ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~   作:大枝豆もやし

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人類は滅亡しました!


ギジェラ

 

 

『………悪いね、関係ない君も僕たちの因縁に巻き込むことになって』

「別にいい。俺が選んだことだ」

 

 何もない闇の中、圭吾はだるそうに答えた。

 

 彼に後悔はない。

 確かに、成り行きで彼はウルトラマン活動を行った。

 だが、ソレを選んだのは紛れもない自分だ。

 自身の都合の為に、自身の意志で戦ってきた。

 今更誰かを責めるのはお門違いだ。

 

「てか何度目だこのやり取り。気にしすぎだろ」

『ハハハ、君は子供だからね。だからどうしても気になるんだ』

「子供じゃねえよ。俺の中身は前世ニートの四十代だぞ」

『でも今世は子供じゃないか。君も言ってったろ、転生しても年齢は加算されず、大体は今世の身体に引っ張られるって』

 

 ガタノゾーアを倒してから長い時が経過した。

 時間の感覚がない上に季節が分からないからどれだけ経ったかは分からない。

 だが長いことこの空間にいたことから相応に時が過ぎている筈だ。

 その間、彼は様々なことを学び、自身の力に変えてきた。

 闇の中にいる長い間、光と闇の巨人に稽古を付けてもらったのだ。

 特に、苦手な光線技を重点的に。

 

『しっかし圭吾。お前よく巨人の記憶無しでここまで戦えたな』

「イメージ自体はあったからな」

 

 圭吾が光線技が苦手な理由。

 ソレは相性だけではない。

 彼が外の光や闇の巨人と違って真っ新な状態だからだ。

 

 この地球のウルトラマンは譲渡型。

 ウルトラマンから光の力を渡される際、力だけでなくその基本的な使い方もある程度引き継がれる。

 そのおかげで基本的な技はなんとなく使えるのだ。

 

 圭吾にはそんな便利なものは無い。

 なにせウルトラマンから譲渡されたものではなく、闇の勢力から奪ったものなのだから。

 そのせいで圭吾は光線技が下手だった。

 必殺技の光線を除いて。

 

 前世で憧れたヒーローの必殺技。

 子供の頃に何度も真似をして、光線を出す自分をイメージしていた。

 どんな敵であろうとも立ち向かい、どんなに負けても必ず立ち上がって勝利する。

 そんなヒーローに憧れ、そんなヒーローに成りたいと願って、ヒーロごっこをしていた。

 しかし所詮はごっこ遊び。本物になれる日なんて来ない。そう思い知らされる日までずっとやってきた。

 その経験が活きたのか、必殺技だけは本物と遜色なかった。

 まあ、その憧れた本物のヒーローは、彼が抱いた理想像と違っていたが。

 

『憧れのヒーローだってよ!流石最強の闇の巨人だな!』

『よせよ、そんなんじゃないって』

 

 憧れた英雄も人間だった。

 ウルトラマンである前に、光や闇の巨人である前に。

 この世界は圭吾にとっての現実。

 目の前にいるのは物語のキャラクターではない。

 歴とした一人の人間だ。

 だから彼も己の都合の為に動き、そして戦ってきた。

 

『っと、そろそろ俺らの番だな』

『ちゃんと練習続けろよ』

 

 ヒュドラとダーラムが消えて逝く。

 本来あるべき世界に旅立とうとしているのだ。

 

 巨人の魂たちは徐々に旅立っていった。

 圭吾がガタノゾーアの力を自身のモノへと変換し、支配下に置く度に。

 もう残っているのは四人。ティガ、カーミラ、ヒュドラ、ダーラムだけになった。

 ガタノゾーアを抑える事でもう力を使い尽くしたのだ。

 第一、心残りが消えた今、いつまでも現世に居続けるわけにはいかない。

 よって四人も旅立っていく。

 

「ガタノゾーアの力は俺が貰う。主に反逆して、勝利した俺が新たな闇の主だ」

『ソレで良いよ。もう君の力だ。どう使うかは君に任せる』

「いいのか?この力で世界を支配するかもしれないぞ?」

『ソレもいい。死んだ僕たちが口出しする事じゃない』

 

 即答。

 実際、圭吾が得た力で悪用しようが関係ないのだ。

 彼らの目的はガタノゾーアにケリをつける事。

 目的を果たした今、彼らに影響はない。

 結局は自分の都合の為だ。

 

