多分続きません。
前略
俺こと、
……我ながら頭のおかしい自己紹介だ。でも事実だからしょうがない。
で、現実を逃避を止めて前を見ようか。
俺の目の前に立っているのは……何だろうな、こう、人型でちゃんとした頭身のゴブリンというか鬼というか、小鬼? そして武器らしき杖も持ってる奴もいるから、あからさまな雑魚戦闘員。
それが複数。
で、俺の後ろに老夫婦二人。
うん、俺が逃げたら襲われるのはこの人達だ。
これが知らない人達ならまだしも、一食と寝床のご恩があるんだなコレが。
つまり
『nanda,nanigaokotta!?』
『hirumuna! aiteha1rida!』
「goooooo!!!!」
俺はこの訳がわからん奇声を上げている化物相手に戦い、勝たなきゃいけんと言うことだ。
……やっぱもうちょい現実逃避しとくかぁ。
ーーーーーーーー
「あんた! あんた! 大丈夫かい!?」
「意識はあるか!? 生きてるか!?」
「う、うん……?」
事の始まりは、道で倒れていた俺を老夫婦の
西原さん達が持つ畑の目の前で、俺は倒れていたらしい。
近くにバイクが転がっており、西原さん夫婦は俺が事故にでも合って倒れたと思ったそうだ。
が、肝心の俺はと言うと。
ぐ、ぐ~~~
「お腹、減った……」
その一言を最後に、意識を失った。
そんな間抜けにも見える俺の事を西原さん達は一先ずと家に上げてくれて、しかも布団を敷いて寝させてくれた。
更には、気絶前の腹の音からご飯を用意してくれたという聖人ぶり。
そして目覚めた俺に対して
「おや、おはよう。ご飯食べるかい?」
「え……?」
「お前さん、意識を失う前に大きな腹の音を立てていたよ? 遠慮しなさんな」
「え、いや、あの」
ぐ~~~
「あっ」
「はっはっは、腹の虫は正直だね!」
とまぁ、事情も分からない他人の俺に対して飯まで食べさせてくれたのだ。
もはや聖人越えて仏である。
そんで食事を終えて一息着いた頃。
「婆さん、今日の分は終わったぞー……って、起きたのか。あんたのバイクはうちの車庫に置いとるから安心しろよ」
「あ、ありがとうございます……」
「良いって事よ、こんな田舎に人が来ること自体珍しいんだ。歓迎しないとな、ハッハッハ」
そう豪快に笑いながら帰って来たのが
そして菊子さんが俺に尋ねる。
「それでお前さん。こんな田舎で事故なんて起こして、何しに来たんだね? 一応言っておくと金目の物は無いよ」
「おう! ここらには畑しかねぇ! ま、その野菜を盗りに来たってんなら見る目があるがな!」
また「ガッハッハ」と笑った豪さんに対して、俺は困惑と共に縮こまりながらこう答えるしかなかった。
「い、いや、そんなつもりは……無い、と思います」
「そうか? そんじゃ本当に何でこんな所来たんだ?」
「案外、訳ありって事かね?」
「訳ありっていうか……あの、ここはどこで俺は誰なんでしょうか?」
「「はい?」」
記憶喪失。
それが俺の状態だった。
自分が誰なのか分からない、どこから来たのかも分からない。
言葉や物については覚えているが、
そんな状態だった。
「記憶喪失とは、なんとも不思議な事もあるもんだなぁ」
「ふぅむ、何か思い出せるような物なんてねぇ……ここには畑以外は何も無いし」
「……あの。おかしいとか、思いませんか?」
「いんや別に。あんたが悪い奴には見えんし、嘘を付いてるようにも俺には見えん」
「それに私達がお前さんを見つけた時、ちょうど事故に遭ったみたいだったからね。その影響って考える方が自然さ」
もう優しすぎて涙が出そうだったよね。
普通、自称記憶喪失の人間とか怪しすぎるってのに。自然と助けようとしてくれた西原さん達には感謝しかできない。
今後一生、足向けて寝れないよ。
「あぁ、そうだ。一緒に拾ったバイク、あれとか見てみるか?」
「お、珍しく頭が働いたね爺さん。それにバイクに乗ってたんなら免許証なんかも持ってるんじゃないかい?」
「あっ」
菊子さんの言葉でハッとした俺は、自分の服のポケットをひっくり返して、それを見つけた。
