遊戯王GX 例えばこんな受験生たち。   作:ジャッジメン

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合否発表

 海馬ランドでデュエルアカデミアの入学試験、その実技試験が行われてから2週間。筆記と試験デュエルの結果によって出された合否通知が、受験者たちの元へと届いていた。

 

 無事合格した者、惜しくも不合格になった者。理由は様々だが、結果は合格か不合格か2つの内どちらかだ。以下は、試験デュエルに挑んだ受験者たちの、その一部の様子である。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号101番/萌江手 多居代】

 

 その日、多居代のところにデュエルアカデミアからの合否通知が届いた。A4用紙ほどの大きさの封筒は、非常に薄い。そのことに不安を感じながらも、多居代は恐る恐る封筒を開けて中を見た。

 

 中には1枚の紙が入っており、萌江手 多居代 様。から始まるそれは、彼の不合格を通知する旨が書かれていた。

 

「そんな……筆記頑張ったのに……がっくし」

 

 そう言って肩を落とす多居代。彼の試験デュエルでの行動や、筆記の順位を考えればむしろ合格する方がおかしいのだが……。頑張った、という割には筆記も100番台でギリギリの順位であり、試験デュエルも何をしていたかと言えば、30分の制限時間の間自分が召喚したモンスターに興奮していただけ。事実上試験デュエルを放棄したも同然であり、合格する可能性など万に一つもなかった。

 

「はあ……。バイトでもするかあ……」

 

 落ちてしまったのならしょうがない、と切り替えの早さだけは発揮して、多居代はデュエルアカデミアからの通知書を丸めてごみ箱に捨てたのだった。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号88番/白黒 託史】

 

 試験デュエルで強制退去の憂き目にあった託史にとって、デュエルアカデミアから送られてきたそれは、傷心に塩を塗りたくられるにも等しいものだった。あの苦すぎる一件から2週間。なんとか忘れようと努力していたところに、デュエルアカデミアからの不合格通知である。否が応にもあの時の記憶がよみがえる。

 

 そもそもあの日、海馬ランドの会場前で怪しい男に数枚のカードを渡されたのがすべての元凶だった。その男は何やらくたびれた様子であり、目には諦観が宿っているように見えた。よれよれのスーツの内ポケットから、数枚のカードを取り出し「これからデュエルアカデミアの試験に挑む君にあげよう。ラッキーカードだ」と手渡してきた。あまりにも怪しさしかなかったが、大事な試験前に手持ちのデッキではやや不安もあった託史は、それを受け取ってしまった。そして、そのテキストをざっと読んで、その強さに驚愕したのだった。

 

 筆記の順位は88番。100番台ほどギリギリではないが、それでも試験デュエルでそれなりの成績を残さないと合格は厳しいだろうライン。そこに突然現れて、この時代基準としても相当強力なカードを渡してきた男。託史はそれを受け取り、召喚するための簡単な説明を受けて、そして意気揚々と試験デュエルに挑み……結果として、試験官の判断で強制退去させられたのである。

 

「何が残念ながら不合格だよ……あのカードさえなければ、今頃俺は……クソッ!」

 

 デュエルアカデミアから届いた不合格通知を破り捨ててごみ箱に捨てる託史。ロクに試さずもせずにあの白黒のカードを使ったのは自分だが、あくまでも悪いのはデュエルで使えもしないカードを渡してきたあの男だ。自分は騙された被害者なのだ。そんな鬱屈した気持ちを抱えながら、託史はベッドに寝転がる。

 

「あのおっさん、今度見つけたらただじゃおかねえ……」

 

 自分がこんなことになった元凶である男を思い浮かべてそんなことを呟き、託史は瞼を閉じるのだった。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号81番/考江 杉】

 

 杉の元に届いたのは、1枚の不合格通知だった。驚きはしなかったし、半ば確信もしていた。

 試験デュエルで長考のし過ぎで、試験官に制限時間を理由にしてデュエルを途中で終了させられた。勝敗は合否には直接は関係ないとはいえ、途中終了したとなれば、筆記の結果が相当よくない限りは合格は難しい。

