ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~ 作:大枝豆もやし
手の内知ってるとはいえ、鍛えただけで克服できる相手なのか、ゼットン。
指定された場所はいつものロードワークしている山の頂上だった。
「いいんだね?」
「ああ、いつでも」
答えた瞬間景色が変わる。
山の中から何もない荒野へと
いや、何もないってのは語弊があるか。
「アイツが俺の対戦相手か」
「そうだ、アレが宇宙恐竜ゼットン。このコロシアムのチャンピオンだ」
荒野にポツンと佇む黒い物体。
宇宙恐竜ゼットン。
奴は目も口もない顔から不気味な音と光を発している。
しかしこうして実物を見るとやっぱり生き物っぽくないな。まるで兵器みたいだ。
「その通り。あのゼットンは生体兵器だ。感情も無ければ魂も欲もない。だから気兼ねなく破壊してくれ」
「………」
あっけらかんと言うチャリジャに少し恐怖を覚えた。
このゼットンがどういた経緯で生まれのか知らない俺には、本当にただの兵器なのかどうか知る術はない。
というか、そんな危ないものを見世物にするコイツはここで殺しておくべきではないか?
いや、まだ地球に何の被害も出してないし、確証も無いのに悪者扱いはマズい。
そんなことを考えているとゼットンに動きが出た。
「どうやらゼットンもその気のようだ」
「みたいだな」
ブラックスパークを掲げる。
展開して内部から溢れる光に包まれ、俺は対戦相手と対峙した。
『さ、やろうか』
真夜中、とある平野。
二体の巨大生物が向かい合っていた。
ティガダークとゼットン。
片や悠然と直立し、片や今にも飛び掛からんとする体勢。
しかし両者の心の在り方は、その体勢とは正反対であった。
「………」
先に動き出したのはティガダーク。
ゆっくりとゼットンへ歩き出す。
まるで散歩にでも出かけるかのように。
対するゼットンは動かない。
相手の意図を理解できないゼットンは。
動くとしても足踏みでほんの少し前進と後退を繰り返す程度。
発光体が規則的に光り、機械音のような鳴き声をあげながら。
どう仕掛けるか分からない。そもそも攻撃するつもりがあるのか。
軽い
「デュア!」
クイックモーションによる回し蹴り。
出足から繰り出されたとは思えない程の正確なローキックが、ゼットンの右脚を捉えた。
「ッ!?」
困惑するゼットン。
予想外のタイミングに予想以上のダメージ。
咄嗟に繰り出したとは思えない程に鋭く重い一撃。
コレによってゼットンは体勢を崩した。
勿論、ティガダークの攻撃はここで終わらない。
右ストレート。
蹴り足が地面に付いたと同時にゼットンの顔面にぶちかます。
先程のローキックに掛かった荷重移動を拳に乗せ、更に送り足をかける。
そして、着弾の瞬間に闇のオーラを纏って威力をより倍増させた。
人間としての技術とウルトラマンとしての能力。
二つが合わさったソレは、ゼットンに無視できないダメージを与えた。
ソレと、何よりタイミングが良い。
最初にローを繰り出した
相手の出出しを挫き、体勢を崩し、意識を足に向けさせる。
たった一回の蹴りで幾つもの効果を生み出したのだ。
流れは完全に掴んだ。
あとはこのまま押し切るのみ。
ティガダークは優位性を存分に活かす。
だが、ゼットンもやられっぱなしではない。
絶大なフィジカルとスペックでティガダークの連撃を振りほどいた。
ゼットンの反撃。
振り下ろされる手刀。
ティガダークはソレを空手の上段受けで止め、回転して威力を流す。
回転と同時に敵の背後に回り込み、同時にその勢いを乗せた肘打ちを相手の後頭部に叩きつけた。
カウンター技。防御と同時に相手の体勢を崩し、懐に入り込みつつ敵に予想外の一撃をぶちかましてみせた。
ティガダークの攻撃。
ゼットンの顔面に見え見えのストレートを繰り出す。
ソレをしゃがんで避けるゼットン。その上、相手の懐に飛び込む。
そのままティガダークの腹部に角での頭突きを繰り出そうとした瞬間、顔面に強烈な衝撃が走った。
コレもカウンター技。わざとパンチを避けさせて誘導し、パターンを予測していくつかの罠を設置。そのうちの一つである膝蹴りが炸裂したのだ。
ティガダークの攻撃。
ゼットンの顔面にジャブを繰り出す。
しかしソレに怯んだ様子は無く、ゼットンはすぐさま反撃。
腕を振るって相手の頭部をぶん殴ろうとした。
ティガダークは上体を逸らす事でソレを回避。
同時、ハイキックを繰り出してゼットンの側頭部にぶちかました。
コレもまたカウンター技。上体を伸ばしたジャブで誘いをかけ、反撃を避けつつその勢いを利用。
避ける際も下半身は残っているので容易。更に下がらせた上体でバランスを取りつつハイキックを繰り出したのだ。
「(押されている?あのゼットンがか?)」
