場面は切り替わり王城内の一角。
王選の間程ではないが、社交界などでも使われるような広い部屋には三つの人影があった。
1人はユリウス。表情は硬く怪我も見て取れるが、致命傷になるような傷は未だついておらず戦闘に差し障りはなさそうである。
その少し後ろに構えるのがベアトリスであり、こちらは服に多少汚れが付いている程度。
対して対面に立つ少女のような見た目をした女──カペラ・エメラダ・ルグニカは、吹き飛んでぐちゃぐちゃになった右半身を治しながら、めんどくさそうに二人を睨みつける。
「だからぁ! 何度言やあ分かるんですかこのクソ肉は!! そんなこと何万回したって、カペラちゃん様の事を殺すなんて一億年経っても出来ねぇんですよ!」
5属性を操り魂に攻撃をぶつける事の出来るユリウスと、陰魔法を極め異空間に存在ごと飛ばすことの出来るベアトリス。
色欲の大罪司教に対してなくてはならない二人であったが、そんな二人を前にしていまだにカペラがその身を保っていられるのは単純な戦闘の上手さだ。
喰らっていい攻撃とそうでない攻撃を瞬時に見極め、喰らってしまうと不味い攻撃を前にすると途端に己の数を分裂で増やして被害を最小限に止める。
この広間から彼女を逃さないようにするのが二人の精一杯だが、ユリウス達はそれでいいと己の役割を割り切っていた。
「それで構わないとも。私が友から任されたのは大罪司教を止める事。キミをここで1秒止めるだけで救われる命があるのなら、私は全身全霊をかけることを誓う」
「……そんな、ひでぇです。アタクしはただ、言われた通りの事を、やって、ぅぐ」
大粒の涙を流しながらそんな事を口にするカペラを前にしても、ユリウスは表情一つ変えずに剣先を向ける。
この大広間に来た時、ユリウスはこの色欲の大罪司教がいかに悪辣なのかを理解させられた。
廊下でベアトリスと出会い事前に相手に対する詳細な説明は受けていたとはいえ、大罪司教を探すために王城内を走り回っていたところこの部屋で人を蟲に変える彼女の姿を目撃したのだ。
人として死ぬことすら許されず、知性を無くして蟲として生きる事すらできない。
あまりにも冒涜的で、その冒涜を己を愛さない者への罰として捉えるその精神の歪さは吐き気を催すほどだ。
それを証明するようにユリウスやベアトリスがいささかも油断しないのを見ると、カペラは流していた涙をピタリと止めて真顔に戻る。
「よく言ったかしら。そのまま油断せず時間を稼ぐのよ、怒りも悲しみもアイツの感情は全部嘘。何があっても油断するんじゃないかしら」
「人の感情を嘘つき呼ばわりなんて随分と高尚な趣味してやがるじゃねぇですか? 人もどきに人様の気持ちなんて欠片も分からねーでしょうに キャハハハッ!」
「お互い様なのよ。むしろ人であるはずなのに人の気持ちを理解できないお前の方がタチが悪いかしら。ありのままの君が好き、なんて言葉を向けられることはそんな考え方じゃ一生来ないのよ」
色欲にどんな言葉を投げかけられようともベアトリスの精神が揺らぐ事は無い。
むしろ笑っていなす余裕すらある彼女の姿を見て機嫌を悪くするのは色欲の方だ。
世界中の全ての生物に愛されることを至上とし、己以外の生物を醜く変える事で己を愛してもらうという歪んだ愛を持つ彼女にとって、他者に対しての評価を外見に依存せずありようが変わらない精霊はそれだけで嫌悪の対象である。
そんな対象から浴びせられた言葉を前に色欲はまんまと怒りに飲まれた。
「アァ!? なんですかなんですか、そんなに死にてーですか? 死にてーなら殺してやりますよ! この城の屑肉どもまとめてぶっ殺してやります!!」
叫びに合わせてカペラの体は膨張をはじめ、プリステラの都市庁戦で見せたような龍の姿に変化していく。
黒色の鱗に覆われたその巨躯は一度身じろぐだけで室内を蹂躙し、ただただ膨大な質量を持って周囲に甚大な被害をもたらす。
尻尾を一度振るえばそれだけで室内に有った家具の全てが壁際にまとめられ、圧力に耐えきれなかった壁には無数の亀裂が走って行く。
人型であった時と比べるまでもない破壊力ではあるが、その分的は大きくなった。
「ベアトリス様!!」
叫ぶと同時に走り出すユリウス。
そんなユリウスの言葉に対して分かっているとばかりに弾幕を張り巡らせるベアトリスにより、室内は煙が充満して少し先も見えないような状況になる。
「煙幕なんか張ったところで無駄って事が分からねーんですかァ!?」
己の体の大きさを考えれば適当に動かしただけでもどこかしらには当たるはず。
そんな考えから放たれるカペラの大ぶりな爪を、尻尾を、牙を、ほんの少しでもずれたら死ぬような攻撃をユリウスは掻い潜って見せた。
