遊戯王GX 例えばこんな受験生たち。 作:ジャッジメン
●デュエルの勝敗は試験の合否には直接関係しない。
●試験中の言動は、合否の材料として判断される。
●「どのようなデッキを使っているか」で落とされることは無い。
追加の受験者を思いついたので、第2弾です。
海馬ランドではデュエルアカデミアの実技試験が行われていた。現在は試験前半、109番から51番までの試験デュエルが、10のデュエルフィールドに分かれて行われている。
1回のデュエルは30分の時間制限があり、受験番号と名前を呼ばれても1分以内にデュエルフィールドへと現れなかった場合は、試験放棄と見なしてその時点で評価が下されることになっている。
試験デュエルに挑む受験生たちの表情は様々だ。余裕があるもの、不安そうにしているもの、緊張しているもの……。しかしそのいずれでもないものがいた。観客席の隅、人気のない場所でカードを手にしている男。
彼は手に持ったカードのテキストを熱心に読み込んでいた。それだけであれば、大事な試験デュエルの前にデッキの見直しをしているようにも見えるだろうか。だがその男が手にしているカードを見れば、誰もが困惑の表情を浮かべるだろう。その男が熱心にテキストを読んでいるカード……それはカードの縁が
≪受験番号88番、
「おっと、俺の番か……。ふ、ふふふ……筆記はダメだったが、このカードがあれば実技はいける、いけるぞ……!」
ぶつぶつと呟きながら、指定されたデュエルフィールドへと降りていく託史。彼を待っていたのは、前髪をきっちりと七三分けにしている几帳面そうな試験官だった。
「君が、白黒 託史くんか。もうすでに知っているとは思うが、この試験デュエルの勝敗が直接試験の合否になることはない。このデュエルはあくまで、君のタクティクスや、デュエル中の相手へのリスペクト精神などを見るものだ。それでは、試験デュエルを開始する」
「は、はい」
お互いにデュエルディスクにデッキをセットし、起動する。キュイィィィン……という独特の機械音と共に、ソリッドヴィジョンシステムが、中空にライフ4000の表示を示した。
「「デュエル!」」
【白黒 託史】
【LP4000】
【試験官】
【LP4000】
「先攻は受験者からだ」
「わ、わかりました。俺のターン、ドロー……! よし、召喚僧サモンプリーストを召喚!」
託史のフィールドに、濃い紫色のローブに身を包んだ白い髭の老魔術師が出現する。攻撃表示で呼び出された老魔術師は、よっこいしょと言う声が聞こえてきそうな動作でその場に座り込んで胡坐をかく。
【召喚僧サモンプリースト】
【星4/魔法使い族/効果】
【ATK800→DEF1600】
「サモンプリーストの効果! このカードが召喚に成功した時、このカードを守備表示にする! そして、手札の魔法カード1枚を墓地へ送ることで、デッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚できる!」
手札にあった魔法カード1枚をコストに、デッキから1枚のカードを取り出す託史。それはカードの縁が黄色の、何の効果も持たない通常モンスターカードだった。
「俺がこの効果で呼び出すのは、チューナーモンスター、エンジェルトランぺッター!」
「……チューナー?」
聞き慣れない単語に、試験官の眉が少し上がる。サモンプリーストの召喚から、効果を使用して攻撃力1900のモンスターを呼び出したのは、80番台の受験者としては中々のタクティクスだ。
それはそれとして、その呼び出されたのが「チューナー」モンスターという聞いたことのない単語が付いているのは疑問だったが。そしてそのチューナーとやらを呼び出して見せた託史は、不敵な笑みを浮かべて見せる。まるで今から面白い物を見せてやる、と言わんばかりである。
「ふふふ、すぐにわかりますよ! 俺は、レベル4のサモンプリーストに、レベル4のエンジェルトランぺッターをチューニング! 現れろレベル8のシンクロモンスター!」
