わたしが「キヴォトスの生徒」になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)   作:かつおのえぼし

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懺悔します

れな子のやかましい心情などを描写してたらストーリーほとんど進んでませんでした


砂漠で遭難なんて、ぜったいにムリ!

 

数日。

 

この世界に来てから、わたしはその言葉の重さを何度も感じた。

ほんの数日前まで、わたしは高校に通うだけのただの女子高生だった。

 

数日前まで「異世界!?ムリムリ!!」って半泣きだったわたしも、今では毎朝この天井を見ながら目覚めるのが少し習慣になってきた。

 

それでも、慣れたとは言えない。

手榴弾が普通にコンビニで売ってる事も、生徒たちが全員銃をぶら下げてる事も、たぶん一生慣れない。

 

それでも、この世界の人たちは優しくて……特に、先生は本当に頼もしい。

わたしのこともちゃんと「守る」って言ってくれて、それがどれだけ心強いことか。

 

だから、今はできることをやろうって思ってる。

その「できること」っていうのが――

 

「先生、書類多すぎません?」

 

「"……多いね。れな子、そこの封筒を開けてもらえる?"」

 

「あ、はい」

 

机の上に積まれた書類の束はまるで小さな城塞みたいで、ペンや印鑑が無造作に転がってる。

 

この世界に来て数日、わたしの仕事はもっぱらこの書類作業の手伝いだ。

初めての異世界体験がまさかのデスクワーク。

まあ、銃撃戦に放り込まれるよりはずっと平和だけど。

 

「これ、全部処理するんですか……?」

 

「"今日中には無理かな。でも、手伝ってくれるおかげでだいぶ早くなったよ。ありがとう。"」

 

「……っ、あの……わたし、役に立ててますか?」

 

「"もちろん"」

 

先生の声は柔らかく、笑顔もほんのり優しい。

思わず頬が熱くなった。

 

なんでそんな顔で褒めてくるんですか……!

 

 

「……あれ?」

 

 

積み上げられた封筒の中に、一通だけ違う雰囲気の手紙を見つけた。

他の事務書類とは違って、封筒に丁寧な字で「連邦捜査部の先生へ」と書かれている。

わたしはそっと手に取り、先生の方に差し出した。

 

「先生、これ……」

 

「"手紙?"」

 

封を開けた先生の目が、珍しくわずかに見開かれた。

その反応にドキリとする。

先生は中身を黙読した後、手紙を机の上にそっと置いた。

 

「"……れな子はアビドスって知ってる?"」

 

「アビドス……?」

 

知らない名前だ。たぶんキヴォトスのどこかの名前だろう。

首を横に振ると、先生は静かに説明してくれた。

 

「"アビドス高等学校。砂漠地帯にある学園だよ。今、その子たちが困ってるみたい"」

 

「困ってるって……?」

 

先生は手紙の一文を指でなぞった。

そこにはこう書かれていた。

 

 

――どうか、助けてください。

 

 

手紙の主は奥空アヤネという生徒だった。

彼女の言葉は真っ直ぐで、必死さが滲み出ていた。

アビドスの校舎が暴力組織に狙われていること。

弾薬も備品も尽きかけていること。

そして、このままでは学校が占領されてしまうこと。

 

「……」

 

胸がぎゅっと痛くなった。

わたしも前の世界という居場所をなくした人間だ。

だからこそ、手紙の文字が切実に響く。

 

「"アビドスに行くよ"」

 

先生の決断は早かった。

迷いのない声でそう言い、すぐに出発の準備を始める。

 

「えっ!?い、今からですか!?」

 

「"急がないと間に合わないかもしれない"」

 

「……っ」

 

その言葉に、わたしは小さくうなずいた。

怖いけど……でも、この世界でのわたしには帰る場所がない。

なら、せめて――誰かのために動ける自分でいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここどこおぉぉぉおっ!!?」

 

数時間後、わたしは砂漠のど真ん中で絶叫していた。

あれ……なんか少し前にもこんな事あったなぁ!

 

あの時は爆発と銃撃戦に巻き込まれたけど、今回は砂漠で遭難だ。

人類の進化どこいった。なんで私は文明から離れた方向に成長してるの。

 

「"れな……ごめ……道を……"」

 

隣では先生が地面に突っ伏していた。

日差しにじりじり焼かれて、なんか干物になりかけてるんですけど!?

 

「先生!?大丈夫ですか!?死なないで!」

 

返事はか細い呻き声。

やばい、先生が限界突破してる……!