無理な動きに全身が軋むがそれを些事だと割り切り、虹色に輝く己の剣をカペラの腹に突き刺すと、そのままの勢いで走り抜ける──
「──―ギャアッッッ!!」
絶叫を上げながら転がりまわるカペラ。
先程までのように攻撃を受けても余裕のある声ではなく、命を脅かされたものが出す特有の悲鳴は攻撃が有効であった証明だ。
距離を取りながら臓物をまき散らし紫色の血を室内に塗りたくるカペラから距離を取りつつ、ユリウスは手ごたえを感じて満足そうな表情を浮かべる。
「アル・クラリスタ。魂を切り裂く一撃はちゃんと効くようだね。後は頼みますベアトリス様」
「任されたのよ」
まともに避ける事が出来なくすることさえできれば、あとはユリウスの仕事は終わりだ。
大精霊が行使するに相応しいだけの魔力消費と、圧倒的な技術が無ければ放つことのできない陰魔法の最高峰。
多兎を始めとして多数の敵を葬ってきた魔法が、徐々にその形を作り上げていく。
「アル・シャマ──」
あと一言紡げれば魔法が完成するその瞬間──爆音を上げて部屋の一部が爆ぜる。
壊れたのは先程カペラが物を叩きつけひびを入れた方の壁ではなく、まだ綺麗なままだった壁の方だ。
一体どれほどの力があれば龍の一撃ですら破壊できなかった壁を破壊することが出来るというのか。
緻密な魔力操作によって構築されていた魔法は衝撃により粉砕され、忌々しさと共に土煙に目を向けてみれば新たな人影が室内に現れていた。
「──すいませんベアトリス様、邪魔をしてしまいました」
ベアトリスとユリウスの前に視線を遮るようにして立ったのは赤髪の英雄、ラインハルトだ。
どうして彼が吹き飛んできたのか? 視線をそちらに向けようとするもベアトリスの小さな体では、残念ながらラインハルトを越えて向こう側を見る事は出来ない。
だが見なくとも分かるほどの絶叫により、ベアトリスは入ってきた存在が何なのかを理解する。
「アアァァァッ!!!!!! 忌々しい剣聖! 私があの人の元に行くのをどれだけ邪魔をすれば気が済むの!!」
絶叫と共に女の体から鎖が飛び出し、室内を蹂躙していく。
色欲の攻撃が己の身体能力に任せただけの攻撃であったのに対し、こちらは技術に裏打ちされた一撃。
ラインハルトとユリウスが向かってくる鎖を弾き落としていなければ、ベアトリスは一瞬と持たずに切り刻まれていただろう。
狂気を孕んだ瞳でラインハルトを見つめていた憤怒はベアトリス達を見つけると、一転してその表情を柔らかな物へと変化させて見せる。
「あら、どうも初めまして! ごめんね、うるさくして。私は魔女教大罪司教憤怒担当、シリウス・ロマネコンティです」
先程までの憤怒がまるでなかったかのような表情を浮かべる彼女。
慈愛すら感じるような優しいまなざしをベアトリスとユリウスに向けるシリウスに対し、ベアトリスはなるべく頭の中で最愛の契約者の事を思い返しながら言葉を紡ぐ。
「ペテルギウスの名前を語るのはやめるのよ!! そういうのはすとーかーって言うかしら。いい迷惑なのよ!」
「────お前にィィッ!!!! お前に何が分かる!! あの人は私の目を見てくれた!! あの人は私が傍にいても怒らなかった!! あの人は私を愛している!!!」
怒りのままにベアトリス目掛けて飛び込んでくるシリウス。
その速度は近接戦闘がからっきしなベアトリスでは目で追うのがやっとだが、行く手を阻むようにして立ったラインハルトが鞘に収まったままの龍剣を振るうと未だ傷の治り切っていないカペラの体に突き刺さる。
「──ぎゃッ!?」
鈍いうめき声をあげる憤怒と、叫ぶ事すら疲れたのかビクンと反応するだけして声も上げないカペラ。
有効打として十分な一撃が入ったことにより暫しの時間が生まれる。
「スバル程じゃ無いけれど上手く行ったかしら!」
憤怒の権能による感情の共有。
共感を元に感情を増幅させるという仕様を前提としたこの権能は、まともにシリウスと会話を重ねれば重ねるほどに普通の人間であればその効果が如実に表れる。
シリウスの言葉にほんのわずかでも理解できる部分があると感じてしまった時点で、権能の効果は体を蝕み始めるのだ。
だからこそベアトリスはあえてシリウスを煽って見せた。
そうすることで彼女の口から発せられる言葉は怒りに染まった狂人のそれに変質し、感情が引っ張られる感覚も多少はマシになるのを自覚できたのである。
だがそんな状況は先ほどまでに比べて、実は最悪に近い。
「ラインハルト、腸狩りは?」
「あの龍の方へ飛ばした。止めを刺しきれていないけれど、直ぐには戻ってこれないはずだよ」
「──中々に不味いかしら」
