灯里「思ったんだけどね」
宮子「何をですか?」
灯里「この
宮子「言われてみれば確かに…」
灯里「まぁ、
宮子「趣味なんでしょうね…」
オルディオスのゾイックアデプトテレイター化個体との戦いの後、灯里と対策委員会の面々は合流した宮子やRABBIT小隊の面々、拘束した便利屋68の面々を連れてアビドス高校現校舎に戻った。
アルは白目向いてフリーズしたままであり、そんな彼女を見てハルカはおどおどしてる。情報の洪水だからそうなるのも仕方ないだろう。一方のカヨコとムツキは冷静さを保ち大人しくしてる。
因みに貴重な情報源に逃げられる訳にはいかないからという事で便利屋68の面々の武器は取り上げられ、ミヤコとサキが管理している。
「先生、SRTにも顔が通じるんですね」
「あれ、でもSRTって確か今は閉鎖されている筈ですが…」
ノノミとアヤネはひそひそ話をしている。実際、表向きにはSRT特殊学園は閉鎖されているのは事実である。 今回RABBIT小隊が出てきた事に関しては灯里が責任を持つという条件でリンに無理言って呼び寄せたからである。
「連邦捜査部シャーレの部長、月雪宮子です。今回貴女方の取り調べを行います」
宮子は便利屋68の面々への取り調べを行う所だ。
「アルちゃん、何時まで固まってるの~?」
そして未だにフリーズしているアルをからかうようにムツキは彼女を頬をちょんちょんと突っつく。
「はっ、そうだったわ」
漸くアルは正気を取り戻したようだ。
「あの、取り調べをする前に一つ良いかしら?」
「はい?何でしょうか?」
「貴女と貴女は同じ顔なのだけれど、偶々似てるだけなのかしら?それとも姉妹?」
姉妹に見えるのも無理はないだろう。尤も姉(?)は人外化しているのだが…
「「いえ、私達は別々の世界線に於ける同一人物、平行同位体です」」
と宮子とミヤコはタイミングを計らず見事にハモらせて答える。
「私はあの怪獣…ジーオスの軍勢によってキヴォトスが滅ばされた世界から幾つかの惑星を渡った末にこの世界のキヴォトスに漂流してきました」
宮子は便利屋86に向けて自分が元いた世界の行く末、クインテッサ星人メイクスと彼によって生み出されたゾイックアデプトテレイター、自身がゾイックアデプトテレイターになるまでの経緯、灯里との出会いにこの世界のキヴォトスに着くまでを語った。
カヨコ、ムツキ、ハルカはその過酷な経歴に絶句した一方でアルは同情からなのか号泣していた。立派なアウトローになりたいと豪語するアルだが、その根っ子は善良そのものである。
対策委員会の面々もRABBIT小隊の面々も
「こほん、そろそろ始めたいのですが…」
と宮子は自分の話はもう良いからと言わんばかりに取り調べを始めようとする。
「そ、そうね。ごめんなさい。始めましょうか?」
「では、始めます。単刀直入に聞きます…貴女方の雇い主について」
「そ、それは守秘義務が―」
「金を払う、と言っても黙秘しますか?」
と宮子はコートからチラリと財布を見せる。連邦生徒会から給料を貰っている宮子であったが、食費は灯里が"大人のカード"で支払う上に、その他の使い道もRABBIT小隊への食糧・物資の提供くらいにしか使っていないからか自然とポケットマネーが貯まっていたのである。
アルはアウトローへの拘りと目の前の金で葛藤していた。金がないのも事実であり、経営も厳しい状況なのだ。
「実際の所、私達はクライアントの事は裏社会の大物らしい事くらいしか知らない。ただ
そう答えたのはカヨコだった。雇い主の仕打ちに思う所があったのか答えられる事には答える事にしたようだ。
「つまり、そのクライアントがどの様な目的でアビドスを狙っているのか、クライアントが何者なのかも知らないって事ですね?あのオルディオスがこの世界にいるのかも」
「私達が聞かされたのはジーオスが現れた際の対抗戦力って事くらいなんだよねぇ。どういった物なのかは企業秘密だからと教えてくれなかったし」