財布と、携帯端末と、そして。
「なんだ? これ、カード……か?」
Eと中心に描かれただけのカード。
そして手の平サイズの謎のバックル。
それが、妙に目に入った。
手に取って見たら、頭の中で
次の瞬間には忘れてしまったけれど。
「お、財布の中にあったぞ! これ免許証だろ!」
「あっ、はい!」
「どれどれ……
「俺の、名前……」
漸く分かった俺の名前。
なのに、どこか違和感……というか、ふわふわとした感覚がだった。
まるで、どこか遠い人の名前のような……
記憶喪失だからか? と、深く考え込んでしまう俺。
「これ、俺の名前ですかね?」
「そりゃそうだろうよ。少なくとも免許証の写真とあんたの顔はあたしの見た通りだと同じだ、あんたは紛れもなく景井コウキさ」
「景井、コウキ……」
「名前を見ても聞いてもイマイチか、こりゃ明日にでも病院に連れてった方が良さそうだね」
「保険証なんかも入っとる。しかし……免許証の住所も掠れて読めんな、トウキョウ、か?」
「トウキョウ……」
その地名を聞いた瞬間、また頭にチリっとした熱さが過ぎる。
住所って事は俺が住んでた……いや、俺が住んでる場所?それがトウキョウ……知っているような知らないような感じで、俺の中で興味が湧いた。
「トウキョウったらお前、かなり遠くから来たんだなぁ」
「え、そんなに遠いんですか? トウキョウ」
「そうだなぁ……バイクなら一週間って所か?」
「い、一週間……」
「ふーむ。ま、戻るにしろ明日、病院で検査を受けてからにしな、それで記憶が戻れば万々歳さ」
「……そうですね」
「あぁ、そういえば携帯合ったろ。色々分かるんじゃないか?」
「そうか、試してみます!」
「おう」
豪さんに言われて、携帯から過去を調べられると気付いた俺。
ロック画面のパスワードで絶望しかけるも、指紋認証が付いていることに気付いて一喜一憂を繰り返す。
西原さん達はそんな俺を微笑ましげに見ていた。
そして、画面のロックを外して携帯を見てみると……
「な、何にもない……?」
「あらまぁ」
「あー……事故の衝撃で壊れたか?」
「そ、そんな」
真っ白な状態になっていた俺の携帯。
膝から崩れた俺に、西原さん達が手を置いてくれたのだが流石にショックが隠せない。
俺の過去、その情報は本当に財布だけになった。そしてその財布も、免許証と保険証以外には幾らかの金銭があるだけ。
つまり、手詰まり。
「あー……なんだ、元気出せよコウちゃん」
「そうよ、明日病院に行った後に携帯ショップにも寄りましょう。コウちゃん」
「ありがとうございます……コウちゃん?」
「おう。コウキだからコウちゃん」
「そ、そうですか」
なんとも言えない呼び名に、思わずたじろいでしまった。けど今考えれば西原さん達なりの励ましというか、俺のショックを和らげようとしてくれたんだろう。
「さてと、明日の予定も決まったことだしそろそろ休むか。コウちゃんも、詳しくは明日だ」
「コウちゃんも、行く所は無いでしょ? あの布団使っていいから泊まっていきな」
「……何から何まで、お世話になります」
「良いって事よ!」
「そうよ、困った人は助けないとね」
豪さんと菊子さんの言葉に、事実としてここ以外行く場所も待つ場所も無い俺は、厚意に甘えて西原さんの家に泊まることにしたんだが……時計を見てふと思った。
「あれ? まだ夕方の6時前? こんなに早く休むんですか?」
「ん? おう、この季節なら日が落ちるのが早いからな……俺としてももう少し畑に居たかったけれど、日が沈むと「カイマ」が出るからな」
「カイマ?」
「コウちゃん、カイマまで忘れたのかい」
「えっと、はい?」
「そりゃ大変だ、教えないとな」
どうやら重要な一般常識らしい「カイマ」
その記憶を無くしている俺に対して、菊子さんが教えてくれた「カイマ」とやらについて。
曰く、それは昔からこの国に存在している怪物。
曰く、それは理由は定かでは無いが人々を襲う。
曰く、それは普通の人の攻撃では倒せない。
そして、菊子さんが続ける。
