ゲーム開発部がゲヘナで野菜をつくるお話 作:空を飛ぶジンベエザメ
遂に迎えたミレニアムプライスの発表日。特設ページで今年の受賞が発表された直後、ユウカは前回の発表の日と同じように、ゲーム開発部の部室へと小走りで向かっていた。
ドアノブに手をかける前に一度ノックをするユウカ。しかし中に人がいる気配はあるのに返答が無い。
(あぁ、やっぱり...)
居留守をされたことで何かを察したユウカはもう一度扉を叩く。今度は少し強く。すると
「...どちら様ですか?」
というモモイのくぐもった声が聞こえてきた。彼女らしくない言葉使いに加え、声に覇気が全く無い。
「私よ。ねぇ、入っていい?」
「なんだユウカか。入っていいよ...」
ドアノブを捻って部室に入ったユウカは、薄暗い部屋の中に漂うお通夜のような雰囲気と、そんな雰囲気をこれでもかと吐き出している、テーブルを囲って座るモモイ達を見て困ったように微笑を浮かべる。
「えっと、その...。こ、今回は残念だったわね...」
『うわ~ん!!ユウカ~!!』
ユウカの慰めの言葉で早くも限界が来た4人は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらユウカのお腹に飛び込んだ。
「ちょ、ちょっと落ち着きなさい...!制服汚れちゃうじゃない...!」
「ユウカ~!!どうして落選しちゃったの私達~!?今回のゲームめちゃくちゃ自信作だったのに!!」
「だからまずは落ち着きなさいっ...!」
ユウカは駄々をこねるモモイ達の顔を力ずくで引っぺがす。しかし黒い制服には既に4人の涙と鼻水が引っ付き、あちこちに白い筋を残してしまっていた。ユウカは当然苦い顔だ。
モモイ達がこんな事になっていることからして既に察しているかと思うが彼女達は残念ながら、今回のミレニアムプライスは受賞を逃すという結果に終わってしまった。オマケに今回は特別賞の枠すらも設けられず、審査員からの簡単なコメントが付与されるだけに留まっていた。
「モモイ達の気持ちも分かるけど泣いたって仕方ないでしょ。前回の特別賞は例外中の例外みたいなものだったんだし。それにミレニアムプライスはあくまで『実用性』に重点を置いた賞。その点で言えば今年は相手が悪過ぎた、としか言いようが無いわ」
「うぅ...」
ユウカが「相手が悪過ぎた」と言ったので、ここで今年の受賞作品を紹介しておこう。今年見事にミレニアムプライスに輝いた成果物、その半数以上がエンジニア部が発表した「最新式の農業機械」であった。今回エンジニア部は複数の機械を出展し、その全てが受賞に値するとして評価されたのだ。前回の特別賞に引き続き、異例の措置である。
「そうだよユウカの言う通りだよ!私達は一つのゲームを作るのに精一杯だったのにエンジニア部は幾つも作ってその全部が受賞なんて!そんなの卑怯だ!」
「それは卑怯じゃなくて単なる実力の差でしょ?時間は皆、平等に与えられているんだから」
「そんな正直に言わなくたっていいじゃん!?ユウカは私達の味方なの!?それとも敵!?」
「はいはい悪かったわ。でも実力が及ばなかったというのは同じミレニアムの生徒としてしっかり自覚して欲しいわね?今回のエンジニア部の成績はどの部活と比較しても本当に頭一つ抜けていたんだから」
慣れた様子でモモイ達をあしらいつつ、ユウカは携帯を取り出し、改めて特設ページを開く。
畑の上を這って移動することで土の表面を掘り起こし、雑草の発生を防ぐヘビ型ロボットや、雑草と作物を正確に見分け、雑草だけにレーザーを照射して枯らすロボット。更に以前ジュリの畑で病気の防除を行ったドローンを改良し、作物の状況を見極め適切な量の農薬や殺虫剤を散布出来る「スプレー君Mk. 2」。
特設ページのホーム画面にはそんな機械達がズラリと並んでいた。更にそれらと並行して紹介されているインタビュー記事によると、既に幾つかの農場から試験運用をしてみたいという声も貰っているらしい。
