湿度が高いウマ   作:お試し

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位置について、よーいドン!この世界線の説明会です。ギャグよりです。


教官とアストンマーチャン

 

 トレセン学園ではトレーナーとウマ娘の絆を促進させるイベントを推奨されている。ウマ娘にとってウマ生を捧げる、走りに集中する時間の提供。トレーナーにとって彼女たちのウマ生を預かる場なのだから、学園側としても当然それに適した空間にしていく必要があった。

 

「急募ッ!トレーナーの人数不足!」

 

 これは今年に限った話ではない。正確には毎年ではあるが…ジュニアからシニアまで約3年の月日を共にしたトレーナーとウマ娘が円満退職、ドリームに進む者もいるが、もとい円満家庭入りする…される?ことが学園側にとって大きな課題となっていた。勿論全員ではないが、名の知れ渡った者達ほど固い絆故か引退と同時に結婚、入籍の流れができていた。

 

 学園長≪秋川やよい≫…彼女は全生徒・全ウマ娘を愛し、彼女たちが全力で取り組める学園生活になればと日々努力している。努力はしているが…彼女自身がまだ恋愛を経験する程の年齢になっていない事もあり、恋愛沙汰に関しての対処が上手くできずにいた。元々互いに納得の上での決め事に口出しするのもという考えもある。・・・ウマ娘が結婚発表した際にトレーナー側が否定する奇行が出ることもあるが、少し担当の子と話し合うと何も言わなくなっているので…毎年一度はある例祭のようなことである。年齢に関しては愛があれば問題ない。

 

「困りましたね。彼女たちの絆も大事ですが、トレーナー側の負担増加は問題です」

 

「う~む、試験のハードルを下げるわけにもいかん!たづなも他人事のように言わんでくれ!」

 

「ははは…」

 

「…そういえば、駿川トレーナーは元気か?」

 

「夫は元気ですよ?」

 

「復帰のけっ」

 

「家庭があるので申し訳ありません」

 

「…うむ!どうするか!」 

 

 掛かり気味になった駿川たずな…家庭に入った優秀なトレーナーに復帰を願うが、大抵は妻の方に止められている現状だ。やはり自分の脚に惚れた男が、自分より若く、速さ含めた魅力に囚われるのを見たくないのだ。ウマ娘からウマ()となった者達は挙って≪独占力≫を獲得しているようだ。

 

「彼女たちと適正な距離を保っているトレーナーの中では・・・やはり、教官さんは頼りになりますね」

 

「彼には負担をかけているな…むー、だが彼以外で今担当している彼女たちのパートナーは難しいッ!」

 

 教官と呼ばれるトレーナーはトレセン学園では有名だ。未勝利ウマ娘であろうと真摯に向き合い、どんなに悪くても様々なレースで3着以内に入るまで育ててくれる。しかも担当したウマ娘で脚の故障はあれど必ず復帰させる手腕まで持っているときた、人気が出ないわけがない。

 

 彼は第一にウマ娘の脚を見てトレーニングメニューを組む。安全第一、故障はしない、させないが彼の根本にある。やよい学園長が就任前に起こった事件…教官の初めてのパートナーが引退するまでを知っているたずなは、贖罪の気持ちも大いに含まれているのだろうと理解していた。

 

 だからこそ、一癖も二癖もある彼女たちを託したのだ。学園側として、一個人としての意見だけでは回らない経営循環を通すために。

 

「教官さんは担当の子と良い関係を構築しています。担当の子は一線を引いている教官さんと仲良くなりたいようですが…難しいですね」

 

 教官呼びは今のトレセン学園において自然と呼ばれている。

 

『俺をトレーナーと呼ぶのは生涯に一人だけなんだ』

 

 どんなに関係が進んでも、どんなにレースを重ねても、どんなに勝利を勝ち取っても、あの教官の考えは変わらなかった。今まで担当した子にはG1を数度勝利した子もいた…その子が何度も愛を掛けてもだ。

 

 

 

 ⏱

 

 

 

 俺のトレセン学園でやる事は勿論、担当している子のトレーニングや体調管理が主だ。それはトレーナーなら基本そうだろうが、俺の場合はまず…担当を探すことから始まる。

 

「アストンマーチャンを見てないか?」

 

「えーと…どんな子でしたっけ…確か教官さんの担当してる子なのは覚えているんですが」

 

「こんな子だ」

 

「ああっ!確か商店街の方に向かってましたよ、何で忘れてたんだろ」

 

「そうか、ありがとう。それとほら、彼女のぬいぐるみだ」

 

「え、あ、どうも」

 

「アストンマーチャンをよろしく。忘れないでくれよ」

 

「貰っていいんですか?」

 

「それは布教用…みんなに認知してもらう用だ。気にするな、彼女を覚えておくだけでいい」

 

 同僚のトレーナーから居場所聞き、商店街の方へ歩みを進める。これはもはやルーティン、なぜか彼女は他者から忘れられる。正確には彼女自身を忘れるというより、ウマ娘としての彼女、競技に向けて歩むアストンマーチャンに関して認識が上手くできないようになる現象が起きている。担当している自分はちゃんと認識できているので、定期的に覚えてもらうために行動しているのだ。

 

 商店街に向かうといた…くじ引きをしているようだ。

 

 カラカラカラン!

 

 商店街に当たり~と勢いの良い声が響く。どうやら彼女が人参詰め合わせを当てたようだ。嬉しそうに人参を受け取っているが…渡している商店街の人たちを見ると、どこか目の前にいる彼女を見えていないように感じた。

 

アストンマーチャンをよろしくお願いします!