「カイマの奴らは基本的に太陽が沈んだ後に出てくるのさ、明かりがあれば家にまでやって来る。ま、気を付けろとしか言えないけどね」
「今の時期は特にカイマの奴らが動き出すのが早くなるからな。気を付けた方が良い」
「滅茶苦茶危ないじゃないですか!?」
「おう、だから日が落ちたら灯りを消して、家の光が漏れないようにしっかり戸締まりして寝るのが一番さ」
「まぁ、それでも襲われる事はあるけどね」
「えぇ!?」
「はは、安心しろよ。ここらでカイマが出たことは俺の人生でも一回も無い。それに最悪襲われたら……狩人様が来てくれるさ」
「狩人様?」
カイマについて教えられる中で、また新しい単語が出てきた。
狩人。
話の流れからカイマを狩る者だとは理解できるが、同時に教えられた普通の人では倒せないという言葉が引っかかる。
そして更に、その狩人やカイマの話を聞くたびに俺の中で何かがチリチリと反応していた。
「カイマを倒す人の事さ。狩人なんて言うのは昔の言い方だよ、今は……国の対カイマ特殊部隊の仮面、ナントカだったかね?」
「要はカイマが出てきても国の人達が頑張って倒してくれるってこった」
「へぇ……」
「ま、ここから最寄りの町まて2時間は掛かるけどな。その間は自力でどうにかするしかねぇ」
「いやダメじゃないですか!?」
「おう、だから早めに休むんだよ。ハッハッハ」
そんな不安になりそうな情報を教えられた後に、風呂や歯磨きなんかも貸して貰って休むための準備を終える。
流石に着替えは無かったが、それでも風呂に入ると何となく安心感があった。
そして、豪さんと菊子さんは俺の布団がしかれている部屋の灯りを消して二人の部屋へと向かって行く。
「おやすみ、コウちゃん」
「明日は朝一番に病院に行くからな、早起きしろよ~」
「はい、おやすみなさい」
西原さん達におやすみといった物の、俺は直ぐには寝付けない。
……カイマや狩人、その言葉が気になりながら何度もそれらに付いて思い出そうとして、気が付かば俺の意識は落ちていた。
ーーーーーーーー
チリチリと、
目を開けばそこは辺り一面火の海だった
炎が無いのは俺の立っている場所と、もう1つ。
俺の目の前、そこに誰か……いや、
「誰だ!」
思わず叫ぶ。
俺の声に呼応するように、炎が照らし出す。
そこに居たのは、
黒を基調に、銀と赤色の装甲。
良く見れば装甲には機械回路のような模様が描かれている。
そして鋭い角を生やし、中心に一本の線が通ったマスク。その蒼い複眼が俺を見つめている。
「ぐっ!?」
俺は唐突に襲ってきた頭痛に思わず頭を抑える。
なんだ……?
いや、違う。
頭に浮かんだ疑問を塗り潰すように酷くなる頭痛。それでも俺は、抱いた疑問を持ちながら戦士を見続けた。
そしてーーー
「…………」
戦士が、右手で俺を指差した後に開いた手を俺に伸ばす。
まるで俺を
「なんだ、お前は、俺の記憶……ぐっ!?」
頭痛を耐えきれずに思わず膝を付く俺。
そんな姿を見て、戦士がコツコツと足音を鳴らしながら近付いてくる。
そしてまた、差し出される掌。
……これを掴むことは簡単だ。
きっと楽になれる。
そういう確信がある。
でも……
「ふざ、けんな……! 俺は、俺だ!!」
そう叫んで、戦士の手を払い除けた。
この手を取れば楽になる、けどその代わりに何かを失う。
そう感じた。
だから俺は戦士の手を払い除けて、自力で立ち上がる。両足で地面を踏み締めて、頭痛なんて構わず自らの意志で立つ。
「舐めるな……!」
睨み付けるように、同じ高さになった戦士の複眼を見つめる。
戦士は一瞬驚いたようだが、俺の何かにが気に入ったのか満足そうに数度頷いた。
そして戦士は握手を求めるように俺と右手を差し出す。
……行為としては、先程までと同じだ。
だけど、
そう俺の感覚が告げていた。
だから、俺はこの戦士の手をーーーー
ーーーーーーーー
「(コウちゃん! 起きておくれ!!)」
ハッと、菊子さんの俺を呼びかける声に意識が浮き上がる。
目を開ければ、焦っているような菊子さんの表情が入ってきた。
その後ろには豪さんが周囲を警戒しながら俺が起きたことを確認してくる。