持ち前の技術力に加え、ジュリとの交流で「農業は雑草や病気、害虫や害獣との戦いである」という事を肌で理解し、需要に沿ったものをピンポイントに作り出したエンジニア部が生んだ、必然かつ見事な結果だった。ゲーム部以外の部活でもここまでの成果を上回るのは厳しいだろう。
「まぁ、そうだよね...。何度か一緒に畑で仕事したけど、その時のエンジニア部の熱意凄かったもん。今思うとなんて言うか、技術力だけじゃない、私達に足りないものが絶対あったなぁって...」
「うん、そうだね...」
ド正論を真正面からぶつけられたことでかえって冷静になれた4人は涙を引っ込め、おずおずとユウカから離れた。
仮にエンジニア部の3人が今の自分達と同じ立場だとしたら、結果に対して肩を落とすのは最小限に、直ぐさま次の開発に取り掛かることだろう。そんな気がして、ユウカの言う通り泣いていても仕方ないと思えた。
「まぁでもミレニアムプライスには値しなかったってだけで、ゲームのクオリティ自体はかなり高かったと思うわ!実際レビューも好評ばかりじゃない!」
4人が泣き止んだことで一転して明るい声になったユウカは今度はキヴォトスで一番大きいプラットフォームサイトにある、今回ゲーム開発部が作ったゲームのレビューページを見せる。
「テイルズ・サガ・クロニクル ジ・アナザーストーリー 魔王の娘と英雄の村」公開レビュー
匿名ユーザー
★★★★★
良い意味で期待を裏切ってきた良作!
TSCシリーズの外伝作。それなのにジャンルがシミュレーションRPGに変わり、そして主人公が今まで全く示唆されて来なかった魔王の娘ということで、「あれ、もしかしてまたクソゲーに逆戻りしたかも...」と、半分怖いもの見たさでプレイ。けれどそんな不安なんて忘れてしまう位のクオリティでした。2で登場したモンスターの殆どを仲間に出来るというのも魅力的ですし、そんなモンスター達を使った農業シミュレーションと戦闘のバランスも良く、最後まで飽きる事なく楽しめました。口コミだと最高難易度は死にゲー並に難しいとのことなので挑戦するのに躊躇っているのですが、それでも絶対にチャレンジしたいと思います!
ユーザーネーム:super11
★★★★☆
※このレビューはネタバレを含んでいます
ストーリー、ゲームシステム、前作からかなり進化しています
2の風呂敷を広げまくって最後にそれをズタズタに引き裂くようなシナリオが好きだったので、基本的に拠点の村から出ない本作のストーリーは個人的に少し物足りなさを感じました。だからといって駄作という訳では全くなく、最初わがままだった主人公が村人との交流を通じて成長し最終的には魔王と血を分けた存在として、親の所業を英雄達の前で謝罪した時は思わず涙してしまいました。エドフォンスを始めとして2のキャラクターも多く登場するので、前作を遊んだ人ほど楽しめる内容です。
ユーザーネーム:Tyranno potato
★★★★★
農業パートの作り込みに感動!!
現役農家です。農業シミュレーションのクオリティの高さと拘りっぷりに驚きました。ファンタジーの世界に合わせたデザインの魔法で動くトラクターや草刈り機は勿論の事、野菜を盗む魔物を寄せ付けないように魔法の電気を纏った柵を設置してそれを雑草から守るといった、実際に現実の農業を経験していないと作れないような細かい内容にプレイ中関心するばかりでした。加えて高難易度では作物を植える前に土に肥料を与えたり魔物の毒によって汚染された土壌を浄化する必要があったりといった要素だけでなく、戦闘に気を取られて作物の管理を怠ると畑が雑草まみれになったり病気が蔓延したりして攻略がかなり難しくなるという、現実の農業でもあり得るトラブルまで用意されていて、一農家として気分が悪くなった程です(笑)。かつてクソゲーランキング一位に輝いたゲームを作った集団とはとても思えない完成度だと思います。次回作も楽しみにしています!