 

 それは杉自身もよくわかっていることだっただけに、こうして不合格通知を前にしても落ち込みはしても納得もしていた。デュエル中に考えすぎることは、昔からよく指摘されていた。自分でもそのことについては欠点だという自覚はある。しかし実際のデュエルでカードを前にすると、どうしてもあれこれと考えてしまうのだ。そのせいでフリーデュエルでトラブルになったこともしばしばある。

 

 そんな欠点を自覚しながらも矯正しきれなかった結果が、今回の不合格通知だ。誰かのせいでもなく自分の落ち度である。それをわかっているからこそ、杉は気持ちを新たにした。次こそはデュエルアカデミアに合格してみせる、と。今回は落ちてしまったが、まだ来年も機会がある。そのためにもまずは、自分の長考癖を直さなければならない。杉はスマホを手に、電話帳にある数少ない番号の中から、一つをプッシュした。

 

「―――というわけで、手伝ってほしいんだ」

≪いいよー。でもアカデミアの試験に落ちて、落ち込んでるかと思ったけど、案外大丈夫そうだね?≫

「うん……。けど、来年に向けて落ち込んでる暇なんかないから……。だから、頑張らなきゃ!」

≪おー、気合入ってるねー≫

 

 友人のマチにビデオ通話を繋げた杉は、気合いを入れる。自分の悪い癖である長考を直して、今度こそは合格を手にできるように。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号71番/表裏 別打】

 

 いつもの日課であるパントマイムを通りで披露した別打は、帰宅すると一つの封筒が届いていることに気がついた。それはデュエルアカデミアからの合否通知。手に持ってみるとそこそこの分厚さがある。

 

 家の中で封を切って中身を見てみれば、それはやはり合格した旨を伝える書類と、入学に際して必要となる手続きの書類一式が同封されていた。

 

「……これで、僕もデュエルアカデミアの学生か」

 

 感情の起伏を感じさせない声で別打は呟く。筆記の方は70番台と平均よりもやや下の方だったが、実技試験には堅実に【除去ガジェット】でデュエルしたのが功を奏したのかもしれない。あの試験デュエルでは最終的にエースでもある起動砦ストロングホールドを召喚することもでき、別打としても満足のいく一戦だった。

 

「デュエルアカデミアか……。どんなところなんだろう。楽しみだなあ……」

 

 入学手続きの書類を手に、別打はまだ見ぬ学校生活に思いをはせるのだった。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号66番/山札 葉化堕】

 

 葉化堕の元に届いたのは、デュエルアカデミアからの少し厚みのある封筒だった。

 

 中身は合格を通知する書類と、入学手続きの書類。

 

「……合格するかどうかは半々と言ったところだと思っていましたが、どうやら私は運が巡っているようですね」

 

 指定されている制服の色は赤。つまり、デュエルアカデミアでも一番下の扱いを受けるオシリスレッドに配属されるらしい。筆記の順位こそ平均に近かったものの、実技試験では【デッキ破壊】という世間では嫌われ者なデッキを使っていただけに、ギリギリのところで合格を拾えたようだ、と葉化堕はそう判断する。

 

 デュエルモンスターズのデュエルでは、派手なものが好まれる傾向にある。攻撃力の高いモンスターによるバトルだったり、重い召喚条件をクリアして出される大型モンスターだったり。とにかく、モンスター同士による殴り合いこそがデュエルの華、という考えを持っているデュエリストは多い。モンスターによるビートダウン戦術はデュエルの状況が分かりやすいし、攻守の増減カードを駆使するやり取りの応酬も見ごたえがある。

 

