わたしが「キヴォトスの生徒」になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 作:かつおのえぼし
今更すぎるのですが、タグに原作改変と独自展開を追加しておきました。
他にも必要そうなタグがあれば随時追加していきます。
――あれから。
ホシノさん達は、アビドス対策委員会の部室に戻ってきていた。
「改めて、シャーレの先生と……えっと、れな子ちゃんだよね。よろしくー」
ホシノさんが、ぼんやり眠そうな顔のまま手をひらひらさせる。
それに続いて、セリカちゃんとノノミさんとシロコさんも軽く会釈。アヤネちゃんはメガネを押し上げて、きゅっと真面目に頭を下げた。
「わたし達がアビドス対策委員会です!」
「対策委員会……?」
その名前を口にすると、みんなの視線がいっせいに集まった。やばい、注目されてる。心臓のバクバクが響いてない?
アヤネちゃんが説明してくれた。
対策委員会とは――このアビドスを蘇らせるために集まった有志の部活で、しかも全校生徒わずか五名で構成されている、校内唯一の部活だって。
「唯一って……逆に寂しすぎないですか……?」
「……まあ、そうなんだよね」
思わず口にした本音に、ホシノさんが肩をすくめて笑った。
それからの展開は、さらにめまぐるしかった。
「物資に余裕がある今のうちに、ヘルメット団の前哨基地を叩いちゃおうよ!」
ホシノさんの提案で、急きょ出撃することになったのだ。
30km先にある前哨基地へ。
先生はホシノさん達と一緒に行くことに。
そしてわたしはというと――
「れな子さんは、わたしと一緒にここでサポートです」
アヤネちゃんにそう言われて、こくこく頷くしかなかった。……正直、ちょっとホッとした。だって銃撃戦なんて、心臓がいくつあっても足りない。
甘織れな子に戦う力なんてないのだ。
◇◇◇
数時間後。
ホシノさん達は見事に奇襲に成功して、ヘルメット団を退却させ、補給所や弾薬庫まで破壊してきたらしい。
アビドスに戻ってきた彼女たちは、和やかな空気に包まれていた。
「これでしばらくは平穏ですね!」
「ふぅ、やっと一息つける……」
勝利の余韻に浸る空気。わたしも笑顔で頷いていた、そのときだった。
「これで……心置きなく借金返済に取り掛かれる……」
セリカちゃんが、ぼそっと口を滑らせた。
……ん?
借金返済?
「……え、今なんて言いました?」
つい聞き返したら、その場の空気がピタリと止まった。まるで銃撃戦よりも危険な沈黙。
「え、えっと……いや、その……」
「セリカちゃん……」
ホシノさんが制するように声をかけるけど、もう気になっちゃったんだから仕方ない。
「借金返済って……な、なんの話ですか……?」
「っ……! そんなの、部外者に話すことじゃないでしょ!」
セリカちゃんが勢いよく立ち上がった。顔は赤くて、目は鋭い。
「先生もれな子も、連邦生徒会の人間じゃない!今まで見向きもしなかったのに今さら首を突っ込むなんて、わたしは認めない!!」
そう言い捨てて、セリカちゃんは部室を飛び出していった。
「セリカちゃん待ってー!」と、ノノミさんが慌てて後を追う。
取り残された空気は重く、妙に冷たい。わたしはどうすればいいかわからずに視線を泳がせた。
すると、ホシノさんがふーっとため息をついて口を開いた。
「まぁ隠すようなことじゃないしね……。先生とれな子ちゃんには、話しておこうかな」
◇◇◇
アビドスの抱える問題――それは借金だった。
なんと、9億という巨大な額。
「9億って……ひぇ……」
「正確には9億6235万円、です。」
現実感のない数字に、変な声が漏れた。
――昔、この砂漠で大規模な砂嵐が頻発して、復興に莫大な資金を投入せざるを得なかったからだという。
だけどこの地域に融資してくれるまともな銀行はなく、結局は悪徳金融に頼るしかなかった、と。
その借金を返済できないと、学校は銀行に差し押さえられて廃校になる。
街がゴーストタウンになったのも、生徒が減ったのも、全部この借金のせいらしい。
「毎月の利息を払うだけで精一杯で……弾薬も補給品も底をついて、それでシャーレに手紙を送ったんです」
アヤネちゃんは、ぎゅっと両手を握りしめながらそう言った。
