遊戯王GX 例えばこんな受験生たち。   作:ジャッジメン

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●試験デュエルは1戦30分の時間制限付き。
●デュエルの勝敗は試験の合否には直接関係しない。
●試験中の言動は、合否の材料として判断される。
●「どのようなデッキを使っているか」で落とされることは無い。


デュエルアカデミア入試デュエル∶合否編
合格?不合格?


 その日、海馬ランドではデュエルアカデミアの入学試験が行われていた。

 

 現在は試験前半として、受験番号109番(110番は事前に電車の事故で遅れるとの連絡済み)から51番までのデュエルが行われている。観客席には、受験生の他にも、わざわざこの試験を見にやってきた本校の生徒たちの姿もちらほらとある。

 

≪受験番号、101番、萌江手 多居代(もえて たいよ)さん。試験デュエルを行いますので3番デュエルフィールドまで来てください≫

「は、はい……! ふ、ふふ、やっと僕の番が来たね……」

 

 受験番号と名前を呼ばれて、返事をしたのは、小柄な少年だった。長い前髪で目元は隠れ、猫背なせいで小さい体はさらに小さく見え、スニーカーにジーンズ、チェック柄の長袖。一昔前のいかにもといった感じの装いの多居代は、デッキを大事そうに抱えながら指定されたデュエルフィールドへと降り立つ。

 

「君が、萌江手多居代くんだね」

「え、あっ、は、はい……。そうです……」

 

 サングラスをかけ、髪をオールバックにしている試験官を前に、萎縮してもごもごと返事をする多居代。そんな彼に別のスタッフがデュエルディスクを渡す。多居代がまごつきながらデュエルディスクを左腕に装着したのを確認して、試験官は口を開いた。

 

「それではこれより、試験デュエルを行う。デュエルの勝敗そのものは、直接試験の合否にはならないから、安心して全力を出すといい」

「あ、は、はい……。ふぅ……」

「それでは、デュエル!」

「デュ、デュエル……!」

 

【萌江手 多居代】

【LP4000】

 

【試験官】

【LP4000】

 

「先攻は原則として、受験者からだ」

「は、はい……。それでは、僕のターン、ドロー。おっ?」

 

 引いたカードを見て、多居代の表情がぱあっと明るくなる。相当いいカードを引いたらしい、と試験官は内心で警戒度を高める。

 

「へへっ、僕はこの子を召喚します! 白魔導士ピケル!」

『やぁっ!』

 

【白魔導士ピケル】

【星2/魔法使い族/効果】

【ATK1200】

 

「さらに魔法カード、二重召喚(デュアルサモン)! このターン、僕は2回目の召喚ができる! 黒魔導士クランを召喚!」

『ふんっ……』

 

【黒魔導士クラン】

【星2/魔法使い族/効果】

【ATK1200】

 

 多居代の場に並んだのは、頭に山羊の角の飾りがついたフードを被った白い衣装の少女と、ウサギの耳のフードを被った黒い衣装の少女。観客席からは「かわいいー」という声がしている。

 

「星2のモンスターを2体か……。しかし、ステータスは低いようだな」

「ふ、へへ……へへへ……」

「君……?」

「ピケクラ揃い踏み、キタァァァァァァァァァァァァ!」

「な、なんだ?」

 

 俯き加減でおどおどとしていた多居代の変わりように、試験官は困惑した表情になる。そんなこともお構いなしに、多居代は両膝をついて両手を合わせて拝むポーズになるとソリッドヴィジョンで出現したピケルとクランを拝み始めた。

 

「うぉぉぉぉ! ピケルたんとクランたん! この日をどれどけ待ち続けたことか! ああ、カードイラストだけでもよかったけど、こうして目の前にするとあまりにも現実感が

すごい! これだけでご飯が3杯、いや5杯はいけるね! ソリッドヴィジョンのちからってすげー!」

「……こほん。今は試験中なのだが」

「ちょっと待って! いまそれどころじゃない! 僕は、いま、このピケルたんとクランたんを前にして堪能しているんだ! 邪魔をしないで頂きたいね!」

「君は何をしにここに来たんだ……?」

 

 試験官の呆れた言葉も最もである。結局多居代は、試験時間の30分を目一杯使って自分が召喚したピケルとクランを拝み倒していた。本当に何をしに来たんだこいつは。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 おかしなトラブルも挟みつつも、試験デュエルそのものは順調に進んでいた。80番台が終わり、70番台に差し掛かっていた。