『じゃあね新たな闇の主。次に目覚めた時が君の人生を取り戻す瞬間よ』

 

『出来るなら君がまた光を掴める日を望んでるよ。まあ、君なら大丈夫だろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると、人類は滅んでいた。

 

 

 沈んだルルイエから飛び出し、地上に戻る。

 家に戻るのは一瞬だった。

 海外で活動限界間際まで戦えるように、家にはマーキングを施している。

 コイツのおかげで俺は光になって文字通りの光速で戻れるのだ。

 まあ、その家はもう無くなってたけどな。

 

 俺の家だった廃墟。

 ギリギリ家だと分かる程度の残骸。

 木々が生い茂って侵食し、人間が住めるような状態ではなかった。

 周囲もそんな感じだ。

 お隣さんは更地になって雑草が生え、お向かいさんは俺の家と同じく木々が侵食して一部が破壊されている。

 

 おかしい、ここまで時間経ったか?

 確かに世界中にゾイガ―だの何だのが出現し、特にこの町はキングオブモンスが暴れたおかげで甚大な被害を被った。

 人がいないのもアレだけ町を破壊されたのだから、まあ納得出来る。

 だが、こんな風に植物が異常繁殖するなんてあり得るのか?

 廃墟とはいえ町を植物が覆い尽くすのって、最低でも十年はいるだろ。

 そんなに寝たか、俺?

 

 疑問に思った俺は町を歩く。

 ロードワークの為に走った道、一度しか通ってない学校、世話になったジム、

 どれもこれも植物というかでっかい木に覆われていた。

 てか何だこの木? 変なとこから花咲いてるぞ。

 こんな百合みたいな花付ける植物、見たことない…。

 

「まさか…ギジェラ!?」

 

 ギジェラ。

 人類に滅亡が近付くと咲くと言われるユリに似た地球の植物。

 本体である巨大ギジェラと端末である小型ギジェラの二種類があり、小型ギジェラは凄まじい繁殖力で世界中のありとあらゆる場所に突然大量に生えてきたという設定だ。

 ギジェラの花からは幻覚作用のある麻薬みたいな花粉が吐き出され、コイツを吸い込んだ人間は夢の世界に陥り、そこから抜け出せなくなる。

 勿論、植物だから夜間は花粉を出さなくなる。

 だがその間花粉を吸った人間は禁断症状に襲われ、原作ではギジェラの花を取り合って暴動が起きていた。

 ダイゴを除くGUTSの隊員ですらその誘惑に中々抗えず、レナに至ってはギジェラを地球からの贈り物と言う始末だ。

 厄介なことに、この花粉は防護服等でも防げない。

 また、エキスにすると人間の脳細胞の老化を防ぐ効能があり、原作では超古代人の生き残りがサイボーグ化した肉体の維持に使用していた。

 要するに滅びゆく文明への鎮痛剤兼安楽死剤みたいなものだ。

 そういう意味ではレナ隊員の言う地球からの贈り物というのは合っている。

 

「で、人類はその贈り物を堪能したと」

 

 ロードワークに使っているルートを登り切る。

 山の頂上にはギジェラ本体がそびえ立ち、デカい花が咲き誇っていた。

 コイツを倒せば世界中のギジェラは枯れ、人類は快楽の夢から覚める。

 

 

 

「・・・」

 

 俺は、掲げたスパークレンスを降ろした。

 

 

 

 

 コイツを倒す資格は、俺にはない。

 

 今世の俺は恵まれている。

 それなりに裕福な家、それなりに整った外見、強靭頑強な身体。

 勉強は模試で常にトップ10位入り、スポーツ万能で格闘技は全国一位。

 成績や勉強とかは人生二週目だから当たり前だが、肉体面や容姿はソレではどうしようもない。天賦の才能だ。

 で、闇の力を手にしてティガダークに変身し、怪獣や宇宙人たちと戦える力を得て、ラスボスを倒してその力を奪い、新たな闇の主になった。

 まるでなろう主人公。ヒキニートの弱者男性だった前世の俺がら見たら恵まれすぎて殺したくなるほどの経歴だ。

 だから、そんな恵まれ過ぎた主人公が弱者の光を奪う権利はない。

 