 だからこそ、モンスターのバトルを行わないデッキ、というのは主流から外れたものとして隅に追いやられやすい。特殊勝利を追求するデッキや、相手のライフを直接焼き切るバーンデッキ、そして葉化堕の使う【デッキ破壊】は、今のデュエル環境の主流から外れている。特に相手のデッキを墓地に送って、デッキキルを仕掛ける【デッキ破壊】はその中でも特に嫌われていたりする。

 

 特殊勝利やバーンデッキは、まだ見せ方の工夫という余地があるものの、デッキ破壊にはそれがない。とにかく相手のデッキを枯らして勝つ、というデッキコンセプトと戦術パターンは地味であり、そして相手のカードを墓地に送り込み続けるという行為が、陰湿であるという印象を持たれているのだ。

 

 もちろん副次的な効果で手札やデッキのカードを墓地に送るカードやコンボはあるものの、デッキ破壊そのものをメインとすることは、後ろ指をさされても文句が言えない……今の環境ではそういう扱いをされている。葉化堕もそれは分かっているが、それでも【デッキ破壊】を使っていた。

 

「デュエルアカデミアの実技試験は使用するデッキを不合格の理由にしない、でしたか……。まあ、真偽のほどはさておき、今は合格したことを喜ぶとしましょうか。ふふふ……」

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号61番/雑魚多 見区日】

 

 その日、見区日の元に届いたのは薄い封筒だった。中には、デュエルアカデミアの入学試験の結果が不合格であるという通知。封筒の薄さから、なんとなく察してはいたもののいざ目の前にする、気分が落ち込む……のは一瞬のことで、見区日はすぐに気を取り直した。

 

「入学試験に落ちたのは残念だけど、チャンスはまた巡ってくるはずたぜ! そうだよな! 相棒たち!」

 

 デッキケースを掲げてそう言う見区日。デュエルアカデミアの入学試験に不合格だったのは正直残念だったが、それはそれとして道が閉ざされたわけではない。いつかはまた別の道も開けるだろう、友人たちからも暑苦しいと称されるポジティブな思考を見区日はしていた。

 

 ……見区日の合格か不合格かのラインは、かなりギリギリのところであった。筆記の順位はほぼ平均、実技試験での態度も、テンションこそ少々暑苦しかったものの特にこれと言って印象が悪くなるようなものではなかった。ではなぜ彼は不合格なのか。それは彼が使うデッキにあった。

 

 光の護封壁、魔封じの芳香といったロックカードを駆使して相手の行動を大きく制限し、何度も効果を使えるサイクルリバースモンスターで場を荒らして詰めていくという戦い方はいかがなものかと、議論になったのである。相手の行動を阻害し、下級モンスターを並べて戦う、というのは別打も同じような戦術ではあったが、彼の場合は3種類のガジェットモンスターがいれば攻撃力3000になるというエースカード、起動砦ストロングホールドの存在がある。

 

 しかし見区日は、終始3体の低ステータスモンスターを裏側表示にして反転召喚させ相手の場のカードを破壊したりバウンスし、相手の攻撃は3000ライフを払った護封壁で防ぎ、さらに魔法カードの発動を遅らせる魔封じの芳香で除去対策もする、という徹底したメタ・ロック戦術だったというのが、減点対象となったのである。

 

 相手に何もさせずに勝つ、という点では葉化堕のデッキ破壊も議論にはなっていたのだが、プロデュエリストにも使用者がいる、という点などもあり、ギリギリのギリギリで葉化堕が合格者枠の定員数に滑り込んだ、という背景があった。

 

 もしこれで見区日もデュエルの詰めに大型のエースモンスターでも召喚していれば、結果は違ったかもしれない。しかし、既にこうして結果は出された。デュエルアカデミアのの裏事情も見区日は知る由もなく。少しの差が、2人の受験者の明暗を分けたのだった。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号42番/燃矢氏 寝瑠火】

 

「寝瑠火ー、そろそろ起きなさい」

「んぁ……」

 

