灯里「皆さん明けましておめでとうございます」
宮子「今年も宜しくお願いいたします」
灯里「そうこうしている間に宮子とミヤコの誕生日過ぎちゃったね」
宮子「この作品、不定期更新ながら今は基本的に金曜日か土曜日投稿ですからね」
「まさかヴァルキューレに潜入しておいて、おとなしく帰れるとは思ってないだろうな?」
RABBIT小隊に声をかけて銃を向けるカンナ。
「公安局局長…」
彼女を前にミヤコは呟く。
「無駄な抵抗はやめろ。貴様らほすでに包囲されたも同然、最終的に此処に来るだろうと予測していたからな」
RABBIT小隊を取り囲むのは装甲が白いクワーガやカブター達。各5機ずつ合計10機だ。
「今のキヴォトスにとって貴様らは必要ではない。こんな犯罪まがいのことをして、今度こそ連邦生徒会から学籍データを抹消させられても良いのか?」
学籍データの抹消…それはキヴォトス人…生徒にトって人権剥奪、社会的な生活の保証がなくなる事を意味していた。
「では、公安局長は自身の行いについていかがお考えですか?
カイザーインダストリーから武器やゾイドの供給を受ける見返りにカイザーコンストラクションによる子ウサギタウン再開発の為に放浪者たちを追い出す。しかも現在ジェノブレイカーが交戦しているデスレックスはアビドス砂漠で発掘されたものみたいですね?
連邦生徒会が定めた法では発掘されたゾイドの所有権は手放さない限りその自治区が有するとあります。
ならばあのデスレックスは本来アビドス高校に所有権がある筈です」
因みにモエはミヤコ達のナビゲートと同時にアビドス高校にアビドス砂漠から発掘されたデスレックスの事を報告、アビドス高校側もデスレックスが埋まっていた事など知らなかったのである。借金返済の為に手放すにしても他学校や企業に譲渡するにしても連邦生徒会のゾイド管理部にその旨を届け出る必要があるのだ。
それにも関わらずブラックマーケットでゾイドが流通しているのは廃校となって自治区でなくなった土地からの採掘であったり違法なクローニング、更には強奪等の様々な理由があるのだ。
「私企業との取引において犯罪行為に手を染める事…これをキヴォトスの治安を担当するヴァルキューレ警察学校が行っている事は確実に問題かと思われます。連邦生徒会の定めた公的な規則に従わない処理について公安局長たりあなたが知らなかったはずがありません。これはヴァルキューレ警察学校の理念に反する、重大な犯罪行為です!」
ミヤコの断罪に対しカンナはそう言われる事など予測出来ていたからか至って冷静だ。
「言いたい事はそれだけか?ヴァルキューレは公的な規則に従って公正であるべき…貴様が言うことは確かだろう。
だが、貴様らが思うほどこの世の中というのは公正ではない。貴様らが特権を振りかざし正義を論じている間に、私達が何をしていたか知っているか?
妥協に塗れながら汚い現場での公務を処理してきたのだ…それが社会だ、現実だ!手を汚さずに、正義を掲げ続けることなどできない!貴様らのような未熟な小娘共に、それが分かるか!その判断をせざるを得なかったこの気持ちが!それにあの
ジーオスの出現はキヴォトスを悪い意味で変えてしまった。
敵対的かつ対話も不可能な相手に対して出来るのは殲滅…その為には武力が必要であり、だからこそ武器やゾイドの需要は以前より高くなっているばかりか精神を病む者も現れ始めているのが現状だ。
カイザーグループと組んだカンナの行動もまた葛藤の末の苦い決断だったのだ。大勢を護る為に少数の居場所を奪う事はやむ終えないという葛藤の…
『仕方のない、ねぇ…』
そんな中、通信機越しに聞こえてきたのは灯里の声である。
「…先生、この声は貴女でしたか」
『丁度ドンパチしてるって聞いてね。話は聞いてたよ。まぁ、確かに世の中は綺麗事ばかりじゃないよ。醜い事やおぞましい事もある。私だって護れなかった事、救えなかった事、思いが届かなかった事もある。そもそも清廉潔白ではないからね…手を汚した事もあるよ』
そう語る灯里の声色が後悔の念が滲んでいる事は通信機越しでもカンナやRABBIT小隊の面々に伝わってきた。
『でもさ、仕方ないからって目を背けて続けた先にあるのは取り返しの付かない様な失敗、そして信頼や信用の喪失なんだよ。
信頼・信用を築くのは難しいけどぶち壊すのは容易だからね。しかも一度壊れた信頼や信用は再び築くのは1からよりも難しい。スタートがゼロじゃなくてマイナスだからね。
その結果、己の心を蝕み続ける後悔が生まれる事になる。そんな思いを