チャリジャは驚きを隠せなかった。
ティガダークが強い事は予め知っている。
シルバゴンやキリエロイドなど、様々な強豪怪獣たちを打ち倒してきたのだから。
だが、まさかあのゼットンを相手にここまでやれるとは思っていなかった。
もしかすると勝てるかもしれない。
不動の王者であったゼットンに。
だが、相手はウルトラマンキラーとして名高いあのゼットン。
初代ウルトラマンを圧倒し、格闘戦でも怪力とスペックのみで退けた。
如何にティガダークが格闘戦に優れていても、ソレが決定打になることはない。
「ディアッ!」
ティガダークが巴投げでゼットンを投げ飛ばす。
今がチャンス。
そう判断したティガダークが必殺の構えに入る。
だが、ソレがいけなかった。
「ッ!!?」
突如、ゼットンが姿を消した。
一瞬頭がフリーズしそうになるティガダーク。
しかしすぐさまそのタネに気づき、襲撃に備えて防御を固める。
「デュアアアァァ!!?」
ティガダークの死角に突然現れたゼットン。
姿が現れるや否や、ティガダーク目掛けて火球を放つ。
一兆度の火球。ゼットンの代名詞ともいえる必殺技。
ソレが三発連続でティガダークに命中した。
「グ…ディア………!」
膝を付くティガダーク。
ゼットンから初めて受けたダメージ。
たった三発だけだというのに、あのティガダーク…いや、圭吾をここまで追い込んだ。
しかし彼の闘志はまだ消えていない。
痛む体に鞭を打ち、この現状を打破すべく最善手を選択する。
タイプチェンジ。
通常体から敏捷体へと。
今までの戦いのお陰か、一瞬で完了。
すぐさまテレポートしたゼットンに備える。
一撃目、防御。
テレポートで背後に回り火球を放つゼットン。
ソレをビームシールドで防ぎ、回転して受け流すティガダーク。
直撃こそ防げたが熱を完全には防ぎ切れずに腕を少し焼いてしまった。
二撃目。回避。
背後に現れながら蹴りを繰り出すゼットン。
ソレをサイドステップで避け、反撃の拳を繰り出すティガダーク。
テレポートに付いていける程の動体視力とスピード。
だが彼の反撃が当たる事は無く、ゼットンはテレポートで避難した。
三撃目。迎撃。
死角から現れて腕を振るうゼットン。
ソレが当たる前にティガダークがカウンターを仕掛ける。
速度を優先したリードパンチ。
威力こそ無いが、カウンター気味に当たったソレはゼットンにダメージを与える事に成功した。
「(捕まえたぞ、こっから反撃だ!)」
ティガダークの攻撃が当たり始める。
まるでゼットンが何処に逃げるのか分かっているかのように。
「バカな、ゼットンのテレポートに対応しているだと!?」
驚愕するチャリジャ。
ティガダークの戦いが巧いことは知っていた。
だが、まさかここまでとは。
ゼットンのテレポート能力。
これの前に幾多の強敵が敗れ去った。
どれだけ強くても、どれだけ速くても、どれだけ特殊な能力を持っていても、当たらなければ意味はない。
瞬間移動で避け、死角を取って火球を放つ。ソレがゼットンの勝利パターンであった。
だが、ティガダークには通じない。
今もこうしてテレポートにスピードで対応し、カウンター或いは受け流している。
敏捷体の瞬発力と敏捷性、圭吾自身の技術と反応速度があってこそ為せる御業である。
「だが、ゼットンには“盾”がある!」
ティガダークの回し蹴りが繰り出される。
だが、ソレはゼットンの形成された障壁によって阻まれた。
ゼットンシャッター。ゼットンを囲むその障壁は、たとえウルトラマンの光線であってもはじき返す。ましてや、パワーの無い敏捷体の攻撃など傷一つ付かない。
ガシッと、ティガダークの腕を掴むゼットン。
一瞬でゼットンシャッターを解除し、ティガダークを力ずくで捕らえた。
「ゼット―ン…」
顔の発光体に力を集中させるゼットン。
至近距離でデカい火球をぶちかます気だ。
ソレに気づいたティガダークは振り払おうと藻掻く。
しかし、彼の抵抗は無駄に終わった。
ただでさえ通常体でも力負けするのに、スピードにリソースを割いている敏捷体ではビクともしない。
「デュアアアアァァァ!!?」
放たれた特大火球。
着弾と同時に強烈な衝撃が、膨大な熱量が彼を追い詰める。
「グ…ディア………!」
鳴りだすカラーライマー。
もう限界が近い。
体力的にも活動時間的にも。
早く勝負を極めねば。
だが、ソレにはあの防壁が邪魔。
アレを突破しない限り、ティガダークに…圭吾に勝利は無い。
「………」
フラフラの状態で立ち上がるティガダーク。
しかし闘志はまだ衰えない。
灼ける肌の痛みと全身の疲労感を無視して、彼はボクサーのような構えを取る。
ソレに対抗してゼットンもゼットンシャッターで防御を固めた。
フットワークによる攪乱。
ステップを繰り返して相手の死角を取りながら、ジャブを放つ。