 

わたしは周りを見回した。視界に広がるのは360度砂。

標識も看板もなければ人っ子ひとり見えない。

 

「アビドスに行こう!」って出発したのに、なんで今わたし達砂漠のど真ん中で立ち尽くしてんの!?

 

「え、これ、遭難ってやつじゃないですか……!」

 

「"……ははっ……"」

 

「笑えないですってばっ!!」

 

なんでこうなるの!?手紙の主を助けに来たんじゃないの!?

 

頭の中では、クロノススクールのニュース番組で「新米先生と見知らぬ少女、アビドス砂漠で発見される」が報じられるイメージが流れている。

笑顔のわたしの写真が遺影みたいに映し出されて……あーもう縁起でもない!

 

「先生っ、誰か助けを……」

 

「――大丈夫?」

 

突然、背後から涼やかな声が響いた。

 

はっと振り向く。

そこにいたのは――ロードバイクにまたがる灰色の髪の少女だった。

真昼の太陽の下でも柔らかく光る灰色の髪。

表情は無機質で、風に揺れるその姿は砂漠の蜃気楼みたいで。

声まで冷たく澄んでいる。

 

「助けが必要……?」

 

「うわぁぁぁぁっ助かったぁぁぁぁっ!」

 

よかった、これで遭難から脱出できる!

もうわたし、文明社会のありがたみを噛みしめる準備できてるよ!

 

「……そこの倒れてる人はあなたがやったの?」

 

「わたしなにもしてませんけど!?」

 

やめて!そんな取り調べみたいな目しないで!!

わたしは潔白!先生を砂漠で干からびさせる趣味とかないです!

 

「ほら、先生!助けが来たよ!起きてください!」

 

「"み、水……"」

 

「水!水をお願いします!」

 

「えっと……今エナジードリンクしか持ってないけど」

 

灰色の少女はわたしの必死の訴えに、わずかに瞬きしただけで、ロードバイクのドリンクホルダーからボトルを取り出した。

 

「今コップを……」

 

言いかけた彼女の言葉を遮るように、先生はボトルをひったくって――

 

ごくごくごくっ!!

 

「"ぷはっ……生き返る……"」

 

「飲むの早っ!?」

 

わたし、思わずツッコミ入れちゃったよ。

その勢いで命を取り戻せるなら、それはそれで良いけど!

 

「あ……それ……。ううん、何でもない。気にしないで。」

 

少女は一瞬なにかを言いかけたが、すぐに小さく首を振った。

 

「"……ありがとう、助かったよ"」

 

「二人はアビドスに用事?この近くにはアビドス高校しかないけど」

 

「そ、そうです!……あの、アビドス高校に向かってる途中で……!」

 

必死で説明すると、灰色の髪の少女――シロコさん(と名乗ってくれた)が、こくりと頷いた。

ロードバイクのハンドルをきゅっと握り直す。

 

「ふたりを一緒に運ぶのは難しいね」

 

「え?あ……確かに……」

 

だってわたしと先生とシロコさんで三人だし、ここ砂漠だし、ロードバイクに三人乗りなんて聞いたことない。

 

どうするのかな?って思った瞬間。

 

「それじゃあ、担ぐね」

 

シロコさんはロードバイクを近くの岩陰に静かに立て掛けると、無駄のない動きでわたしたちを見た。

目が、冷静すぎて逆に怖い。

 

「ど、どうするって……?」

 

「……担いで行く」

 

「へ?」

 

その返答の意味を理解する前に――

シロコさんは先生をひょいっとおんぶし、私の腰と膝裏に手を回した。

 

「えっ、えっ、えっ!?なにして――」

 

「こっちは横抱きで」

 

「ちょ、まっ、えぇぇぇぇぇっ!!??」

 

こ、これって俗に言うお姫様だっこってやつ!?

気づいたら、わたしは彼女の腕の中に収まっていた。

……軽々すぎない!?

いやいやいや!!わたし、そこそこ身長あるんですけど!?

 

「しっかり掴まって」

 

「えっ、あ、はいぃぃぃっ!?」

 

次の瞬間、シロコさんは砂漠を蹴った。

 

――速い。

 

速すぎる。

 

「ぎゃああああああああああああっっっ!!!??」

 

わたしの悲鳴が砂漠に木霊し、ドップラー効果よろしく音が遠ざかっていく。

体感的には車かそれ以上。

砂漠の地面を跳ねるたびに視界が上下に揺れ、風が顔を切り裂くように吹き付ける。

 

「ひゃああああああああああああっ!?!!?」

 

「……舌、噛まないようにね」

 

シロコさんの冷静な一言が耳元に届く。

……耳元?そうだ、めっちゃ近いんだ。

お姫様抱っこって、こんな至近距離なんだ……。

 

――あ、いい匂い。

 

砂漠の乾いた空気の中で、彼女の髪からほんのりシャンプーの香りがする。

この速度で走ってるのに汗臭さゼロとかどういう体質!?

