ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~ 作:大枝豆もやし
何が正しくて何が悪なのかって人によって違うし、それで話がこじれるとヒートアップして禍根残すし。
価値観の違いは本当にメンドくさい。
朝のランニングの後、ポストを確認すると妙なものがあった。
いつもは新聞しかない筈なのに、A4サイズの茶封筒が入っている。
中を開けて確認すると、ウルトラ通信簿と書いてあった。
「チェレーザか?でも愛染誠なんて聞いたことないが…」
愛染誠。
ウルトラマンR/Bの登場人物でアイゼンテック巨大ベンチャー企業を経営している社長兼研究者。
その正体は宇宙からやってきた寄生型知的生命体チェレーザ。町工場の御曹司である愛染誠に憑依して目的のために会社と町を発展させてきた。
コイツの目的は理想のウルトラマンになる…ではなく、ウルトラマンごっこをする事。
要は、ウルトラマンとしての自分を楽しみたいのだ。
そのためにコイツは怪獣を呼び寄せ、町で暴れさせる等のマッチポンプを行っていた。
理想のウルトラマンとして活躍するためなら何でもする。
自分の言動や主張に矛盾していても全く意に介さず、ただウルトラマンごっこがしたいだけの身勝手極まりない宇宙人だ。
しかも、自分の理想のウルトラマンに酷く固執している。
だから主役のウルトラマンに自分の中のウルトラマン像を勝手に押し付け、違っていたらウルトラマンとして落第だとかほざく。
そのためのツールの一つがこのウルトラ通信簿だ。
本来、通信簿は先生が子供の親に知らせるものだぞ。これなら通知表だ。…いや、これはテレビの前のちびっこ達に分かりやすく伝えるためなのか?
まあいい、とりあえず俺もこの通信簿上では落第というわけだ。
で、居残り特別授業が開催されるらしい。
その開催場所の地図もちゃんと付随している。
「じゃ、行くか」
俺の正体を知られた以上放置というわけにはいかない。
何かしらの話を付けるとしよう。
「やあ
山中の開けた場。
指定された場であるそこにたどり着いた瞬間、愛染誠は敵意を隠す事なく俺に言った。
「なんでも前の学校では暴力沙汰で廃校にまで追い込み、地下格闘技界の闇賭博に参加、今は引きこもりと、とんでもない経歴を持っているようだね?」
「だったら何だ?俺はいじめられていた子を助けたり、売春斡旋の証拠とかを提出しただけだ。地下格闘技大会も騙されただけだし、引きこもっているからウルトラマン代理の時間を確保できている。問題ないだろ」
「大有りだッ!」
愛染は大声で怒鳴った。
「あの暴力的な戦い方!君は暴力と戦いを楽しんでいるな!なんて残酷で悍ましい戦い方をするんだ!?あんなの見せられないだろ!?」
「しかもよりによってティガさんの姿で闇の巨人になるだと!?人気投票ナンバーワンのティガさんを侮辱するな!」
「君はウルトラマンに相応しくない!本来光のウルトラマンが闇に反転しているのがその証拠だ!」
怒涛の勢いで言われた。
まあ俺がウルトラマンに相応しくないのは最初から承知している。
だから本物が来てくれるならウルトラマンの代理なんて辞めてやるよ。
ちゃんとソイツがウルトラマンしてくれるならな。
「ああいいぜ。ウルトラマン代理をやめてやる。ただしその前に3つ質問がある」
「何?………何だ?」
俺の返答に驚くが、一応聞いてくれるようだ。
大分怪しんでいる様子だが。
「一つ目の質問、俺が戦わないなら誰が戦う?お前か?」
「そうだ、私はティガさんの力を手に入れた!これからは私がウルトラマンに変身してこの地球と平和を守る!」
愛染は俺にスパークレンスを見せてきた。
俺のとは違って黒ではなく、赤と灰色のスパークレンスだ。
「二つ目の質問、何故お前は今までウルトラマンとして戦わなかった? 俺はウルトラマンがいなかったから代理として戦ってきた。だからウルトラマンが最初からいたら俺は出るつもりは無かったんだよ」
「…今まで私はスパークレンスを手に入れることが出来なかった。だから渋々君が代理するのを見逃してやったのだよ!」
見逃す、か。あくまで俺が勝手にやったということにしたいのか。
まあそうだけど。
「最後の質問だ。お前はガタノゾーアに勝てるのか?…いや、そもそも俺より強いのか?」
一番の懸念材料がこれだ。
最初と次の疑問はまだいい。
単に今まで変身アイテムが手に入らなかったせいで登場が遅れただけだから。
だが、最後の問題は俺にとって…いや、人類だけでなくこの地球にとって死活問題だ。
コイツにはウルトラマンとしての経験がない。
当然だ、変身出来ないなら実戦なんて出来るわけないからな。
俺が今まで怪獣や宇宙人を倒してきたのだから、その分の経験は俺の方が断然上だ。
そんな奴があのガタノゾーアに勝てるとは思えない。それどころか、今から戦うであろうシルバゴンやキリエロイドなどの強豪怪獣にすら勝てないだろう。
強豪だけなら俺が手助けしてやってもいいが、ガタノゾーアに関しては俺が加わっても勝てる気がしない。
「どうなんだ?勝てるのか?」
