シャーレの先生は、シロコ・テラーに押し倒されていた。冷たくも鋭い青い瞳が、先生の視線を絡め取る。灰色の長髪が床に広がり、まるで銀の絨毯のようにその場の空気を支配していた。
先生はわずかに身をよじり、抵抗を試みる。だが、その力の差はあまりにも明白だ。シロコ・テラーの華奢な見た目に反して、まるで鋼のような力が先生を押さえつける。まるで動くことすら許さない、絶対の意志そのものだ。
それでも、先生の声は穏やかだった。まるで嵐の中心に立つような、揺るぎない優しさで問いかける。
「シロコ。どうしたの?」
「ん。子どもつくる」
その一言は、まるで空気を切り裂く爆弾のようだった。だが、先生は動じない。まるでそんな言葉すら日常の延長線上にあるかのように、穏やかな笑みを崩さない。
「へぇ」
そして、静かに、しかし確かに核心を突く言葉を紡ぐ。
「どうしてそうしようと思ったの?」
シロコ・テラーの瞳が一瞬揺れる。だが、その声は迷いなく、ストレートに響く。
「……先生が好きだから。だから子どもつくる」
先生は小さく頷き、まるで子供に言い聞かせるような口調で続ける。
「そっか。シロコは、子どもを作る意味や責任を理解している?」
「…………少しだけ」
その答えに、先生の目は柔らかく細められる。だが、そこには揺るぎない信念が宿っていた。
「そっか。なら、子供は作れない。子どもを作るのは責任が伴うからね。ちゃんと理解して、それでも求めた時にするべきだ」
シロコ・テラーの唇がわずかに動き、反論の言葉を紡ごうとした――その刹那。
紫色の閃光が、まるで夜を切り裂く雷鳴のように空間を貫いた。レーザー光線のごとき弾丸が、シロコ・テラーを襲う。 反射的に身を翻し、シロコ・テラーはそれを回避する。床に叩きつけられた衝撃で、埃が舞い上がる。
その中心に、彼女は静かに立つ。まるでその一撃など、彼女にとってただの挨拶にすぎないかのように。
「先生は、渡さない」
凛とした声が響く。
そこに現れたのは、空崎ヒナ。彼女の瞳には、燃えるような決意と、抑えきれない怒りが宿っていた。
「……邪魔」
シロコ・テラーの声は低く、まるで地の底から響く呪詛のようだった。彼女の手から放たれる神秘否定の滅奏エネルギーが、空崎ヒナの神秘を帯びた弾丸を次々と飲み込み、消滅させる。
まるで光を飲み込む闇のように、ヒナの攻撃は無力化されていく。 ヒナは一瞬で距離を取り、建物の陰に身を隠す。その動きはまるで風のように素早く、しかしその表情には苛立ちと焦りが滲んでいた。
「先生を襲って、何をするつもり? もし傷つけるつもりなら、私は貴方を許さない」
シロコ・テラーの答えは、まるで当たり前の事実を告げるかのように淡々としていた。
「傷つける? そんなつもりはない。ただ子供を作るだけ」
「子供!? 貴方と先生は恋人だとでも!?」
ヒナの声は鋭く、まるで刃のように空気を切り裂く。だが、先生は静かに、しかしはっきりと否定する。
「そうだね。僕はシロコと恋人ではないし、子供を作るつもりはないよ」
シロコ・テラーは小さく首を振る。その瞳には、どこか遠い未来を見据えるような光が宿っていた。
「……いいや、作ってもらう。そういう未来が良い」
ヒナの目が鋭く光る。
「なら、貴方はここで排除する。先生のそばにいるには危険すぎる」
「できるの? 貴方に」
シロコの言葉は挑発的だったが、ヒナは一歩も引かない。彼女の声には、揺るぎない決意が宿っていた。
「大切な人のためなら、私はどんな困難だって走破できる」
「それは私も同じこと、私の愛は負けない」
二人の視線が交錯し、まるで火花が散るかのように空気が震えた。
そして、衝突――。
空崎ヒナは何度もシロコ・テラーに吹き飛ばされる。彼女の神秘を帯びた攻撃は、シロコ・テラーの滅奏エネルギーによって次々と無効化される。
純粋な火力勝負を挑むヒナにとって、シロコ・テラーの力は相性最悪の壁だった。 どれだけ過剰な出力を放っても、シロコ・テラーはそれを全て飲み込み、消し去る。
短期決戦で一撃に全てを賭ける――それが唯一の勝機だとヒナは知っていた。だが、できない。
「当たり前の結論。こっちには先生がいる。私を倒すことができても、先生が傷ついたら本末転倒。だから、できない」
ヒナの言葉に、シロコ・テラーの唇がわずかに歪む。
(勝った)
その瞬間――。 轟音とともに、シロコ・テラーの後頭部に強烈なエネルギーが叩きつけられた。
「光よ」
爆音が響き、まるで宇宙戦艦の主砲を思わせる超火力の砲撃がシロコ・テラーを直撃する。爆炎が巻き上がり、空間そのものが揺れる。 その中心に、アリスが立っていた。彼女の腕には、先生がしっかりと抱きかかえられている。
「先生、お待たせしました! 勇者の凱旋です!」
その声は、まるでRPGの主人公を気取るかのように明るく、場違いなほど軽快だった。
「ありがとう、アリス。ヒナ!! ミレニアムで落ち合おう!」
「ええ、先生」
先生とアリスがその場を離れるのを確認し、ヒナの瞳に新たな炎が宿る。全身に神秘エネルギーが渦巻き、まるで雷鳴のような唸りを上げる。
瓦礫の山から、シロコ・テラーがゆっくりと身を起こす。その口元には、毒々しい笑みが浮かんでいた。
「やってくれる。先生も巻き添えとは」
ヒナの声は冷たく、まるで氷の刃のようだった。
「これでフリーね。その傲慢を後悔しなさい」
「すぐ倒して、追いつく」
「行かせない」
ヒナの過剰出力が炸裂し、空間を焼き尽くすようなエネルギーが放たれる。対するシロコ・テラーは、神秘を喰らい尽くす滅奏エネルギーを解き放つ。 二つの力が正面から激突する。
「勝つのは、私」
「私は、勝つ」
その言葉は、まるで運命を賭けた宣誓のようだった。二人の決意が交差し、戦場はさらなる混沌へと突き進む。