 

≪受験番号71番、表裏 別打(ひょうり べつだ)さん。試験デュエルを行いますので7番デュエルフィールドまで来てください≫

「……」

 

 呼ばれて、すっくと立ちあがったのは、異様な男だった。剃り上げた頭に、瞳孔が開いた両目。耳にはピアスがいくつも付けられており、ダメージジーンズとストライプのシャツを着ている。その異様な見た目から、彼の周囲には人がいなかった。

 

「君が……表裏くんか」

「……」

 

 デュアルフィールドに降りた別打を待っていたのは、柔和な笑みの糸目の男性だった。現れた別打に少し驚きはしたものの、そこは過去何人もの受験者を見てきた試験官。すぐさま気を取り直すと、テンプレートなデュエル前の口上を口にした。

 

「このデュエルでは、勝敗そのものは合否には関係ない。よって、肩の力を抜いて全力でデュエルをしてほしい」

「……はい!」

 

 別打が口を開いた。いや、開いたというか唇はほとんど動いていない。それでも別打はその見た目とは裏腹に甲高い声で答えた。

 

「対戦、お願いします!」

 

 びしっ、と腰からお辞儀をする別打。礼儀正しくはあるのだが、彼がするとその見た目も合わさってどうにも異様に見えてしまう。

 

「そ、それでは……デュエル!」

「デュエル!」

 

【表裏 別打】

【LP4000】

 

【試験官】

【LP4000】

 

「先攻は原則、受験者からだ」

「わかりました! それでは、先行を貰います! ぼくのターン、ドロー! スタンバイ、メイン、まずはこのモンスターを召喚します! レッド・ガジェット!」

 

【レッド・ガジェット】

【星4/機械族/効果】

【ATK1300】

 

「レッド・ガジェットの召喚時効果! デッキからイエロー・ガジェット1体を手札に加えます! 何かチェーンはありますか!」

「いや、何もない」

「それではイエロー・ガジェットを手札に加えます! カードを2枚伏せて、エンドフェイズまで! ターン終了!」

 

 相変わらず見た目とは裏腹な高い声で終了宣言をする別打。彼の場にいるのは、いくつかの歯車が組み合わさり、その上から赤い装甲をまとっている小さなロボットだ。その後ろには裏側表示のカードが2枚。

 

「なるほど、堅実だな。それでは私のターン、ドロー! 私は激昂するミノタウルスを召喚する!」

 

【激昂するミノタウルス】

【星4/獣戦士族/効果】

【ATK1700】

 

「それでは召喚時に罠発動! 奈落の落とし穴! 攻撃力1500以上のモンスターが召喚・斑点召喚・特殊召喚された時、そのモンスターを破壊して除外します!」

「むっ……。除去カードだったか。私はこれでターンエンドだ」

「それでは、ぼくのターン! ドロー! スタンバイ、メイン、イエロー・ガジェットを召喚! デッキからグリーン・ガジェットを手札に加えます! 何かありますか!」

「ないよ」

「それではグリーン・ガジェットを手札に加えます! バトルフェイズに入り、2体のモンスターでダイレクトアタック!」

「ならば、手札からクリボーを捨てて片方のモンスター1体の戦闘ダメージを0にする」

 

 クリクリー! と鳴き声を上げながら小さな毛玉のようなモンスターが、攻撃力でわずかにイエロー・ガジェットを上回るレッド・ガジェットの攻撃を受け止める。

 

「ぼくはさらにカードを1枚伏せてエンドフェイズまで! ターン終了します!」

 

 再び伏せカードを出すと、別打のターンが終了する。

 

 それから別打は除去カードとガジェットのサーチ効果を使って堅実にデュエルを進めていき、試験官に勝利したのだった。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

≪受験番号66番、山札 葉化堕(やまふだ はかだ)さん。試験デュエルを行いますので2番デュエルフィールドまで来てください≫

「ふん……」

 

 アナウンスに呼ばれて、黒縁のメガネを掛けた少年が座っていた席から立ちあがる。デッキケースを手に、デュエルフィールドへと降りる。葉化堕の対戦相手となるのは、頭頂部の寂しい小太りの男だ。

 

