(エレメンタルドラゴン風)
『ハァー……』
「こ、コウちゃんが」
「変身した……!」
黒と赤の戦闘スーツに身を包み、仮面ライダーエッジへと変身した
恩人である西原夫婦を背に、周囲の怪物カイマへと視線を向ける。
そして半歩踏み出し、体を半分捻った戦闘の構えを取った。
『bakana,ningengaelementwo!?』
『hirumuna,wareranotekidehanai!』
『souda,ike!!』
叫び声を上げながら複数のカイマがコウキーーー仮面ライダーエッジへと迫る。
対して、エッジはその拳に力を込めた。すると拳は変身する時にも見せた紅い炎を纏う。
その紅い拳をカウンター気味に、振り抜く。
『ハァッ!』
『gi!?』
『オリャッ!』
『ga!』
「オォッ!!」
『『『gugeee!?』』』
最初に突っ込んで来た1体目。
続いた2体目。
更に数を組んで挑んだ3体。
それらへ拳を叩き込み、全て一撃で吹き飛ばした。飛ばされたカイマは地面へと放り出され、まるで元々がそうだったように土の塊へと変わっていく。
『ん?』
土の塊と化したカイマから、黄色い光がエッジのベルトへと吸い込まれた。
その様子に疑問を覚えるエッジだったが、今は気にしている暇は無い。
そんな考えで残心の構えを崩さないエッジに対して、逆にカイマが戸惑うような声を上げる。
『bakana!?』
『arien!?』
『wareranoelementga,ubawareta!?』
『来ないなら、今度はこっちの番だ!』
動かないカイマに対して、エッジが飛び掛かる。
混乱しているカイマ達の中に割り込み、拳を叩き込んでいく。
しかしカイマ達は最初こそ混乱していたままだったが、徐々に落ち着いて数の有利でエッジを囲い混んでいく。
それでもエッジの一撃で消えていくカイマ達、だが多数のカイマの攻撃を捌いていく中でエッジが拳へと炎を溜める隙が減っていく。
状況を打開する為に、一旦地面を転がることで距離を取るエッジ。
『クソ、溜めないと一撃で倒せないとか厳しいな。ていうかこの炎はどう出てるんだ……んん?』
まだ理解しきれていない自分の力。
それを確かめるべく再び力を込めて拳に炎を灯そうとする。そこでエッジはあることに気付いた。
拳に炎が灯る、では無い。
手甲にまで延びている紅いエネルギーライン。それがエッジの意志に応じて紅く輝き熱を持ち、最終的に爆発するように着火して炎となっている。
1つ、エッジの中で仮説が浮かんだ。
それと同時に、このラインが足裏まで延びていることを確認する。
『試してみる価値はある』そう判断したエッジに向けて一体のカイマが近付いてきた。
エッジは距離を保つために蹴りを繰り出す。
カイマに命中したその蹴りは、炎を纏っていない普通の蹴り。
しかしその直後。
キィィィ……ボッ!!
『gugya!?』
エッジの意志により、足先のラインが紅く発光した後にカイマが吹っ飛んだ。
そしてカイマは土塊となって光がエッジのベルトに吸収される。
『よし!』
『nani?』
『bakana...』
先程までは問題なかった炎が灯っていない攻撃で倒された事実に困惑するカイマ達。
対して、エッジは自らの力を操ることに成功した感覚を確かめる。
先の一撃は、攻撃前はエッジの意志で足先のエネルギーを着火する直前に維持していた。
そして攻撃が当たった時の衝撃をトリガーに、炎を爆発着火させたのだ。
これによって、先程までのように一度爆発させてから炎を灯す必要が無くなり、有効な一撃を当てるための時間が短くなる。
更に爆発後、炎を維持しない故に次の一撃の再チャージへと即座に移れるため、効率も良い。
『本音を言えば、ずっと炎を出せてたら良いんだけど。それは無理か』
そう呟いたエッジが、再びカイマ達の中へと立ち向かって行く。
先程と違い、最小限の最効率で。
容赦なくカイマ達を何体も土塊に変えていく。
『ハァァアアア!!!!』
連続パンチとキック、時には肘打ちや膝蹴りも使いカイマ達をなぎ倒していくエッジ。
やがて西原家に侵入し、裏口へと獲物を追い詰めていた筈のカイマ達は全員、逆にエッジに狩り尽くされてしまった。
一息付こうとしたエッジ。
が、それをカイマは許してくれない。
「婆さん下がれ!!」
「助けてコウちゃん!?」
西原夫妻の叫びに、ハッと振り向くエッジ。
そこには、恩人2人に襲いかかろうとしているカイマ達がいた。
『ハァッ!』
足のエネルギーを爆発させ、エッジの体は空中を飛び一瞬で西原夫妻とカイマの間に入る。
