ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~ 作:大枝豆もやし
本当はダイナ編は書く予定はありませんでしたが、他のウルトラマンとの絡みも見たいとアンケートで出たので急きゅ書いてみました。
炭治郎ではなくアスカをそのまま出そうと思いましたが、アスカだと別世界の地球と関わりが無いし、二人をそのまま戦わせるとただのアンチになるので炭治郎を出しました。
マザースフィアザウルスを倒して3日後。
圭吾がロードワークによく使う山道の途中にある空き地。
その芝生の上に圭吾と炭治郎は横になっていた。
「ねえ圭吾くん、スフィアって間違ってたのかな?」
「どうした急に」
寝転がったまま炭治郎が聞く。
「圭吾くんが壊した研究所、ギジェラを使って洗脳薬作ろうとしてたらしい」
「あ、やっぱ悪用してたのか」
「………最初から気づいてた?」
先日ティガダークが襲撃した研究所
調査の結果、裏の研究が明かになった。
関与した者は取り調べを受け、首謀者は逮捕されたらしい。
まあ、圭吾にとってはどうでもいいことだが。
「いや知らん。ただ悪用してる確信はあった。善意であんな規模の研究しねえだろ。証拠はなかったからあの程度で終わらせたけどな」
「え、じゃあ本当にただギジェラで眠った人たちを守るためにあんなことしたの!?」
「だから最初からそう言ってるだろ」
上体を起こして驚く炭治郎に圭吾はそのままの状態で答えた。
「話戻すけど、スフィアに取り込まれた時にアイツ等の心に触れたんだ。ソレで分かったんだ、アイツ等には侵略する気や俺達に敵意はない。本気で全てが一つになることが平和になる唯一の方法で、別々の生き物の俺達を本気で憐れんで救おうとしてるって」
「別にいいんじゃねえんのか思うだけなら。思想は自由だ。ただ、ソレを押し付けられるのは堪ったモンじゃねえが」
「うん、その通りだね。じゃあ、あの研究所での俺が言った事もそうなるのかな?」
「………」
圭吾は答えなかった。
「スフィアに取り込まれたとき、アイツは本気で救おうとしてた。方向性は全く逆だけど、押し付けようとした点ではギジェラを否定した俺たちと同じじゃないか」
「押し付けるっていう点ではな。ソレを望まない人にとっては両方とも侵略者だと俺は思ってる」
「………そうだよなぁ」
炭治郎は目を瞑ってため息をついた。
「俺、本気で皆に目覚めて欲しいと思ってる。今が不幸でも明日はきっと良くなるって」
「無責任な言い分だな。何を根拠にそう言える。悪くなることだってあるだろ。じゃなきゃ不幸や悲劇なんて起こらない。現に、俺が負けて世界が滅んだ時、お前らはその未来を予想してたか?」
「………ううん、あんなことになるなんて思ってもなかった」
圭吾から言わせれば甘い毒だ。
明日はきっと良くなるかもしれない。
未来は決まってないから自分で良い方向にも作れる。
曖昧な事柄をさも明るい方向にすり替えて騙すんじゃない。
不幸や悲劇はいつも予想しないところから突然起こる。
「現実の世界でちゃんと努力して、夢を叶えて幸せになってほしいって思ってた」
「無理だ。現実は夢を叶えられる人数が決まっている。誰かが幸せになるとその分誰かが割を食うんだ。俺が格闘技大会で優勝したり模試でトップ取る度にどれだけ他の奴らを泣かせたと思ってる」
「…だよねぇ。努力が報われたり皆が幸せになれるなら悲劇や犯罪なんて起こるわけないか」
誰もが幸せになれる世界。
そんなものはキレイ事であり、地球人宇宙人ウルトラマン関係なく不可能。
本当に叶えられると言ってる奴は宇宙の出来事に目を瞑っているだけだ。
例えば好きな人の一番になりたいと複数の人が思えばたった一人しか叶えられず、自分以外の幸せが無くなればいいと願う者も当然いる。
