ティガダーク~やはり俺は光の巨人になれない~ 作:大枝豆もやし
人類にとっては最早存在自体が罪。滅ぼさなくてはいけません。
まだ山奥や海の底にいて滅多に来ないならいいのですが、ホムガーみたいな絶対に相いれない生態の怪獣だったり、町に出ざるを得ない事情があれば、たとえ悪でなくても駆除しなくてはいけません。
その時コスモスは本当にぶっコロナ出来るんだろうかと。戦う以外どうしようもなかったらどうするんだと。怪獣と人間、どちらを選ぶんだと。
まあ、その答えはゼットで見たから概ね満足しましたが。
惑星ザイン。
惑星カナンと同じ太陽系に位置するが異なる惑星。
生命があり文明もあるが、他の惑星との交流はない。
そんな星で突如怪獣が暴れた。
ツルギデマーガ。
この星に元から生息しているデマーガが何らかの原因で強化・狂暴化した個体。
彼は昂っていた。
ある日手にした強大な力。
この力によって彼は群れ最強となった。
以前まではいわゆる弱者男性のような立ち位置にいたが、この力を手にして一転。
新たに得た力を以てすればこの星の頂点になれると。
今まで怠惰に過ごしてきた日々と決別し、覇道を歩み始めた。
現在はボスとして君臨し、縄張りの拡大を夢見て進撃する。
彼らの群れは問題に直面していた。
簡潔に言うなら人口問題と食糧問題。
解決するために彼は生息域の拡大を目指す。
土地開発という名の町破壊と侵略を以て。
まあ、この怪獣自体は別に群れの事など考えてないが。
彼が望むのは更なる高み。
覇道を歩み、勝利を重ねる事である。
群れが助かるのはその序でだ。ソレ自体が目的ではない。
だが、そんな夢はあっさりと否定された。
突如現れた外敵、ティガダークの手によって。
口から発射する熔鉄光線―――避けられた。
動作から撃ち出すタイミングを見切り、スウェーであっさり回避された。
背中から連射する溶鉄弾―――流された。
周囲にばら撒いて逃げ道を塞ぐが、受け流して軌道を変え、他の弾丸の迎撃に利用された。
両腕から生える溶鉄刀―――弾かれた。
接近戦に持ち込むも易々と対処。突きも斬撃も避けられ防がれ受け流され、カウンターを食らった。
ワンサイドゲーム。
勝敗は決まったも同然。
ツルギデマーガはただティガダークに殴られ続けた。
「ぐ…グゴァ………!」
しかしそれでもツルギデマーガの闘志は衰えない。
熱く燃える血潮をエネルギー源に立ち上がる。
たとえ勝てないと分かっていても。
「(最後まで戦うってか?いいぜ、来いよ!)」
構え直すティガダーク。
重心を深く落とし、蹴りの体勢に入る。
次の一撃で仕留めるつもりだ。
「(待ってくれ!)」
両者の脳内に響くテレパシー。
ソレに反応して一瞬だけ両者の行動が止まる。
瞬間、両者の間に割って入るように蒼い光が上空から降って来た。
「シュワッ!」
ウルトラマンコスモス。
現れると同時、青い巨人はツルギデマーガに右手を突き出し、光の粒子をばら撒いた。
フルムーンレクト。
コスモスの象徴ともいえる光線技。
必殺技にあたるが他のウルトラマンと違って殺傷能力は無い。
端的に言えば興奮抑制光線。対象の感情を鎮めて大人しくさせる効力がある。
主に、防衛本能や恐怖などで興奮状態になっている怪獣を相手に使用するのが多い。
だから相手によっては意味を為さないこともある。
例えば確固たる意志を持って戦いに臨む怪獣など。
「ッ!!?」
ツルギデマーガは困惑した。
自身の闘争心が削がれていく。
あれ程までに倒したいと思っていた筈のティガダークへの怒りが消えていく。
戻っていく。
本来のデマーガへと。
退屈で弱くて何もなかった頃へと。
嫌だ。
そんなのは嫌だ。
また弱い自分に戻るなんて絶対に嫌だ!