まぁ、道を踏み外さずに己の信念、正義を貫くのは大変な事だけどね。それでも…最終的に自分の未来は、自分で判断し続けるもんなんだよ』
「それでも…自分の信念だけに従っていたら、私は全てを失ってしまう…!こんな中途半端な立ち位置で!私には、何もできない!!」
『彼女達を見てごらんなさいな。彼女達は学校そのものを失った、言うなればゼロの状態。それを1にしようと必死に足掻いている。だからこそ私や宮子は手を差し伸べる事を選んだ。仮にどうしようもないクズだったら放ってたかもしれないね。一応教職者となってる身分じゃ間違いかもだけど。
大変で辛い状況だろうけど、それでも自分のハンドルは自分で握って行き先を決められるよ。
そもそもどうすれば良いか悩んだ時は相談しなさい!これ、ババアからのアドバイスね。私で良ければいくらでも相談に乗るからさ』
灯里の言葉はRABBIT小隊の面々はそれぞれ自分で決めた道は間違っていなかったと実感していた。
「そうだな、最後は自分で決めていくものだ」
「ずっと不安で、怖かったけど…」
『ま、自分達で決めたことだからね』
「…ありがとうございます、先生」
そして灯里に礼を告げたミヤコはカンナに向き合う。
「公安局長。あなたが思う"正義"は、きっと間違っていないでしょう。ただ私が思うものとは、違うというだけで。
ですが、その根っこを誰かのせいにし続けていては、いつか色あせてしまうと思います。
ミヤコが自分の考えを告げたと同時にジェノブレイカーがランデブーポイントに現れた。
ジェノブレイカーに対しカブターとクワーガは銃火器を向けるが、カンナは左手を挙げる。撃つな、と制止したのだ。彼女は敗北を悟っていたのだ。ジェノブレイカーは静かに伏せた状態でヘリポートに着地…というよりミリ単位スレスレの位置でホバリングしてすると
「迎えに来ましたよ」
ミヤコ、サキ、ミユに告げ、3人はジェノブレイカーによじ登るとベルトに安全綱を繋げ、靴をジェノブレイカーの身体に固定させ、ミヤコは押収した証拠をバッグの中に入れる。
3人の搭乗とロックを確認したジェノブレイカーは立ち上がる。
「待て」
そんな中、カンナはジェノブレイカーを呼び止めたのだ。
「ジェノブレイカー…いや、別の世界の月雪ミヤコ…聞いておきたい事がある」
「何でしょうか?」
「貴様がいた世界の私は…どうだったんだ…?答えたくないのなら無理強いは―」
カンナがそんな質問をしたのは単なる興味本位だ。
一方で自分が元いた世界の事、惨劇が起きたでかの世界の事を思い出したくはないだろうという考えもあった。
「貴女とこの娘達と同じ様に正義の違いで敵対しました」
しかしカンナの予想に反して
「しかし、ジーオスの襲来後は共に戦いました…あっちの世界の貴女は自分の為すべき事を果たそうと…最期は…私がいた世界の貴女は勇敢でした」
ジェノブレイカーからの返答にカンナは彼女がいた世界の自分は市民を護る為にジーオスと戦って死んだであろうと察した。
「そうか…ありがとう」
カンナの礼を聞きとめジェノブレイカーは飛び立った。
「局長、宜しかったのですか?」
そう訊ねるのはクワーガのライダーたる公安局の局員だ。
「証拠を持ち出された時点で我々の負けは確定したようなものだ」
それに対しカンナは潔く負けを認めていた。
「先生、まだ聞いているんですよね?」
カンナはこの場にいない灯里に呼び掛ける。
『通信回線はまだジャックしたままだからね。まぁ、私はRABBIT小隊が潜入した時にモエがジャックした回線をシッテムの箱の権限とシステムを使って利用させてもらってるだけなんだけどね』
灯里本人が言う様にヴァルキューレ本部の通信回線はモエのハッキングでジャックされ、灯里はアロナの協力で回線を利用しているだけだ。
「なるほど…で、先生はカイザーグループと戦争でもするつもりですか?」
『必要ならそうするつもりだよ』
「キヴォトスの経済圏にカイザーグループは深く根を張っています。それを潰すという事は―」
『混乱は生じるだろうね。まぁ、其処は最小限に留められるようにはするつもりだよ。
ただね、私は欲にまみれた結果、子供達の未来を食い潰すクソッタレ共が大嫌いなんだよ…私のいた世界でもそういう連中がいたからね。
カイザーは其処に片足を突っ込もうとしている…今止めないと私達ですら止められなくなるかもしれないからね』
「そうですか…」
『それじゃ、私もアビドスでやらなきゃならないことがあるからそろそろ切るね』
灯里はそう言い残すや通信回線を切るのだった。