ていうか心臓やばい。怖いのとトキメキが半々で命の危機。

 

「もう少しで着くから」

 

「そ、そんなの、全然信じられないぃぃぃっ!!」

 

 

◇◇◇

 

 

やがて、砂漠の地平線に小さな建物が見えてきた。

それはだんだん近づいて、やがて全貌を現す。

ボロボロの壁と窓。だけど、確かにそこは学校だった。

 

「アビドス……高校……」

 

「ん、着いた」

 

本当に着いた。

信じられない。

ほんの数分前まで遭難して干物になりかけてたのに。

私はシロコさんの腕の中で、放心状態のまま学校を見上げていた。

 

「降ろすよ」

 

「は、はい……っ」

 

彼女はわたしをそっと地面に降ろし、背中から先生も下ろした。

その顔に疲れた様子はなく、少し呼吸が乱れてる程度だった。

 

「………………すごっ」

 

思わず口から出た言葉に、シロコさんは一瞬だけ首を傾げた。

 

「……?」

 

無表情のまま、でもほんのり柔らかい雰囲気。

 

「さ、行こう。アヤネたちが待ってる」

 

シロコさんの背中を追いかけながら、わたしは砂漠の風に吹かれてボサボサになった髪を必死で整えた。

それにしても――アビドス高校。

名前は可愛いけど、見た目はほぼ廃墟だ。

 

「……ここ、ほんとに学校なんですか?」

 

「うん。……でも、あまり生徒はいない」

 

シロコさんはさらりと答える。

なるほど、砂漠の真ん中だしそりゃあそうなるか。

でも、彼女はまったく気にしてないように足早に進む。

わたしも慌ててついていく。

 

◇◇◇

 

校舎の中は……予想以上に生活感があった。

壁はところどころひび割れてるけど、掃除はきちんとされていて、机や椅子も整っている。

少ない人数で頑張ってるんだなって、そんな印象。

 

シロコさんは迷いなく廊下を進み、突き当たりのドアを開けた。

 

「着いた」

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

ドアの向こうにあったのは、部室らしき部屋。

机の上にはお菓子の袋やノートPC、壁には地図や書き込みだらけのホワイトボード。

生活感と作戦室っぽさが入り混じった空間だ。

 

「あ、シロコ先輩!おはようございます。」

 

黒髪に眼鏡をかけた生徒が椅子から飛び上がりシロコさんに顔を向けるとわたしと目が合う。

 

この子が――手紙の主。

「奥空アヤネ」って名前だったよね。

 

「そちらの方々は?」

 

「"シャーレの顧問先生です、よろしくね。そして――"」

 

「……甘織れな子です。よ、よろしくお願いします……」

 

わたしは深呼吸してからおずおずと頭を下げた。

……やばい、声が裏返りそう。

知らない土地で知らない人に会うのって、高校デビューより緊張するんだけど!?

高校デビュー初日の黒歴史が走馬灯のようによみがえる……。

 

「シャーレの先生!?」

 

机に肘をついてたツインテールの生徒が目を丸くする。

視線が鋭い。自然と背筋が伸びる。

この子が黒見セリカちゃんかな。

 

「わあ☆支援要請が受理されたんですね!良かったですね、アヤネちゃん!」

 

今度はおっとりした声が聞こえてきた。

見れば、ゆったり笑顔の生徒――十六夜ノノミさんが湯呑を並べてる。

めちゃくちゃ母性……ここがわたしのオアシスだったか……。

 

「は、はい!これで補給物資も届くし、ずっと困ってた弾薬も……!」

 

「あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……。あれ?ホシノ先輩は?」

 

アヤネちゃんがキョロキョロと部屋を見回す。

 

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくるね」

 

セリカちゃんが軽くため息をついて立ち上がった、その時――

 

ダダダダダダダッ

 

突然、窓が派手な音を立てて割れた。

耳の奥がキンと痛む。

 

「じゅ、銃声!?」

 

「わわっ!?武装集団が学校に接近してます!カタカタヘルメット団のようです!」

 

「……あいつら……!!性懲りもなく!」

 

シロコさんが鋭い声で吐き捨てる。

その無表情の奥に、怒りの気配が見えた気がした。

空気が一気に張り詰める。

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」

 

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー。」

 

え、戦闘中にこんな寝ぼけボイスを聞く日が来るとは……!?

