わたしが「キヴォトスの生徒」になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)   作:かつおのえぼし

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れな子が悪いんだよ


プロローグ

 

高校生活、ってこういうもんだと思ってた。

いや、違うな。こう「そうであらねばならない」と自分で勝手に思い込んでただけだ。

 

毎朝、鏡の前で笑顔の練習。

「れな子ちゃん、今日も可愛いねー!」って褒め合う声が響く女子トイレの中で、「あっ、ありがとぉ~!」って調子を合わせるのももう慣れた。

でも笑顔の裏で心臓は毎回、嫌な汗でベタベタだ。

 

中学のわたしは完全な“ぼっち”。

昼休みは机に突っ伏して寝たふり。体育のペア作りで余るのは日常茶飯事。

でも高校デビューを決めたあの日、わたしは「もう陰キャはやめる!」って心に誓った。

髪型も服のセンスも妹に手助けしてもらい必死で勉強して、笑顔の練習もした。

SNSで「陽キャ女子」っぽいノリをマスターして、無理やり陽キャの輪に飛び込んだ。

 

結果――わたしは“陽キャ枠”で高校生活を送れている。

それは間違いない。だけど……

 

「……しんど……」

 

教室の窓際、誰もいない隙間で小声で呟く。

今日もみんなの前では「オッケー!行こ行こー!」なんて元気に声を張り上げた。

でもそれは全部、作ったキャラクターだ。

演じ続けてるうちに、本当の自分がどんどん薄くなっていく気がする。

 

――昼休みの時、スマホの画面を見てしまった。

昔の同級生のアカウント。

「彼氏とデート楽しすぎたー!」って笑ってる写真の中に、昔一緒に遊んだあの子がいた。

画面の中の彼女は、自然に笑ってる。作り笑いじゃない。

わたしはどうしてこうも「無理してる」のか、自分でもよくわからない。

 

「はぁぁぁ……」

 

席を立つ。

誰にも気づかれないように、こっそり教室を出た。

この学校で一番落ち着ける場所――屋上へ。

 

屋上のドアを開けた瞬間、風が頬を撫でる。

空が広い。それだけで心が軽くなった気がした。

 

「ふぅ……」

 

フェンスに寄りかかって、空を見上げる。

作り笑いの顔筋がまだピクピクしてる。

ポケットからスマホを取り出し、タイムラインを流す。

陽キャたちのきらびやかな投稿がずらりと並んでる。

それを見て、なぜか胸がギュッと苦しくなった。

 

「わたしも……“普通”になりたいだけなのになぁ」

 

呟いて、足元のフェンスに目をやる。

覗き込んだ校庭は、小さなジオラマみたいだ。

 

――その時、強い風が吹いた。

制服の裾がふわっと舞い上がる。

反射的にフェンスの上に手をかけた瞬間――

 

「あっ――!」

 

足を滑らせた。

一瞬で視界がひっくり返る。

 

――落ちる。

 

「ひゃっ――」

 

悲鳴を上げる暇もなく、視界がひっくり返る。フェンスを越えた瞬間、心臓が胃袋にまで落ちてきて、内臓ぜんぶが逆さまになるみたいな感覚。

頭の中が真っ白になった。校舎の裏庭が下の方でぐんぐん近づいてくる。わたしの人生、終了のお知らせ。

 

(あっ、終わった……!)

 

と、思った瞬間、意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……バババババッ!

 

銃声で目を覚ます、って経験ある?

 

いや、ないよね!?ないに決まってる!わたしも人生初だよ!

 

耳に響く轟音。振動が体を揺らした。まるで寝室でいきなり花火大会が始まったみたいな衝撃だった。

 

「えっ、な、なに!?なにこれ!?火事!?地震!?隕石!?」

 

慌てて体を起こそうとしたけど、背中に柔らかいものが当たっている。土じゃない。コンクリじゃない。

もしかして……草?いや、それより空が広い。さっきまでいた学校の屋上じゃない。

 

「……え?」

 

見上げた空は見慣れた青じゃなかった。太陽が照ってるのに、巨大な光の輪が上空に存在してる。浮遊してるのは……飛行船?空中を巨大な影が通り過ぎていく。漫画やアニメでしか見たことないサイズのヘリっぽい何かも飛んでる。

 

爆発音はすぐ近くから聞こえている。耳がジーンとするくらいの音量で……え?

 

「ここどこぉおおおお!?!?」

 

思わず叫んだわたしは、今の状況を整理できず、完全にパニックになった。

 

屋上から落ちた。死んだ?いや生きてる。てかここどこ!?戦争中!?わたしは誰!?(いや名前はわかるけど!)