ジェノブレイカーとRABBIT小隊が作戦遂行中である一方、ホシノは何時もの様にパトロールを行っていた。彼女が日中は寝て過ごす事が多いのもそもそもは夜間パトロールによる夜更かしで寝る時間が少ないからである。そしてパトロールを終えたホシノはブラックマーケット内のとある建物を訪れた。
階段を上がり、ある部屋の前に立ち止まるやドアを開ける。
「これはこれは。お待ちしておりましたよ、"暁のホルス"…いや、小鳥遊ホシノさん」
その部屋のデスクに腕を乗せていたのは黒い服を来た
その男…"黒服"はホシノに対し丁寧な態度で接するが、ホシノは警戒心を解いたりはしない。
「…今度は何の用なのさ?」
「ふふ、状況が変わりましてね。今回は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をしようと思いまして」
「提案?ふざけるな!」
黒服の言葉にホシノの返答ら何時もの様なは声を荒げて立ち上がる。もし他の対策委員会の面々が見ていれば普段の昼行燈な態度からは想像出来ない姿に驚くだろう…いや、嘗てのホシノの様子を断片的に知る人物であればそうでもないだろうか。
「クックックックッ、まぁ、落ち着いてください。あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ―」
黒服はホシノに対しある提案を行う。それに対するホシノの答えは保留であった。
RABBIT小隊がヴァルキューレ警察学校本館に潜入しカイザーグループと癒着している証拠たる帳簿の確保に成功した翌日。
カイザーグループへの制裁の準備が水面下で進んでいる事など大半の生徒はつゆ知らず…それは便利屋68の面々も同様である。
柴関ラーメンの店内にてラーメンを待っている便利屋68の面々だったが、アルは今朝から浮かない顔をしていた。
「アルちゃん、顔色が悪いけど…」
「わ、私なら大丈夫よ…」
心配そうに見つめるムツキに対しアルは笑みを浮かべて答えるが、無理して取り繕っているのは見て明らかであり、カヨコもハルカも心配そうに見ている。
クライアントもといプレジデントは彼女達に見切りをつけたも同然であり、彼女達への報酬の支払いも行っていない。
しかもアルもアルで報酬をあくまでも
しかもゲヘナ領内の銀行に於ける彼女達の口座は起業という校則違反を犯した事で風紀委員による制裁で凍結されているというのも痛手であろう。
アビドスの面々との初邂逅となった柴関ラーメンでの一件も灯里の介入と柴大将の粋な計らいがなければ一人前のラーメンを4人で食べていただろう事がその事を物語っているだろう。
そして今朝はオフィスの大家から家賃の催促状が届いており、このままだと立ち退きを強制されるだろう。
そうこうしている内に注文していたラーメンが4人の元へ配膳される。
「アビドスさんとこのお友達だろう。替え玉が欲しけりゃ言いな」
柴大将が優しく声をかける一方でアルは顔を顰めていた。
「こんなに美味しいのにお客さんがいないなんて…」
「場所が悪いんじゃない?廃校寸前の学校の近くだし」
「まぁ、美味しいからいいけど。それじゃいただ―」
ハルカ、カヨコ、ムツキがラーメンを啜ろうとした中
「友達なんかじゃないわよぉぉぉぉぉー!!!!!」
アルは絶叫した。どうやら敵(?)である筈の対策委員会の面々の友達と思われた事がショックだったのだろう。
「私たちは仕事しにこの辺りに来てるの!ハードボイルドに!アウトローっぽく!
なのに何なのよ、この店は!お腹いっぱい食べられるし!あったかくて親切で!話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!ここにいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの!こんなほっこり感じゃない!
一人前の悪党になるには、
涙目で感情を爆発させるアルに対しカヨコとムツキが困惑する一方で
「それって…こんなお店ぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」
ハルカはとんでもない事を口走った。
「良かった、ついにアル様のお力になれます」
ハルカの言葉と鞄から出した何かしらのスイッチを目にした事で一種の興奮状態だったアルも嫌な予感がしたからか冷静さを取り戻す。
「ハルカ…それってまさか!?辞めなさ―」
アルの制止も間に合わず、ハルカはスイッチを押し、それと共に柴関ラーメンの店内は爆発に包まれるのだった。
To be continue…