 母親の声に促されて、寝瑠火は目を覚ました。時計を見れば、時刻は11時。朝食というには遅く、昼食というには少し早い時間だ。それでも体は正直なもので、くぅ、と小さく腹の虫が鳴った。

 

「お母さん、何か食べるものある……?」

「あんたの分の朝ごはんがすこにあるわよー。食べるならさっさと食べちゃいなさい」

「ふぁ……はぁーい……」

 

 見れば、テーブルの上にはラップの掛けられた皿があった。焼かれたパンとジャムに、目玉焼きとベーコンにサラダ。すでに冷めてしまっているが、寝瑠火は何も言わずにもしゃもしゃと食べ始めた。

 

「あ、そうそう。あんた宛に封筒来てたわよ」

「んぁ?」

「デュエルアカデミアからだって。入学試験の結果じゃない?」

「あー、そうかも?」

 

 遅めの朝食を食べながら母親に渡された封筒を開けて中を見る。そこには数枚の手続き用の書類と、そして合格を通知する書類が入っていた。

 

「お母さん、なんか合格してたっぽい」

「あら、ほんと? なら色々と用意しないといけないわね。それに、アカデミアって全寮制なんでしょ? 3年間は会えなくなるなんて、寂しくなるわね」

「ふぁ……。さすがに長い休みくらいはあるでしょ。その時には帰って来るって」

 

 そんな会話を母親とする寝瑠火。彼女もまた、合格という意味ではわりとギリギリのところにいた。筆記の順位はよかったものの、実技試験の前日には夜更かしをして体調管理が出来ておらず、それが元で試験中に何度もあくびをしていたというのもあり、減点対象になっていた。

 

 合格と不合格のギリギリのラインにいたのだが、試験終了後に、急に受験者の一人が辞退を申し入れた。その辞退者が入学試験の合格ラインにいたこともあり、女子の枠が一つ空き寝瑠火はそこに滑り込んだのである。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号10番/三下 周理】

 

 その日、周理は荒れていた。それはもう荒れていた。どれくらい荒れていたかと言えば、オレンジジュースをコップに注がずにパックから直接飲んで冷蔵庫に戻すくらいには荒れていた。

 

 ……耳にピアスを開け、髪を派手な色に染めて逆立てているという派手な見た目のわりには、やっていることが子供レベルだった。

 

「くそ、なんでこの俺がオシリスレッドなんだよ! あの試験官のおっさん、負けた腹いせにオシリスレッドにしたんじゃねえだろうな!」

 

 試験デュエルの時に対戦した、メガネを掛けた優男風の試験官を思い出す周理。もちろん一介の試験官程度にそんな権限はないのだが、そんなこと知る由もない周理は「今度会ったらボコしてやる……デュエルで!」と呟いていた。

 

「もう、(おに)ぃうるさい。いいじゃんオシリスレッドでも。(おに)ぃって赤色好きじゃん」

「あん? 確かに俺は赤は好きだがよ、オシリスレッドっていえばデュエルアカデミアでは一番の下っ端なんだよ。つまりこの寮にいるやつらはもれなく落ちこぼれって目で見られるんだよ。他の色の寮の連中に、格下だと思われるんだぞ、我慢ならねえよ。大体俺の実力ならオベリスクブルーだろ」

 

 ソファで寝転んでスマホを弄っていた妹に、そう力説する周理。ちなみにデュエルアカデミアの高等部からの入学は、最高でもラーイエローまでであり、高等部時点でオベリスクブルーになるのはその下の中等部で成績優秀だったものと、女子だけである。

 

 妹はスマホから目を上げて、まだぶつくさと文句を言っている周理を見た。

 

「なら(おに)ぃを馬鹿にしてくるようなやつはみんなぶっ倒しちゃえばいいんじゃん。デュエルでぶっ倒してさ、力の差をわからせるの。(おに)ぃがいつもやってることを向こうでもすればいいだけの話じゃない? それに、アカデミアって寮の昇格もあるんでしょ? オシリスレッドからでも、すぐにオベリスクブルーまでいけるって。成り上がりモノとか(おに)ぃ好きじゃん」

