灯里「あれ?宮子?いないの?何処に行ったのやら…ん?置き手紙?えっとなになに…」
『探さないでください』
灯里「って家出した子かな!?これじゃ家出した子だよ!出番なしだからと言って其処まで拗ねないで!多分近い内に出番来るから!それまで待って!」
―side:Akari Raijin―
いやぁ、初めての場所にはやっぱ土地勘ある人の案内がないとね!
シロコの案内のおかげで無事に現在のアビドス高校の校舎に到着した。
校門から校舎に到着するまでにはいくつものバリケードが設置されていて、スーパーコンボイだと入れない。だから校門の近くで停めてそこからトレーラーに積んでた補給物資を降ろして自力で運ぶしかない。
そのバリケードは戦場でも使われていた土嚢やコンクリートブロックといった物だけではなく、学校らしく机やロッカーなども使われている。防弾性能はさておき、行動を阻害するという役割は果たせるだろう。
「悪いね、持って貰っちゃって」
「先生は久々のお客さん。それに私達の為に運んでくれたのなら手伝うの、当然」
そういう訳で私1人では運ぶのにも限度があったからシロコが手伝ってくれて、物資を全て校舎内に運んでから持てる分を彼女の案内である部屋まで運んだ。
"アビドス廃校対策委員会"
目的の部屋にはそう手書きで書かれた紙が部屋の名を示すプレートに貼り付けられていた。
その部屋の扉をシロコは爪先で開けた。両手が塞がっているからね。
「ただいま」
「おかえりシロコせんぱ…って何その荷物!?それと、後ろの人は誰!?
「わあ、お客さんですか!?」
「えっ!?もしかして―」
シロコと私を出迎えたのは黒髪ツインテで猫耳を生やした娘と如何にもお嬢様って雰囲気の金髪巨乳っ娘、そして黒髪ショートエルフ耳眼鏡っ娘だ。あのさ、ちょっと属性もりもり過ぎない?属性が渋滞してるよ?あっ、ツッコミを入れてる場合じゃないわ。
「初めまして。私は連邦捜査部シャーレ担当顧問の頼尽灯里。貴女達の手紙を受け取ったよ」
私は荷物を降ろして自己紹介を行い
「それと助けが遅くなってごめんなさい」
と誠意を以て彼女達に頭を下げて謝罪した。この娘達はずっと助けを求めていた…だけど連邦生徒会も手が回らなかった上に廃校対策委員会はおそらく正式な部として認められてないから彼女達の助けを求める声に応じなかった。ならば、私が責任をもって謝るしかない。
「い、いえそんな…!頭を上げてください先生!」
頭を上げるとあの眼鏡っ娘が私の前にいた。
「ありがとうございます、手紙を読んでくださって…私が奥空アヤネ、貴女が読んでくださった手紙を書いた1年生です」
「貴女が…宜しくね。それと物資はまだあるから運ぶのを手伝ってくれないかな?一応玄関までは運び終えてるけどさ」
そうそう、物資は一旦校舎の玄関に積んでる。外に置いてて誰がに盗られる訳にはいかないからね。
「ホシノ先輩に伝えなきゃ…!ちょっと私、呼んでくる!」
ツインテの娘はそう言って部屋から飛び出していった。
「今部屋を出たのが同級生の黒見セリカさんで…」
「中々に元気が良さそうだね…しかしミニガンもあるとは…そりゃ弾薬の消費も激しいわなぁ…」
教室をよく見ると立て掛けてあるミニガンに視線がいった。今回の補給物資で一番数を用意したのがあれの弾薬なんだよね。
「そのミニガン、私のなんです!私は十六夜ノノミ、2年生です~!」
あの金髪巨乳っ娘もといノノミの愛銃だったか。
「ん、私はもう自己紹介している。後は、今セリカが呼びに行ったホシノ先輩」
「それがアビドスの全生徒というわけだね」
「本当はもう1人いるらしいんですが、
ノノミが顔を曇らせたその時、突然銃声が鳴り響いた。
窓から校門の様子を確認すると正門から複数のヘルメットを被った生徒が銃を乱射しながら侵入を試みている。
ヘルメット団って連中だね。初日のシャーレ奪還の時に暴れてた娘達の一部がヘルメット団だったんだよね。ジーオスのエントリーのインパクトが強すぎたけど。
「カタカタヘルメット団…あいつら性懲りもなく…!」
怒りを滲ませ拳を握るシロコ。因みにヘルメット団も幾つかの派閥に別れている。幸いなのは今回の襲撃者はゾイドを連れていない事だろう。