全てが叶うなんてことは、ギジェラのように夢の世界でなければ実現不可能だ。
夢だけではない。
人々がいうありきたりな幸せも裕福な国だからこそ成り立つもの。
その幸せもまた他者の不幸や犠牲で成り立ってる側面がある。
だから全てが幸せというのもギジェラぐらいでしか不可能だ。
「………やっと復興した今でも犯罪や悲劇は起こっている。本当に俺の、俺達の選択は正しいのかな?」
「知らん。そもそも誰が正しいって決めるんだ?」
「ソレは結果だろ。生き残った方が正解ってヤツ」
「なら結果が出るまで分からねえだろ。ソレにその理屈じゃ、民衆を虐めまくったり、他の生物や国を滅ぼしまくったり、奴隷にして酷使しまくっても生き残れば正解ってことになるぞ」
「うぇ!?ソレを正解って認めたくないなぁ」
正解など分からない。
結果論になるが、やった先に答えがある。
まあ、やった事が失敗で全部ダメになってやり直せないという最悪の結果もあるが。
そういうケースもあるからよく人は迷い、答えを出さずに逃げる事もある。
第一、正解なんて途中で変わる事だってある。
先程圭吾が言ったやり方で最初は上手くいっても、後で鬱憤が爆発したり裏切りが続出して滅んだというケースだって当然ある。
何処をどのタイミングで取り上げるかで正解かどうかガラリと変わる。
「俺は人類ってそこまで悪人ばっかりじゃないと思ってる。もしそうならもっと早くに滅んでるだろ?」
「そりゃそうだがその一部の悪人が社会を悪に染めてるんだ。俺が怪獣と戦ってる時、民衆ごと爆弾使って始末しようとした国あったからな。しかも民衆死んだのも怪獣や俺のせいにしようとしてた」
「………そういやそんな国あったな。滅んだけど」
地球人だからといって価値観や常識が全て一緒とは限らない。
むしろ同じ地球人だからこそわかり合えないこともある。
だからこの世界の地球人はいつまで経っても戦争が無くならなかった。
「じゃあさ、圭吾くんは何も押し付けないって言うの?」
「いや、押し付けまくってるな。戦う事で俺の考えを貫き通している」
圭吾は一度立ち上がった。
「戦いってのは我を押し付ける事だ。俺はソレが欲しい。だからよこせ。俺はこうしたい、だからお前はソレをやらせろ。戦い自体がそう言うモンだ」
「え~…。そんなつもりで今まで戦ってたの? じゃあ、圭吾くんにとっての正義って何?」
「無い。俺は俺のしたいことをする。強いて言うならソレが俺にとっての正義だ」
正義だの何だのはどうでもいい。
ただ自分のしたいことをする。
だからウルトラマンを名乗らず闇のままでいる。
「そんなのアリ?それ言ったらなんでもありになるじゃん」
「まあな。そもそも暴れてる怪獣や侵略してる宇宙人だって自分が悪いと思ってないぞ」
「………無茶苦茶だ。やっぱ圭吾くん正義って柄じゃねえわ」
「今更か?」
今度は炭治郎が立ち上がる。
「ていうか圭吾くんて戦闘狂だったんだ。普段は全然そんな素振り見せないのに。………もっと話していればよかったのかな?」
「そういう問題じゃねえだろ。第一こんな趣味、表立って言えるモンじゃねえし。………幻滅したか?」
「いや、幻滅はしてない。けどちょっと引いた」
「だよな。だから普段はそういったモンを出さないようにしてるんだよ。こんな危険な奴いたら何も知らない人は怖いだろ?」
「うん、まあ………そうだね」
何事も大っぴらにすればいいというものではない。
人間、他人に言えない趣味嗜好の一つや二つぐらいはある。
しかしソレが悪とは限らない。他人に迷惑をかけない内は。
だから相手もソレに踏み込まず、突こうとしない。
そうやって棲み分けというのは成立するのだ。
世の中色んな奴がいる。
圭吾みたいに危ない奴、未来を信じられない奴、お前みたいに人類と未来を信じられる奴、力も意志も弱くてリタイアしたい奴、スフィアみたいに完全のみを追い求める奴…。