腸狩りがこの場に居ないのであればまだよかっただろう。
大罪司教二人をラインハルトに任せて、ユリウスとベアトリスで腸狩りを倒しに行く選択肢も取れた。
だが最重要目標3人がここにいるのであれば下手に動く事もできず、逃げようとしても
何より一番の問題はラインハルトの体質の影響で彼が本気を出すと、魔法の一切が使用できない事にある。
ベアトリスは契約精霊として、ユリウスは微精霊の力を借りて戦う精霊騎士なので、ラインハルトがいるだけで強制的に全力が出せない二人の出来上がりである。
龍剣が抜ければ状況を打破するのは簡単だろうが、ラインハルトがそんなベアトリスの視線に気が付いて何度か龍剣を引き抜くような仕草をするものの剣は動く素振りもない。
大罪司教二人と腸狩りを相手にして抜けないのであれば、一体いつになればこの剣は抜けるようになるというのか。
相手が悪いのか場所が悪いのか、ベアトリスはついぞ龍剣が引き抜けるようになる条件を知ることはなかったので、剣を抜ける条件を創り出すことすらできない。
「ここは全部ラインハルトに任せて尻尾巻いて逃げるのが得策な気がするのよ」
「相手がそうさせてくれるなら僕としてもその方が良いかと思うのですが──」
呟くラインハルトの視線の先で、幽鬼のようにゆっくりと立ち上がる憤怒の影。
致命的な一撃を何度も喰らっているはずなのにその勢いは止まることもなく、むしろ痛みを味わう程にその殺意は研ぎ澄まされていく。
「私の想いを踏みにじる妖精! 私をあの人の元へと行かせようとしない剣聖! 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い! 憎い!!!!」
「……スバル直伝の煽り、ちょっと効き過ぎなのよ」
飛び出してきた憤怒はラインハルトによって止められ、先程の繰り返しのようにカペラに突き刺さるが、先程までと違いすぐに復帰してきて突っ込んでくる憤怒。
カペラの体液を全身に被っているので本体も呪いで蝕まれているようだが、そんな事は一切気にせずに鎖に血を乗せて振り回しており、特異体質のラインハルト以外はかすれば死に至る最悪の武器が完成していた。
どちらかが一人でもかければそこから崩れてしまう様な脆い状態に次の一手を必死に考えるベアトリスだが、王城内に存在する戦力はここか王選の間どちらかにしか存在しない。
ただでさえ手駒が少ない中でスバルがなんとか導き出したであろう最適解、ここを失敗すれば何度目か分からないスバルの死に戻りの回数が一つ増える。
何処かで誰かがリスクを背負わなければならない。
「ユリウス、お前はスバルの元へ行くかしら。ベティはこの場に残るのよ」
「ですがベアトリス様、この場では……」
「自分の身くらい自分で守れるのよ。敵の狙いは王選の間の何か、こいつらは攪乱係だと考えたら王選の間を片付ければ尻尾巻いて逃げる可能性が高いのよ。なら向こう側に一人でも多く人数当てるべきかしら」
スバルがベアトリスを大切だと思い動くように、ベアトリスにとって唯一の契約者であるスバルは何にも代えがたい程大切なものだ。
ペテルギウス戦において鬼札足りえるユリウスを外に出さなければいけない程に切羽詰まっているスバルの状況が己の一手で変えられるのであれば、ベアトリスはそのリスクを背負う事に対して一切の躊躇はない。
(スバルがリスクを背負うなら、ベティもリスクを背負うかしら)
スバルが現状考えられる最善がいまなのであれば、ベアトリスに出来る事はその最善の一手の後押しをすることだけだ。
「ラインハルトは全力で戦っていればいいかしら。魔法に関してはこっちでなんとか調整するのよ」
「分かりました。ユリウス、ボクを信じて欲しい。剣聖の名に懸けて、この場所はベアトリス様と一緒に守り切って見せる」
この場に居たところでどうせユリウスに出来る事は限られている。
距離次第では魔法が使える可能性がまだ残されているベアトリスに比べ、剣技がメインとなるユリウスは防戦主体ならばまだしも、攻撃手段と言う意味で考えると色欲も憤怒も腸狩りも有効打足りえない。
「……分かった。可能な限り早く倒して、ここに戻ってくると誓う。それまでここを任せる」
「ああ。僕とベアトリス様に任せてくれ」
「大船に乗ったつもりでいるかしら」
騎士としての矜持が足を止めて戦えと叫ぶが、そんな考えをかなぐり捨ててユリウスは走る。
目指す先は王選の間、均衡が崩れぬうちになんとしても怠惰を討伐する必要がある。
踏み出す一歩の遅さが煩わしく、微精霊達に押し出されるようにして前に出るユリウスの速度は、まるで流れていく虹のようだった。
