ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~   作:大枝豆もやし

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主人公の前世はテキトーです。
ただのヒキニートだと思ってください。


チャリジャ

 

 

 俺はそんなに人間が好きじゃない。むしろ人間嫌いな方だ。

 

 

 というか逆に何で人間なんて好きになれるのかが理解出来ない。

 地球上で最も同種同士の争いに特化し、群れの中でも蹴落とし合いやイジメを行うクソ猿を、絶滅戦争手前までいきかけたクソ狂暴な生物をどうしたら気に入るんだ。

 だから人が好きとか人類を愛してるとか言ってる奴がいると、お前は本当に人間をちゃんと見てきたのかと疑ってしまう。

 まあ、かくいう俺も大分偏見が入ってる自覚はあるが。

 

 俺は人間の為には戦わない。

 あくまで自分の為に戦う。

 怪獣を倒すのは自分の生活を守る為だ。

 町を守るのはインフラを壊されたら生活に困るから。

 他の国を守るのは、世界情勢が崩れた余波を食らいたくないから。

 ウルトラマンが来てバトンタッチできるまで、せいぜい正義の味方を演じてやる。

 

 

「ほう? なら地球から出ても不自由なく暮らせるなら、ウルトラマン活動とやらをやめるのですか?」

「どういうことだ?」

 

 俺は妙なことを聞く宇宙人—――チャリジャに聞き返した。

 

 

 

 

 

 

 ジムでの練習を終えた帰り道。

 路地裏に入ったと同時に俺は振り向いた。

 

「誰だ俺を付けてるのは?」

「ほう、流石はティガダーク。私の存在に気づいたか」

 

 物陰から現れたのは紳士服を着た男。

 顔は白塗りのように真っ白で、太ったチャップリンみたいだ。

 一見すれば妙な格好をしただけのおっさんだが、原作を知ってる俺はすぐにその正体に気づいた。

 というか現れ方が異様だ。なにせ文字通り影から飛び出してきたのだから。

 

「本当の姿を見せろ。ソレ擬態だろ」

「ほうほう、そこまで見抜いていたか」

 

 男の姿が歪み、本来のソレに成る。

 宇宙魔人チャリジャ。

 次元を行き来する怪獣バイヤー。

 確かウルトラマンティガでは終盤辺りに登場したキャラだ。

 

「で、俺に何のようだ?殺気がない辺り、敵対するつもりはないってことか?」

「そう受け取って貰えて何よりだ。地球のウルトラマンの中には宇宙人というだけで敵対者と思われる場合があるからね」

「………その言い方、この地球にウルトラマンがいるのか?」

 

 いないことは知ってはいるが、念のために聞く。

 

「いや、こことは違う世界…パラレルワールドでの話だ。この地球にウルトラマンは君一人。違う銀河にウルトラマンはいるが、ここに来れる余裕はない筈だ」

「(………やっぱそうか)」

 

 そうとは思ってたがつい期待してしまった。

 

「ウルトラマンは来れないのか?」

「無理だろうね。彼らも彼らで必死だ。この地球に来れる戦力はおそらくない」

「………俺一人じゃ無理っぽいんだが」

「君がいる時点で大分マシだ。この広い宇宙で狂暴怪獣や侵略宇宙人の危機が迫っている星や銀河がどれだけあると思っている」

 

 マジか、ガタノゾーアがいるこの地球よりヤバい星ってそんなにあるのか。

 宇宙マジヤバいな。

 

「君はウルトラマンから見ても強い方だ。自信を持ちたまえ」

 

 やはりこいつは俺の正体を知って接触してきたか。

 

「では話を戻そう。…君に試合に出てもらいたい」

「試合?」

 

 思わぬ単語に聞き返してしまった。

 そんな俺の態度を無視してチャリジャは話を進める。

 

「私は実益を兼ねて趣味の怪獣コロシアムを運営していてね、君には私の怪獣と戦ってほしいのだよ。無論、報酬は相応のモノを用意する」

「………相応って言われても相場が分からないんだけど」

 

 こちとら地球産まれ地球育ちだ。宇宙人の基準なんて知らん。

 

「そうだね、先ずファイトマネーは地球換算で最低でも五億は用意しよう」

 

 マジで言ってるのかコイツ?