俺が聞くと愛染は猛烈に焦り始める。
「う…うるさい!なら私からも質問させてもらう!お前にとっての正義と悪は何だ!?光と闇とは!?愛と平和とは!?」
「あ?そんなモンこの世にはねえよ」
俺は善悪というのは本来ないと俺は思っている。
例えば歴史。
歴史は勝者によって作られる。
負けたら悪者にされる歴史に公平性なんてあるのかと前世で学生の頃は思っていた。
だってそうだろ。平将門は当時重税と汚職によって荒らされた郷の為に戦ったというのに逆賊扱いされ、元寇に圧勝していた日本は神風のおかげで助かったことになってる。
今は大分見直されているが、それでも他の国では事実を曲げて歴史を作っている。
だが、その歴史を作っている人間にとってはソレが善ということだ。
善悪は主観と都合によるもの。
だから物事を判断する主観とソレに付随する都合が無くては成立しない。
尚、この主観には物差しの判断材料である価値観や記憶などのデータも含まれる。
結論を言えば、善悪とは観測者がいないと成立せず、それ自体はただの現象。つまり因果関係による産物である。
怪獣には怪獣の、宇宙人には宇宙人の都合がある。
だが、その都合が地球人にとって受け入れられる保証はない。
前回のスヒュームとレイキュバスがその例だ。
アイツ等、地球を侵略して自分たちが住みやすい環境に変えようとしていた。
地球人や地球に住む生物にとっては間違いなく悪であり、倒すべき侵略者。
だが、スヒュームにとっては侵略ではなく開拓だ。で、人間は邪魔な害獣であり、開拓という正義を妨害する悪者だ。
第一、悪人と呼ばれる奴らは自分が悪だと思ってない筈だ。
もし思っているなら最初から悪事を行わない。
そういう奴の中では、自分がしたいことをやるのが善であり、邪魔をする方が悪という事になっている。
もし仮にそんな奴に正しさを説いても『知るか、俺の邪魔な法律やルールを作った奴が悪い』とか思ってるんじゃねえの?
個人の善悪なんてそんなものだ。
誰にだって都合がある。
当事者にとっちゃ邪悪であっても視点が変われば善悪も変わる。
怪獣が悪だと決めつけてるのは人類の都合。
人類が邪魔だから排除するのも怪獣の都合だ。
つまり両者の都合の押し付け合いという事になる。
俺には俺の都合がある。
俺の都合は誰も優先してくれない。
なら俺は常に俺の都合を優先すると決めてる。
だから俺は俺の都合でティガダークになり戦っている。
正義だの理想だの御キレイな理由を付けた都合に振り回されて堪るか。
「そういうわけだ。俺にとって正義と悪なんて」
俺が答えると愛染はプルプル震えはじめる。
「ふざけるな!ウルトラマンにとっての正義とは光!ウルトラの光を信じる時、本当の平和が訪れ、真実の愛を知ることになるのだ!」
「光が善っていうのもお前の主観だろ。もっと言えばお前の感想でしかない。知ってるか、南国の神話では太陽とかの光を司る神が日照りや干ばつを齎す悪神で、夜とかの闇を司る神が安寧を齎す善神のパターンが多いらしいぜ?」
「うるさいうるさいうるさい!」
地団駄踏む愛染。
ここまで来たらもう子供の癇癪だ。
「お前は落第なんてものじゃない!ウルトラマン失格だ!」
「いいぜ、相手になってやる。今度は俺が採点する番だ」
俺たちは各々のスパークレンスを掲げ、巨人となった。
とある山の広場。
突然二つの光が嵐の如く吹き荒れ、中から影が現れた。
影の正体は二人の巨人。
黒い巨人、ティガダーク。
灰色の巨人、イーヴィルティガ。
二人の巨人は向き合ってテレパシーを送り合う。
『勝った方がこの星のウルトラマンだ!』
『そんな称号はいらねえが、弱い奴を俺の後釜にしたくねえな』
『ほざけ!私はウルトラマンとなり人類を光に導き、やがては…ぐお!?』
『………まさかお前…おい、今すぐ変身を解け!』
突如、イーヴィルティガが苦しみだした。
その原因に心当たりがあるティガダークはすぐに変身解除を指示するが、イーヴィルティガ—――変身者である愛染はソレを拒否する。
『ふざけるな!誰がお前の言うことなど…うおおぉぉぉ!』
無茶苦茶に光弾を撃ち出すイーヴィルティガ。
咄嗟にティガダークは避けるも、そのせいでイーヴィルティガを止め損ねてしまった。
ティガダークから近場の町に標的を変え、そこ目掛けて飛び去った。
『クソ!結局原作通りかよ!?』
ティガダークもソレを追う形で空を飛んだ。
主人公はこういってますが、人間なんて生きてりゃ考え変わってきますからね。
今はこうでもそのうち何かや誰かに影響受けて違う思想になるかも。
ホント人間は面倒臭い。
他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?
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いる
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いらない
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ご自由に