ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~ 作:大枝豆もやし
町の郊外の空でスフィアが飛び交う。
マザースフィアから生み出されたスフィアソルジャーたち。
ソレを地球の防衛隊たちの戦闘機や戦車が撃ち落としていった。
ダイナはまだ現れない。
ティガダークもあれ以来姿を見せない。
だが、そんなことは関係ない。
地球人にとっても、来訪者にとっても、この星はかけがいのない故郷なのだ。
自分たちの街は自分たちで守る。
たとえウルトラマンが現れなくても、彼らは守るために戦う。
気が付いたら、俺は心地よい空間にいた。
スフィアが作り出した青白い空間。
ソレは個の境界線を曖昧にして溶け合うような感覚だった。
この感覚がとても心地よい。
ずっとこのままここにいたいと思わせている。
そう、まるでギジェラに眠らされた時のように。
この空間を通して俺はスフィアを理解した。
スフィアには悪意も害意ない。
むしろ個として苦悩する俺らを憐れんでいる節すらある。
何故ならスフィアも元は俺達と同じような生物で、俺達と同じように苦しんできたからだ。
けどスフィアはソレを解決した。全ての生命が一つの意志で統一され、心を捨てることによって。
だからスフィアは俺に言っている、一緒に一つになって永遠の命と安らぎを手にしようって。
気持ちは分かる。
俺だって辛いことは嫌だ。出来るなら無いに越したことはない。
ゲームしたり漫画読みたくて勉強をサボったりして怒られるなんてしょっちゅうだった。
どうでもいいことに悩んで、どうしようもないことに怒ったりすることだってたくさんあった。
ウルトラマンになってからは辛いことばかりで、何度も投げ出したくなって、何度もアスカさんや義勇先生の前で泣いた。
心が無けれなこんな想いなんてしなくてもいい。ギジェラの夢に眠ったままならずっと楽に幸せになれた。あの時、ウルトラマンにならなければこんなことにならなかった。
自分のちっぽけさに何度も打ちしぎられた。だから一度はギジェラの夢に囚われ、覚めた後も自分の無力と無知を思い知らされた。
我ながら女々しくて嫌になるけど、やっぱりそう思ってしまう。
なら、スフィアの言う通りに一体化するのも一つの道かもしれない。圭吾くんの言う通り、諦めてギジェラに頼るのもいいかもしれない。
あの時は認めたくなかったけど、ソレが最善で楽な道なんだろう。
けど、俺はその道を選ばない。
辛いことばかりだった。
けど、それ以上に幸せだ。
一人一人がいるからこそ、この幸せは成立する。
もし一つの生命になったらこの幸せを無くすることになる。
そんなのは絶対に嫌だ。
頼れる皆がいる。
防衛隊の皆、少し変わった先生、お人好しな両親。
無敵のヒーローは行ってしまうけど仕方ない。
今度は彼一人が戦うんじゃなく、俺達で戦うんだ。
いつまでも頼ってばかりではいられない。
今の俺は、ウルトラマンなんだから。
「光よおおおおおおおおおおおお!!!」
炭治郎は光に向かって手を伸ばした。
「………ちゃんとウルトラマンやってるじゃねえか」
ベッドの上で圭吾がつぶやく。
取り込み封印したグランスフィアから感じるダイナの光。
圭吾はリアルタイムでスフィアが見聞きしていることを感じ取れる。
グランスフィアは未だに全てのスフィアと通じており、ソレはダイナを呑み込んだマザースフィアも例外ではない。
「(冨岡先生、やっぱ俺はアンタの言うような人間じゃねえんだよ)」
あれからシンプルに考えようとした。
なんのために戦うのか、本当は何をしたいのか。
考えて考えて出した答えは、誰かを守りたいとかそういうヒロイックなものではなかった。
力を存分に振るいたい。
もっと敵を倒し、その力を奪い、更に強くなる。
誰かを守りたいとか、傷つく人を見たくないとか、そんなキレイなものではなかった。
確かに人を守ることはある。
だがそれは寄り道のようなもの。
あくまでついでに過ぎず、ソレが本命になる事はない。
これこそ自分の本性。
相変わらず
だがソレで良い。コレが今の自分なのだから。
憧れは憧れで全くの別物。憧れたキャラとは別の道を行く。
「けどまあ、寄り道ついでに助けるのはいいか」
見知った仲を見捨てるのは目覚めが悪い。
結局どこまでいっても自分のため。
それこそ鞠川圭吾である。
ブラックスパークレンスを掲げる。