「起きたかコウちゃん……裏口まで静かに行くぞ」
「何があったんですか?」
「カイマだよ! カイマがうちに来たんだ!」
「婆さん、大きな声を出すな」
「なっ」
菊子さんが告げた言葉に、思わず声が漏れた。
カイマ。
ついさっき教わった、人を襲う怪物。
それがこの家に居るという。
「(ちょっ、豪さん!? ここらじゃカイマは出ないって)」
「(おう、それは昨日までの話な。……俺も初めてだからどうしたらいいのか分かんねぇ、とにかく逃げるぞ)」
「(狩人は……)」
「(私達にも分からないよ! とにかく逃げないと!)」
「(カイマ達は入り口から来てる、裏口から出るぞ。こっちだ)」
こそこそと話しながら豪さんを先頭に家の裏口に向かって歩いていく。
カイマに見つからないように姿勢を低く。
できるだけ息を殺して、音を出さないように。
そんな緊張状態でようやく裏口が見えた。
だが同時に――――
「(止まれ! カイマだ!)」
「(ひっ)」
「(よりによってここで鉢合わせるか……!!)」
ちょうど俺たちがやってきた方とは反対側から、それは現れた。
それは昔話に出てくる「鬼」のように二本の角を持ち、体表はまるで乾いた土みたいだった。
目は細く、しかし口元には鋭い牙が見える。
まさに怪物、魔とはよく言ったものだと俺は場違いにも関心してしまった。
あれが、カイマ。
頭の中で、また炎がチリチリと音を立てる。
それと同時に、
俺はそんな自分自身に戸惑いつつ、とにかく前に進もうとする豪さんの声を聞いた。
「(ここに居るのはあいつだけだ……このまま一気に裏口から出るぞ)」
「(爺さんっ!? でもあいつに見つかったら!)」
「(どっちにしろここで止まってれば他のやつが集まるの見るだけだ……コウちゃん、悪いがもしもの時は婆さんを頼むぞ)」
「(豪さん?)」
どこか覚悟を決めた豪さんの声を聞き、聞き返すよりも早く豪さんは動き出した。
菊子さんと俺が続く。
『!? nanda.nanikagasotonidetazo!!』
「行け、行け、行けぇ! 二人とも!!」
「っ豪さん!?」
「爺さん!?」
「早く逃げろ、俺が押さえてる間に走れ!」
「そんな無茶な!?」
「行けぇ!!」
裏口から外にでた後、豪さんは閉じた裏口を押さるように体を押し付ける。
どう考えても無茶だ。
そう理解できる。
豪さんも一緒に早く遠くへ。
そう言おうとした瞬間、俺は何かを感じて後ろを振り向いた。
「爺、さん……」
「婆さん! 早く、逃げ……」
「嘘だろ」
俺が振り向いた先には、既に裏口を囲うように居たカイマ達。
菊子さんも、俺たちに声をかけようとした豪さんも、それに気づいて言葉を無くす。
そんな絶望的な状況で、俺の頭でまたチリチリと何かが燃える。
そして
【…………】
「何っだよ!」
唐突に痛み始める右目。
閉じれば夢に出てきた戦士が立っている。
戦士は俺を見ている。
何を言う訳でもないそれに苛立ちが勝って思わず口から悪態が出る。
だが次の瞬間、後ろから何かにが壊れる音がして俺は振り向いた。
「豪さん!」
「爺さん!!」
「あっぐ、野郎……」
扉を抑えていた豪さんが、俺と菊子さんの目の前まで転がってくる。
脇腹を抑えて、痛みを耐えている豪さん。
扉の方を見れば、カイマが手に槍を持っていた。
まさか、と豪さんを見る。
「豪さん!!」
「大丈夫だ、受けたのは石突の方……っでも痛ぇ」
「爺さん、あんまり動くんじゃないよ!」
「馬鹿言うな、逃げないと……」
「いえ、それももう……」
ぞろぞろと、家の中からと外の茂みの中から出てくるカイマ達。
もう俺達を完全に包囲しているカイマ達に、どうしようもない絶望が襲い掛かる。
豪さんも、菊子さんも覚悟を決めたのか目を瞑ってしまっている。
俺は、どうだ?
俺は……
またチリチリと、炎の音が響く。
右目の裏に燃える炎、まだ立っている戦士。
戦士は俺を見ている。
……いや、違う?
こいつが見ているのは俺だけど、俺じゃない。
俺の何か。
腰? ……ベルト?