目にも止まらぬ速さでたどり着いた王選の間では、未だに怠惰との戦いが繰り広げられている。
巌の様な姿になった
手の空いた騎士団員が投擲を始めとした遠距離攻撃によりペテルギウスに少しずつダメージを与えているが、本来の攻撃手段である近接戦闘を禁じられた騎士団員の与えられるダメージは微々たるものだ。
徐々に削られていく体力に痺れを切らしたペテルギウスが見えざる手を纏めて
通常の人間の姿ではなく岩の巨人のような姿になっている
傍目から見ていればまるでパントマイムのようにも見えるその行動は、岩の巨人の腕から発せられる信じられない圧力が生み出す異音により緊急事態であることを周囲の人間に強制的に理解させた。
ペテルギウスが狙っているのは爆発によって産み出された穴の開いた外壁に向かって、
カーペットがめくれ上がり、タイルが剥げ、床がたわんでも見えざる手の力を堪えきることが出来ず岩の巨人の体はじりじりと穴の方へ向かって押されてしまう。
「ムゥゥゥゥッッ!!!」
「手の空いてる奴は押し返せ!!!!」
「グギギギギッッッッッ!!!!」
スバルの号令を受けて騎士団員達は一斉に騎士団長の背中を押す。
歯を食いしばり大声を上げ、何とか状況は拮抗したもののあと一手が足りない状況。
最悪の状況に置いて周囲に何とかできるものが無いか探すスバルの癖が、この瞬間に王選の間にやってきたユリウスの姿を捉えた。
大罪司教はどうなったのか、城内の状況はどうなのか。聞くべきことは沢山あると理解しながらもその全てを『アイツが来たなら大丈夫だということだ』とまとめ、スバルはこの状況を変えうる鬼札に向かって叫ぶ。
「──ユリウス! オレにネクトして怠惰の腕を切り落とせッ!!」
「なにをするつもりか知りませんが! させないのデスッ!!!」
スバルの指示に対してほぼ反射的にネクトを使用したユリウスの視界に、スバルの視界が共有される。
すると目に入ってくるのはペテルギウスの体から伸びる幾本もの黒く触手のようにうねる不気味な腕で、スバルが発した言葉の意味を理解したユリウスは己の騎士としての誇りをかけ、剣先に力を籠める。
日に何度も使用することを想定していない上に、外傷はないと言え連戦の最中でまともに体が動かせないほどの倦怠感に襲われながらも、ユリウスは今日この日一番の動きを見せる。
「アル・クラリスタ!!」
虹色の剣から漏れ出た光はユリウスの体を包むようにして光を発し、不安定ながらもその役割を完全にこなした一撃を放って見せる。
ほんの一瞬の時間ではある物の全ての『見えざる手』が根元から切り落とされ、後に残るのはペテルギウスの貧弱な体のみ。
「ああ! ああ!! なんたる怠惰あああああああ!!!」
吠えたペテルギウスが懐から何かを取り出すが、即座にユリウスは彼の腕を蹴り飛ばして何かを弾き飛ばす。
そのままの勢いで2度ユリウスが剣を振るうと即座にペテルギウスの両手足が切断され、痛みにうめくペテルギウスを前にスバルはフェリスの名を叫んだ。
「フェリス!」
「あいよ! フェリちゃんにお任せ〜!」
見えざる手を警戒して前に出る事が出来ないでいたフェリスがペテルギウスの体に触れると、ビクンと大きく一度体が跳ねたかと思うとそのまま動きが止まる。
回復魔法の熟練した使い手であるフェリスだからこそ、人体のどこを触ればその活動が停止するかの見極めは確かなものだ。
物の数秒で意識を刈り取られ白目をむいたペテルギウスを前に全員が勝利を確信するが、そんな状況を打ち消すようにスバルが叫ぶ。
「何かあるか分かんないから全員離れて! 念のためマーコスさんにそのまま押さえてもらっといて、ラインハルトが来てからどうにかしよう。爆発するかもしれないし」
そんなスバルの言葉を聞いて誰もそんな事は無いだろうと口にすることは出来なかった。
既に指先が自爆テロをした手前、ペテルギウスが同じような手段に出ないとは誰も言えなかったからだ。
クルシュの指示のもと出入口を固める騎士団員達を他所に、スバルは帰ってきたユリウスの元へと駆け寄る。
お互い満身創痍でいつ倒れてもおかしくない状況だが、この戦闘がここで終わりだという確証を互いが持てておらず表情は硬いままだ。
「まずは助かった、ありがとう。そっちは?」
「色欲と憤怒、腸狩りをラインハルトが対応中だ。微力ながら手助けをしたかったが、私では力不足だった」
「何言ってんだよ、ラインハルトの体質だろ。お前等が無事で本当によかったけど、そうなると増援送った方がいいか」
「いや、下手に人数を増やせば憤怒の餌食になりかねない。改めて私が行こう。キミは約束を守ってくれた、私も約束を守らなければ」