 

「ひ、ひいっ!?」

 

近くの道路で、灰色のセーラー服を着た女子高生がサブマシンガンを構えていた。ほんとに、女子高生。

しかも黒髪ポニーテールで超絶可愛い。だけど銃は本物だ。しかも戦車が走ってる。戦車!?日本じゃない、ここ絶対、日本じゃない!

 

わたしはえぐえぐと涙目で、その場に体育座りするしかなかった。

 

「動かないで!」

 

そんな中、突如鋭い声が飛ぶ。え?撃たれるのわたし!?必死に首を振る。

 

「ち、違います!わたし敵じゃないです!多分!」

 

銃を構えていたのは菫色の髪の女子高生だった。冷静そうな顔立ちで、菫色の瞳がわたしを射抜くみたいに見てくる。

見た目は完全に真面目優等生系。けどその手のサブマシンガンはこちらに向けられている。怖すぎる。

 

「ユウカ、その人は敵じゃなさそうです!」

 

別の子が叫んだ。声の主はキリッとした雰囲気の長身美女で、黒髪のロングが揺れてる。彼女の銃も本物で、しかもスナイパーライフルみたいに長いやつ。そんなものぶら下げながらも優しい目でわたしを見てくれた。

 

「ほら、この子震えてる」

 

「……確認は後。まずはここから離れましょう」

 

ユウカと呼ばれた子が冷静に言って、私の腕をぐいっと引っ張った。

 

「あ、あのっ、えっと……!」

 

「後で説明するから今は動いて!危ないから!」

 

いやほんと危ない。道路の先から装甲車が走ってくるし、バシュッと何かが飛んでくる音もした。アニメでしか聞いたことない「銃弾が風を切る音」。現実だと心臓に悪すぎる!

 

「な、なんで女子高生が銃持ってるんですか!?」

 

「後で説明するから!」

 

ひっぱられて逃げる途中、別の声が響く。

 

「こっちへ!この建物で一息つきましょう!」

 

駆け寄ってきたのは、ベージュでセミロングの女の子。けどその手には医療用の大きなバッグ。まるで戦場の衛生兵って感じ。おまけにその子の後ろから、スーツ姿の……女性、先生っぽい人が走ってくる。

 

「"大丈夫!?怪我してない?"」

 

「あ、あの、えっと、どなた……?」

 

「"自己紹介は後でね!ここは今危険だから"!」

 

わたしはよろよろとその大人の女性に腕を支えられた。やっと安全になった……と、思ったら。

 

ドゴォォォォォォンッ!!!

 

すぐ近くで爆発。建物の壁が崩れ、ガラスが降ってきた。わたしは反射的に頭を抱える。誰かが上に覆いかぶさってくれた。いい匂いがする。えっなにこれ誰!?って思ったらさっきの黒髪のお姉さんだった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫じゃないです……!」

 

「ハスミさん、敵の増援です!」

 

ユウカさんが叫ぶ。何か光るものが飛んでくるのが見えた。弾丸?グレネード?そんなの知らない!現実感なさすぎて思考が追いつかない。

 

その後、お互いに軽く自己紹介をして逃げながらも、必死に状況を説明してくれる菫色の髪の子――ユウカさん曰く、ここは「キヴォトス」っていう学園都市らしい。何千もの学園が集まってできてて、みんな生徒(?)で、銃や戦車やらが普通で、治安が悪くて、そして彼女たちは「シャーレ」っていう組織のメンバー。

 

「えっなにそれ?異世界?夢?どっち?わたし死んだ?」

 

「死んでないです!ちゃんと生きてますから!」

 

ベージュの医療系女子――チナツちゃんが励ましてくれる。けどこの状況、死んだほうが納得しやすいまである。

 

「で、でもどうして……」

 

「落ち着いて。詳しい話はシャーレに着いてから。まずは安全な場所に行かないと」

 

冷静なお姉さん――ハスミさんにそう言われると逆らえない。彼女の落ち着きっぷりが天使のようで、思わず見惚れてしまう。……うわ、なにこの人、めっちゃ綺麗。

 

「お姉さん、めっちゃ綺麗ですね……」

 

「えっ……あ、ありがとう」

 

ハスミさんがちょっと顔を赤らめる。え、かわいい。なんでこんな美人が銃持ってるの?この世界どうなってんの?

