灯里「まーた
宮子「かの地は警報レベルの大雪でしたからね。学校が休校になるレベルの」
灯里「それはそうとこう大雪を見ると思い出すんだよねぇ…あの日の事を…」
―side:Akari Raijin―
アコの指示の元、風紀委員達は対策委員会と便利屋68の面々に対して攻撃を開始した。このゲヘナヨコチチハミデヤンもといアコ、他校の自治区にも関わらずこのやりたい放題っぷり、確実にアビドスを下に見てるわ…
えっ、イオリの脚を舐めて止めるように頼んだらって?そんな変態行為、私はしないよ?だってそんな事すればもしもしヴァルキューレ案件どころか下手したら弟子に逮捕されるわ。ショーもない事で弟子に逮捕される師匠なんで絵面、私が耐えられないわ。
『オーケーアロナ、ヒナに直通電話繋げて』
『わかりました先生』
困った時のアロナ=サン。彼女に頼めば自分から連絡先を探してタップする必要もなし!可愛くて癒しにもなる!それはそうと誰だよこんな可愛くて健気なサポートAIを青封筒渡してくる青い悪魔とか言った奴、大人しく正座でもしとけって…えっ、気軽に第4の壁を本編でもやるなって?嫌ならそっ閉じか飛ばせば良いと思うよ。
「もしもしヒナ?」
『先生、どうしたの?』
「お疲れのところごめんね。実はかくかくしかじかで―」
ヒナに繋がったので私は現状を伝えた。貴女の部下が他校の自治区で好き勝手にしてるけどO☆SHI☆O☆KIして良いかってね。事情を知ったヒナの返答は該当者に対する処罰は自分が下すし既にこっちに向かっているから待っててとの事。どうやらチナツが密かにヒナにチクったらしい。しかも丁度此方に向かっている最中だった宮子達とバッタリ遭遇して目的地が同じだったからという理由で合流して一緒に向かっている最中らしい。哀れアコ、貴女の
後は彼女達が到着するまで持ちこたえるのみ。
幸いなのは便利屋68の面々が私と対策委員会側に加勢してくれた事だろう。彼女達としては対策委員会の面々への謝罪もあるのだろう。
共闘は初めてなのにどちらも息の合った連携を取れている事が二組の練度の高さを物語っていると言えるだろう。
対する風紀委員側は数では優勢だしイオリみたいに実力者もいるけど大半は翻弄されてる。よく見るとバズートルが何機か行動不能になってたりするからね。
因みにチナツ曰く風紀委員の白兵戦力の半分位はヒナの実力が占めてるらしい。
これはあれだね、当のヒナ本人が実力者かつ真面目な働き者な事もあって誰かに頼らず彼女がやった方が早いなんて事になりがち→風紀委員の娘達は自覚あり無自覚問わずヒナに頼ってしまう→練度が落ちるなんてところかな。大勢の集団に仕事が無茶苦茶出来て真面目な働き者がいてその人物が全てを片付けてしまうと暇を持て余した末に怠け者になるが現れるのと似たパターンだね。
対策委員会や便利屋68、RABBIT小隊は少数精鋭かつ(おそらく)互いの苦手を補いあっているから私が見たところそういった様子はないんだよね。それに対しゲヘナの風紀委員はヒナを筆頭に上が優秀過ぎるが故にそうなりがちになるんじゃないかというのが私の考えだよ。
そうこうしている間に空からエネルギー弾が飛んできてバズートルをひっくり返した。亀だから何もない場所でひっくり返ると起き上がれないんだよねぇ…
皆が見上げると其処にはエネルギー弾を放った主もといジェノブレイカーの姿、そしてジェノブレイカーから垂らされたロープを伝ってRABBIT小隊の面々は降下した。
「此方SRT特殊学園です。直ちに戦闘を中止してください」
ミヤコは拡声器で皆に呼び掛けている。
「どうしてSRTが此処に…閉校になった筈じゃないかしら…!?」
アコはRABBIT小隊を睨み付けながら呟く。
「でもたかが4人加わった程度で―」
「精が出るわね、アコ」
「すみません、ヒナ委員長。少々手こずっていまして…えっ、ヒナ委員長!?」