 前に騙されて参加した裏試合でも優勝金込みで一千万いくかどうかだったぞ。

 

「次に宇宙船を手配しよう。この宇宙で最も栄えている銀河にワープできる宇宙船だ。そこならガタノゾーアの脅威から逃れられるだろう」

 

 それはいい。

 ソイツを使えば俺達は生き延びられる…。

 

「だがソレは一人用だ。家族や少数の人間を抱えて逃げる事は無理だろうね」

「………やっぱそうはいかねえか」

 

 予想してたがダメか。クソが。

 

「対戦相手は誰だ?」

「ゼットン。ウルトラマンを初めて倒したウルトラマンキラーの称号を持つ最強怪獣だ。…とは言っても、君は知らないだろうね」

 

 ・・・マジか。チャリジャといえばヤナカーギ―の筈だが、まさかここでゼットンが出てくるなんて。

 

「君の強さはウルトラマンの中でも上位だ。ウルトラ兄弟クラスだろう。なにせあのシルバゴンを下した程だからね」

「………おい、何で知ってる? まさかお前!?」

 

 シルバゴンの生息地を異次元に存在している。

 いくらコイツが次元を渡れるからと言っても、全ての次元の出来事を把握できるわけがない。

 偶然あの次元にピンポイントで居たのはあまりにも出来すぎている。

 ソレに、あの場所には同じ手順で何度行っても辿り着けなかった。

 原作通りに逆さの虹が出現する瞬間を狙ったのに。

 なら、考えられるのはただ一つ…。

 

「お、気づいたか。察しがいいね。あのシルバゴンの住処に次元を繋げたのは私だよ」

「じゃあ、あの車もお前が?」

「いや、あれは偶然だ。おそらく運悪く迷い込まれただけだろう」

 

 そうか、ならいいや。

 

「では受けてくれるかね? 君は怪獣を倒して構わないが、君が負けそうになったら降参を許そう。もっとも、死のリスクがゼロではないがね」

「………」

 

 これはまたとないチャンスだ。

 あのゼットンと戦うのはリスクがデカいが、その見返りはかなり大きい。

 しかも俺には降参が認められてるから途中でやめることも出来る。

 あとはコイツを信じられるかどうかだな。

 

「私を信用できないならそれでいい。この話はなかったことになるだけだ」

「………」

 

 黙っている俺にチャリジャは一枚の紙を渡した。

 

「期限は一週間以内。気が向いたらここに連絡してくれ」

 

 そう言い残して奴は再び影の中にダイブして消えた。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 ベッドに寝転がって渡された紙を眺める。

 シャワーを浴びてスッキリした頭で今後どうするか思考を巡らせていた。

 

 決して悪い話では無い。

 おそらく奴の話は本当だろう。

 そもそも俺を騙す理由がない。

 で、コレが本当なら命かけて戦う理由は無くなる。

 

 俺が戦うのは自分のためだ。

 怪獣や宇宙人に生活の基盤を壊されたら暮らし辛くなる。

 けど、もし他の星に行って対岸の火事に出来るなら、もう戦う必要はなくなる。

 

 

 俺は人類を救いたいなんて殊勝な想いは無い。

 当然だ、なにせ俺も人間だからな。

 弱い者を虐げ、互いに押し付け合い、他所の国を侵略して栄えてきたクソ猿共の同種だ。

 

 人間社会は弱い奴から搾取し、虐めることで発展してきた。

 国は民衆から、会社は従業員から、学校でもスクールカースト上位者が下位の者をいじることでソレを学んでいる。

 おっと、人間は協力し合う事で発展したとかいうなよ。

 その協力は本当に平等か?片方のみが受ける利益が大きいなんてことはないのか?

 助け合いなんて嘘だ。キレイ事に騙されてむしり取られる。ソレが弱者だ。

 

 ガキの頃からそうだった。

 ごっこ遊びで怪獣役や宇宙人役を押し付けられて、よく袋叩きにされていた。

 学校に入ってからもそうだ。

 スクールカーストの底辺。キモオタとバカにされ、当番や宿題を押し付けられて、感謝されるどころか見下されていた。

 社会人になっても変わらなかった。

 ブラック企業に就職。雑用を押し付けられて、ミスしたら使えない奴扱いされて、上手くいったら成果だけ奪われて評価されなかった。

 で、ガキや学生の頃では気持ち悪い奴やキモオタの相手してやったんだから何も悪くないと、社会人の頃は学歴がないのだから当たり前だとかほざかれた。

 だから、俺は強者になろうとした。今世では弱者にならないために。レッテルを張られ、搾取され虐げられないために。

 

 今の自分がどれだけ強いか知りたい。

 ティガの強豪怪獣を倒せた俺が、どこまでいけるか。

 

「………」

 

 気が付いたら、俺の足は指定された場所に向かっていた。

 





ウルトラマンの願いは難しいですね。
彼らの想いはレッテル張りであっさり崩れてしまいます。
そして、張る事は簡単でも一度張られると抜け出せない。
それでも彼らは人間を信じ続けるんでしょうね。

他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?

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