そのまま、拳を振るいカイマを倒す。
目の前のカイマ達を見て警戒しながら、西原夫妻に声をかける。
『豪さん、菊子さん! 大丈夫ですか!?』
「お、おぉ、何とかな」
「ほ、本当にコウちゃんなんだね」
『はい。なんでこんな事できるかは、俺自身も分かりませんけど……』
西原夫妻と話ながらも、カイマが迫っているのを見てエッジも駆ける。
1体、2体、3体、と連続でカイマを倒し……その次のカイマがエッジの横を通り抜けた。
『マズ、っ邪魔だ!』
西原夫妻に向かうカイマに気を取られて、近くのカイマに組み付かれるエッジ。
即座に組付いてきたカイマに拳をお見舞いして倒した後に、抜けたカイマへと飛び蹴りを喰らわせて追い付きながら倒す。
そこからは、2人を守る為の防衛戦だった。
決して後ろの2人へと近付けさせないように、攻撃を振るう。が、徐々にスピードが遅くなっている拳に思わずエッジから舌打ちが飛び出る。
『ッ! クソったれ!!』
疲労を感じながら、また1体殴り飛ばすエッジ。
『せめて何か武器……』
そう愚痴を吐いたエッジの目の前に、再び
今のエッジと同じ姿の、紅い戦士。
『今度はなんだよ……』と思ってしまうエッジに対して、戦士はバックルの左側を叩いて見せた。
それを見てーーー
『ハァッ!?』
思わず叫んだエッジ。
戦士の幻影は全く見えていないカイマが一体、エッジに向けて突撃してくる。
それに対してエッジは、戦士と同じようにバックルの左側。
変身する時とは反対のスイッチを一度叩く。
すると、ベルトから紅い光と共に一本の刃が展開された。
『FlameEdge』
それを右手で握りしめて振るうエッジ。
ナイフ程の短い刃だが、それでも十分。
向かってきたカイマへとナイフによる攻撃を当てていくエッジ。
その刃は紅い光は纏っていないが、それでも十分なダメージを与えてカイマを土塊へと変えた。
『こんなのあるなら、最初に教えろ!』
戦士の幻影に対して怒りの叫びを上げるエッジ。
しかも良く見れば、戦士の刃は紅い光を帯びて長い刀身を形成している。
今エッジが持っているナイフとは大違いだ。
しかし、持ち手は同じ。
明らかに戦士は、
しかし、それが何かは教える気は無いのだろう。
戦士の幻影は手元で刃を遊ばせ始めた。
その姿に、頭から「ピキっ」と音が鳴った気がするエッジ。
それでも冷静になるよう、自分に言い聞かせて戦士と自分の違いを探す。
そして気付く。
刃の持ち手部分、そこには何故か
そして戦士の幻影は、ずっとそのトリガーを引いた状態で握っている。
『絶っっっ対コレだろ』
確信を持って、同時に幻影への怒りを宿しながらエッジも持ち手のトリガーを引く。
『FlameEdge Charge→20%FlameBLADE』
エッジの予想通り、トリガーを引けばエッジのベルトからエネルギーが供給される事で元の刃が紅い光を纏い刀身が形成される。
十分「剣」と呼べる長さとなった刃を握り、エッジが構える。
『来い!!』
『bukiwomotta!』
『ningenga,wareratoonajibukimothidato!?』
『gu.kamawan,ike!!』
『『『gigaaaa!!』』』
槍持ちのカイマが指示を出し、無数のカイマ達がエッジに迫ってくる。
たがエッジは冷静に、相手を見ていた。
そして刃を握りしめて、振るう。
『ハァ!』
『ga!』
『フッ!』
『gi!』
『よっ! ほっ! オリャ!』
『『『gugee!?』』』
振り抜かれた刃は一撃でカイマを土塊に変え、更に紅い刀身は消えることなく連続でカイマを倒す事が可能。
それは先程エッジが溢した『ずっと炎を出せれば楽』という願いを叶えたような状態だった。
『コレなら、行ける!!』
「コウちゃん!」
紅い刃の攻撃力に満足したエッジの元に、豪からの声がかけられた。
またカイマが2人に近付いたかと危惧したエッジが即座に声の方向を向く。
しかしそこにあったのは、エッジの考えとは正反対の光景だった。
西原夫妻の2人はエッジが戦い、時間を稼いでいる間に西原の家の中に避難していたのだ。
それは、エッジにとっての防衛戦が終わることを意味する。
「俺と婆さんはもう大丈夫だ! 思いっきりやっちまえ!!」
「コウちゃん! やっちゃって!!」
『はい! 行っくぞぉ!!』
2人の応援を受けて、疲労していたエッジの体に力が満ちる。