そういった奴がぶつからないように色々と譲歩したり調節したりしてすみ分ける必要がある。
これがとても難しい。価値観という考え方の根本が違うのだか話し合っても“何でそう言う考えになるんだ”と喧嘩になってしまう。
だから価値観が違う相手と関わらない。避ける、或いは拒絶したり、違いを隠したり表に出さないようにする。
要は適切な距離を取って棲み分ける。これもまた共存の手段の一つである。
「俺、ずっと圭吾くん―――ティガダークに憧れてた。強くて、スマートに敵を倒す君に。俺にとっては正義のヒーローで、目指すべきウルトラマンだって思ってた」
「………」
圭吾は答えない。
振り向かず表情も見せなかった。
「けど違った。圭吾くんも自分はただやりたいようにやってるだけで正義のヒーローのつもりがない、1人の人間だった。俺の願望や憧れを押し付けて色眼鏡で見てた」
「そんなものだ」
そう、英雄だの何だの言われても所詮は人間。
圭吾が憧れたティガが人間らしい感情で戦っていたように。
「けど、今まで地球を守ってくれたことには変りない。憧れた事も変わりはない。正義のヒーローに見えたのも変わりない。だから言うよ圭吾くん」
「今までありがとうティガダーク。地球人を代表して俺が礼を言う」
「これからは俺がこの地球を守る。だから、帰りたくなったらいつでも帰ってきてくれ。その時はパンをごちそうするから」
「………」
圭吾はさっきまで食べていた炭治郎の作ったサンドイッチが入ったかごに目をやる。
ほんの一瞥して、ブラックスパークレンスを掲げた。
溢れる黒い光。
ティガダークと化した彼は炭治郎にテレパシーを送信する。
「(………まあ、パンはうまかった。今度帰った時もちゃんと生きてたら食いに行く)」
「うん!」
ソレだけ言い残して圭吾は、ティガダークは跳び立った。
「ありがとう、ティガダーク!」
手を振る炭治郎。
姿が見えなくなるまで見送ると、彼はゆっくりと帰った。
自分が守ると決めた町へと。
火星。
ネオフロンティアでは開発され人類の新たな未開地となった星。
だがこの世界線では人類は一度リセットされた為、一切開発の手は入ってない。
ティガダークはここを休眠の場にしようとしていた。
ティガダークに封じられたグランスフィア。
全てのスフィアではなく逃げられたのも多いが、一度取り込んだ闇を完全に自身の力にする為に休眠する必要がある。
そう、ガタノゾーアの闇を己の力にする為に眠った時のように。
だがこの星には先客がいたようだ。
先客は二つ。
一つは火星に移住した来訪者。
もう一つはソレを侵略しようとしている悪性宇宙人共である。
「(どうやらまだゆっくり眠るわけにはいかないようだな)」
迎撃するティガダーク。
宇宙船を破壊しながら突っ込み、侵略性宇宙人を殺しに向かった。
今日もティガダークは戦う。
その度に彼の名が宇宙中に知れ渡る。
力無き者にとっては救いの象徴として、悪意ある者にとっては絶望の闇として。
町外れの研究所。
以前に破壊されたギジェラの研究所をリニューアルした研究所。
その研究所を破壊しながら、一体の怪獣が街に進撃していた。
「デュワッ!」
町を守るために現れたウルトラマン。
そのウルトラマンはティガダークでもダイナでもない。
ダイナは既に旅立った。
完全に回復したアスカは炭治郎と分離。
しかし、残った光によって新たなウルトラマンと化したのだ。
心臓部に付けられたカラータイマー。
銀をベースに赤と青のラインが走るボディ。
額のクリスタルが紫色に輝く。
ダイナの光を継いだ新たなウルトラマン。
その名は―――。
これでこの章は終わりです。
ご愛読ありがとうございました。
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