匿名ユーザー
★★★☆☆
農業要素、要る...?
他のRPGに比べて仲間に出来るモンスターの数は少ないけど、その分戦闘のクオリティは他の有名なゲームに負けず劣らずな出来。だからこそプレイ時間の半分を占める農業の要素は必要だったのかと疑問に思う。最初こそ試行錯誤して色々な栽培方法を楽しむことが出来るけど、慣れてしまえば決まった操作を適切な時にやればいい、言ってしまえばただの作業ゲーになる。悪天候や魔王軍残党の襲撃といったランダムイベントが頻繁に起こってクリアまで余裕の無い最高難易度ではそれが特に顕著。それに育てている作物によっては最終決戦に備えてモンスター達を戦闘に回したい時でも収穫の為にリソースを割かなければならず、快適なプレイのノイズになることさえあった。次回作は2と同じく王道なRPGになることを期待する。
ユウカに見せられたそのレビュー群を、4人は目を皿のようにして食い入るように見ていた。ユーザーからの評価などとっくのとうに目を通していると思っていたユウカはその反応に困惑する。
「え、何その顔...。もしかしてあなた達このレビュー、今初めて見たの...?」
全員、こくんと頷く。実は今作は前回のTSC2と同様にミレニアムプライスへの受付を行った直後、事前にダウンロードが出来るようネットに公開していた。しかしそのクオリティに絶対的な自信を持っていたモモイ達は今回も賞を獲れると信じ「無事ミレニアムプライスを勝ち取り、晴れやかな気分でレビューを見ることにしよう」と決めていたのだ。その為、実際に遊んでくれたユーザーの評価を見るのはこれが初めてだった。
「ユウカ、スマホ借して!!」
呆れたと言わんばかりのユウカが何か言葉を発する前にモモイは彼女の手からスマホを奪い取り、全員で改めてレビューをスクロールする。
「凄いです!前よりも肯定的なレビューばかりです!!」
アリスが歓喜の声を上げる。一部否定的な意見も散見されるが、適当に読み飛ばすだけでも分かる程多くのレビューが星4つ以上の評価を付け、更にそれなり以上の長文で肯定的な感想を載せてくれていた。前作が賛否両論寄りだったのもあって、スクロールする度に現れる沢山の評価がとても輝いて見える。
前作よりもゲームのクオリティが格段に上がっている、それが自他共に認められたのだ。その事実に一同、一気に表情が明るくなる。その隙にモモイはユウカからスマホを奪い返されてしまった。
「はいもう良いでしょ?スマホ返して」
「ねえユウカ!私達やったよ!!こんなに沢山のレビューが貰えるなんて夢みたい!!」
「そうね」とユウカは優しく微笑んだ。
「実は私もミレニアムプライス発表前にダウンロードして一番下の難易度でプレイしてみたんだけど、前作の粗削りな部分がかなり改善されていてとても遊びやすかったわ!ストーリーもギャグとシリアスが良い具合に混ざり合ってて、何だかあなた達4人組を見ているみたいだった。ただ少し気になったのが、主人公が初めて農作業をするところのチュートリアル。何であそこだけあんなに操作性悪くしたの?ストーリーが進んだら作物栽培は仲間のモンスターに任せられるから良かったけど、レビューでもそのことを結構指摘されていたし」
「ふっふっふ、それはねユウカ...」
すっかりいつもの調子を取り戻したモモイはわざとらしくもったいぶった後にその理由を話した。
「私達が農業を通じて経験したものを少しでもプレイヤーと共有したかったから、だよ!!」
「...それってつまり、どういう事?」
モモイが言いたい事が分からず、ユウカは首を傾げる。
「ねえユウカ。私達と南瓜を植えた時、ユウカはどんな事を感じた?土の上を歩いたり、南瓜の苗を持って広い畑を移動した時、どんな事を思った?」