すでに勝敗はほとんど決していたと言ってもいい状況であった。
ユリウスの視線の先にはアナスタシアが白熱する戦いに浮かれていたのかいつもより興奮したような表情を浮かべており、ユリウスの視線に気がつくとキリッとした普段の顔に戻るが、何処となく緩んだ雰囲気も見て取れる。
万が一の場合は己の命も危険だと理解しながらもそれだけの感情が湧き上がったのは、ナツキ・スバルという男が明確に勝ちへのビジョンを全員に見せたからに他ならない。
他者に憧憬を抱かせ、その熱に巻き込んでいくその様はまさに英雄と呼ばれるに相応しく──
「ならお前に任せるぞユリウス。おれはまだやらなきゃいけないことがあるからな」
ユリウスに対して背を向け、マーコスに拘束された怠惰の方へと視線を向けるスバル。
既に完全制圧された怠惰を前にして一体何をするのかと疑問符を浮かべるユリウスの前で、耳をつんざくような嫌な音が響き渡る。
「──ギギギギギキッ!!」
聞こえてきたのはマーコスの身体の下、潰されかけた身体に無理やり力を入れたことで漏れ出した声は獣のようだ。
顔を地面に押し付けられて周囲の状況すら分からず、力を込める手足すら無いというのにペテルギウスはそれでも諦めない。
常軌を逸するその狂気を前にしてマーコスは叫ぶようにフェリスの名を呼んだ。
「こいつ!!! おい! まだ意識があるぞフェリス!」
「にゃんで!? 絶対に起きてこれないはずなのに!」
死ぬ一歩手前の体で、生きてさえいればいいという注文通りに最低限の機能以外を全て破壊したフェリス。
無理やり動かそうとしたところで人体の構造上動くはずがないのに、それでも狂人はその信仰心だけで動いて見せる。
「──我が勤勉さに怠惰な諦めも終焉もないのデス!」
切り落とされた腕の先から伸びるようにして現れた『見えざる手』。
誰しもがもはや動けるはずがないと警戒していたからこそ、初動の一歩が遅れてしまう。
ボルドーを狙って伸びた腕はそのままの勢いで真っ直ぐと突き進んでいき──ボルドーの鼻元まで近寄ろうかというところでビタリと止まる。
驚愕と共にペテルギウスが視線を向けたのはスバル、その胸部からはペテルギウスしか持ち得ない筈の見えざる手が伸びていた。
「させるかよペテルギウス! お前が誰よりも勤勉な男だって事は嫌ってほど知ってるんだよ!」
ペテルギウスに打てる手はもう無い。
文字通り手も足も出させない完封勝利、そうでなければ勤勉なこの男は勝機を逃さずにしつこく勝利を追い求めただろう。
完全なる終わりを迎え、ペテルギウスはそれでも笑って見せた。
「福音書の掲示を守れず、我が身果てようとも! されど我が身体は怠惰な終わりを迎える事は無いのデス!!」
「──団長潰して!!!」
体内のマナを過剰に生成し、己の内側で溜め込んだペテルギウス。
あまりの圧力に耐えきれなくなった体はフェリスが警告した直後に爆ぜて、周囲にペテルギウスであったものが飛びちっていく。
爆風は咄嗟に反応したマーコスが防いだおかげで被害は少ないが、魂に対しての攻撃がなされていない以上ペテルギウスの脅威が去ったわけではない。
「やたらめったら爆発しやがって。当分人間爆弾トラウマになるわ……」
怠惰という巨悪を打ち破ったにも関わらず、いまだ大罪司教を多数残す王城。
勝利に一息つく暇もなく、重たい身体に鞭打ってユリウスと共にラインハルト達の援護に向かおうとすると、王選の間が開く。
「待たせたのよ、スバル」
そこに立っていたのはベアトリスだった。
憤怒と色欲と戦っており、動けるはずのないベアトリスが目の前にいるという事実に色欲が化けていることを疑うスバルだったが、彼の中の『小さな王』が目の前にいるのは本当のベアトリスだと証明していた。
「──どうしてベア子がここに? ラインハルトに全部なすりつけてきたのか?」
「人聞きの悪い言いがかりはやめるかしら。原因は……それなのよ」
首を振って何かを探すような素振りを見せたベアトリスは、目的の物を見つけるとそれに対して指をさす。
室内にいる人間ほとんどすべての視線がそちらの方に注がれると、落ちていたのはペテルギウスが先程取り出してなにやらしようとしていた物品。
目を凝らしてそれが何なのかを改めて確認してみると、見慣れたフォルムであることにスバルは気が付く。
かつてペテルギウスがロズワール邸襲撃の際にも使用していた遠距離通話用のミーティア、彼が先程取り出していたのはそれだ。
「ペテルギウスの絶叫が聞こえて、直ぐに憤怒を始めとして三人とも撤退したかしら。下手に追いかけて暴れられるのも困るし、素直に逃がしてラインハルトがいまは城内を見回りとして走り回っているかしら」