「えー、わかっているとは思うが、このデュエルでは勝敗は直接合否に関係しない。とはいえデュエル中の言動やプレイングは考慮されるから、気をつけるように」

「ふふふ。それくらいはわかってますよ。早く始めましょう」

 

 デュエルディスクにデッキをセットし、起動させる。準備は万端だ。

 

「「デュエル!」」

 

【山札 葉化堕】

【LP4000】

 

【試験官】

【LP4000】

 

「先攻は……」

「原則受験者から、でしょう? ありがたく先攻は貰います。ドロー。ふふふ、私は手札から魔法カード、手札抹殺を発動。お互いに手札をすべて捨て、捨てた枚数分だけドローする」

「手札入れ替えカードか。5枚捨てて5枚ドローだ」

「私も手札を5枚捨てて、5枚ドロー。……残り30枚……」

「ん? 何か言ったかね?」

「空耳でしょう。魔法カード浅すぎた墓穴を発動します。お互いの墓地からモンスターを1体ずつ、裏側守備表示で特殊召喚します」

「む……。ならば墓地から絶対防御将軍を特殊召喚する」

「私が特殊召喚するのは、メタモルポット」

 

 葉化堕の場に、一瞬だけ壺の中から不気味な一つ目をギラつかせているモンスターが出現して裏側表示になる。葉化堕は不敵な笑みを浮かべたまま、慣れた手つきで手札からカードを取ると魔法・罠ゾーンのスロットに差し込んだ。

 

「カードを2枚伏せ、魔法カード太陽の書を発動。裏側表示のモンスター1体を表側攻撃表示にします。メタモルポットを表に。そしてメタモルポットの効果発動。このカードがリバースした時、お互いに手札をすべて捨て、デッキからカードを5枚ドローする」

「むぅ……」

 

 試験官は5枚の手札を捨て、5枚ドロー。一方の葉化堕は残り1枚だった手札が5枚になった。

 

「さらに魔法石の採掘を発動。手札のカード2枚を墓地へ送り、墓地から魔法カード1枚を手札に加える……。手札抹殺を手札に加えます。そしてモンスター1体をセットし、手札抹殺を発動。お互いに手札をすべて捨て、捨てた枚数分だけドロー」

 

 さらになる手札入れ替え。手札を捨て、ドローする枚数は試験官の方が多い。デッキの残り枚数が半分となり、薄くなったのを見て、試験官はここでようやく葉化堕の狙いを察した。デッキ切れによる、特殊勝利。

 

 デュエルモンスターズはルール上、ライフの取り合いで勝負をする。しかし中には、相手のライフを直接削らなくても勝利するデッキと言うものが存在する。それはかつて幻と言われた【エクゾディア】だったり、はたまた特定のカードを場に揃えることを目的とする【ウィジャ盤】だったりだ。これらはカードの効果による勝利だが、ルールにはデッキからカードを引けなくなると敗北する、と明記されている。そしてこれを狙って相手のカードを次々と墓地へと送り、デッキを0枚にしてカードを引けなくするのが【デッキ破壊】だ。プロでもエックスという決闘者が好むこの【デッキ破壊】だが、モンスター同士によるバトルといった見せ場も何もなく、ただ相手のカードを墓地へ送り続けるために、ウケはよくない。

 

 そしてそれはこの場においても同じだった。観客席からの冷めた目線を気にするでもなく、葉化堕はデュエルを続ける。

 

「速攻魔法皆既日食の書を発動。フィールドの表側表示モンスターをすべて裏側表示にします。そして伏せていたカードを2枚とも発動。成金ゴブリン2枚です。1枚につき相手のライフを1000回復し、私はカードを2枚ドロー。おや」

 

 2枚の成金ゴブリンの効果で、試験官のライフが6000まで増える。しかし葉化堕の使うデッキからすれば、そんなことは些細なことだ。いくらライフがあろうが、デッキを枯らしてしまえば勝てるのだから。そして成金ゴブリンの効果で引いた2枚のうち1枚を見て、葉化堕はふっ、と唇の端を上げる。

 

「太陽の書を発動。裏側表示のモンスター1体を表側攻撃表示に。メタモルポットをリバース。リバース時効果でお互いに手札をすべて捨て、デッキから5枚ドロー」

 

 再び表になるメタモルポット。試験官にその効果を止める術はないため、効果処理に従って手札を入れ替えるしかない。半分になっていたデッキが、いよいよキルラインへと指が掛かる。