小さな肩が震えているのに、声は必死に落ち着かせようとしている。
わたしは唇を噛む。
9億なんて、宝くじで当たったって返せるか怪しい額だ。
なのに、この子たちだけで背負ってるなんて――。
「でも、借金の事は気にしないで。聞いてくれるだけでも、ありがたいからね」
ホシノさんは、そう言って笑った。
その笑顔があまりに柔らかくて、かえって胸がぎゅっと痛んだ。
……ムリだ。こんなの聞かされて「はいそうですか」って、置いて帰れるわけない。
「わたしも……!」
気づけば声が出ていた。
「わたしも、先生も……もう対策委員会の一員ですから!い、一緒に頑張ります!」
となりで先生も静かに頷く。
「"もちろんだよ。ここまで来て、君たちを見捨てて帰るなんてことはしないよ"」
……だよね。先生が言うと、やっぱり頼もしい。
わたしは胸を張ってみせる。気持ちだけでも強く!
「わたしなんて、戦闘とかまるで役に立たないけど……でも!見捨てて戻るなんて絶対しないですから!」
ちょっと声が裏返っちゃった。うわ、恥ずかしい。
でも、アヤネちゃんは目を丸くしてから、ふわっと笑った。
「……ありがとうございます。わたし……すごく心強いです」
シロコさんも無表情のまま、けど確かに小さく頷いてくれる。
部室に、少しだけ希望の色が差し込んだ気がした。
――その時、扉の外から気配がしたけど、すぐに立ち去る足音が響いた。
◇◇◇
翌朝。
アビドスの住宅街――といっても、ほとんどは空き家や崩れかけの建物ばかり。
その路地を歩いていたら、前からセリカちゃんの姿を見つけた。
「お、おはよう、セリカちゃん!」
勇気を振り絞って声をかけたら、彼女はぎょっとしたように立ち止まる。
気まずそうに視線を逸らしてから、ぷいっとそっぽを向いた。
「な、何が『おはよう』よ!なれなれしくしないでくれる?」
胸に言葉のナイフがズバッと刺さる。
でも負けるわけにはいかない。わたしは小さく息を整えて――
「わ、わたしはただ……セリカちゃん、これから学校かなって」
「ふん、あんたには関係ないでしょ?」
わたしがうろたえるのも待たず、さらに畳み掛けてくる。
「私、まだ先生やあんたのこと認めてないから!まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって。連邦生徒会の生徒様は良いご身分だこと」
ぐさぁっ。
セリカちゃんの嫌味が、容赦なくわたしのHPを削っていく。
冷たく切り捨てられて、胸の奥がきゅうっと縮む。
でも、それでも……。
「私は忙しいの」
そう言って踵を返そうとするセリカちゃんの背中に、わたしは思わず声を張り上げた。
「……待って!」
わたしは彼女の腕を掴んでしまった。
細くて、でもしっかりした力のこもった腕。
「な、何よ……」
振り返ったセリカちゃんの目は、警戒と苛立ちと、ほんの少しの揺らぎ。
わたしは、震えながら言葉を吐き出した。
「わたし……セリカちゃんと友達になりたいの!」
言っちゃった。
百発百中で恥ずか死ぬセリフを、この砂漠の真ん中で言っちゃった。
でも、わたしの声にセリカちゃんの足がぴたりと止まる。
「な、なに言ってんのよあんた……」
振り返った彼女の頬が、ほんのり赤い。
怒ってるのか照れてるのか判別はできない。
わたしだって顔が熱いし、息も苦しい。
でも、視線を逸らしたら伝わらない気がして。
わたしは必死に、その瞳を見返した。
(――セリカちゃんがどんなに刺々しい言葉を投げても、わたしは逃げないよ。
だって、本当は誰よりもみんなを想っていることを知ってるから。)
見つめ合ってどのくらいの時間が経ったんだろう……
「……はぁ」
やがて、セリカちゃんは深いため息をついた。
そして、少しだけ目を逸らして。
「…………今日はバイトがあるの。だから、また明日ね」
そう言って背を向けた。
でも、その声は尖ってなくて。
わたしはその背中を、胸がいっぱいのまま見送った。
セリカちゃんが去ったあと、わたしは砂埃を払いながらアビドス高校へ向かった。
胸の奥がじんじんしている。……友達になりたいって、あんな風に口に出しちゃったけど、どう思われたんだろ。
セリカちゃん、すっごい赤くなってたし。少し踏み込み過ぎたかな……。あああ、考えるだけで胃が痛い!