ベアトリスから伝えられた色欲と憤怒、二人の大罪司教の実在とその討伐にラインハルトですら成功しなかったという事実。
だがそんな話よりも大切なことは、攻め込んできていた相手が逃げたという事実と、ラインハルトが無事で城内の制圧を行っているという事だけ。
絶望的な状況で一秒先がどうなるかも分からない状況から、完全に脱したという事である。
「……つまり、勝ったのか?」
「俺達魔女教相手に勝ったんだ、怠惰相手に!」
「やった、やったぞ!」
あまりの出来事に興奮のあまり口々に言葉を発する騎士団員達。
そんな面々を前にして地面を剣で一突きして静かにさせると、注目を集めたクルシュは集まる視線を気にする素振りも見せずスバルに語りかける。
「この戦いを左右したのはお前だ、ナツキ・スバル。勝ち鬨を上げるのはお前以外の他の誰でもない」
「お、おれ!? 俺はそんな──」
クルシュの言葉を受けて注がれるナツキ・スバルに対する視線に、初めにスバルを見ていた侮りや懐疑の目線はもはや少しも存在しない。
彼女の言葉がなくとも全員の共通認識としてスバルの献身とその力が認められ、彼はこの場の誰よりも騎士として恥じない働きをして見せたのだ。
そしてそんな周囲からの期待を受けて、スバルは覚悟を決めた。
「──ほんとに、クルシュさんには敵わないな。俺だけじゃ絶対にこなせなかったけど、皆がいてくれたおかげで大罪司教を3人も撃退して、王選候補者も賢人会も誰も傷つけさせなかった。この戦い──俺たちの勝利だ!!!」
湧き上がる歓声が地面を震わせる。
響き渡る声は王城どころか王都にまで響き渡り、この戦いに勝利したのがどちらであるかをはっきりとさせた。
いまだ魔女教徒の脅威が消え去ったわけではないが、少なくとも大きな山場は越えたと言っていいだろう。
蓄積した疲労はついにスバルの体を地面に横たわらせ、やたらと高い天井と喜ぶ周囲の状況が非日常を味合わせてくれた。
これから先どんなことが有ったとしても王選の間で寝ころべるのなんて今くらいの物だろう。
そんな事を考えていっそ眠ってしまおうかと思う程に脱力したスバルの視界に、赤毛がチラつく。
「──状況は?」
スバルの顔を覗き込んでいるのはラインハルトだ。
見回りをしていたんじゃないのかとか、どこから入ってきたんだとか様々な疑問はあるが、そんな事を聞く気力がいまのスバルにはなかった。
おそらくは歓声を聞きつけて何か問題が起きたのだろうと察して戻ってきたのだろうが、周囲の浮かれ具合を見て非常事態ではないと判断したらしい。
スバルは寝ころんだまま大まかな位置を指さしながら、珍しく疲れた表情を見せるラインハルトの疑問に答える。
「ついさっき全部終わったところだよ。そこで爆散したのが怠惰だ」
「そうか、一足遅れてしまったようだね。申し訳ない」
「いいや。ユリウスから話は聞いたし、正直今回は殆ど全部ラインハルトだよりになったから悪いなと思ってるよ。憤怒達はどこ行った? あと王城内の魔女教は? まだ残ってるなら起き上がるけど」
「憤怒達には逃げられてしまった、申し訳ない。王城内は既に制圧済み、王城外部を囲う様に配置されていた魔女教徒も排除したから、周囲に敵影はないよ」
今回の戦闘で改めてラインハルトの実力を理解したつもりでいたスバル。
王城というなるべく壊さないように気を付けないといけない場であり、多数の人間の命を守るべき役目を持つ彼は周囲に特に気を使いながら今回スバルが出した無理難題のほぼ全てをこなして見せた。
最終的には大罪司教と腸狩り相手に時間稼ぎまでした上に、城内の制圧業務すら代行して見せたのだ。
それだけ働いてまだ申し訳なさそうな表情をするラインハルトを見て自己評価の低さは相変わらずかと思いながらも、どれだけ彼の力で己が救われているかを理解できたスバルは心の底からの賛辞を贈る。
「……改めてすげぇよお前、尊敬する」
この世界線ではないが、ラインハルトが抱えている物の重たさやその苦悩の少しはスバルも理解しているつもりだった。
その上で努力を積み重ねていまの立場にいるラインハルトを尊敬しているからこそ口から漏れ出た言葉を受けて、ラインハルトは驚いたような表情を浮かべた後に恥ずかしそうに頬をかいて見せる。
「僕なんかよりスバルの方がすごいよ。キミが適切に指示を出していなければ、被害は計り知れないものになっていた。遅れてばかりの僕なんて比べるまでもないさ」
どうしてそんな考えになるのか。
そう言いたかったが、いまのスバルではアストレア家の確執に首を突っ込むことは出来ない。