 

「ぐ、さっきから手札の交換ばかりしおって! まともにデュエルをする気はないのか!」

「そう言われましても、私のデッキはこういう戦術ですので……。3枚目の成金ゴブリンを発動。相手を1000回復させ、デッキから1枚ドロー……。おや、どうやら今日の私はついているようだ。魔法石の採掘を発動。手札を2枚捨て、墓地の魔法カード1枚を手札に。回収するのはもちろん手札抹殺。これを手札に加え、カードを2枚伏せて手札抹殺を発動。さあ、手札を捨ててカードをドローしてください」

 

 今回2度目の手札抹殺により、試験官の手札が交換される。デッキはもう、見るからに薄くなってしまっている。

 

「……私はこれでターンエンドですが、エンドフェイズ時に皆既日食の書の効果が発動します。相手の場に裏側表示モンスターがいる、場合それらすべてを表にし、表にした数だけ相手はカードをドローする」

「な、まだ引かせるというのか!」

「ええ。皆既日食の書の効果処理ですから」

 

 ふふふ、と怪しい笑みを浮かべる葉化堕。残りのデッキ枚数的に、この効果で詰むことはないが、それでも都合30枚近くのカードがデッキから消えている。しかし止める術はないので試験官は渋々カードを引いた。長かった葉化堕のターンが終わり、試験官にターンが回る。しかし、彼がついぞカードをプレイすることは無かった。

 

「伏せカードを発動。砂漠の光と月の書。まずは月の書でメタモルポットを裏側にし、続いて砂漠の光で私の場のモンスターはすべて表側守備表示となる。リバースしたのはメタモルポットとニードルワーム。まずはニードルワームの効果で相手のデッキを5枚墓地へ送り、メタモルポットの効果でお互いの手札をすべて墓地へ送り、5枚ドローしますが……この効果で5枚ドローできなかったプレイヤーは、デッキ切れとして敗北する!」

 

 葉化堕の場に伏せられていたカードが表向きになり、天井から淡い光が降り注いでメタモルポットが裏向きになり、その直後に強い日差しが裏側になっていたモンスターを表向きにする。メタモルポットと、そして全身にトゲの付いた毒々しい色合いの芋虫が、姿を現す。残り数枚しかないデッキが、さらに削られ、そしてメタモルポットの効果で5枚のカードをドローできなかったために、試験官の敗北となった。

 

「ぐっ……試験デュエルは受験者である君の勝利だ。だが……こんな戦い方をして相手に申し訳ないと思わないのかね」

「いいえ? どんな戦い方でも、ルールに則っている以上は合法ですからね。それでは、失礼します」

 

 一礼して、葉化堕はその場を去る。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

≪受験番号61番、雑魚多 見区日(ざこた みくび)さん。試験デュエルを行いますので2番デュエルフィールドまで来てください≫

「俺の番だな! よっしゃあ!」

 

 逆立つような赤い髪が特徴的な少年が、デュエルフィールドへと突撃する。ついさっき【デッキ破壊】で冷めた目線を向けられていたところに、それとは真逆な暑苦しいテンションの少年がエントリーした。

 

「デュエル! お願いします!」

「今度は威勢がいいのが来たな……。それではこれより、試験デュエルを始める。このデュエルの勝敗は合否には直接関係しないが、デュエル中の言動等は結果に少なからず響くものとして考えるように」

「わかったぜ! 俺と俺のデッキも全力でぶつかるぜ!」

「……本当に分かっているのか……? まあいい」

 

「「デュエル!」」

 

【雑魚多 見区日】

【LP4000】

 

【試験官】

【LP4000】

 

「先攻は貰うぜ! ドロー! よし、まずはモンスターを1体セット! そしてカードを3枚伏せる! ターンエンドだぜ!」

 

 威勢の割には静かな立ち上がりの1ターン目。試験官はいぶかしみながらも、自分のターンを開始する。

 

「こちらのターンだ。ドロー。まずは……」

「おっと! まずは永続罠を発動だぜ! 光の護封壁! ライフを3000払い、攻撃力3000以下のモンスターは攻撃できなくなるぜ!」

「ロックデッキか……。仕方ない、アックスレイダーを攻撃表示、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 見区日のフィールドと試験官のフィールドを隔てるように、光の防壁が出現する・支払われたライフ、3000ポイント分の強度を持つそれは、最上級モンスターでなければ突破できないまさに鉄壁の守りだった。