とムツキはオルディオスの事について答える。
「あ、あの…別の世界のキヴォトスから流れ着いたという事は…アビドスを狙う存在が何者か知って―」
「正直に言うと私もアビドスの件は噂程度にしか…それにこの世界も私の世界と同じとは限りません。私や師匠の存在がそうでしたしジーオスが早い段階で現れた事も…」
ハルカの疑問に宮子はそう答えた。実際宮子が知っているのはジーオスアークによって自分の出身世界が滅びた事、それ以前の出来事だとSRT関係や
実際、その企業はヴァルキューレと癒着しており、その一件の解決に関与したのが他ならぬ宮子達RABBIT小隊だったのだ。
宮子による便利屋68への取り調べが続く一方、灯里は顔を俯かせたまま考え込んでいた。
「うへぇ、どうしたの先生?考え込んじゃってさ」
灯里を見かねたホシノが声をかける。
「あぁ、ごめんね、あのオルディオスの行動が気になってね」
「オルディオスってあのゾイド?」
「うん、あのオルディオスもゾイックアデプトテレイターで間違いない。
オルディオスは今の技術では作れないとされてるゾイドなんだよ…ゾイド発祥の地の惑星Ziを襲った
「そんなゾイドがどうしてゾイックアデプトテレイターとして現れたのさ?」
「恐らくメイクスは残骸を見つけてサルベージしたんだと思う。奴なら元となる機体が完全な状態じゃなくて普通なら修理不可の
エネルギー反応からして私達が第56太陽系の地球で交戦したオルディオスで間違いない。だったらゾイックアデプトテレイターを支配下に置ける擬似OSユニットが装着されている筈。
そして擬似OSユニットを装着されたゾイックアデプトテレイターは基本的にマスター権限保有者の指示に従う。そしてあのオルディオスは私達を襲うように…それでこそ依頼を失敗した便利屋86の娘達もろとも始末する様に指示されたんだと思う。
マスター権限保有者の指示を無効化するにはマスター権限保有者が新たな指示を出すか、その個体が変身継続が不可能なレベルにまでダメージを負うか擬似OSユニットを第三者にハッキングされるかのいずれかなんだけど…」
「一つ目は何度もヘルメット団をけしかけてきた事からまずないよねぇ」
「そう、そして私も宮子もあのオルディオスに装着されているであろう擬似OSユニットにはハッキングしてない…というか出来ない。
それにも関わらず突然動きを止めてまるで支配に抗うかの様な仕草をして逃げた…この事が引っ掛かってるんだよ」
「あのオルディオスもジェノブレイカーと同じKVシリーズなんだよね?」
「そうだね…メイクスはそう言ってた」
「という事はさ、あのオルディオスの元になった人物の正体っつと別の世界の
「うん、あり得る話だね」
その後、灯里とホシノによるオルディオスのゾイックアデプトテレイターKVシリーズ化個体への考察と宮子による便利屋86の聴取も手詰まりとなってその日は解散となり、便利屋86の面々も解放された。因みに宮子は雇い主の情報を僅かにでも提供した事に言質通りに報酬を便利屋86の面々に支払った事は言うまでもない。
―side:Akari Raijin―
便利屋86への聴取から一夜明けた。宮子とRABBIT小隊はヘルメット団や傭兵達に装備を提供した存在について調査を始めている。
そして私はアビドス高校が抱える借金の返済…より正確には借金の利息を返済する所に同席していた。
何か少しでも手掛かりがあるかもしれないならと思ってね。
現在、アビドス高校の校門前には一台の装甲車が停まり、そこからロボ型人種の銀行員が降りてきた。
ホシノはその銀行員に利息金が入ったケースを引き渡し、銀行員は中身を確認する。
「お待たせしました。変動金利等を諸々適応し、利息は788万3250円ちょうどを現金で確かに受け取りました」
ただ、引っ掛かる事があるんだよねぇ…アビドス高校の借金の返済は現金のみという事だ。