ラインハルトにとっては今日あったばかりの人間だし、この世界の状況が元のアストレア家と同じとは限らないので下手に首を突っ込んで事態をややこしくするのが目に見えているからだ。
だからスバルはいま自分なりに彼を思った言葉を投げかける。
「あんま卑下すんなよ。お前の足りない分を俺がやって、俺の足りない分をお前がやってくれた、そういうことだろ?」
プリステラの時からそうだ。
スバルという存在は一人では何もできず、一人で抱え込むスバルに自分を頼ってくれと言ってくれた友に、あまつさえ死体の処理までさせた愚かな男。
足りないところだらけである場所を探した方が良い程だけど、それでラインハルトの事を救えるのであればスバルは自分のそんな短所たちも愛せるような気がした。
「まぁそっちの方が負担大きかった気はしなくもないけど、そこら辺は適材適所ってことで一つ」
差し出したスバルの手をラインハルトはぎゅっと握りしめる。
寝ころんでいる状態なのでなんだかちぐはぐだが、少なくとも心は伝わっている。
「スバルは本当に凄いや。改めて、またゆっくりと話す時間が欲しいな」
「次は揉め事が起こらない現場でよろしく。詳しい話は騎士団長さんから聞いといて」
話せば長くなる。
そんな思いからスバルはマーコスに全てを丸投げすることにした。
「分かったよ、しっかりと場所を探しておこう」
「よろしく。……あと悪いんだけど起こしてもらってもいい?」
そうしてラインハルトに引っ張り起こされ、スバルはほぼほぼ立っているのがギリギリな状況で周囲の状況を改めて見回す。
スバルと同じように疲労から倒れ伏しているもの、一応敵襲がないか警戒するもの、フェリスを始めとして死んだペテルギウスの体を集めているもの。
様々な面子の動きを眺めながらさてエミリアに褒めてもらおうとスバルが何とか足を動かそうとしたその瞬間。
聞きなれた声がスバルの耳に届く。
「スバル──っ!」
「ふんばらばっ!? ベア子さん熱烈なハグはちょっと今勘弁して……」
背後からの鋭い腰への一撃を受けてスバルは前へと倒れこみそうになりながら、なんとか反射的に右足を前に出して体勢を立て直す。
振り返ればベアトリスがスバルの腰に抱き着いており、出来る限りの力でスバルの事を抱きしめている。
平時であれば可愛いものだと甘やかしモードに入っただろうが、疲労困憊でまともに反応することもできず言葉を返したスバルに対してベアトリスは不機嫌そうな表情を見せる。
「突進の威力はベディの心配の現れかしら。それにベディだけじゃないのよ」
「誰のこっ──痛だぁ!?」
一の矢に引き続き二の矢が今度は前面からスバルを貫いた。
ベアトリスは理解できる、メィリィがいたなら二の矢の可能性も考慮に入れただろう。
だがこの場にメィリィはおらず、存在しない二の矢にトチ狂ったユリウスが突進してきたのかととんでもない勘違いを披露しそうになったスバルが視線を落とすと、華やかな花の香りに銀の綺麗な髪が視界に移る。
上目遣いがちにスバルへと向けられた視線は動揺したように揺れており、想像していなかった相手の行動に口をパクパクと開けながら赤面することしかスバルにはできなかった。
「あ、ご、ごめんなさい。スバルこうすれば喜ぶのかなと思って」
「予想の斜め上飛び越えるじゃ済まないくらい熱烈なアタックと可愛さに、心臓飛び出るくらい驚いちゃっただけだから全然大丈夫。エミリアたんも無事でよかった」
見る限りエミリアに傷は一つもない。
エキドナの障壁で守られていたのだから当然と言えば当然だが、それでも心配していたスバルはエミリアの周りをぐるりと回って怪我がない事を確認までして見せる。
「私の事はいいの。それよりスバルは大丈夫?」
「大丈夫だよ。見ての通り五体満足、エミリアたんがみんなの背中押してくれてなかったら、今頃そこら辺の床と文字通り一心同体になってた可能性はあったけど」
あまりよくない癖ではあるが、正直スバルはあと6回程度はやり直しが必要だろうと考えていた。
後詰の事を考えれば更にその回数は増えるだろうが、少なくともいまスバルが生きているのはエミリアが勇気を出してくれたことが原因の一つであることは間違いない。
満面の笑みを浮かべてエミリアに感謝を伝えるスバルだが、そんなスバルの言葉を受けてもエミリアは顔を伏せた。
「スバルは凄いね……本当にすごい」
「……? エミリアたんどうしたの?」
いつもと違うエミリアの行動にいったいどうしたのかと疑問符を投げかけるスバルだが、上げられたエミリアの表情はいつも通り可愛らしい微笑みを浮かべている。
「ううん、なんでもないの。ごめんなさい、プリシラもありがとう。スバルを助けてくれて」