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで起きて!」
其処へ誰かを抱えたセリカが戻ってきた。
「むにゃむにゃ…うへぇ、まだ眠いのにぃ…」
ピンクに近い色のロングヘアーで後輩よりも小柄で可愛らしい娘。この娘が資料にあった小鳥遊ホシノって娘だね。資料の記載からの印象と対面した時の印象がまるっきり異なるけど…
「ホシノ先輩、ヘルメット団の襲撃です。それと、シャーレの先生が支援に来てくれました。弾薬も充分にあります」
「むにゃ…んぇ、ぁあ、あ、よろしくぅ先生~」
目を見開いてオッドアイで私を見つめる彼女。一見は穏健に見える彼女だが、僅かに殺気と警戒心を感じ取れた。
おそらく本性を隠している…後輩達の為だろう。
―side out―
今回、灯里はオペレーター担当のアヤネと共に戦況を見渡せる教室からの指示役に徹していた。本来は前線に出て戦いたい灯里だったが、今回は彼女達の能力を見るためというのもある。いざとなれば教室から飛び降りて参戦するつもりだが、そんな灯里が出っ張るような事態も起きず対策委員会の面々はカタカタヘルメット団の撃退に成功した。
「ん…?あのセミトレーラーは…?」
後片付けの最中、シロコは停めてた筈のスーパーコンボイを見かけない事に気付き、教室に戻るや灯里に訊ねるのだが、真相をまだ言うわけにはいかない灯里は遠隔操縦機能があると誤魔化した。事実その機能があるから嘘は言っていない。
現在、アヤネは受け取った物資と今回の襲撃で消費した弾薬の数量を帳簿に記載した。
「凄かった…私たちだけのときとは全然違った…」
シロコは先の戦いを振り返っていた。灯里による的確な指示のおかげで彼女達は自分達が思っていた以上にスムーズかつ弾薬の消費を最小限に収めた上でカタカタヘルメット団を撃退出来たのだ。シロコの言葉に同調するかの様にセリカはうんうんと頷いている。
「しかし今回ヘルメット団も多分本気で攻めてきたみたいだったけどなんとか勝てたねぇ。先生様々かなぁ?」
ホシノは視線を灯里に向ける。まるで何処か灯里を試しているかの様だ。
「私はほんの少し手伝っただけ。いざとなれば私自ら前線に出るつもりではあったから紛れもなく貴女達の実力だよ」
と灯里は謙遜して彼女達を褒める。
「そうだ、貴女達2人とはまだちゃんとした自己紹介がまだだったね。私は頼尽灯里。シャーレの先生だよ」
「私とセリカちゃんがまだだったか~委員長やらせてもらってる小鳥遊ホシノだよ先生ー」
「…黒見セリカよ」
「うん、2人も宜しくね」
「先生のおかげで目の前の危機は脱しました。これでようやく借金返済へ…」
「ちょっとアヤネちゃん…それ以上は」
まるで灯里には聞かれたくないと言わんばかりにセリカはアヤネに待ったをかけた。
「良いんじゃない?別に隠すようなことじゃあるまいし」
というホシノの意見に対し
「かといって、別に話すことでもないでしょ!」
セリカは反発する。
「ホシノ先輩の言う通りだよ。先生は信頼していいと思う」
シロコは灯里を信頼しているようだが
「そ、そりゃそうだけど先生だって結局部外者だし!」
それでも尚灯里を信頼できないセリカはまだ反発する。
「確かに先生がどうにかできる問題じゃないけどさぁ~この問題に耳を傾けて解決策を見つけてくれる人なんて先生以外にはいないと思うんだよな~
それとも何か他にいい方法でもあるのかな?」
ホシノは先程までの間延びした口調から一転して真剣な口調へ変わり、一瞬だけ灯里に視線を向ける。彼女も灯里の事を完全に信頼している訳ではないが、それを表には出さない…そしてそれを灯里も察していた。
「先生だって所詮は大人でしょ!今まで大人たちが、この学校のことを気に留めたことなんてあった!?この学校の問題はずっと私たちだけでどうにかしてきた!今更、大人が首を突っ込んでくるなんて私は認めないわ!!」
そしてセリカは遂に堪えきれなくなったからかそう言い放つと教室から飛び出してしまった。
「私、様子を見てきます」