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方々はシャーレの先生と甘織れな子さんです!」

 

「ありゃ〜そりゃ大変だね……先生?とれな子ちゃん、よろしくー……むにゃ。」

 

「また寝ましたけど!?この人!?」

 

ホシノさん――委員長のあまりのマイペースっぷりに、わたしの頭の中の危険信号ランプが混乱している。

 

「先輩しっかりして!学校を守らないと!」

 

「おちおち昼寝も出来ないなんて……ヘルメット団めー」

 

「すぐに出よう。先生達のおかげで、弾薬と補給品は十分。」

 

シロコさんがライフルを軽やかに構える。その動作が速い、そして無駄がない。

 

「出撃です☆」

 

ノノミさんがにっこり笑いながらマシンガンを抱える。笑顔のままなのが逆に怖い。

 

「私がオペレーターを担当します。先生とれな子さんは私と一緒にここでサポートをお願いします。」

 

アヤネちゃんがわたしの手を引き、部屋の中央にあるモニターの前へ案内する。

その小さな手が温かくて、少しだけ落ち着いた。

 

「……わ、わかりましたっ!」

 

声が裏返りそうになるのを、必死で抑える。

昨日も銃撃戦を体験したけど、何度やっても心臓はバクバクだ。

 

 

◇◇◇

 

 

校門の外には、こちらに迫ってくるヘルメットの集団――カタカタヘルメット団。

砂漠の風に巻き上げられる砂埃と、耳をつんざく銃声が入り混じる。

わたしはモニターと通信機の前で固まったまま、心臓が暴れてるみたいにドキドキ鳴ってるのを必死で抑えた。

 

「"ノノミは後方から弾幕を!敵の足を止めて!"」

 

「はーい☆」

 

ノノミさんがマシンガンをヘルメット団に向け、ガガガガガッ!と弾をばらまいた。

そのおっとりした声と裏腹に、射撃の精度と量は圧倒的。

敵が一歩でも近づけば、容赦ない鉛の雨で足止めされる。

その光景に思わず震えた。……可愛い顔してすごい火力。

 

「"シロコとホシノは前に出て!セリカは二人をカバーしてあげて!"」

 

「了解」

 

シロコさんが淡々と返事し、髪を風になびかせて前線へ飛び出した。

その後ろからホシノさんはショットガンを軽やかに構えてついていく。

 

「"セリカ!左側から敵が回り込んでる!"」

 

「言われなくてもっ……!」

 

セリカちゃんは先生の声に即座に反応し、射線を切るように位置を変え、二人の背後をカバーする。

その素早い判断に鳥肌が立った。

指揮官である先生の声とメンバーの動きがピタッと噛み合ってる。

これが……本物のチーム戦。

 

ノノミさんの弾幕に押されて敵の動きが鈍った瞬間、シロコさんがスッと飛び出し、正確なライフル射撃で敵を仕留めていく。

一発一発が無駄なく、静かで冷たい。その背中は機械みたいに精密なのに、妙に美しい。

気づいたらわたしは息を止めて見惚れてた。

 

◇◇◇

 

「れな子ちゃん!左側のドローンの映像、こっちに回せますか?」

 

「あっ、は、はいっ!い、今すぐ!」

 

アヤネちゃんの指示に慌ててモニターを操作する。

銃は撃てないけど、これくらいなら――これくらいならわたしにもできるはず。多分!

 

冷たい汗が背中をつたう中、なんとかカメラの映像を切り替えた。

 

「映像確認しました!敵、左側から六名回り込んでます!」

 

「了解!」

 

アヤネちゃんの報告でセリカちゃんが滑るように移動し、敵の奇襲を阻止。

続いてホシノさんの一撃で一人、シロコちゃんの正確な射撃でさらに二人が倒れた。

戦況が、一気にこちらに傾いていく。

 

「残り三名、撤退開始!」

 

アヤネちゃんの声が弾む。

ノノミさんがマシンガンで最後の退路を塞ぎ、ホシノさんの狙撃が敵の足元を正確に撃ち抜く。

最後の一人が両手を上げて退却するのを見届けた瞬間――

 

「敵影なし!私達の勝利です!」

 

「"よし、それじゃあ学校に戻ろうか"」

 

先生の指示が響いた瞬間、一気に戦闘の緊張感が消えた。

耳の奥がジンジンする。銃声の余韻がまだ残ってるのに、不思議と空気が柔らかくなった。





アビドスの戦闘シーンを書いてて思ったんですが、れな子が戦闘するシーンは来るのだろうか……?

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