 

「俺のターン! まずは裏側表示のモンスターを反転召喚! デス・ラクーダ! こいつが反転召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローできる! 1枚ドロー! そして魔法カード二重召喚発動! これで俺はこのターン、モンスターを2回召喚できる! 来てくれ、番兵ゴーレム! イナゴの軍勢!」

 

 石で出来たゴーレムと、無数のイナゴが群れを成したモンスターが、それぞれ見区日の場に現れる。観客席からは「なんだあの雑魚モンスター」という声が聞こえてくる。

 

「番兵ゴーレム、イナゴの軍勢、デス・ラクーダの効果発動! こいつらは1ターンに1度、裏側表示にできる! ターンエンドだぜ!」

 

 自分の効果で裏返る見区美日のモンスターたち。ドロー効果を持つデス・ラクーダと同じく自ら裏側表示になれるということは、番兵ゴーレムとイナゴの軍勢もまた、反転召喚かリバースをすることで何かしらアドバンテージを得られるのだろう。

 

「私のターンだ、ドロー。まずはその邪魔な防壁を破壊するとしよう。魔法カードサイクロンを発動。フィールドの魔法、罠カードを1枚破壊する」

「させないぜ! カウンター罠魔宮の賄賂! 相手の魔法、罠カードの発動を無効にして破壊! そして相手はカードを1枚ドローするぜ!」

「む……。ターンエンドだ」

 

 除去カードをカウンターカードでいなされ、それ以上何もできない試験官はターンを見区日へと渡す。

 

「俺のターン、ドロー! 反転召喚! デス・ラクーダ! 番兵ゴーレム! イナゴの軍勢!」

 

 見区日の場にいるモンスター3体が表になる。全身に包帯を巻いたラクダ、石で出来たゴーレム、イナゴの群れが、それぞれの特殊能力を発動する。

 

「まずはデス・ラクーダの効果で1枚ドロー! 番兵ゴーレムの効果で相手モンスター1体を手札に戻す! そしてイナゴの軍勢で魔法、罠カード1枚を破壊だ!」

 

 手札を補充し、さらに試験官のフィールドをガラ空きにする見区日。

 

「バトルだぜ! デス・ラクーダ、番兵ゴーレム、イナゴの軍勢の3体でダイレクトアタック!」

 

 1体1体は大した攻撃力ではないが、3体揃えばその合計攻撃力は上級モンスターにも匹敵する。試験官のライフが一気に半分を切った。

 

「デス・ラクーダ、番兵ゴーレム、イナゴの軍勢の3体を裏側表示に! カードを1枚伏せてターンエンドだぜ!」

 

 再び3体のモンスターが裏側表示になる。それはつまり、次の見区日のターンになれば効果を再使用できるということだった。1ドローに、モンスター1体と魔法・罠カード1枚の除去。それが毎ターン繰り返されるのである。

 

「私のターン、ドロー!」

「罠発動! 魔封じの芳香! このカードがある限り、魔法カードは一度セットしてからでないと使えないぜ!」

 

 甘い香りが場に充満する。それは、たったいま大嵐のカードを引き当てた試験官にとっては絶望と言ってもいいカードだった。

 

「ぐ、ぐぬぅ……。カードを1枚伏せる。アックスレイダーを召喚して……ターンエンドだ……」

 

 苦し気な表情をしながらも、場にカードを出してターンを渡す試験官。例え無駄になると分かっていても、何もせずにただ殴られて終わるというのは、デュエリストとしてのプライドが許さなかったのだ。

 

「俺のターン! ドロー! デス・ラクーダ、番兵ゴーレム、イナゴの軍勢を反転召喚! それぞれの効果を発動するんだぜ!」

 

 デス・ラクーダで1枚ドローし、番兵ゴーレムがアックスレイダーを手札に戻し、イナゴの軍勢が伏せられていた大嵐を食い荒らして破壊する。試験官の場にカードは、もうない。3体のモンスターが襲い掛かり、ライフが0になった。

 

「試験はこれで終了だ。合否は追って郵送される。……君、なぜ弱小モンスターを並べるデッキを?」

「これが俺の魂のカードたちだからだぜ!」

 