そのまま、槍を持ったカイマ達に向けて接近するエッジ。先程までのカイマのやり取りから、槍を持ったカイマが他のカイマ達に指示を出していると察し、これを撃ち取れば戦いを終わらせられると考えていた。
そして、それは当たっている。
故に、槍持ち達は他のカイマ達に自らを守るように指示を出す。
『kotiranikuru!?』
『nani!?』
『bukinasidomo,warerawomamore!!』
槍持ちカイマが手をかざし、素手のカイマ達に自ら達を守るように指示を出す。
素手のカイマ達はそれに疑問も持たず、エッジとの距離を縮めた。
だが今のエッジにとって、武器を持たないカイマなど敵ではない。
『邪魔だっ!!』
『gaa!』
『gugie!』
『gilililili!!』
エッジは敵のカイマが目の前に現れる度に、高速で刃を振るい仕留める。
槍持ちカイマを守る為に突撃したカイマの全てが切り捨てられていく。
そしてついに、道が開けた。
『ハァア!!』
『bakana,watasiha』
『1つ!』
槍持ちカイマが言葉を言い切るより先に、一刀の元に仕留めたエッジ。
そのまま、2体目の槍持ちへと刃を振るう。
たが今度はガキン! と金属同士がぶつかる音と共に槍持ちの槍に刃は防がれた。
更に
『kakoe!!』
『『『『『giiii!!!!』』』』』
『っ、囲まれたか!』
槍によって刃が弾かれた隙に、素手のカイマ達が現れてエッジを囲ってしまう。
槍持ちを視界から見失うも、
居合切りのような構えから繰り出される一撃。
『FlameEdge Charge → 50% 』
『纏めて、切る!!』
エッジが、瞬時に刃へと込めるエネルギーを増加させる事で刃の長さと大きさを倍以上に巨大化させる。
巨大化させたというのに、エッジが感じる重さはそのまま。その不思議な感覚を手で感じながら、エッジがその大剣とも呼べるようになった刃を居合切りのように高速で振り抜く。
更に体ごと剣を1回転させる事で周囲を囲っていたカイマを全て切り裂き、更にその奥にいた槍持ちのカイマすらも切り裂いて仕留めた。
『2つ!』
『ooo ,migoto...!!』
2体目の槍持ちのカイマも土塊に変わり、光を取り込むエッジ。
槍持ちのカイマは残り一体、そしてもはや回りに素手のカイマは一体もいない。
正真正銘最後の一体となったカイマ。
『bakana,nokorihaoredakeka...!?』
『これで最後だ……!』
紅い刃を構え、カイマへとエッジが走り出そうとする。しかし近付こうとする直前、急にエッジの体が重くなった。
更に武器の刃も纏っていた紅い光が消えてナイフ型へと戻ってしまう。
『な、なんだ!?』
自身の変調に戸惑うエッジの前にまた戦士が現れる。そしてジェスチャーで自分自身を見るようにエッジに促した。
思わず戦士への苛立ちも忘れて伝えられた通りに確認したエッジ。
そうして、装甲の一部とエネルギーラインの紅い輝きが薄くなっている事を認識した。
『っ、エネルギーを使いすぎたってことか!? ていうか制限なんてあったのか!?』
エッジの困惑と驚愕を合わせた声に、戦士がまた嗤う。そんな姿を見て、『こいつ……!』と思わずまた額からピキッと音がしそうな程怒りが沸いてくるエッジ。
だが
エッジの変化は見た目でも明らかだ、当然カイマにも知られてしまう。
『elementchargegakiretaka,orehaungaii!!』
『まずい!』
向かってくるカイマに対してナイフでの応戦をしようとするエッジだったが、槍のリーチを上手く使ってくるカイマ相手にナイフ型の武器で不利を強いられてしまう。
更に槍持ちカイマの中でも最後の一体は技量が高いのか、あるいは相手の不利を付いた故の勢いに乗っているのか。どちらにせよカイマの連続攻撃を受けきれず、エッジは武器を手放してしまい徒手空拳で対応する。
しかし……
『huhahaha.dousit,konoteidoka!!』
『ぐっ……』
エッジが拳を振るっても拳に紅い輝きは宿らず、決定的な一撃になれない。
その間にもカイマは持っている槍で、拳を振るった後隙に一撃を当ててくる。
後退りながら、エッジは考える。
『(エネルギー不足……こいつを倒すための一撃を出すには、どうしたらいい!?)』
『sakkinoikioihadousita!?』
『ぐぁっ!』
カイマの槍を使った猛攻を受けながら、思考を回すエッジ。しかし攻撃を受け続けている状態では考えは纏まらず、何とかカイマの攻撃を受け止めるのが精一杯だった。