黒い光となって、再び戦地に向かった。
「ッ!!?」
突如、光と共にダイナが飛び出した。
マザースフィアの胸のコアから。
取り込まれた筈の彼が、力尽きて倒れたはずの彼が。
力を吸収して復活した。
「(クソ、力は戻ったけどここからどうする!?)」
復活はした。
だがソレは振り出しに戻っただけ。
逆転の手段もチャンスも見出したわけでもない。
マイナスからゼロに成っただけで、勝機はゼロのままだ。
だが、ソレでも引くことはない。何故なら彼はウルトラマンなのだから。
「(やるしか…ないッ!!!)」
駆ける。
敵に向かって。
自身を倒した強敵目掛けて。
怖い。
逃げたい。
投げだしたい。
だがそれ以上に守りたい。
自分たちの町を、大事な人を、幸せな未来を。
そのためならたとえ勝ち目が無くとも彼は…否、彼らは立ち上がる。
『全てを一つに』
スフィアソルジャーが迎撃を始める。
ソレを防衛隊の戦車や戦闘機が阻止。
ダイナの通り道を作った。
『全てを一つに』
マザースフィアザウルスが迎撃を始める。
スフィアシューティングストリーム。
放たれた光弾を防衛隊の巨大ロボットが防ぐ。
特殊合金の装甲に加え、電磁バリアを展開。
しかしマザースフィアザウルスの攻撃は絶大。
盾になった巨大ロボットは半壊して倒れた。
『全てを一つに』
マザースフィアザウルスの迎撃が続く。
スフィアトルネイダー。
しかし、マザースフィアザウルスが壊れた機械がフリーズしたかのように突然停止した。
撃ち出されたスフィアトルネイダーは見当違いな方向に、真上に飛んでいく。
「(最後の締めには間に合ったみたいだな)」
「(け…圭吾くん!?)」
ティガダーク。
いつの間にか現れた彼が、マザースフィアザウルスに手を翳していた。
その状態で彼はダイナとテレパシーで会話する。
「(俺の中にあるグランスフィアを通じてアイツの動きを封じた。けどコレは長く持たねえぞ)」
「(十分だ!今のうちに決める!)」
「(分かってる。遅れるなよ!)」
溜めポーズをとる両者。
ダイナは十字に腕を組んで黄金の光を、ティガダークは腕をL字に組んで漆黒の闇を放つ。
螺旋状に絡み合いうながら威力を相乗させ合う二つの光線。
相反するエネルギーが更なるパワーを引き出しながら、マザースフィアザウルスのコアにぶちかまされた。
「「『(うおおおおおおおおおおお!!!』)」」
ティガダークは己の闇と奪った力で。
ダイナは二人がかり…いや皆の力で。
孤高と団結、相反する筈の力は莫大なエネルギーとなる。
ピキッ…ピキピキッ!
「ッ!!?」
マザースフィアザウルスのコアにヒビが入る。
ダイナの攻撃を受けても傷一つ付かなかった頑強なコア。
しかし一度入った亀裂は加速的に拡がり、やがて割れた。
『全てを…一、つに………』
大爆発。
緑色に光る波動を放ちながら。
辺り一面に拡がっていきながら終息していく。
マザースフィアザウルスの消滅に続くかのように、飛来していたスフィアソルジャーも消えて逝った。
「「………」」
スフィアの消滅を見届ける両者。
いつの間にか鳴っているカラータイマー。
先程の光線に全てを注いだ結果、二人のパワーは切れかかってしまった。
「「シュワッ!」」
飛び立つウルトラマンたち。
その姿を人々は喝さいで見送った。
「(ほら圭吾くん、あの人たちにちゃんと挨拶返さないと!)」
「(あ、何だソレ? 何でそんなことしなきゃいけねえんだ?)」
「(駄目だよ、あの人たちも手伝ってくれたんだから!)」
空からグッドサインを送るダイナ。
言われて渋々そっぽ向きながら手を振るティガダーク。
人々から歓声を送られる中、二人は彼方へと飛んでいった。
前回のテーマが「都合」「孤独」「闇の有効活用」なら今回のタイトルは「棲み分け」「助け合い」「光との距離感」にしようとしてみました。
私は書けていたでしょうか?
他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?
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いる
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いらない
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ご自由に