わたしが「キヴォトスの生徒」になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)   作:かつおのえぼし

2 / 8

今回は説明回的なやつです、思いつきで書いてしまった故にストックなんてないです。

1〜2話ほど日常回を挟んだ後に、アビドス編にいけたらいいなって思ってます


シャーレの部員とか、ぜったいにムリ!

 

――もう、ほんとに泣きそうだった。

いや、泣いてた。さっきからずっと泣いてる気がする。

戦場みたいな街を走って、撃たれて、爆発に巻き込まれて、命がいくつあっても足りない。

それでも必死に走ってきて――

 

「見えてきました!シャーレです!」

 

ユウカさんの声に、胸がぎゅっと高鳴った。

目の前にそびえるのは、ガラスと鉄骨でできた近未来的なビル。周囲の瓦礫と煙でボロボロの街並みに不釣り合いなほど、整然としたその建物が、この世界で唯一の「安全地帯」みたいに見えた。

 

「や、やっと……ついた……!」

 

思わず膝に手をつきながら恥も外聞もかなぐり捨てて、ぜいぜいと息を整える。

視界の端では、スズミさんが肩で息をしてるし、チナツちゃんも汗を拭ってる。

そんな中、ハスミさんは涼しい顔でスナイパーライフルを肩に担いでいた。……いや、ちょっと前まで戦車を撃ち抜いてなかった?

スナイパーライフルで戦車を止めるってどういうこと!?軍人!?美人スナイパーっていう属性だけでお腹いっぱいなのに、もうなんか現実感が壊れる。

 

「無事到着です。れな子さんもよく頑張りましたね」

 

「……は、はい」

 

ハスミさんに褒められて、心臓が変な音を立てる。さっきまで疲労困憊だったのに急に胸がドクンドクンと鳴る。

……もしかしてこれが不整脈!?

 

 

◇◇◇

 

 

「"みんなはここで少し待っててね"」

 

先生――この世界でわたしを助けてくれた美人の女性――は微笑んで、そう言った。

その言葉だけで、不思議と安心できた。

長い黒髪を後ろでまとめた彼女は、クールで落ち着いた雰囲気なのに、声はやわらかい。

 

「ここは安全だから、少し休んでて。みんな、彼女をお願いね」

 

先生はそう言って軽やかに踵を返すと、スタスタとエレベーターの方へ向かっていった。

その後ろ姿を、思わずぽかんと見送ってしまう。かっこよすぎる。

「この人が先生」って言われても、わたしの知ってる学校の先生とは別次元の存在だ。

 

「れな子さん、こちらへ」

 

スズミさんが柔らかい笑顔でソファを指差してくれた。

案内されたのはビルのロビー。白を基調にしたデザインで、観葉植物まで置いてある。さっきまで戦場を走ってたのが嘘みたい。

 

「お茶、飲みます?」

 

「あ、お願いします……」

 

手渡された紙コップのお茶を両手で包む。温かい。

……あれ、なんか泣けてきた。

 

「無理もないですよ。ここに来るまで、かなり危なかったですからね」

 

チナツちゃんが隣に座って微笑む。

医療班らしい落ち着き方で、わたしの背中を優しく擦ってくれる。

 

「……ありがとうございます」

 

涙声でそう答えると、チナツちゃんは「ふふっ」と笑ってくれた。

この世界の人たち、強いのに優しい。ギャップで心が追いつかない。

 

あれから先生はシャーレの地下へ向かったらしい。

その間、わたしは4人の女の子に囲まれて、ここで待機。

……なんだろうこの状況。少しだけ恋愛シミュレーションゲームの主人公になった気分。

 

「れな子さんは……どこから来たんですか?」

 

突然、スズミさんが首をかしげて聞いてきた。

 

「えっと……」

 

どう答えればいいのかわからない。

「日本の芦ケ谷高校です」って答えればいいのかな。

でも、この世界に日本って存在するのかな。

迷った末に、正直に話す。

 

「わたし……“芦ケ谷高校”っていう学校に通ってました。

でも……たぶん、ここじゃ聞いたことない名前ですよね?」

 

ユウカさんが少し目を細めた。

 

「芦ケ谷ですか。……聞いたことありませんね」

 

「やっぱり……」

 

薄々わかってたけど、現実として突きつけられると頭がクラクラする。

 

「でも、れな子さんって普通の女子高生っぽいですね」

 

スズミさんがニコッと笑った。

 

「えっ、あっ、普通……?」

 

「うん。なんだか新鮮で可愛いです」

 

「かっ……かわ……!」

 

急にそんなこと言われて心臓が爆発しそうになった。

わたしは顔を真っ赤にして、目を逸らした。

 

「……スズミ、れな子さんが困ってますよ」

 

ハスミさんが呆れたように笑う。

笑った顔が素敵すぎる!もうだめ、酸素が足りない。

 

 

◇◇◇

 

 

それからしばらくして、ロビーのドアが開いた。

入ってきたのは、黒髪に綺麗なロングの少女――いや、少女というよりは「大人」って感じのオーラ。

制服のデザインも普通じゃない。連邦生徒会の紋章が目立つその服に、ピシッとした仕草。

彼女はゆっくりとこちらを見て、堂々とした声で言った。

 

「あなたが……甘織れな子さんですね?」

 

「えっ、は、はい……!」

 