カイマの槍を右腕で防ぎ、そのままカイマを弾きとばした。
そこで1つ、エッジの中に疑問が浮かぶ。
「(まて、
『(変身した時の操作もそうだ)』と、エッジは自分自身に疑問を持ち始める。
変身する時、コウキは自然とパーツを組み立て、どう操作するべきか理解していた。
そしてそれは、戦い方も同じ。
当然のようにできると思って、拳に炎を灯した。蹴りでも拳と同じ事ができると確信を持って、戦った。剣を振るった記憶なんて無いのに、武器を扱えた。
つまり、
そう、理解した。
それと同時に起こる納得。
『(そっか……そういうことか)』
弾かれたカイマは再び突撃しようとして、エッジの雰囲気が変わったことを半ば無意識に感じ取り、様子見の為に槍を構えながら距離を保つ。
なにもしないカイマ、沈黙したエッジ。
そしてまた、エッジの前に紅い戦士が現れる。
『…………』
『いや、もういい』
『……?』
『もう、大丈夫だ。
またエッジへと何かを教えようとした戦士を、エッジが手をかざして制した。
戦士は何も言わない、語らない。
ただそこに在る。
それは、何故か。
『お前が何なのか、俺は知らない。記憶が在った時の俺なのか、それともこのベルトが見せる幻影なのか。でも何をしてたのかは分かった、お前は俺を導いてたんだ。でも俺は1人でも戦える』
『…………』
『今の俺に、お前は必要ない』
『………………』
エッジのその言葉に、戦士は答えない。
変わらず無言で立っている。
だが……見えない仮面の向こうで、戦士が笑ったようにエッジは感じた。
先程までのふざけたような、こちらを見下しているような嗤いではない。
もっと純粋な、満足したような笑みを浮かべている。そんな気がすると、エッジは思った。
『俺はこのカイマを倒せる』
エッジが言葉を紡ぐと同時に、バックル左右のボタンを同時に押し込む。
するとロックが外れ、そのままエッジはバックルその物を左回しで一回転させた。
『Flame → Element Returns』
バックルから音声が流れる。同時に音声の通りエッジのアーマーに流れていた紅い炎のエネルギーが逆流し、残っていた全てがベルトに集まる。
エッジがまたベルトの右側面を二度叩いた。
『Flame ElementExpand 1.all
『フゥー……』
エッジはいっそ穏やかにすら聞こえる呼吸をして、リラックスと共に体から余分な力を抜く。
だらんと下げられた腕、その重さで下を向きながら息を整える。
体を半回転させ右足は後ろに、左足と体は相手である槍持ちカイマを向く。
そしてーーー
『行くぞ、終わりの準備はできたか?』
『Flame Kick Chargeng:75%! JustImpact!!』
顔を上げてカイマへと宣言、ベルト両サイドのボタンを叩いたエッジ。
瞬時に、アーマー中の残っていた紅いエネルギー……炎のエレメントがエッジの右足に集まり巨大な炎を灯す。
それは今までの攻防の中でも見られなかった、とてつもなく強大な力。
『nanda,sonothikaraha...dokonisokomadenoelementgatta!?』
弱ったと思っていた相手が見せた巨大な力。
それを前に最後のカイマは驚愕を隠せずにいた。
それに対してエッジの複眼が目の前の
『gu,gi,gi,gigaaaaa!!』
『……ハアッ!』
感じられる「強さ」に気圧されたカイマ、だが選んだのは逃げでは無く恐怖に狩られた突撃だった。
構えていたエッジは左足で宙へと飛び出し、突き出された槍を回避する。
そのまま空中で、真下にいるカイマへと炎を宿した右足を突き出すエッジ。
その勢いと、落下エネルギーを利用した一撃は真っ直ぐにカイマへと向かいーーー
『ォォオオオ!!』
エッジは叫び声を上げながらカイマへと右足を突き立て、右足に納められていた炎が一気に解放されて爆発が巻き起こる。
炎に包まれたカイマとエッジ、やがて炎が消えた後に現れたのは
『フゥー……』
残心で構えを崩さない、エッジだけだった。
攻撃を受けたカイマは土塊すら残らず、周囲に爆発と共に広がっていた光をエッジのベルトが取り込んで行く。
ーーーーーーーー
……これが後に仮面ライダーエッジと呼ばれるようになる戦士が生まれ、戦い、勝利した最初の戦い。
俺の、運命の始まり。
これから先多くの人と出会い、様々な敵と戦い、俺は何なのか、俺の記憶の
そんな俺の、景井コウキの戦い。
その最初一歩を、俺自身も気付いていなかったけれど確かに、俺は踏み出したんだ。
景井コウキ