部室に戻ると、ホシノさん達も先生ももう揃っていた。
ホシノさんはソファにだらしなく寝転んでるし、先生は机で資料を整理している。アヤネちゃんは椅子に座りタブレット端末を見ている、ノノミさんはお菓子を広げているし、シロコさんは……建物の図面の様なものに細かくなにかを書き込んでいた。
「あっ、れな子ちゃんおかえり〜」
「ただいまです……」
挨拶を返しつつ、なんとなく切り出した。
「えっと……セリカちゃんは、今日はバイトがあるから来られないらしくて」
その言葉に、ホシノさんがむくりと起き上がった。
「ふーん……それじゃあ今日は、セリカちゃんのバイト先に行こ〜」
「えっ!?!?」
あまりにサラッと爆弾発言。
え、行くって何?わたしたちが?
セリカちゃんのバイト先に!?絶対嫌がられるやつでしょ!?
「心当たりがあるんだよね〜」
ホシノさんの曖昧な笑顔が、わたしには悪魔の笑みにしか見えなかった。
◇◇◇
かくしてわたし達一行は、アビドスの商店街へと繰り出した。
砂漠の中の商店街ってどういう存在感なの……?って思ってたけど、思っていたよりも人通りもあって、ラーメン屋や雑貨屋が肩を寄せ合って並んでいた。
そしてホシノさんが立ち止まったのは――
「着いたよ〜。柴関ラーメン」
ガラガラと引き戸を開けると、香ばしいスープの匂いが鼻をくすぐる。
店内はカウンターと小さなテーブル席。思ってたより庶民的な雰囲気で、ちょっと安心した。
「いらっしゃいま――」
元気な声が響いたと思った次の瞬間――
「……っ!!」
セリカちゃんがいた。
バイトの制服姿で、顔を真っ赤にしてわたしを睨んでいる。
えっ、なにこの視線!?「おまえ来るなよ」みたいな圧を感じるんですけど!?
もしかして、朝に「また明日ね」って言ったのを気にしてるの!?
「セリカちゃんのバイト先っていったら、ここぐらいかなと思って来てみたんだ〜」
「う、うっ……!ホシノ先輩かっ……」
セリカちゃんはぐっと言葉を詰まらせ、大将に「セリカちゃん!お客さん案内して!」と言われ、しぶしぶテーブル席に案内する。
顔は真っ赤だけど、声だけは営業スマイルっぽい。逆にかわいい。
そんなとき、わたしの口が勝手に動いた。
「……あ、あのっ!す、すっごく似合ってますね、その制服!めちゃくちゃかわいいです!」
……は?
自分の言葉に脳内で二度見した。
なんで今、制服褒めた!?
いや確かに、バイト姿が新鮮だな〜とは思ったけど!
よりによってこのタイミングで口に出す!?わたしのバカ!!
「はぁっ!?な、なに言ってんのよあんた!?」
セリカちゃんがさらに顔を真っ赤にして、わたしを睨んでくる。
でも睨みながらも、耳まで真っ赤なのは見逃さないぞ……。
「い、いやその……本当に似合ってたから……!」
「~~っ!」
恥ずかしそうに唇を噛んだセリカちゃんは、視線を逸らしながら早口で言った。
「ほらさっさと座って!……ったくもう」
「れな子ちゃん!私の隣、空いてますよ〜☆」
ノノミさんがにこにことこちらに手招きしている。
「……ん。私の隣も空いてる」
シロコさんは相変わらず無表情だけど、どこか期待のこもった目で隣の席をポンポンと軽く叩く。
「えっ……」
え、なにこの状況。わたしはどっちの隣に座れば正解なの!?