基本的に銀行のローンの支払いって口座引き落としが主流、更にキヴォトスはQR決済などの電子マネーでの取引が主流で、現金支払いは一般的ではない上にそもそも現金の輸送って強盗に襲われてるリスクもある。
私がいた地球で有名なケースと言えば私が生まれる前に起きた南アフリカのヨハネスブルグでのチャッピー事件かな。警察が運用していたロボット警官がウイルス感染(因みにウイルスを流した犯人はロボット警官を開発したメーカーの社員で動機はロボットの開発者への妬みと自分が開発した兵器を売り込む為だとか)して大半は機能停止して、その中で唯一活動出来た機体がチャッピーと呼ばれる人の様に考え行動する高度な
開発者は死んで、開発者の同僚(ウイルス流した奴ね)はチャッピーの怒りを買って重傷負わされたとか。この話を元にした映画が公開された程だよ。
「では、また来月もよろしくお願いします」
銀行員はそう告げると装甲車に乗って去っていった。
「…シロコ先輩、襲ったら駄目ですよ」
「ん、分かってる。セリカ」
セリカとシロコがそんなやり取りをしている一方で
「先生、どうかなされたんですか?」
とアヤネは私に訊ねてきた。
「あぁ、ちょっと気になってね…何故現金だけしか受け付けないのか、ってね」
「以前聞いた時はハッキング防止の為だとか…」
「なるほどね…」
ハッキング防止、ねぇ…ちょっとキナ臭く感じるんだよ…"
部室に戻って対策委員会の面々と会議を始めようかという時
『先生、アビドスの皆ちょっと良い?』
モエから
「うん、良いよ。モエ、進展でもあった?」
『以前投降したっていうヘルメット団や傭兵が使ってた武器の映像を確認させてもらったけど、映像の中に映ってた武器の中に今は製造や一般流通されていないのも混じってたんだよねぇ』
「出回る筈のない物ですか…もしかして出所はブラックマーケットなのでは?」
アヤネの指摘をモエは肯定する。
『ブラックマーケットは様々な事情で休学、停学、退学になった生徒によって独自の秩序が形成された区域。
其処じゃ製造が終了して一般流通在庫にない製品が違法に再生産されていることもあるんだよねぇ』
「なるほどね…じゃあ今は生産されていない骨董品か再生産品かのどっちかっていう訳か」
私の推察をモエは頷いて肯定する。
『私らも引き続き調査を進めるよ』
「了解、ありがとう。気をつけてね」
という訳で通信は終了した。
「うへぇ、こうなったら私達もブラックマーケットを調べてみないとね。SRTの1年生の娘達に任せっきりなのも嫌だからねぇ」
ホシノはそう言ってブラックマーケットの調査に行く事を皆に提案する。反対意見もなく早速調査を始める事になった。
そもそもブラックマーケットは連邦生徒会の管理が行き届いていない商業活動が活発に行われている区域だそうだ。
元よりキヴォトスは幾つもの学園と自治区が存在しているものの、その中には何かしらの理由で廃校になって自治権をなくした場所も多く存在している。そんな場所を利用しようとする連中も当然いる訳であり、そういった連中がブラックマーケットを作り上げ、時には元自治区同士が統合して巨大化するなんて事もあるらしい。
私が対策委員会の面々が訪れたのはD.Uの近くにある最大級の規模を誇るブラックマーケットだ。
まるでテーマパークの様な…そんな事言ってる場合じゃないわ、うん。
皆で散策をしていたその時、銃声が鳴り響いてきた。
「つ、ついてこないでくださいぃぃぃぃぃぃぃ!」
銃声が鳴り響いてきた方角から逃げる様に走ってくるのは何かを抱えている少女。その後ろからはおっかない顔をしたチンピラが銃を乱射しながら追い回している…あれ?あの追いかけられてる娘の制服、トリニティ総合学園のじゃね?
そもそもトリニティって校則上ブラックマーケットの立ち入りは禁止だった筈だけど…
To be continue…