託史は自分のフィールドにいる2体のモンスターで、
「……は? な、なんで出せないんだよ!?」
混乱した様子で、白いカードを何度もデュエルディスクに読み込ませようとする託史。しかし何度やっても、結果は同じだ。デュエルディスクはエラーを吐き出している。
「……君は何をやっているんだ? チューナーだのチューニングだのと……」
「あ、す、すいません! ……くそっ、これがダメならこっちだ……! 俺はレベル4のモンスター2体で、オーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! 出ろ、ランク4エクシーズモンスター!」
ピィィィィィィィィィィィィィィ―――
モンスターゾーンに戻したサモンプリーストとエンジェルトランぺッター、ともに
「な、なんで……なんでだよ!? くそ、あのおっさん、俺を騙しやがったのか!? ラッキーカードだとかなんだとか言ってたくせに、使えなきゃ意味ねえじゃねえか!」
出そうとしていたカードをデュエルフィールドに叩きつけて、試験官からすれば訳の分からないことを喚き散らす託史。これ以上のデュエル続行は無理だと判断し、試験官はデュエルディスクを待機状態に戻した。
「はぁ……。君が何をしたいのかはわからないが、これ以上の試験デュエルの進行は無理だと判断する」
「ま、待ってくれ! 俺はまだやれる! こんな、こんなカード無くたって、俺はまだデュエルを続けられるんだ!」
「君、ここがどこか分かっているのか? デュエルアカデミアの入学試験を行う試験会場だ。
「ち、ちが、これは変なおっさんに騙されて!」
「……混乱しているようだな。誰か、彼を医務室まで連れていってくれ」
「俺は、俺はまだやれる! あのおっさんに騙されただけなんだぁぁぁぁぁぁ!」
叫び声を残して、駆けつけてきた警備員に連行される託史。試験官はため息を一つ吐いてから「次」と告げるのだった。
◆◆◆
ちょっとした騒ぎもありつつ、試験デュエルは続く。いよいよ80番台も終わりに近づいてきた。
≪受験番号81番、
「ひゃ、ひゃい!」
自分の番号と名前を呼ばれて、小柄な少女が座っていた席で体を跳ねさせる。指定されたデュエルフィールドは、さっき
ついさっきトラブルがあった場所でのデュエルか……と気は進まないものの、ぐすぐずしていれば1分経過で試験放棄と見なされてしまう。それも困る。杉は「うぅ~」と小さく唸り、やがて意を決してデュエルフィールドへと降りていった。
対峙するのは、先ほどの七三分け試験官である。彼は杉にもさきほどと同じことを言ってデュエルディスクを起動した。
「「デュエル!」」
【考江 杉】
【LP4000】
【試験官】
【LP4000】
「あ、あたしのターン! ドロー!」
先攻は原則として受験者である。杉はデッキからカードをドローすると、初手6枚を見て「うむむ」と思案する。モンスターカードが2枚、魔法が2枚、罠が2枚。いずれかに偏るでもなく、バランスのいい初手だと言っていいだろう。
「えぇと……まずはこのカードを……ううん、それだと返しのターンに……あ、でもこのカードがあるから……」
手札のカードを見ながら、ああでもないこうでもないと悩む杉。デュエルにおいて、カードを使うのに考えることはよくあることだ。手札を見て直感的に展開パターンを構築してカードを出すというデュエリストは、それほど多くはない。
「……この試験デュエルは、30分の制限時間がある。長考するのは構わないが、その分だけデュエルの終了時間は迫っている」
「あ、そ、そうですよね……ごめんなさい……。え、えっと……あ、あたしはルイーズを攻撃……ううん、守備表示……いや、やっぱり攻撃……いや、守備表示で、出します!」
【ルイーズ】
【星4/獣戦士族/通常】
【DEF1500】
試験官に促され、ようやく手札のカードを手にするも、今度はどちらの表示形式で出すかを悩んだ結果……ようやく攻撃表示で、鎧を着こんだネズミのモンスターを守備でフィールドに出す杉。この時点で、試験デュエルの時間は10分ほどが経過していた。