アコが後ろを振り向くと仁王立ちしているゲヘナ学園風紀委員長たる空崎ヒナの姿があった。ヒナを目の当たりにしたアコは血の気が引いたのかその顔は青ざめている。
「先生からだいたいの事情は聞いたけれども…貴女の口からこの状況について説明してもらおうかしら」
「そ、それはですねぇ…便利屋の居場所が此処だと…突き止めたので捕えようと…」
「あーあとヒナさんや、この人私を自分のとこに引き入れるつもりらしいですわ。
『此方としては今後の勢力闘争にて先生がトリニティに引き入れられでもすれば不利になって困るので、こちらで迎え入れようと思いまして』って感じの事を言って。私は基本的に中立の立場でヤバげな状況だったり困っている娘には手を差し伸べるけど、勢力闘争にまで関わるつもりはないんですよ。無理にとは言わないけどみんなで仲良しこよしが出来ればなというのが私のスタンスで」
ある王様も言ってたじゃん、
アコは余計な事を言うなと言わんばかりに私を睨み付ける。いやぁ、その程度じゃまだ可愛いもんだし私を怯ませるにはまだまだだよ。こちとら対話不可な有機生命体殺すメタルクソトカゲと戦ってきたわ、それはもう百年以上も数えられないレベルで。
「えっと違うんです委員長」
「何が違うのかしら?私が貴女の企みに気付いていないとでも?大方、ゲヘナにとっての不安要素を排除する為に動いたのでしょう?」
あー長い付き合いじゃない私でも判るレベルでヒナちゃん激おこだよ。そして図星を突かれたのかアコは黙っちゃった。
「私達風紀委員の役割は治安維持であって為政者じゃない。そういうのは"万魔殿"の仕事よ。わかった?帰ったら反省文、書いて貰うから」
「は、はい…ヒナ委員長…」
最初の威勢のよさは何処へやら、アコはシナシナにしょぼくれていた。自業自得だけどね。
「あーあ、アコちゃん怒られて―」
「イオリ、貴女もノリノリだったそうね」
他人事の様に思っていたイオリだったけど、ヒナの視線は続けて彼女に向けられる。
「貴女も反省文、書いて貰うから」
自分も
これで一先ずは一件落着かなという所で
「うへ~、なんか大変なことになってるけど、これはどういう事かな?ね」
今まで連絡がつかなかったホシノがやっと現れた。。
「ホシノ先輩!今までどこ行ってたのよ!大変だったんだから!」
「ごめんね~セリカちゃん。ちょっとお昼寝が長引いちゃってさぁ~」
惚けた表情でセリカに訳を言うホシノ。そんな彼女の姿を目の当たりにしたヒナの表情は眉間に皺を寄せた状態から困惑へと変わった。
「小鳥遊ホシノ…てっきり"あの一件"でとっくにアビドスを離れたと思っていたけれど…」
「うへぇ?ゲヘナの風紀委員長ちゃん私の事を知っているんだ?」
あの一件…おそらくアビドス生徒会長が行方不明になっている件の事だろう。何故行方不明になったのか、ホシノとの間に何が起きたのかは分からないけど…
「貴女の情報は情報部時代にある程度こっちに入ってきたわ」
「ふ~ん、そう」
どうやらホシノは納得したようだ。その後、ヒナはホシノと対策委員会の面々に対し
「事前通達なしでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こした事について、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する」
と頭を下げて謝罪した。風紀委員会の長直々の誠実な謝罪に対策委員会の面々も怒りは収まったようだ。
そしてヒナは風紀委員達に撤退を指示、統率を取り戻した風紀委員達は一糸乱れぬ動きで行軍を始め、行動可能なバズートルは行動不能な個体を牽引する形で自分達の自治区へ向かった。
「そうだ、先生」
去り際にヒナは私を呼んだ。
「どうしたの?」
私は視線をヒナに合わせる。
「貴女に話したいことがある。これは直接話しておいたほうがいいと思って」
真剣な眼差しで告げるヒナに私も真面目に頷く。
「カイザーコーポレーションのことは知ってるでしょ?