「そうね...。まず一番に感じたのが土の上ってこんなに歩きずらいんだ、ってことかしら。一歩を進める度に足が地面に沈んで、何ていうか、歩いているだけで体力を奪われるような、そんな感じがした。それに苗も土に水が含まれているせいで思ったよりも重くって、終わった時には私へとへとになっていたわ」
「そうそれ!!」と、モモイは人差し指でユウカをビシッと指し示す。
「まさにその感覚だよ!柔らかったり硬かったりする土、重たい苗や道具を持ってその上を移動する...。普段アスファルトや舗装された道路の上を歩いているだけじゃまず体験出来ない、農業ってこんなに大変なんだって思うこと。それをほんの少しでもゲームで再現したかったの。その意味だとこのゲームの主人公は、私達そのものでもあるんだ!自分の力だけじゃ上手に出来ない、だから村人達を頼ったり、反対に自分の力を活かして仲間のモンスター達に助けてもらう。これってジュリさん達やミレニアムの皆と一緒に南瓜を作ったのと、一緒じゃない!?」
「モモイ...」
「開発の時間が間に合わなかったから!」みたいなことを言い出すのだろうと心の内で思っていたことを、ユウカは強く反省する。まさか自分達がジュリ達との交流で感じた事をゲームを通して表現してくるとは思いもよらなかった。更にそれをゲームのクオリティを落とさないようにすべく、敢えてチュートリアルだけに仕込んだというのも、一ゲームクリエイターとしての配慮と成長を感じられる。普段ふざけているように見えて彼女達なりに前に進んでいるということを、ユウカは改めて知ったのだった。
ただ、その想いというものをもう少し分かりやすく出力していたらまた違った結果になったのではないか...
そんなことを思った時、コンコンと再びノックの音が響いた。
「あ、来たみたい!私出るね!!」
トテトテとユズが扉に駆け寄り、外に立つ客を招き入れる。
「こんにちは!」
「お邪魔します!」
「皆やっほ~!」
扉の先にいたのはジュリ、フウカ、そして先生の三人だった。三人の内フウカとジュリは良い匂いが漂うバスケットを、先生は大きな段ボールを両手に抱えていた。
「あれ、どうして先生がここに?今日は確かお休みのはずじゃ...」
「その貴重な貴重なお休みをここで過ごす予定だったの。モモイに誘われてね、ジュリとフウカと一緒に今回のゲームをプレイしようって決めてたんだ!」
「そうなんです!実は私、ゲームというものを今まで遊んだことが無くて、それでゲーム開発部の皆さんと一緒にプレイすることになったんです!」
久しぶりにゲーム開発部に出会えたからだろう、ジュリは嬉しそうに身体を揺らしながらそう答えた。
「ねえねえジュリさん、その籠の中に入ってるのってモモトークで言ってたパウンドケーキ?とっても良い匂い!!」
「そうです!ついさっき焼き上がったばかりなのでフワフワでとても美味しいですよ!それとフウカ先輩のバスケットに頼まれていた砂糖菓子が入っています。熱に弱いので、中のドライアイスが無くなる前に冷蔵庫にいれておいて下さいね」
「ありがとうジュリさん!」
モモイとミドリはフウカとジュリからバスケットを受け取る。
「ちょっとお嬢さん達。こっちも忘れて貰ったら困るよ?」
すると今度は先生が抱えていた段ボールを床に置き、中身を皆に見せる。その中にはポテトチップスやチョコレート、グミ、その他様々なスナック菓子がこれでもかと詰まっていた。
「凄い量のお菓子!これどうしたの?」
「どうしたのってホントに忘れちゃったの?ほら、収穫の時に約束したでしょ?私が見逃した南瓜の数の分、貴女達にお菓子奢るって。それがこのお菓子よ。なんだったらレシートも見せようか?確か税込みで...」
「あ、思い出した!そうだそんな事約束してたね!ありがとう、先生!!」