「う、ひぃい!!」
「婆さん!!」
「っ菊子さん!」
俺が考えている間に、菊子さんに向けて迫っていたカイマが槍を振るう。
咄嗟に動いた俺は菊子さんを抱えながら横にすっ飛んで行く。
カイマの穂先はちょうど避けた俺の真横に振り下ろされた。
直撃こそしなかったが、結構な威力があったらしく衝撃が伝わって転んでしまう。
そして、それが起こった。
カラン
と、音を立てて何かが外れ転げた。
何が、と自分を確認する。
外れたのは、
そしてまるで何か、別の物を入れるようなベルトの窪み。
その瞬間に、右目の戦士が嗤った。
これか!?
さっきから炎の戦士が伝えたかった事がこれだと理解した。
そして、気付く。
戦士のベルトと、そのバックル。
大きく「E」と描かれたそれに見覚えがある。
あれは――――そうか、そういうことか。
……そして俺は、確信をもって動き出した。
ゆっくりと立ち上がって、左手で上着に隠していたもう一つのバックルを取り出す。
逆の右手では、同じく隠していた「E」と書かれたカード。
そして、カードを持った
「コウちゃん!?」
「そ、そいつは……!?」
「大丈夫、熱くはないです」
『bakana!? koreha,honounoerement!?』
『nanda!? nanigaokotteiru!?』
『sizumare! kakyuuhawareranosijinisitagae!』
そうだ、俺の手は燃えたが熱くはない。
これは……一種のホログラムのような物だろうか。
確かに炎だけど、ここに本物の炎がある訳じゃない。
よく見ればどこか映像的な炎で、作っているフレーム? ピクセル?……専門用語は分からないな。
とにかくそんな感じ。
でも、この炎は確かにここにある。
さっき感じていた体の中の熱、その正体。
そしてそれを。
「ふぅー……!!」
そして炎がカードに吸い込まれる度に、カードが紅く染まっていく。
その様子を見ている全員。西原さん達も、カイマ達も動きを止めて俺を見ている。
やがて俺の放っている炎が収束していき、その全てがカードに吸い込まれる。
最後に出来上がったのは。
「E」以外の全てが紅い。
炎の紅に染まったカード。
「行くぞ」
宣言と共に、まず左手に持っているバックルの右側面を展開。
隠されていたスリッドを確認し、そこに紅く染まったカードを滑り込ませる。
『Edge Flame Set』
バックルから鳴った機械音声へと答えるように、バックルをベルトの窪みに突っ込む。
予想通り、このバックルを問題なくセットできたベルト。
しかしバックルを付けるのと同時にベルトが変わるのは少し予想外だったな、普通の革製ベルトに見えたのにバックルを付けると銀色の特殊なベルトに早変わりだ。
カードを入れたバックルの側面を元の形に戻す。
『Ready?』
ベルトからの問いに答えるように、バックルの右側面についているボタンを押す。
力強く、この戦いへの覚悟を固めるように。
そして俺は、自然とこの言葉を言っていた。
「変身」
その言葉と共にベルトから先程と同じ炎があふれ出る。
やがて俺の周囲を囲う円のようになった炎が、全身を包み込む。
その中で俺の体には、まるで機械の回路のような模様が俺の全身に浮かび上がっていく。
そしてその体を包むように黒いスーツが重ねられていき、俺の全身がスーツに包まれた。
そこからあの戦士と同じように黒と白、そして銀の鎧を纏っていく。
違うのは、一部の装甲が紅ではなく白いこと。
しかしその違いは即座に修正される。
手足の装甲と胸部分三つのプレート、それらの白い装甲が炎と同じ紅色に染まっていく。
やがて、白い装甲を染め上げた紅いエネルギーは供給源となるベルトと繋がるエネルギーラインにも満ちていき黒いスーツの全身に紅いラインが入った。
それらのプロセスによる―――変身を終え、防衛機構であった周囲の炎が消えていく。
そして炎の中から現れたのは、夢で見たのと同じ戦士。
違うのは、その戦士が
「仮面ライダーエッジ……それが俺の名だ!!」
そうカイマ達に向けて俺は叫んだ。
この瞬間、俺の戦いは始まったんだ。
仮面ライダーエッジとして、カイマ達と戦うことを選んだ。
俺の生きる道が、定まった。
すごい、変身させるだけで8000字以上かかった。
やっぱ脚本家の方って凄い。
自分ならやるとしても不定期更新ですなぁ。