雑魚冒険者が拾ったのは、ボロボロの元魔王でくっっっそヤンデレ   作:菊池 快晴

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3話 悪魔の干渉

 いつのまにか痛みで気絶してしまったのか、ベッドの上で目を覚ました。

 右目を確認してみたが、何も変わったところはない。

 

 とはいえ違和感はある。

 今までとは違う。魔力が満ちているのがわかった。

 同時に、 ――干渉(インターフェア)という能力が自身に備わっていることも感じている。

 言葉では表せない。例えるならば、歩く、走る、のように、()()()()()()と確信できるようなものだ。

 

 ただ、使い方がわかっても何が起こるのかまでは理解できない。

 

 隣のベッドで眠っている魔王、リドゥルに視線を向ける。

 

 昨日と変わらない姿だが、どこか安らかに眠っているようだ。

 

 普通に考えれば、彼女が俺に能力(ギフト)を与えた。

 冷静に考えてみるとお礼ではないだろうか。

 あの場所から助け出した、と考えても不思議ではない。

 

 千のスキルを扱えると史実で書かれていたのだ。譲渡する魔法があっても不思議じゃない。

 罪悪感もありつつ、今すぐに使ってみたいと思う自分は最低な奴なんだろうな。

 

 ……まあ、生きているだけで人は罪を犯しているとも聞いたことがある。

 実際、俺がリドゥルに酷いことをしたわけじゃない。

 

 というか、よく考えたらご飯はどうしたらいいんだ。

 

 リドゥルは酷く傷ついているものの、生きている。

 眠っているということは、お腹だってすくだろう。

 

 この宿は、いわくつきの連中が寝泊まりしていると教えてもらった。

 俺がいない間、部屋の確認をされることはないという。

 

「リドゥル、食事を買ってくるよ。ありがとな」

 

 聞こえているのか聞こえていないのか、わからないまま声を掛け、裏口から外に出た。

 

 朝に街へ繰り出すのは久しぶりだ。

 いつもは昼ぐらいだもんな。

 

 この街、ペルポは冒険者が多いと言われている。

 街の周りの森や川には魔物が多く、素材が集めやすいからだ。

 また、魔物に縄張り意識がしっかりあることで、ある程度、狙って狩りが行える。

 

 そのおかげで、俺もなんとか冒険者として過ごせているということだ。

 

 

 朝市場で新鮮な果物を購入した。

 それから安価な米粥と水を露店飲食から買った。

 

 リドゥルには歯がない。

 固形物は食べられないだろうと思ったからだ。

 

 ふたたび宿へ戻ろうと路地裏に入ると、最悪の連中と出会った。

 

 俺を追いかけてきていた、冒険者の酒場にいた連中だ。

 ふらついて酒に酔っているところを見ると、朝まで飲み明かしたのだろう。

 

 姿を隠そうにも時すでに遅く、俺に気づいた。

 

「ユリウスじゃねえか、てめぇ、どこいってたんだよ」

 

 相手は三人。酔っているとはいえ、俺より格上の冒険者。

 朝は兵士が少ない。すでに現金はほとんどないが、それを伝えたところで信じてもらえないだろう。

 

 なぜなら俺みたいな落ちこぼれ冒険者は、懐に現金を忍ばせていることが多い。

 普通なら預かり屋と呼ばれる現金を保管してくれるところや、ギルドに預けているが、手数料がもったいなくてやらない。

 もちろん、俺も例外ではなかった。

 

 逃げようとするも、驚いたことに剣を抜いて構えやがった。

 

 さすがに街中ではありえないが、酔っていることで正常な判断ができていないのだろう。

 全力疾走で逃げるか? いや、奴らの能力(ギフト)に投擲があったら?

 無防備な背中に一撃を食らって終わりだ。

 

 ……なら。

 

「どこでもいいだろ。お前らには関係ない」

 

 俺は、短剣を取り出した。

 初めは長剣を使っていたが、俺のようなソロは取り回しが軽いほうが狩りしやすいと気づいてから愛用している。

 

 だがそれは不規則な動きをする魔物相手の話だ。

 

 人間の場合は、単純にリーチの差が物をいうことが多い。

 

 それも相手は三人。

 

「ユリウス、それは正当防衛になっちまうぜ?」

「金、たんまりはいったんだろ? よこせよ」

 

 不思議と恐怖はなかった。

 理由はわからない。むしろ、身体がうずいている。

 

「調子に乗んなよ落ちこぼれが!」

 

 男たちが一直線に掛けてくる。

 直後、右目が熱くなった。

 

 昨日と同じ。だが、心地よい痛みだ。

 

 対象の真名が見える。俺は、三人の名を叫んだ。

 

 直後、――干渉(インターフェア)が発動した。

 

「あっ、かっ、な、なんだこりゃ」

「は、は、は、はっっっ」

 

 次の瞬間、想像もしなかったのようなことが起きた。

 連中はまるで何かに捕まえられたかのように停止したのだ。

 

 間違いない。強制的に止められている。

 

 そうか、この能力は、対象の動きを制限することができるのか。

 

「や、や、やめろ――」

「でもお前らは、俺の金を奪うつもりだったんだろうが」

 

 すぐさま近づき、それぞれの太ももに短剣を突き刺した。

 それからほどなくして干渉(インターフェア)が解除されたらしく、連中は地面にのたうち回る。

 

 こいつらも俺を殺す気はなかったはず。

 そんな面倒なことをすれば兵士に逮捕されるからな。

 だから殺さなかった。でも、次は容赦しない。

 

「次、俺の前に現れたら殺す」

 

 どれだけ酒に酔っていても、この脅しは記憶に刻まれただろう。

 

 

 宿へ戻る。リドゥルはまだ眠っていた。

 

 俺もホッとしたのか、心臓が強く鼓動した。

 

 勝った。それも、それなりの冒険者を相手に。

 

 ずっと落ちこぼれだった。でも、これからは違うかもしれない。

 

「リドゥル」

 

 囁くように呼び掛けると、リドゥルの目に微かに光が宿った。

 おそらく起きたのだろう。

 

 俺は、できるだけ優しく頬に触れたあと、米粥を取り出して口に添えた。

 

 リドゥルは、ハァハァといいながら、ほんの少しずつ吸うように食べてくれた。

 

「お前のおかげだよ」

 

 こいつは元魔王かもしれない。ただの気まぐれで俺に能力(ギフト)を与えたのかもしれない。

 

 それでも、感謝していた。

 

「……ぁ」

 

 リドゥルは、ほんの少しだけ声を上げた。

 もしかしたら、お礼なのかもな。

 

 

 それから小瓶を取り出した。

 露店の販売店で売っていた魔法治療薬だ。

 

 安価なもので申し訳ないが、痛みが少しでも和らぐかもしれない。

 

「悪いな。金がないんだ」

 

 できるだけ皮膚を労わりながら塗ると、リドゥルの目が安らかになっているように思えた。

 良かった。多少は効いているようだ。

 

 と、思っていた矢先、俺はとんでもない光景を見た。

 

「……嘘だろ」

 

 ジュクジュクと、焼けただれていた皮膚が治っていったのだ。

 

 




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