「それで、えぇと……えぇと……」
「ふむ……。制限時間は残り20分だ」
「ひゃっ!? えと、えっと……! ターンエンドします! ……あ……」
手札にはまだ魔法も罠もあったが、残り時間がを告げられて頭が真っ白になり、結局10分ほどかけてモンスター1体を守備で出してターン終了の宣言をしてしまった。
「私のターン、ドロー! 私は手札からレッサードラゴンを召喚!」
【レッサードラゴン】
【星4/ドラゴン族/通常】
【ATK1200】
試験官のフィールドに、深緑色の鱗のドラゴンが現れる。星4モンスターながらそのステータスは貧弱そのものであり、ルイーズが攻撃表示ならばまだしも、守備表示の状態である。戦闘を仕掛ければ、攻撃を弾かれて試験官が逆にダメージを受ける。
「(あ、よかった……これなら耐えれるかも……)」
「私は装備魔法ビッグバンシュートをレッサードラゴンに装備! 攻撃力を400ポイントアップする!」
「えっ!?」
【レッサードラゴン】
【ATK1200→1600】
レッサードラゴンのステータスを見て、このターンはルイーズで凌げると思っていた杉は、次に試験官が発動したカードに驚きの声を上げる。ビッグバンシュート、ステータス上昇値こそ控えめではあるが、ルイーズの守備力を僅かに上回るにはそれで十分だった。
「バトル! レッサードラゴンでルイーズに攻撃! さらにビッグバンシュートの効果! 装備モンスターが守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていればその差の数値だけ相手に戦闘ダメージを与える!」
「きゃっ!」
攻撃の余波が、僅かに杉のライフを削る。たったの100ポイント。されど100ポイント。そしてこのダメージは、杉が手札のカードを伏せていれば受けてなかったダメージでもあった。手札には防御用のカードがあったというのに、長考のし過ぎで焦ってターンを終了した結果、ルイーズは破壊されライフも削られてしまったのである。
「私はカードを伏せる。ターンエンドだ」
杉よりも遥かに早くターンを終了する試験官。時間にして2分も掛かっていない。カップラーメンもギリギリ規定時間にならないくらいである。
「あ、あたしのターン、ドロー!」
引いたのはモンスターカード。最初のターンと同じく、モンスター2、魔法2、罠2のきれいに種類が湧かれている手札である。試験官のフィールドには、装備魔法でステータスの上がっているモンスター1体と、伏せカードが1枚。今の杉の手札に、魔法、罠カードを何とかできるカードは無かった。
「えーと……」
モンスターを出す? それか魔法、罠を伏せる? 杉の脳内で思考がぐるぐる回る。モンスターを出して、召喚反応型だったらどうしよう。レッサードラゴンを倒すために攻撃して、攻撃反応型だったら。何でもないブラフの可能性もある。ならモンスターを出さずに魔法、罠カードを出してターンを渡すか? しかしそれで次のターンにハリケーンや大嵐を引かれた場合、困ったことになる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。またも考えこむ杉の様子を見て、試験官は腕時計にチラリと目をやった。……そろそろ、制限時間が近い。試験官もまた少し考えるとその判断を下した。
「……この試験デュエルはここまでとする」
「えっ!? な、なんでですか!?」
「制限時間が来たからだ。この試験デュエルには30分の制限時間がある、と先ほども言ったはずだ。それにも関わらず長考を繰り返したことで、制限時間が来てしまった。それだけだ」
「そんな……」
実際には、制限時間まではまだ少し猶予はあった。しかし、これ以上は続けても結果は同じだろうと試験官が判断し、切り上げたのである。長考することは、それ自体が必ずしも悪いわけではない。