 

 彼女は驚いたように俺を見てきたが、俺はまずすることは彼女の普及である。彼女のぬいぐるみを近くにいる人たちに彼女の名前を出しながら渡していく。そうすると、彼女がアストンマーチャンであると、今ここにいるのだと改めて認識してくれるのだ。

 

「…ふふ~アストンマーチャンです。どうぞよろしくです」

 

 トレセン学園の生徒でレースに出ることも伝え、多くの人に認識してもらってから彼女、アストンマーチャンとのトレーニングが始まる。

 

「レースが近いから他のメンバーの休みの日にトレーニング日を作ったんだぞ。毎度のことだが、散歩はほどほどにしてくれないか」

 

「教官さんが、マーちゃんのトレーナーになってくれたらな~」

 

「前にも言っているが、俺をトレーナーと呼ぶのは一人だけだ」

 

「マーちゃんがその一人になります」

 

「そうか、さあ時間は有限だ。アストンマーチャンの走りを見せてくれ、ほいよーいドン!」

 

「…マーちゃんは負ける気はないのです」

 

 おっとりした彼女だが、教官の言葉を受けトレセン学園に向けて走り出す。勿論、教官も一緒にだ。当然ウマ娘の彼女に追いつけるはずはなく、彼女が門の前で待つ形になった。

 

「教官さん遅いです、マーちゃんが早すぎましたか」

 

「はぁはぁ、俺は桐生院の奴とは違うんだよ」

 

「…十字走りでハッピーミークさんを追い抜いていました」

 

 真顔で聞いた真実に俺は顔をそらした。トレセン学園内のトレーナーは、地方トレーナーより優秀な者が多い。難易度が高い試験を合格したのもそうだが…単純に人類スペック超えてね?と思うような人物や、ウマ娘への愛情?熱情?が桁違いに高い連中が列をなしている。まともな奴が少ないので、教官である自分はいつも何かしらの珍事件をトレーナーが起こすと、まともなのは俺だけかと認識してしまう。

 

 その時、ふと閃いた!このアイディアは、アストンマーチャンとのトレーニングに活かせるかもしれない!

 

 

 

 

 

 

 教官さんはマーちゃんにとって、お母さんのような雰囲気のお父さんのような方です。いつもどっしりといてくれる安心感、だけど…ここでないどこかに置いて行かれたような不安感を感じます。

 

「教官さん達との合同トレーニングですね。勿論です!ミークにもいい経験になりますので助かります!」

 

「悪いな、桐生院…ところで、どれが本体?」

 

「今ミークと並走しているのが本体です。私は4番目の影分身です」

 

「あ、そう。影分身できたんだ」

 

「はい。漫画を読んで練習したら獲得しました、便利ですよ」

 

「そうだね」

 

 お母さんはお医者さんとして、多くの患者さんを見てきました。私も多くの最後を見てきました。そんなある日、ふと思ったのです、忘れられるのは怖いなって。

 

「ふふふ、素晴らしい。いいデータが取れそうだ、なあトレーナー君?」

 

「そうだな」

 

「怪我をしてもブスっとワォ!あんし~ん☆」

 

「協力ありがとう。アグネスタキオンとトレーナー…貴方は呼んでませんが、安心沢さん」

 

「七色に光ってる彼を見てついね!」

 

 だから決めたんです。マーちゃんをこの世界に刻み付けて、誰からも愛されて世界を股にかけるウルトラスーパーマスコットになろうって。

 

「ここですね…ラーメンの仕上がりもバッチリです!ねぇ、シャカール!」

 

「…なんで休みの日に屋台でラーメン作ってんだ?」

 

「何してるの君たち?」

 

「ヤサイマシマシアブラマシマシカラメニンニクの良さを知ってもらう活動です!あ、学園長には許可を頂いております」

 

「許可を持ってるならいいか」

 

「おい、それ以外にはツッコムことあるだろうが!」

 

 教官さんはトレーナー…唯一無二のパートナーにはならないって皆に言ってますが、諦めません。

 

「・・・濃いな~」

 

「さあ!ミークも鋼の意思を持って全力でトレーニングですよ!」

 

「…うす」

 

 あの出会いは運命だったのだと思います。担当が付かなかったウマ娘として、学園側から選ばれたトレーナーとの仮契約。

 

『君はそこにいるだろ、アストンマーチャン。安心しろ、俺は絶対覚えているさ』

 

 どんな子にも平等に接して、ずっとそこにあり続ける人耳の男性。絶対トレーナーと呼ばせてくれない・・・ずるい人。

 

 名前を覚えられました

 

『アストンマーチャンをよろしくお願いします!あ、これは彼女を覚えてもらうため用の物でして』

 

 ファンがたくさんできました

 

『お前の走りを世界に刻み付けてやれェぇぇぇ!!』

 

 勇気をもらいました

 

『アストンマーチャンはここにいる!不安なんて教官である俺が何とかするのが義務だ、お前はただ走れ、ウマ娘として』

 

 愛を知りました

 

 

 

 だから、教官さん…トレーナーさんの一番に、マーちゃんを刻みたいと思ってます。今もあの人の中にいる一番をマーちゃんが抜き去って見せます。

 

 

 

 P.S.トレーニング後のラーメンは美味しいけどキツイです。 

 

 

 






 サポートカード『教官の合同連中』

 ※発動条件 体力50消費

 トレーニング後

 全ステータス 50up or 確率で20up
 体力回復 100回復
 やる気2段階 up

 スキル≪練習上手〇≫獲得
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