それほど知能の高くないデマーガに言葉は無い。
しかしハッキリの拒絶の意を表した。
ソレはコスモスの光線を振り払い、再び闘志を取り戻す。
「ッ!?」
予想外の事態に驚くコスモス。
しかしツルギデマーガは止まらない。
戦いの邪魔をする乱入者目掛けて溶鉄弾を撃ち出した。
「デュワァ!!?」
溶鉄の弾幕に怯むコスモス。
その隙に接近して回転。尻尾の打撃を食わらせ、続けて溶鉄刀で切りつけた。
何度も溶鉄刀を振るって斬撃を浴びせ、再び回転して尻尾打撃。
殴り飛ばされたコスモスは負傷箇所を抑えて後退。
その隙にチャージして熔鉄光線を撃ち出そうとした。
「(俺から目ェ離してんじゃねえ!)」
撃ち出すタイミングで軌道が逸れた。
逸れた原因はティガダークの飛び膝蹴り。
後頭部に食らってよろめいてしまった。
目標から外れた光線は小山に直撃して木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「グルルル………!」
再びティガダークを見据えるツルギデマーガ。
満身創痍の状態で。
先程は不意打ちに近い形だったからコスモスを追い込められたが、既に臨戦状態のティガダークには通じない。
勝敗は決まったも同然。
しかしそれでも逃げるという選択肢はツルギデマーガにはなかった。
「(負け方を選ばせてやる。命を捨てるか、力を捨てるか。好きにしろ)」
ティガダークのテレパシー。
言葉を持たない怪獣でもその意図は理解出来た。
理解した上でツルギデマーガは決断する。
己の生き方を。己の死に方を。確固たる意志を以て。
「(バカな奴め。だが嫌いじゃねえぜ!)」
光線の構えに入るティガダーク。
対するツルギデマーガも光線の構えに入った。
背びれから赤く発光しながらエネルギーを装填。
周囲の大気が膨張し、蜃気楼が発生する程に熱量が増大化。
ツルギデマーガ自身も焼かれる程のパワー。
ソレでもチャージをやめることはなかった。
「ギュアアアアアアアアアアアアア!!!」
撃ち出される両者の光線。
ティガダークのゼペリオン光線とツルギデマーガの最大熔鉄光線。
ツルギデマーガのソレは今までとは比にならない程の威力を発揮。
数秒の拮抗状態が続き、ゼペリオン光線が熱線を突破。ツルギデマーガの身体を貫いた。
「………」
倒れるツルギデマーガ。
だらんと身体から力が抜け、ゆっくりと地に伏せた。
「………何で、そんなに嬉しそうなんだ!?」
死んだというのに。
折角違う道を選べたのに。
彼の死に顔は幸せそうだった。
「………」
「ッ!? 待ってくれ!」
飛び立とうとするティガダーク。
コスモスはソレを呼び止め、両者は向かい合う。
数秒程の沈黙の後、コスモスが光となりながら縮小。
人間サイズの姿へと変じた。
春野ムサシ。
コスモスと融合した慈愛の戦士である。
ティガダークも人間へと戻る。
闇となりながら縮小し、人としての姿を顕した。
鞠川圭吾。外見は十七のまま。
まさか子供が戦っているとは思わず、ムサシは驚きを隠せなかった。
「君が…ティガダーク、なのかい?」
「見てのとおりですよ」
ティガダーク。
ムサシはこの惑星に来る前にその存在を知っていた。
闇の戦士でありながら人や星を侵略宇宙人や凶悪怪獣から守る矛盾した存在。
しかしその戦い方は闇の戦士らしく残忍であり、敵は一切の容赦なく嬲り殺す。
噂程度でしか知らなかったがまさかこんな少年が正体とは露ほども予想していなかった。
だが今はどうでもいい。
「君は知ってたのか、あの怪獣が死を選ぶって」
「いや、最初は普通に殺す予定だった。けどアンタの光線に耐えたところで力を手放すぐらいなら死を選ぶだろうなって気づいた。だから死に方を選ばせた」
「………そう、か」
淡々と答える圭吾に対してムサシは信じられないというか、理解できないとは思いつつも態度には出さないよう努めた。
本来ならデマーガはそれほど狂暴な個体ではない。だというのにあのデマーガは浄化を拒み、戦って死ぬことを望んだ。
あり得ない。そんな怪獣、聞いたことも無い。
しかし圭吾は………この闇の巨人はその意思をくみ取れた。
「何で、死を望んだと思う?」
だから聞いてしまった。
初対面、しかも明らかに年下の子供に。
闇の力を使う危険な存在とは思いつつも聞かずにはいられなかった。
「俺の感想でよければ」
「うん、聞かせてほしい」
圭吾はムサシに振り向いた。