「どういたしまして」
ジュリ達が持って来てくれたパウンドケーキに、先生の大量のお菓子。ゲームのお供の準備はばっちりだ。「それじゃ早速始めよう!」と、モモイはプライステーションの電源を入れる。しかし起動音の直後、モニターに映し出されたのは「アップデート開始」という文字と、その下に伸びる長いシークバーだった。
「待ってお姉ちゃん。もしかしてこの前の大型アプデ、まだやってなかったの...?」
モモイの額に、冷や汗が浮かぶ。
「ご、ごめん。忘れてた...」
「何やってるのお姉ちゃんッ!!」
瞬間、ミドリの怒号が狭い部室に響き渡る。
「このアプデどんなに早くても1時間半はかかるんだよ!?折角先生達に来てもらったのに、アプデが終わるまで待たせるなんて!!信じられない!!」
「ま、まぁ落ち着いてミドリ...。先生達今日一日開けてるから一時間位なら全然平気だよ。だからアプデ終わるまで、他のゲームやらない...?」
「そ、そうですか?先生達が大丈夫ならそれで良いんですけど...」
「あ、だったらこの前の『ストリートオールスターバトル』やらない?私あのオラオラパンチするキャラ、また使ってみたいんだ」
フウカはややソワソワしながら提案する。実のところこの前のパーティーでやらせてもらった格闘ゲームに、フウカは人知れずドハマりしていたのだ。相手のキャラをハルナを始めとした美食研究会のメンバーだと思って操作すると自分でも信じられない位スムーズに指が動いて、それで相手の体力バーを削り取る度に感じる、胸の奥がスッとするような快感を、フウカは覚えてしまっていた。
「う~ん。それでも良いけどあのゲーム基本2人プレイだから、皆で遊べないんだよね...」
「そんなこと言って、お姉ちゃんまたフウカさんに負けるの怖いんだけなんじゃないの?」
「ち、違うよ...!」
図星を突かれたモモイは慌てて反論する。事実、モモイはあの時初心者のフウカと対戦して、完膚なきまでにボコボコにされていたのだ。格ゲーはあまり得意では無いとはいえ、あれは流石にプライドが傷ついた。
「でもフウカさん格ゲーの才能あると思う。ロックスフリーダムの千球コンボを初見で出した人、初めて見たし...」
「ありがとうユズさん。でも皆で遊べないなら他のゲームでも...」
その時、「待って下さい」とアリスが、何やらハッとした表情で告げて来た。
「先生にジュリさん、フウカさんにユウカ...。モモイ!この人数ならモリオパーティー8をコンピューター無しでプレイ出来ます!」
アリスに続きモモイ達もハッとした表情になる。
「よくぞ気付いたアリス!!ずっと最大人数でモリオパーティーやりたかったの、すっかり忘れてた!そしたらモニターにトウィッチ繋げよう!」
「あのモモイさん、私でもそのモリオパーティーというゲーム、遊べるのでしょうか...?」
「大丈夫!多少実力も絡むけど運ゲー要素もかなりあるから、初心者経験者あんまり関係なく遊べるのが魅力なんだ!ジュリさんも楽しめると思うよ!!」
「そ、そうですか。それなら安心です!」
モモイはモニターにゲーム機を繫げ、モリオパーティーを起動する。その間ミドリ達は先生達にコントローラーを配る。
「ねぇユウカ。ここでゲームしてて大丈夫なの...?セミナーの仕事、まだ結構貯まってたはずだけど...」
先生からのその問にユウカはコントローラーを握りつつ「やれやれ」と言った感じで首を横に振った。
「えぇ。確かに仕事はいつも通り山積みです。ですがこの雰囲気の中出ていける程、私は冷酷じゃありませんので」
その日のゲーム部の部室では一日中、8人の仲睦まじい笑い声が響いていたそうだ。先程まで漂っていた暗い雰囲気が、まるで無かったかのように。