が急遽、婚約者を見繕ったらしい。金晴はまだ知らない」
「……本人の同意もなしに決めていいのですか」
「金晴家は代々、見合い結婚だそうだ。彼女は金晴グループ子会社の取締役ご令嬢。婚約相手としてふさわしい」
そうか。金持ちは結婚相手を自分で選ぶことも出来ないのか。
それはちょっと同情するな。
「金晴はお前とのデートで散々イヤな思いをした後に、そのご令嬢が登場する」
「デートに乱入」
「彼女から真実の愛を訴えかけられ、金晴は大切なものに気付く……という展開だ」
「真実の愛」
なるほど。つまり私は、当て馬をさせられるのか。
なんたる屈辱。好きでもない相手の当て馬など、尊厳破壊も甚だしい。
想像していた以上に不愉快な仕事だ。断ってやろうか。
「今回の手当は、成功報酬込みで百万円だ」
「喜んで引き受けます。準備も万端に行います。任せてください、私に失敗はありません」
なんと素晴らしいんだ、最高の仕事じゃないか。
一日、ボンボンを騙くらかすだけで百万円も貰えるなんて破格過ぎる。
日給百万円、すなわち月収三千万円。イコール、年収三億六千万円相当の業務!!
「頼むぞ
「ええ、お任せください。
白瀬に提示されたその破格の報酬に、私の頬が思わず上気した。
百万円だぞ。休日を1日潰されるだけで得られる額ではない。
ああ、素晴らしきかな真実の愛。素晴らしきかな金晴家。
「百万円……ふふ、ふふふ」
「うん、さすがは旦那様だ。金晴もこの
思わぬ臨時収入に、頬が緩んでしまう。天にも昇る心地だ。
そんな舞い上がっている私を、白瀬は冷めた目を向けていた。