「まぁね。連中が怪しいって事は弟子とから聞いてたからね。
その弟子と
「その通り、そして此処からはまだ万魔殿もティーパーティーも知らない情報だけど、貴女には知らせておいたほうが良いかもしれない」
そう言ってヒナはまだ周りに伝わっていない極秘情報を私に耳打ちする。
「そのアビドスの捨てられた砂漠。あそこで、カイザーコーポレーションが
デスレックスに似たゾイド…あっ(察し)…オイオイオイ、なんつーもんが眠ってるんだよアビドス砂漠…下手したらキヴォトスのパワーバランスが引っくり返りかねないぞ…それでこそ私や
「わかった。教えてくれてありがとう、ヒナ」
「じゃあまたね、先生」
ヒナは満足したように小さく微笑むとアビドス市街を後にした。
しかし、あのゾイドかぁ…ただでさえ連中にはオルディオスもいるのに…このままだと私達ですら手がつけられなくなるかもしれないね…かのゾイドが復元される前に動いた方が良いか…
ヒナを見送った後、辺りを見回すと遅れてきたホシノは対策委員会の面々に謝罪をしていた。相変わらずのらりくらりとした態度ではあるけれど。
そして便利屋68の面々の姿はなかった。
宮子曰く本来なら逮捕案件ではあるものの、被害者である柴大将が許し、対策委員会の面々も謝罪を受けた事と風紀委員会との戦闘時に自分達に加勢してくれたからという理由で今回は見逃してやってほしいと頼まれたそうだ。
因みに後日、柴大将が倒壊した柴関ラーメン店舗跡地を訪れると其処には多額の資金が入ったバッグが置かれてたらしい。
大将自身は店が無くなった事もあり引退を考えてたそうだけど、バッグの中に一緒に入っていた『また貴方の作ったラーメンを食べにいきます』と掛かれた紙から営業を続けて欲しいという思いを汲んで続ける事を決めて、退院後にその大金を使って屋台を建てて再出発する事になる。
尚、店を建てる前は屋台で経営してたとか。
…ところでその大金の出所になんとなーく心当たりがある気がするんだけど…まさかね…
―side out―
「…はぁ…」
「アルちゃん、さっきからため息ばっかりで手が止まっているよ」
「…はぁ…」
「さっきから社長、どうしたの?」
「やっぱり事務所を引っ越すのが嫌みたい」
アコの独断による風紀委員のアビドス自治区動員の一件の後、事務所に戻った便利屋68の面々は荷物を詰めていた。
というのも
「あ、あの鞄の大金もあのラーメン屋さんに全部置いて来てしまいましたし…」
そして灯里が出所に心当たりがあるというあの大金も対策委員会の面々によるカイザーコーポレーションの闇銀行襲撃の際にシロコが銀行員を脅した際に集金記録と共に渡され、ホシノの説得で捨てられたアビドス高校が返済した借金の利息である。
実はあの後、便利屋68の面々が発見して拾ったのだが、ハルカが言う様にアル達はあの拾った大金を鞄ごと柴関ラーメンの店舗跡地に弁償代として置いてきたのだ。
その結果、家賃を払えなくなり事務所を引き払う事になったという訳である。
「し、仕方ないのよ!アビドスに恩を仇で返す事なんて出来る訳ないじゃない!ハードボイルドなアウトローに私はなるんだから!」
「まったく…手のかかる社長だ」
「でも、それでこそアルちゃんだよ」
「そ、そうです!私が今こうして生きていられるのもアル様がいるからです!これからもお供します!」
カヨコは呆れながらも笑みを浮かべ、ムツキは楽しそうに笑みを浮かべ、ハルカは目を輝かせてそれぞれアルに対する思いを告白する。何度も言うがこの三人はアルの事が大好きなのである。それでこそアルはアウトローとして形に拘るが故に
「う、うるさいわよ!」
そんな3人の告白にアルは照れ隠しでそう叫ぶ。
「やっほーみんな」
そんな便利屋68の面々へ来客が訪れる。正体は勿論頼尽灯里その人である。
「先生、どうして此処に…」
突然の来訪に一同は驚き、代表してアルは灯里に訊ねる。
「お礼を言いにね。あの大金を置いたの、貴女達じゃないかなって」
(ば、バレてるー!?)
「な、何の事かしら?」
「あーしらばっくれるんだ。私、気付いているよ。貴女達が根は良い娘だってね。
それはそうと貴女達も生徒だからね、困った事があれば言ってね」
手を差し伸べる灯里に対しアルは先程までのテンパっていた様子から一変、キリッとした表情を浮かべると
「それは此方の台詞よ、先生。私達は依頼があれば何でもアウトローにこなす便利屋68よ!」
灯里の手を握り返し、ポケットから名刺を出すと灯里に渡すのだった。
To be continue…