「先ず、アンタは種族としてこの怪獣の行動はおかしいと思ってる。ソレは正しいが個体差や性格は当然ある。例えばコミュ力が高い犬種でもコミュが苦手な奴もいる」
「うん、そこは分かる。けど命を捨ててまで力に固執するなんて…」
「そりゃそんな奴もいるだろ。人間だって自分の命以上に大事な物がある奴いるだろ。金とか女とか。アイツの場合は力だったんだ」
「うん、まあそうだけど…」
納得がいかない。
人間なら複雑な感情や無駄に発達した理性からそういう不合理な判断をするかもしれない。
だがソレが理解出来ない。怪獣がそんなものを持つのは勿論、人間もそんなにお金や力を欲するのか。
そのお金や力で何かを守るわけでもないのに何故そこまで執着するのかムサシには理解出来なかった。
「理解できないか?命よりも何かを求めるのが。…まあ、そりゃそっか。ソレがマトモな奴の感想だ」
本来なら金や力は手段だ。
金は欲しい何かと交換するための手段でしかなく、力は外敵から守るための道具でしかない。
大体の人間はある程度したら“もういいや”と概ね満足するが、中にはもっと欲する者がいる。
何の為とかは考えない。ただひたすらに稼いだり、力を求める。
ソレが自身の生き方であり、そうする事こそが自分であるかのように。
「アイツはそうだったんだ。強さを求める事こそ己の証。たとえ他者を踏みつけても、その先で死ぬことになっても止まらねえよ」
「そんな…生き方なんていくらでも………」
「そこがマトモな奴とイカれた奴の違いだ。知識として知る事は出来ても理解するのは無理だろうな。まあ、マイノリティなのは確かだからそんな馬鹿もいるって思うぐらいで十分だろ」
世の中色んな奴がいる。
色んな考え高や価値観を持ち、譲歩出来ない部分も当然ある。
互いの利害が合わず妥協できない以上戦うしかない。
たとえ相手が傷ついても、排除或いは侵略してでも。
戦って、どちらかを折るしかない。
「ソレにアイツのやったことは暴れて壊す事だ。どんな理由があってもそこは変わりない。気に病む必要は無ぇ筈だ」
「………」
口では先程のツルギデマーガが悪いとは言ったが、圭吾自身は悪とは考えてない。
生物が生息域を広げるのは当然の事。
現に人間は世界中に生息域を広げている。
他の生物を駆逐し、侵略する事で勢力を拡大していった。
だから新たに力を付けた生物に同じことをされても文句は言えないだろう。
まあ、圭吾自身は人間のつもりだから人間の味方をするが。
「………だったら、君は何のために戦っている?」
「俺? 正直言うとアイツとほぼ似たようなモンだ」
「………え?」
圭吾は再びムサシの方に振り返る。
「俺は強くなりてえから戦ってる。気負いなくぶっ殺せる奴と戦ってる。戦いたいから戦ってんだよ」
獰猛な笑みを見せる圭吾。
ソレを見てムサシは何も言えなくなった。
「最初は怖い子だと思ったんだけど、悪い子ではないんだよね」
ムサシは後にそう語った。
共存って難しいですね。
恵みを分け合うとはいっても総数限られてますし、お互いにもっと欲しいです。そもそも互いの事情が上手く合いません。
もし仮に上手い具合に分け合っても、数が増えたり災害などで恵みが減るなど、事情が変われば奪い合いになりかねません。
もし仮に運よく恵みを分け合える状況が続いてもそれはそれで不健全です。同じ状況が続くという事は停滞しているのと同じで、やがて衰退を招きます。
そもそも生きるという事は悪く言えば食い合い。食料に限らず奪い合うことです。
植物だって日光を取り合う為に伸び、下にいる植物から光を奪ってます。中には毒で周囲の植物を殺す植物もいます。
もちろん、人間なら新たな選択肢を創造するという手もあります。けど失敗のリスクもあるし、余計に状況が悪化したり、折角の恵みがパーになる事だってあり得ます。
本当に難しい。ならどちらかが強くなって事情の調整を出来るようになったらどうか。
動物園みたいに片方の種を保全し、家畜のように管理する。これもある種の共存です。
いや、でもされる側には成りたくないな…。
他のウルトラマンとの絡み外伝とかでいる?
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いる
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いらない
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ご自由に