 弱者の気持ちが分かってしまう。

 なにせ前世がそうだったのだから。

 選ばれず、与えられなかった者たち。

 俺の存在を知ってどれだけの怒りと嫉妬を抱いたか。

 そんな彼らからすれば、俺がソレを奪うなんて傲慢にも程がある。

 散々今まで好き勝手してきたのだから、今回ぐらいは我慢すべきだ。

 

 

 俺は山を降りた。

 麓で変身して、とりあえず飛ぶ。

 闇の主に成った俺には制限時間がない。

 だから気にせず飛ぶことが出来る。

 

 目的地は無い。

 ただ、この世界がどうなったか見たかった。

 もしかしたらどこかに生き残りがいるかもしれない。

 

「(………いや、そんな希望は捨てるべきか)」

 

 逆の立場になって考えろ。

 前世の俺なら真っ先にギジェラを求めるだろうが。

 

 夢の世界に逃げて何が悪い。

 楽な方や楽しい方に行って何が悪い。

 

 

 真実から目を背けるな?

 より良い明日を迎える?

 まやかしに囚われるな?

 人間は前を向いて歩いて行かなきゃダメ?

 その先に光があることを信じて進むべき?

 ただ楽なことだけに逃げても意味が無い?

 どんなに苦しくても、どんなに辛くても現実を見るのが人間?

 

 

 ふざけんな、頭イカれてんのかドマゾ共が。

 

 知るかそんなもの。

 お前らの強さを俺らに押し付けるな。

 そんなことが出来るのはその先に何かあると確信できる奴だけだ。

 何もない奴や弱い奴はソレが出来ない。だから何も見ず、何も成そうとしないんだよ。

 なのに一方的にテメエらの正しさを押し付けるな。テメエらが出来るからって俺らにも強要するな。

 

 反吐が出る。

 正しい事に何の意味がある。

 辛いだけ、苦しいだけの正しさなんざクソ以下だ。

 だから俺は押し付けない。むしろそんな正しさを潰してやる。

 

 そもそも、正しいって何だ。

 その正しさとやらが本当に正しい保証があるのか。誰に正しさを決める権利があり、誰がソレを証明できる。

 単にお前らが正しいと信じているだけだろ。所詮個人の都合と感想によるものだ。

 

 

 そうだ、俺はお前らの弱さと逃げを肯定してやる。

 歩き疲れたんなら休めばいい。リタイアしたいならすればいい。

 その権利だけは、俺は否定しない。したくないし、絶対にさせない。

 

 そういうわけだ。

 人類よ、ゆっくりとおやすみ。

 その間、俺は誰もいなくなった地球を満喫する。

 

「(じゃあ先ずは、誰もいなくなった星で寝るか)」

 

 誰にも邪魔されず眠る。

 最高じゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ兄ちゃん、ティガダークの話して!」

 

 日本列島のとある山村。

 その一つで兄妹が寝る前の読み聞かせをしていた

 

 人類は完全には滅んではいなかった。

 確かに大半の人間はギジェラの夢に溺れる事を望んだ。

 しかし、それでも現実と明日を望む大バカ者はいた。

 ある者は現実に残した愛する人を求めて。

 またある者は夢の中で終わらせたくない夢を求めて。

 

 夢の中から覚めた生活は決して楽ではなかった。

 文明が滅んだ今、ガスや電気は勿論、上下水も使えない。病院もまともな設備が使えないから現代医療の恩恵も得られない。コンビニ? とっくに全滅してる。

 だが、ソレでも現実にしがみついている。

 

「(これも全部君のおかげだよ、圭吾くん)」

 

 長男—――炭治郎はかつての旧友を思い出した。

 

「ねえお兄ちゃん、ティガダーク~!」

「あ、ごめんね花子。じゃあ…」

 

 ティガダーク。

 彼の活躍は後に英雄譚となった。

 人類の平穏と安らぎを守るために立ち上がった闇の巨人。

 彼の戦いは、無駄ではなかった。

 





これでこのssは一旦完結です。
思った形のティガダークにはなりませんでしたが、強いティガダークを書けたので概ね満足するとします。
後日談というか、次の章を書くかもしれませんが、その時はテーマが違うから流れとか変わるかもしれません。
そのときは他のウルトラマンも出します。流石に主人公一人では話が回りませんので。

他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?

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