雑魚冒険者が拾ったのは、ボロボロの元魔王でくっっっそヤンデレ 作:菊池 快晴
――隙があれば痛めつけて捕らえろ。
私たちは、ロング様にそう指示された。
これまで千人を超える冒険者たちを始末してきた。
理由は単純、金だ。金があれば、この世界の殆どが手に入る。
冒険者はバカで雑魚ばかりだ。知能の低い魔物に集団で襲いかかり、不意打ちで成果をあげて祝杯を挙げる。
殺しには美学が必要なのだ。ただ戦うだけでは、それこそ獣と変わらない。
今回の標的はユリウスという冒険者だった。
経歴を見て、思わず拍子抜けてしまう。
パーティーではなくソロで行動しているところは称賛に価するが、この程度だと誰にも組んでもらえないからだろう。
「
「本当に冒険者はバカばかりだ」
奴隷を買ったあと、自分がどういう立場で見られているのかも考えていないらしい。
おそらくだが、奴は治癒魔法を持っていると思われる。
何かコツを掴んで魔法が強化されるやつもいる。
きっと、そんな感じだろう。
――
仲間の一人が、私たちの溢れる魔力を制御した。
まあ、
オークゴブリンの巣を見つけ、一人で戦い始めた。
思っていたよりもやるようだが、所詮は
肩で息を切らし、魔力も使った。
ただ、不可解な現象があった。
オークゴブリンが、突然、体を硬直させるのだ。
何らかの能力か? 毒の一種? にしては即効性が高い。
まあ、攻撃を受けなければ済むだけの話。
帰り際、一番油断しているときを襲うとしよう。
この仕事が終われば南でゆっくりするか。
「出てこいよ。隠れてもわかってるぞ」
するとユリウスは、想定外の言葉を放った。
私たちの魔力は、仲間の
一流の冒険者ですら見破られなかった。
それを……こんな雑魚冒険者が?
――いや、偶然だ。誰かが姿を見られて、ただ鎌をかけたのだろう。
仲間に合図した。どうせ粋がりの雑魚だ。
数人の部下を残し、姿を見せた。
ユリウスは驚いていなかった。
おそらく戦闘したあとで興奮状態なのだろう。
俺たちは多重攻撃を仕掛けた。
ロング様からは口さえ聞ければいいと言われている。
つまり、手足を落としても問題はない。むしろ、治癒魔法があるならそこでわかるだろう。
高く飛びあがり、ユリウスの右腕を狙って振りかぶった。
――もらった。
「遅いな」
だが不可解なことがおきた。
ユリウスは私たちの攻撃を回避したのだ。
すれ違いざま、私の顔を覆っていたフードを斬りつける。
予想外のことが起きたときは、距離を取る訓練をしている。
全員が三歩下がり、ユリウスを囲った。
どうやら、誰の攻撃も成功していないみたいだ。
ユリウスは笑みを浮かべた。
なぜか、恐ろしいほど背筋が凍る。
「――ベルス・ガルム。今日はお前の命日だ」
次の瞬間、奴はこの二十年、ただの一度も名乗っていなかった私の名前を呼んだ。
身体が硬直し、全身が悪寒で震える。
剣が伸びてくる。なのに動けない。動くことができない。
心臓に向かって一直線、皮膚に冷たい剣先が触れると、激しい痛みとともに呼吸ができなくなる。
奴の魔力は私の十分の一以下程度しかない。
なのになぜ攻撃を回避――予測してたというのか。
ありえない。なぜ、こいつがずっとこんな低レベルな狩場で――。
そして、なんだこの能力は……。
その場に倒れこみ、視界が暗くなっていく。
直後、仲間の悲鳴が聞こえてきた。
最後に……娘に会いたかった――。
◇ ◇ ◇
「ファスト・リグレール。――なぜ俺を狙った?」
「…………」
最後の一人。森に隠れていた奴を殺した。
額の汗をぬぐって、深く呼吸する。
――初めて人を殺した。
だが、そのことへの葛藤は不思議となかった。
いつかはと覚悟していたからか、それとも、能力を使ったときの
魔物は、生きている人間は食べないが、死んでいる人間は食べてくれる。
このまま放置しておいても問題ないだろう。
驚いたことに、全員が口を割らなかった。
相当訓練された奴らだったのだろうか、けれども、能力のおかげで倒すことができた。
やはり、
これは強さというよりは、持って生まれた性質にもよってくるだろう。
攻撃に長けている奴もいれば、防御に長けているやつもいる。
このあたりは慣れていくしかないな。
何か手がかりがないかと思ったが、何も出てこなかった。
持っていたのは武器と水、あとは携帯食料だけだ。
だが、逆にこれが証拠みたいなものでもある。
普通の盗賊や山賊ならここまで徹底していない。
間違いなく奴隷商人の差し金だろう。
大方、俺を見張って痛めつけ、隙あらば捕らえろと命令していたのか。
最初に倒した奴は
真正面に立つなんて、それなりに自信があったのだろう。
リスクはあったが、最初に倒せてよかった。
おかげで、他の連中が明らかに狼狽えてたもんな。
明確に狙われているとわかった以上、この街に滞在するのは危険だ。
資金は心もとないが、別の街へ繰り出すとしよう。
――と、いつもなら考える。
でも、今の俺は違う。
リドゥルをあんな目に遭わせた上に俺を狙った。
――その代償は払わせてやる。
っと、その前に。
「武器は全部回収しておくか」
次、街、戻ります。
文字数短くてすみません。
よろしくお願いいたします。