 

「"れな子、君は戦闘はできる?"」

 

先生っぽい人が問いかけてくる。目元のきりっとした美人で、でも笑顔は柔らかい。

 

「せ、戦闘!?ムリムリ!ゲームならできるけど現実はムリです!」

 

「"ゲーム……?"」

 

「あ、FPSっていう……シューティングゲームなら得意ですけど……」

 

えっなに?怖いんだけど。

 

「"わかった、それじゃあ建物の陰で隠れててね"」

 

「隠れるのは大得意です!!」

 

即答した。

 

ビルに逃げ込んだ私たち。ユウカさんが地図を取り出して指示を出す。ハスミさんは入口を見張り、チナツちゃんが怪我を確認し、最後にスズミさんっていう銀髪のとても綺麗な女の子が笑顔で水を差し出してくれた。

 

「飲みますか?」

 

「あ、ありがとう……」

 

「怖かったですよね」

 

「うん、怖い……。てかまだ怖い……」

 

スズミさんがそっとわたしの頭をなでた。わ、優しい……。わたし、涙出そう。

 

「大丈夫ですよ、私たちが守りますから」

 

その笑顔があまりにも眩しくて、思わず赤面してしまった。

 

 

◇◇◇

 

 

「もうシャーレの部室は目の前よ!」

 

「っ、来ます!」

 

ハスミさんが小さく叫ぶ。窓の外、屋根の上に影がひらりと降り立った。狐のお面をかぶった、赤と黒の着物の少女――

 

「……あらら。連邦生徒会は来ていないみたいですね。フフッ、まあ構いません。」

 

「あの建物に何があるかは存じませんが、連邦生徒会が大事にしてる物と聞いてしまうと……壊さないと気が済みませんね……。」

 

「七囚人……狐坂ワカモ!」

 

ハスミさんが銃を構える。ワカモ?どこかで聞いたことある名前だ。いや、聞いたことないわ!誰!?

 

「彼女は危険です!チナツ、先生とれな子さんを守ってください!」

 

「了解です」

 

チナツちゃんがわたしを抱き寄せた瞬間、銃声。

ガラスが割れ、瓦礫が散る。

 

「ひぃっ!」

 

わたしは耳を塞ぐしかなかった。怖い怖い怖い!

 

ワカモと呼ばれる少女の動きは異常に速く、銃弾をひらりと避け、まるで影のように壁を駆ける。先生が命令を飛ばし、ハスミさんが狙撃、スズミさんとユウカさんが援護射撃、チナツちゃんが回復の準備を整える。戦場の連携プレイ。すごい。ゲームの中みたい。

 

「……すご」

 

気づけば、恐怖と同時に興奮も混じってた。FPSで見てた景色が、今ここでリアルタイムで展開されてる。心臓の鼓動が耳の奥でドクドク鳴る。

 

「れな子ちゃん、これ!」

 

そばにいたチナツちゃんが何かを渡してきた。小型の拳銃……いやいやいやいやムリムリムリ!!

 

「えっちょっ……撃てない撃てない!!」

 

「大丈夫です、牽制だけでいいので!」

 

銃を握る手が震える。頭の中に浮かぶのはゲームの画面。でも、これは現実。

 

「……っ!」

 

ワカモが飛び出してきた瞬間、わたしは本能でトリガーを引いた。パンッ!耳をつんざく音。彼女は一瞬動きを止めた。ほんのわずかだけど、隙ができた。

 

「今です!」

 

ユウカさんの声と同時に、ハスミさんの銃声が響いた。ワカモはひらりと後退し、屋根の上へと跳躍した。

 

「私はここまで、あとは他に任せましょう。」

 

狐のお面がこちらを見てにやりと笑った気がした。

その後彼女は建物の影に溶けるように消えていった。

 

「……っはぁ、はぁ……」

 

わたしは壁に寄りかかって座り込む。手の中の銃がまだ震えてる。怖すぎる。でも、なんとか生きてる。

 

「れな子さん、大丈夫ですか?」

 

スズミさんが手を握ってくれる。指先が温かい。

 

「だ、だいじょぶ……じゃないけど……生きてる……」

 

「よく頑張りましたね」

 

頭をなでられて、わたしは完全に泣いた。泣くしかなかった。スズミさんがぎゅっと抱きしめてくれる。あっ、甘い匂いする。好きぃ……。

 

「すごいですね、初めてなのに……」

 

ハスミさんが目を細めて微笑む。あ、また顔が赤くなる。無理……尊い。

 

「さ、シャーレは目と鼻の先です。行きましょう」

 

ユウカさんの冷静な声が響く。わたしは涙を拭って頷いた。

 

街の中を全速力で駆ける。相変わらず銃声は聞こえ戦場みたいだった。でも不思議と恐怖よりも安心感があった。だって隣にハスミさんがいる。手を握ってくれるスズミさんもいる。ユウカさんは冷静で頼もしいし、チナツちゃんは優しいし、先生もわたしを守ってくれる。

 

「……なんか、漫画みたいな世界に来ちゃったな……」

 

現実感がない。でも、彼女たちの温かさだけは現実だった。

 

 

 

 




という話が見たかった。

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