しかし今回のように、一戦の時間が決まっていたり、自分のターンの持ち時間がある場合には、それは自分の首を絞める結果となる。杉は食い下がろうとして、結局何も言えずにとぼとぼと観客席に戻って行くのだった。
◆◆◆
少々のトラブルもありつつ、試験前半が終了。昼休憩を挟んで後半の試験デュエルが行われていた。ちなみに実技試験の受け付けは、前半の試験デュエル終了と共に閉められている。その直前にギリギリになって、受験票を手に滑り込んで来た少年がいたが……それはまた別の話である。
≪受験番号42番、
「すー……すー……」
受験番号と名前が呼ばれたが、眠りこけている少女が一人。胸元に操縦桿を手にした猫と「この人間を操縦しています」という文字が躍るTシャツに、黒い上着の少女……寝瑠火は、大事な実技試験の場だというのに夢の中だった。
「君、呼ばれているぞ」
「んぁ……?」
見かねた誰かに肩を揺すられ、寝瑠火は夢の世界から現実へと戻って来た。まだ眠い目をこすりながら、その起こしてくれた誰かに「誰?」と疑問を投げる。
「俺のことはいいさ。それより、早く行かないと失格になってしまうぞ。7番フィールドだ」
「あー……もうそんな時間か……。起こしてくれてありがとー。それじゃ、行ってきまーす」
ふぁ……とあくびをしながらもデュエルフィールドへと降りていく寝瑠火。そんな彼女の後ろ姿を、白い服に髪をオールバックにしている少年は見送っていた。
デュエルフィールドに降りた彼女を待っていたのは、柔和な笑みをした糸目の男性試験官だった。
「燃矢氏 寝瑠火さんだね……。随分と眠そうだけど、前日は眠れなかったのかな?」
「ふぁ……。えーと、昨日は夜遅くまでゲームしててー。クリアするまでやってたら、いつの間にか朝になってた感じ……ふぁ……ねむ……」
「そ、そうか……。しかし、体調管理もデュエリストとしては大事だよ」
「そーゆーのいいんでー、早く始めません? わたし、いまちょー眠くて」
「……そうだね。それでは、始めようか」
試験前の体調管理は、受験者に求められるものの一つだ。今回の実技試験に限らず、自分の体調を整えておくことは、デュエルをするうえでも重要である。なぜなら体調の良し悪しはそのまま、己のプレイングにも影響するのだから。
咄嗟の判断や高いデュエルタクティクスが要求される場面で、体調が悪くて判断力が鈍って負けました、などお話にもならない。そういう意味では、寝瑠火はこの時点で減点対象だった。
「デュエル!」
「でゅえる……ふぁぁ……」
【燃矢氏 寝瑠火】
【LP4000】
【試験官】
【LP4000】
「先攻は受験者から……だっけ? あたしのターン、ドロー……。うーん、手札抹殺、使いまーす」
「お互いの手札をすべて捨て、捨てた枚数分だけドローするカードか……」
一番最初に使われたカードを見て、試験官は午前中にいたという【デッキ破壊】使いの受験者の話を思い出した。まさか同じデッキタイプの受験者が二人もいるとは考えにくいが、どうしても警戒はしてしまう。
「おっ、来たね来たねー。それじゃあ、この子を召喚しまーす」
【連弾の魔術師】
【星4/魔法使い族/効果】
【ATK1600】
「! そのモンスターは!」
寝瑠火のフィールドに現れたのは、両手に杖を持った魔術師の男。試験官はそのモンスターに覚えがあった。ステータスだけ見れば、下級モンスターとしては平均的。しかし問題はその効果にある。
「ふぁ……。眠いんでー、速攻、決めちゃいますかー。まずは魔法カード埋葬呪文の宝札を発動。墓地の魔法カード3枚を除外して、2枚ドロー。そんで、通常魔法カードが発動したから相手に400ダメージね」
「くっ!」
連弾の魔術師が、試験官に向けて魔法弾を発射する。その一発自体のダメージはそれほど高くない。だがこのモンスターが脅威なのは、条件を満たせばその魔法弾を連射できることにある。何発もの魔法弾を連続して撃つことで、相手のライフを削り切るデッキ……いわゆる【バーンデッキ】に分類されるタイプのデッキの一つである。