 それだけ言うと、見区日は「対戦ありがとうございました!」と手を振りながら走って去って行った。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 試験デュエルはつつがなく進み、ついに上位二桁台へと進む。

 

≪受験番号10番、三下 周理(みくだ まわり)さん。試験デュエルを行いますので2番デュエルフィールドまで来てください≫

「おせぇよ! いつまでこの俺様を待たせてんだ!」

 

 派手な色合いの髪の毛を逆立て、耳にはピアスを開け、首元には銀色のチェーンを下げている男が、悪態をつきながらもデュエルフィールドへと向かう。待っていたのは、いかにも優男風といった感じのメガネを掛けた男性だ。

 

「君が三下周理くんだね? これから試験デュエルを始めるけど、このデュエルでは……」

「ああ、そういうのいいから! どうせこの俺様が勝つんだし、勝敗がどうとか関係ねえよ! さっさとデュエルディスクを構えろよおっさん!」

「……。そうか。それでは……」

 

「「デュエル!」」

 

【三下 周理】

【LP4000】

 

【試験官】

【LP4000】

 

「先攻は受験者から、だっけか? 俺様は後攻が欲しいから、先攻は譲るぜおっさん!」

「い、いや、原則として……」

「うるせぇ! ごちゃごちゃ言うな! どうせ俺が勝つんだからおっさんは言う通りに先攻取ればいいんだよ! これは俺様のせめてもの慈悲ってもんだぜ!」

「……そこまで言うのなら、私の先攻。ドロー」

 

 オラついている周理には何を言っても無駄だと判断して、試験官は先攻を取る。この時点で、心証は大分悪くなっているのだがそれに気づく周理ではなかった。

 

「私は、起動砦のギア・ゴーレムを守備表示で召喚。さらに永続魔法カオスシールド。この効果で守備モンスターの守備力を300アップする。2枚発動し、600ポイントアップだ」

 

 2枚のシールドが重ね掛けされ、ギア・ゴーレムの守備力が2200から2800にまで上昇する。ここまでくれば、並大抵のモンスターでは突破することは難しい。しかし周理はそれを見てハッ! と馬鹿にしたように笑う。

 

「なんだその雑魚モンスターは? こんなのしか出せないなんて、デュエルアカデミアっていうのも程度が知れるってなもんだよな! オイ! 俺様のターンだ! ドロー!」

 

 まだ試験官がターンの終了宣言もしていないにもかかわらず、無視して自分のターンを始める周理。

 

「俺様は強欲な壺を発動! デッキからカードを2枚ドロー! まだだ! 天使の施し! デッキからカードを3枚ドローして2枚捨てる! 早すぎた埋葬! 800ライフを払って墓地のダークホルスを特殊召喚! ハリケーン! 早すぎた埋葬を戻してもう一度発動! 墓地のトライホーンを特殊召喚! さらにカードを1枚伏せて、永続魔法王家の神殿も発動!」

 

 迷いのないカード使いで、一気に2体の最上級モンスターを揃えて見せる周理。王家の神殿により、このターンに1度、伏せた罠カードも発動できると、準備を整える。

 

「オラ、バトルだァ! ダークホルスでその雑魚モンスターを粉砕! そしてこの瞬間罠発動! 破壊神の系譜! 相手の守備の雑魚モンスターを破壊したターン、俺様のレベル8モンスターは2回攻撃ができる! トライホーンで2回ダイレクトだ、くらいやがれ!」

 

 トライホーン・ドラゴンの攻撃力は2850、2回の攻撃を受けて、試験官のライフは瞬く間に0となった。

 

「ギャハハハ! どんなもんだ俺様のデュエルはよ!」

「……試験デュエルは終了。合否は後日、郵送される……。君のデュエルタクティクスは素晴らしいものだ……だが……」

「あぁ? なんだおっさん、この俺様に説教垂れようってのか? 表出るか?」

「いや……なんでもない。とにかく、結果は後日だ」

「ケケケ、結果はもう決まってるようなもんだけどなァ! さぁて、あとは他の雑魚どもはどんな無様なデュエルしてるのか見物するか!」

 

 下品な笑い声を上げながら、周理はその場を後にする。結局、強力なカードを使いひなす実力者こそあれど、その態度は実に悪いものであった。




最初は試験当日に体調崩して家にこもってる息子の代わりに試験受けに来た母親、とか出そうと思いましたがさすがにヤバ過ぎたのでボツに。
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