対するゼットンは動かない。
ゼットンシャッターに籠って相手の連撃が止むのを待つ。
ウルトラマンは長く戦えない。
三分という活動制限がある以上、持久戦に持っていけば怪獣であるゼットンが勝つ。
よってティガダークの選択は悪手。ここは一か八かでも必殺技を使って勝負に出るべき…ではない。
「ディアッ!!!」
「!!?」
ティガダークの拳が、ゼットンシャッターを破壊した。
障壁を破壊した右ストレートがゼットンに命中。
怯んだ隙を狙って角を掴み、膝蹴りを連打する。
「まさか…そんなことまで出来るのか………!?」
戦慄するチャリジャ。
彼の眼は何があったのか確実に捉えていた。
見えていた。見えてはいたが、信じきれなかった。
今のティガダークは剛力体。
瞬時にタイプチェンジしてパワーを上げたのだ。
無論、如何に剛力体でもゼットンシャッターを一撃で破壊する事は出来ない。
では何があったのか、そのタネは敏捷体のフットワークにある。
「(スカイタイプで加速し、パワータイプになってその勢いを乗せた拳を叩きつけた!」さっきまでのジャブは本命に気づかせないための囮…そこまで能力を使いこなすか!?)」
言うは易く行うは難し。
一歩間違えれば自身の加速力とパワーで自滅する危険性さえある。
しかし可能にした。実戦という超シビアな状況下で。
コレは、圭吾自身の格闘能力があってこそ為せる絶技である。
「だが、まだゼットンは負けておらんよ」
チャリジャの言う通り、ゼットンはまだ倒れていない。
膝蹴りの雨を浴びながらも、反撃の手を進めていた。
「!!?」
ブンッと、身体を振るうゼットン。
ただそれだけの動作だというのに、ティガダークは振り払われてしまった。
剛力体のティガダークをも上回る肉体スペック。
コレもまたゼットンが最強の怪獣たる所以の一つである。
振り払うと同時、火球を放つゼットン。
威力では無く命中性を意識した小さな火球。
しかし何発も連射する事でティガダークに確実にダメージを与えた。
「ディアアアアアァァァァ!!?」
吹っ飛ばされるティガダーク。
仰向けの状態で地面に叩きつけられる。
点滅が早くなるカラータイマーが、彼の状態を如実に表していた。
「グ…ディ……ァ!」
起き上がろうとするも、度重なるダメージと疲労によって力が入らない。
まずい、今のまま火球をまた食らえば確実にやられる。
最悪の事態を回避すべく、死力を尽くす。
「ゼット―ン…」
ふらつくゼットン。
満身創痍なのはコレも同じであった。
スペックでは勝っていながら技術と経験で圧倒されている。
積み重なるダメージと疲労によって確実にゼットンを追い詰めていた。
「デュ…デュアアアアアアアアアア!!!」
気合の咆哮と共に立ち上がるティガダーク。
同時、彼は通常体へと戻った。
限界間近。
活動時間もダメージも。
ここで決めなくては後が無い。
だがそれは相手も同じ事。
両者共に満身創痍なのだ。
先に必殺技が決まった方が勝つ。
だからこそ、今こそ賭けに出る時!
「ジャア!」
ティガダークの先制。
十字に腕を組んで光線を放った。
そのまま光線はゼットンに直撃し…。
「ッ!!?」
跳ね返された。
ゼットンファイナルビーム。
相手の光線を吸収し、増幅して腕の先から返す技。
これこそ初代ゼットンがウルトラマンを打ち倒したものである。
テレポート、バリア、一兆度火球など、様々な技を持つゼットン。
その中でもウルトラマンを倒した実績があり、何よりウルトラマンの必殺技が通じないという絶望感を視聴者たちに与えた。
だが、ソレでも相手が悪ければ通じない。
「ディアッ!」
ティガダークは光線を吸収。
カラータイマーを中心に両手を広げ光線を集約。
両腕を横に拡げて黒い光の軌道を描きながら更に力を圧縮。
L字に両腕を組んでゼットンに倍増された光線を更に跳ね返した。
「ッ!?!?!?」
爆散。
技の反動で動けず無防備なゼットン。
防御も回避も迎撃も出来ず、光線が直撃。
その場で大爆発を起こして粒子レベルで分解された。
「………パーフェクト」
しばらく茫然とした後、チャリジャは静かに拍手した。
遂にウルトラ怪獣最強といわれるゼットンを倒せた!
これでガタノゾーアもいけるな!
他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?
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いる
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いらない
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ご自由に