「それじゃ、昼夜の大火事とー、火炎地獄を、発動しまーす。相手に1800のダメージを与えて、あたしは500ダメージっと。通常魔法カードを2枚使ったから、連弾くんの効果は2回発動ね」
たった数枚のカードを寝瑠火が使っただけで、試験官のライフは3000ポイントほど焼かれてしまう。あと1枚火炎地獄を発動するか、それとも通常魔法を2、3枚使えば、リーサルが取れる。そして、寝瑠火の手札には当然、まだバーンカードは残っていた。
「それじゃ、これで最後かなー。火あぶりの刑発動ー。連弾くんの効果で400ダメージもおまけで」
合計ダメージはぴったり1000。試験官の残りライフと同じ数値が引かれ、ジャストキルとなった。
「……私の負けか。合否は後日、郵送で送られる」
「はーい……。ふぁ……。それじゃ、おつっしたー」
最後まであくびをしながら、寝瑠火はその場を後にするのだった。
◆◆◆
大半の受験者のデュエルが終了し、残るはいよいよ筆記試験を好成績で突破した上位10名となった。受験番号10番の、威圧的な見た目をした男がデュエルフィールドに降りていくのを見て、ゆるくウエーブの掛かった金髪の少女は「なんですの、あの野蛮人は」と嫌悪感も露に呟いていた。
≪受験番号8番、
「あら、わたくしですわね」
自分の受験番号を呼ばれた亜琉余は、すっと立ち上がりデュエルフィールドへと向かう。そこで待っていたのは、目元を前髪で隠した試験官だった。
「まぁ……あなたがわたくしの担当ですの? なんともパッとしない、モブ顔ですのね……」
「モブ……。こほん、もう知っているとは思うけれど、この試験デュエルの勝敗は試験の合否には直接関係しない。けれど、デュエル中の振る舞いは評価に入るから、気をつけて」
「ええ、ええ。存じておりましてよ。このわたくしは見栄丈家の長女。評価に響くような醜態など晒しませんわ」
「はは、そうか。それじゃあ、試験デュエルを始めよう」
「「デュエル!」」
【見栄丈 亜琉余】
【LP4000】
【試験官】
【LP4000】
「レディファーストですわ! わたくしのターン! ドロー! わたくしはルビードラゴンを召喚しますわ!」
【ルビードラゴン】
【星4/ドラゴン族/通常】
【ATK1600】
亜琉余のフィールドに現れたのは、本来であればルビーのような色合いの鱗を持つドラゴン。しかしソリッドヴィジョンで現れたそれは、
「うっ、これは……!?」
その輝くルビードラゴンに、試験官は思わず光を遮るように手を顔の前にやる。……デュエルモンスターズのカードには、レアリティがある。光らないノーマルカードや、イラストが光るスーパーレア、そしてカード名とイラストが光るウルトラレア。
これらのカードは通常、ソリッドヴィジョンで強烈に発光したりはしない。カードが光っていても、デュエルディスクを通してまで光らせる必要性はないからだ。しかし、そのデュエルディスクを通しても光り輝くカードというものがある。
それが……パラレルレアのカード。カード自体も薄っすらと極彩色に輝くこのレアリティのカードたちは、ソリッドヴィジョンでもその輝きを放つことで知られている。このレアリティのカードは希少性があり、効果の有無やステータスの高い低いに関わらず高値で取り引きされている。
「これぞ見栄丈の持つレアカード! モブ顔の庶民には滅多にお目にかかれないカードなのですわ!」
あーはっはっはっ! と高笑いをする亜琉余。盤面だけ見れば下級モンスター1体を召喚しただけなのだが、希少性のあるレアリティのカードを持つ、というだけで庶民に金持ちマウントを取るには十分だった。
「わたくしはこれでターンエンド! さあ、あなたのターンですわ!」
「僕のターン、ドロー。……あのモンスター、倒したらなんか面倒そうだな……けど、これは試験デュエルだしなあ……」
「何をぶつぶつと言っていますの? わたくしのパラレルレアのルビードラゴンに恐れをなしたというのなら、特別に降参を認めて差し上げてもよろしくてよ!」