ノノミもセリカを追いかけるべく部屋を出た。教室は一気に重苦しい空気に包まれた。
「えーと、簡単に説明するとこの学校には借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ」
そんな中、ホシノは口を開いた。
「それってこの一帯を襲っている砂嵐が原因だね?」
「そうそう。事の発端は私が入学するよりも前、アビドスの地は突然発生した大規模な砂嵐に襲われた。それを何とかする為に銀行から融資を受けたんだけどさ、其処が所謂悪徳金融業者だったんだよ。まぁ、他の所から融資を受けられなかったというのもあるんだけどさ。
その後も砂嵐は襲ってきて、その度にお金を借りて…結果、どうする事も出来ないばかりか借金が嵩むばかり。保有していたゾイドも手放す羽目になって現在の借金は8億6235万円。
殆どの娘達は多額の借金を負ったアビドスを見捨てて生徒たちが逃げていって…今はこの5人だけ」
「なるほどね…それじゃ、資料にあった生徒会長の"梔子ユメ"さんは―」
その人物の名はホシノにとって地雷だったのかはたまた触れられたくない事だったのかホシノは灯里に対し怒りを抱いた。
「触れたくない話題だったのなら謝罪するし追及はしない。だから撃ちたいなら撃っても文句は言わないよ」
そしてそれを灯里は察知した…ホシノが皆には見えぬよう密かに隠し持っていた拳銃に手を伸ばしていた事も。
殺されても文句は言えない…それをわかった上で灯里は謝罪と彼女への慰めの為にホシノの頭を優しく撫でた。灯里が撃たれても文句は言えないと言う程に本心から謝罪している事と自分を思っている事はホシノにも伝わったらしく
「彼女は…ユメ先輩は…行方不明なんだよね…私のせいで…これ以上は…」
と灯里は勿論、シロコやアヤネにも自身の表情を見せぬようそう答えた。
「わかった。辛いのに教えてくれてありがとう」
灯里はホシノの心境を察しながら情報の整理をしていた。
(
となるとアビドス高校生徒会の現状唯一のメンバーはホシノになるけど…まぁ精神状態から推察して対策委員会を正式な部にしてなかったのも無理はないね…)
「ん…?先生、どうかした…?」
「あぁ、ごめんねちょっと自分の中で状況を改めて整理してた所だよ。連邦生徒会が何故貴女達の依頼を受理しなかった理由も大体察したかな」
「理由…ですか…!?」
「そうそう、理由はおそらくこの対策委員会という部活が連邦生徒会から正式な部として認められていない事なんじゃないかなって。
私の手元にある連邦生徒会が保有するアビドス高校の資料は去年まで…より正確には去年1月までの物。
その資料には在校生は生徒会メンバーのホシノのみ、ノノミが私立ネフティス中学校在学中かつ4月からアビドス高校入学予定で生徒会長は行方不明って記載されててアヤネとセリカは勿論、何故かシロコは記載されてなかった」
「ん…その時私はまだアビドス高校にいなかった…ホシノ先輩やノノミと出会う前。アビドスの生徒になれたのもホシノ先輩やノノミのおかげ。だから記載されてないのも当然」
「シロコちゃん、自分の名前以外は覚えていない記憶喪失なんだよね。ノノミちゃんが入学する前の2月、アビドス本校舎で発見したんだ。あの頃のシロコちゃんは暴れん坊で自分より弱い相手の言う事は聞かないなんて言うからさ、今の様に落ち着かせる事に苦労したよ」
「なるほどね…道理で資料にない筈だよ」
「あれ?去年1月までの情報となると…その頃って対策委員会はまだ存在すらしていないですよね…連邦生徒会からしてみれば存在しない不審な部活って扱いに…」
アヤネと灯里の言葉にホシノは思考を巡らせた末に気付いてしまった。
ゴタゴタで余裕がなかったとは言え生徒会メンバーであった自分が対策委員会を正式な部として申請し忘れていたから今まで救援が来なかった…つまり自分のせいだと。灯里はホシノがまた自分を責めようとした事を察したのか
「まだ間に合うよ。まずは対策委員会を正式な部活とする事から始めようか」
と進言し、ホシノは灯里の進言を受け入れたのか頷くのだった
To be continue…