「寮の昇格? そういや、そんなのもあるらしいな……。いや、そうか。邪魔な奴はみんなぶっ倒して上に上がっちまえばいいのか。逆転の発想ってやつだな! 妹よ、お前はやっぱり賢いな!」

「別に。それくらい誰でも思いつくでしょ」

 

 そう言って再び手元のスマホを見る妹。周理はすっかりその気になって、「底辺からの成り上がり、やってやるぜぇ!」と叫んでいた。直後に「(おに)ぃ、マジうるさいから黙って」と妹に冷たく言われてしょぼんとなっていたが。

 

 筆記の順位はトップ10以内、試験デュエルでも大型のドラゴン族モンスター2体を連続で召喚し、試験官の場のモンスターを粉砕してワンターンキルをしてみせた腕前の周理がなぜオシリスレッドなのか、それは、試験の際にピアスや銀のチェーンをしていたことや試験官への態度が減点対象になったからである。不合格にされてもおかしくはなかったのだが、そこは筆記試験の結果や、早すぎた埋葬とハリケーンのコンボによる大型モンスターの連続召喚といった腕前が評価された結果、オシリスレッド入りということで落ち着いたのである。

 

 ………

 ……

 …

 

【受験番号8番/見栄丈 亜琉余】

 

 亜琉余は、使用人から渡されたデュエルアカデミアからの封筒を持って、屋敷の廊下を足早に移動していた。向かうは父の仕事部屋も兼ねる書斎である。筆記は言うまでもなく実技試験も危なげなく突破した亜琉余は、当然、合格の通知を受け取っていた。

 

 見栄丈家の者として、筆記の順位はもう少し……できれば2位くらいには……高いのが望ましかったのだが、トップ10以内に入っただけでも、及第点とは言えた。そして試験デュエルでは見栄丈家の持つレアカードを使って当然のように勝利を収めて見せた。……残念ながら完璧な勝利とは行かなかったが、それでも勝ちは勝ちである。

 

「お父様……!」

 

 息を切らして、父の書斎へと入る。父は書斎机でどこかと電話をしていたが、亜琉余が入って来たのを横目で見ると、娘が来た、と相手に少し待つように伝えると受話器を置いた。

 

「どうした、亜琉余。何か用か?」

「は、はい。あの、お父様。デュエルアカデミアから合格通知が届いたのです」

「そうか。合格おめでとう、亜琉余。見栄丈家の長女であるお前なら、合格は当然の結果だな。……用件はそれだけか?」

「あ、えっと……はい……」

「そうか。……ああ、私だ。先ほどの件だが……」

 

 父は形だけのねぎらいの言葉を口にすると、置いていた受話器を取って再び話し始めた。もう亜琉余には興味などないと、一瞥もくれることはない。

 

「……失礼、いたしました……」

 

 そんな父の姿を見て、亜琉余は書斎を後にする。……父と娘の会話としては、あまりにも淡々としていた。デュエルアカデミアの入学試験の合格。世間では狭き門とされ、実際その倍率も毎年非常に高いことで知られている。

 

 その門を通ることができるのだ、褒められることを期待していなかったと言えばそれはウソになるが、それにしても娘に掛ける言葉が上辺だけの労いの言葉というのもどうなのだろうか。

 

 デュエルアカデミアは四方を海に囲まれた絶海の孤島にあり、その立地上、全寮制である。そして入学してから卒業するまでは、長期休暇以外では家に帰ることはできない。つまり一度デュエルアカデミアに行ってしまえば卒業するか退学するまでは、滅多に会うこともできなくなる。……今の父であれば、そのこともさほど気にしなさそうだ。

 

 亜琉余ははしたないと思いつつも袖で目元を強めに拭うと、入学手続きの書類に手を付けるべく歩き出したのだった。

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