試験官の手札には、ルビードラゴンを倒せるカードはある。しかし、相手はパラレルレアのルビードラゴン1体を出しただけでドヤ顔をするお嬢様だ。そのご自慢のルビードラゴンを倒したら何を言い出すか。とても面倒だという気持ちと、これは仕事だという気持ちで心が二つになる。当然サレンダーするという選択肢はない。そんなことをしたら、それこそ上司に何を言われるか分かったものではない。
「んー……いや、仕方ないか。僕はランプの魔精ラ・ジーンを召喚」
【ランプの魔精ラ・ジーン】
【星4/悪魔族/通常】
【ATK1800】
「バトルだ! ラ・ジーンでルビードラゴンを攻撃!」
「な、な、なんてことをしてくれましたの! わたくしのルビードラゴンを倒すだけでは飽き足らず、わたくしの、わたくしのライフにまで傷をつけるなんて! あなた! このデュエルが終わったら覚悟しておくことね!」
「いや、そんなこと言われてもこれは試験デュエルなんだけど……」
「お黙りなさい! もう許しませんわ! 謝っても許しませんわよ! わたくしのターン! ドロー!」
パラレルレアのルビードラゴンを倒された怒りに任せて、カードをドローする亜琉余。試験官がターン終了の宣言をしているかどうかなどお構いなしである。
「わたくしは魔法カード召喚師のスキルを発動! デッキからレベル5以上の通常モンスター1体を手札に加えますわ! エメラルドドラゴンを手札に!」
当然のようにパラレルレアな魔法カード召喚師のスキルで、デッキからこれもパラレルレアのエメラルドドラゴンを手札に加える。亜琉余が使った数枚のカードだけでも相当な値が付きそうだが、仮にデッキのカードがすべてパラレルレアのカードだったならば、それだけで一財産になるだろう。
「さらにわたくしは古のルールを発動! 手札よりレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚しますわ。来なさい、エメラルドドラゴン! まだですわよ、サファイアドラゴンも通常召喚!」
【エメラルドドラゴン】
【星6/ドラゴン族/通常】
【ATK2400】
【サファイアドラゴン】
【星4/ドラゴン族/通常】
【ATK1900】
亜琉余のフィールドに、2体のドラゴンが出現する。本来ならばその名前の通りにエメラルドとサファイアの輝きを持つ鱗が美しい2体のドラゴンは、その名前とは無関係にパラレルレアの極彩色の光を全身から放っている。とても目に悪い発光具合だ。このパラレルレアのカードたちのソリッドヴィジョンを作製した者は、一体何を考えてこんな輝きにしてしまったのだろうか。
「これで終わりではありませんわ。手札より死者蘇生を発動! 墓地のモンスター1体を特殊召喚しますわ。蘇りなさい、ルビードラゴン!」
もはや当然の権利のように極彩色に発光する死者蘇生のカードが、亜琉余の墓地からモンスターを呼び戻す。あっという間に、極彩色の輝きでデュエルフィールドをあまねく照らすドラゴンが3体、揃い踏みになった。
「いきますわよ、サファイアドラゴン! そのモンスターを粉砕なさい! サファイアブレス!」
亜琉余の指示を受けて、元はサファイア色だったドラゴンが、ブレスを放つ。ランプから出てきた悪魔はそのブレスに飲み込まれて破壊され、試験官のライフを僅かばかり削り取った。これで試験官のフィールドはガラ空き。残る2体のドラゴンの攻撃から身を守る術はない。
「エメラルドドラゴン、ルビードラゴンでダイレクトアタック! この不届きものを成敗しなさい!」
合計のダメージはぴったり4000。2体のドラゴンの攻撃は、試験官のライフを消し飛ばした。
「試験デュエルは終了……。合否は後日郵送されるから」
「ふん、この程度のデュエル、勝って当然ですわね。それとあなた、わたくしのルビードラゴンを倒したこと、お父様に言いつけますわ!」
言うだけ言うと、亜琉余はその場を去っていった。
白黒 託史に謎のカードをくれたおじさんは、デュエルアカデミアの実技試験を受ける少年に貴重なカードを譲ってくれました。(そのカードが使えるとは言ってない)