突如として話題に挙げられたプリシラは、先程まで戦闘が起きた戦場を興味深そうに歩いていたところを急に声をかけられて目を丸くする。
確かに騎士団長に発破を最初にかけたのはプリシラだ。
お礼の一つでもするべきだろうと向き直ったスバルを他所に、エミリアはスバルの知らなかった話をし始める。
「妾は何もしておらん、そこな凡愚が役目を果たしただけの事」
「魔法を使ってスバルを助けてくれてたでしょ?」
「だからか、なんか今日やたらと体動くと思ってたんだよな」
スバル1人でペテルギウスの猛攻を防げたのは、『見えざる手』が見えているというアドバンテージと彼の戦法を熟知しているという部分だけでなく、プリシラによる身体能力の強化が有ったからこそだ。
かつては王都でプリシラがスバルを使いトンチンカンから逃げるために使用した魔法。
かけられた者の身体能力を限界ギリギリまで引き出すそれのおかげだったのだとスバルが納得していると、プリシラは下唇を軽く噛んで忌々しそうにエミリアを見つめていた。
「………………」
「ははっ、プリシラも結構可愛いとこあんじゃ──痛ッ!!! 痛い痛い!?」
「スバル! 大丈夫かしら!!」
突如として解除された魔法。
その反動は筋肉痛としてスバルの全身に痛みの信号を鳴らし、感じたことのない場所からの痛みに悲鳴を上げてその場で転がるスバル。
心配してベアトリスが駆け寄るが、回復魔法でもどうにもならない痛みなのでスバルは歯を食いしばって耐えるしかない。
「無様よな。その様を見れただけでよしとしよう」
「プリシラったらすこーし意地悪さんなんだから」
「意地悪さんの意地悪がシャレになってないんですが……っ、とりあえず俺エキドナの所に行って来るから二人はプリシラと喋ってて」
「分かったのよ」
「──なっ、凡愚!」
何やら言いかけていたプリシラを無視して命からがらその場から脱したスバル。
向かう先は何やら騎士団員達と話をしているエキドナの所だ。
足を引きずり一人で歩くのがやっとといった姿のスバルが近寄ってくるのを見ると、エキドナは騎士団員達との会話を中断してスバルの方へと近寄ってくる。
「……お疲れ様、随分と無茶を重ねたね」
「まぁこれくらいはな。今回はマジで助けられたよ、ありがとうエキドナ」
「それはどうも。ボクとしてはもう少し自分の身を大切に考えてもいいんじゃないかとは思うけれどね」
その視線の先にあるのは傷ついたスバルの体だ。
表向き大きい外傷はないが、小さな裂傷を始めとして表面はかなり傷ついているし、内側は更に酷い事になっているのは間違いない。
後々フェリスに直してもらうにしても数週間は絶対安静の怪我であることは間違いないだろう。
スバルとて怪我をしたかったわけではないが、どこも欠損せずにこれほどの事態を回避できたのであれば安いとすら思ってしまっていた自分がいたのも確かだ。
「心配してくれて嬉しいよ、そういうところ気を抜くとすぐにセーブが効かなくなるから。さすがに今回は状況が状況だったけどな」
「分かっているよ、無理な話だという事はね。ただのボクのわがままだよ、キミには出来るだけ傷ついてほしくない」
「………………っ」
「照れてる場合じゃないだろ、キミ意外と押されるの弱いね」
舌を出して小ばかにするような仕草を見せるエキドナだが、不覚にもドキッとしてしまったのは事実なので特に何も反論せず押し黙るスバル。
そんな彼の姿が可笑しかったのか数秒程楽しそうに笑ったエキドナは、薄く浮かんだ涙を手でふき取りながら拗ねているスバルに優しく声をかける。
「今回の騒動を踏まえて何がどうなってるのかは帰りの馬車で話すとして、早く屋敷に戻らないとね」
「なんかあったっけ?」
「出てくる前に言っただろう? 客人が来ているんだよ──キミを待っている客人がね」
微笑みと共に口にされたエキドナの言葉。
これほどまでに大変な出来事をこなしたというのに、一息つく暇すらもないのだろうか。
いまの自分を待っている存在に少しも心当たりがなく、とはいえロズワールがレムとラムを残してまで相手にしなければいけなかった相手と言う事は、相当大切な相手なのだろう。
そんなところまで考えて、スバルは初めて有給休暇という概念が異世界にない事を恨んだのだった。
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活動報告に新しくネタバレ有りの板を作成しました。
ネタバレ内容を明記するつもりは有りませんが、自分のネタ帳兼ネタバレ有りで見たい人向けに作成するのでとにかく気になる! いますぐ知りたい! って人はそちらで聞いていただけると助かります。