まるで王様に名前を呼ばれた農民みたいな気持ちで立ち上がる。

この人、絶対偉い人だ。なんか目力がすごい。

 

「私は七神リン。連邦生徒会の会長代理を務めています」

 

「かっ、会長代理……!」

 

心の中で正座した。わたし、この人に頭上がらない。

 

「あなたのことは先生から少し聞いています。……事情は複雑そうですね」

 

リンさんはじっとわたしを見つめた。

なんか目の奥まで見透かされてる気がして、ほんの少しだけ居心地が悪い。

 

「先生は今、シャーレの地下で作業をしています。サンクトゥムタワーの管理権限を取り戻すためです」

 

「サンク……?」

 

「キヴォトス全体を統括するためのタワーです。連邦生徒会長の失踪以来、権限が宙ぶらりんになっていたのですが……先生ならきっと解決できるでしょう」

 

「……そんなにすごい人なんですか、先生」

 

「ええ。私たちにとって、先生は特別な存在ですから」

 

リンさんの声は少しだけ柔らかかった。

その言葉に、わたしはなんだか胸が温かくなる。

先生って、やっぱりただの教師じゃないんだ。

 

リンさんも地下へ向かい、しばらくロビーで待つ時間が続いた。

みんな疲れてソファに座っているけど、ユウカさんは端末で何かを確認してるし、ハスミさんは銃の整備をしてる。

チナツちゃんはわたしの隣に座って、怪我がないか丁寧に確認してくれた。

こうやって座ってるだけなのに、周りのみんながプロフェッショナルすぎて気圧される。

 

「あの……みんな、こういう戦闘って慣れてるんですか?」

 

「まぁ……慣れてる、というか」

 

チナツちゃんが苦笑した。

 

「ここじゃ、銃撃戦なんて日常茶飯事ですから」

 

「日常茶飯事!?」

 

「でも、命を落とすような戦闘はあまりありません。基本は相手を無力化するのが目的ですから」

 

「……なんか……日本の不良とスケールが違いすぎる」

 

チナツちゃんが小さく笑ってくれた。

あ、癒し……。

でも笑ってる場合じゃない。わたし、この世界に本当に馴染めるの!?

 

そうしてるうちに、地下に向かっていたリンさんから連絡が入った。

 

「……終わりました。先生がサンクトゥムタワーの権限を取り戻しました」

 

ユウカさんが感心したように息をつく。

あっさり言ってるけど、それってこの街のトップシークレットみたいなものじゃないの?

なんか先生、伝説の人みたいな扱いされてない?

 

数分後、先生が戻ってきた。

いつも通りの落ち着いた表情で、ゆっくりとソファに腰掛ける。

 

「"お待たせ。全部終わったよ"」

 

「先生、お疲れさまです」

 

リンさんが深々と頭を下げる。

会長代理が敬語を使うって、先生どんだけ偉いの。

 

「"さて……"」

 

先生は私に視線を向けた。

 

「"君の話を聞かせてくれないかな?"」

 

「えっ、わたしの?」

 

「"君がどこから来たのか、何があったのか。話せる範囲でいい"」

 

わたしは緊張しながら、深呼吸した。

そして、芦ケ谷高校のこと、屋上から落ちたこと、気づいたらこの街にいたことを話した。

 

「"なるほど……"」

 

先生が小さく首をかしげ、端末を操作する。

そして眉をひそめた。

 

「"……芦ケ谷高校、というのは、このキヴォトスのデータベースには存在しない"」

 

「えっ?」

 

「"もちろん、君の身元に関する記録もない"」

 

「え、えぇ!?わたし……消された!?国籍不明者になっちゃった!?」

 

「"落ち着いて。消されたわけじゃない。単純に、キヴォトスには存在しない場所から来たということだよ"」

 

「"君は私と同じ、“キヴォトスの外”から来た人間だということだね"」

 

「……キヴォトスの外から?」

 

「"そう。私も、そうだからね"」

 

「……えっ?」

 

まさかの告白に口を開けたまま固まる。

この先生も、この世界の人じゃない?

そんなことある?

 

「"君はやはり、この世界に突然現れたようだ。屋上から落ちたと言ったね?"」

 

「は、はい……たぶん、落ちた瞬間に……ここに」

 

「"そうか。なるほど"」

 

その言葉に息を呑んだ。

わたしはやっぱり異世界に来てしまったんだ。

 

「"怖い思いをしたと思う。でも、ここでは私が君を守るよ"」

 

先生は優しく微笑んだ。

 

「"シャーレで正式に保護する。君にはシャーレの部員として学籍を与えるけど、どの学園にも所属しない形になる。名目上は連邦生徒会所属……ということになるのかな"」

 

「"しばらくは私たちと一緒に過ごすといい。この街は危険も多いけど……きっと、君がここに来た理由もいつか分かると思う"」

 

「……」

 

涙がまた出そうになった。

怖いけど、先生の声は不思議と安心できる。

 

先生がそっとこちらに手を差し出した。

 

「"ようこそ、キヴォトスへ"」

 

その言葉でやっと、全部現実なんだと理解した。

元の世界には戻れないかもしれない。

でも――今はここで生きていくしかない。

 

「……よろしくお願いします」

 

手を握り返す、その手はわたしの心を落ち着かせるように温かかった。

 

 

 

 





わたなれアニメ、絶賛放送中!

もしよければ評価、感想などいただけると大変喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。