たまらず視線で先生に助けを求めると、先生はにっこり笑って「"先に座っていいよ"」なんて言う。
ちょっと先生?先生ーー!?
――苦渋の決断。
わたしはシロコちゃんの隣に腰を下ろした。
「……ん」
シロコさんが、ほんの少しだけ身を寄せてきた。
無表情なのに、どこか嬉しそう。
「シ、シロコさん!?ちょっと近くないですか!?」
「席が狭いから仕方ない」
え、いや、確かに狭いけど!これ完全に腕が当たってるんですけど!?
「な、なら……わたし一人でもカウンター席に……」
言いかけた瞬間、ガシッとシロコさんの手がわたしの手首を掴んだ。
「……ダメ」
低く静かな声が、耳の奥に落ちる。
え、なにこの空気。もしかして修羅場?
◇◇◇
その後も色々あったがようやく各々がラーメンの注文を終える。
「えっと……じゃあ、醤油ラーメンで……」
どきどきしながら決めたけど、やっぱりこういうときは定番が安心する。
そして、ラーメンが運ばれてくると、一気にテーブルが湯気と香りで包まれた。
「いただきまーす!」とノノミさんが笑顔で手を合わせる。
麺をすする音が静かに響き、湯気で眼鏡が真っ白になったアヤネちゃんが慌ててレンズを拭いたりしていた。
「ん……おいしい」
隣のシロコさんが淡々と呟く。無表情だけど、声がいつもより一段やわらかい気がする。
ラーメンを食べ終わって、ふぅっと息をついた頃。
セリカちゃんが、不意に眉をひそめて口を開いた。
「そんなに注文して……お金、大丈夫なの?」
その問いかけに、一瞬テーブルが静まり返る。
でも、すぐにホシノさんがにやりと笑った。
「大丈夫大丈夫。きっと先生が奢ってくれるはず〜。ねー?先生?」
「"えっ!?!?"」
先生の箸が宙で止まった。
わたしも思わず吹きそうになった。そんなの聞いてませんけど!?
「"い、いや、初耳なんだけど……!"」
「今聞いたからもう大丈夫だよ〜。ね、お願い、せんせー」
ホシノさんは器用に先生の腕をつかんで逃げ道を塞ぐ。
先生は必死に身をよじるけど、あっさり捕まってしまい――
「"……はぁ。わかった"」
観念したように、懐から取り出されたのは――存在感を放つ「大人のカード」。
「わっ、出た……大人のカード……!」
わたしは思わず感嘆の声を漏らしていた。なんかRPGでレア装備を見せられたみたいな気分。
隣でアヤネちゃんが「こ、これが社会人の力……!」と震えている。
結局、先生はみんなの分の会計を済ませることになった。
なんだか申し訳ないけど、正直ちょっと頼もしい……。
◇◇◇
暖簾をくぐって、店を出るわたしたち。
夜風がラーメンの湯気を洗い流していくみたいに涼しい。
そのとき、背後から声が飛んできた。
「仕事の邪魔だから……二度と来ないで!」
振り返ると、セリカちゃんが真っ赤な顔でこちらを睨んでいた。
耳まで赤いのは、怒ってるからなのか、それとも――。
「ホント嫌い!みんな死んじゃえー!」
その一言が、思いのほか鋭く胸に刺さった。
わたし、嫌われちゃった……?
でも、叫んでいるセリカちゃんの声は、どこか震えていて。
嫌いって言葉よりも、なにか必死に隠そうとしてる気配のほうが強くて。
「それじゃ、私たちは学校に戻ろっか」
ホシノさんが伸びをしながら、先生とアヤネちゃん、ノノミさん、シロコさんを促す。
「れな子ちゃんも一緒に――」
「わ、わたしはちょっと……寄り道してから戻ります!」
勢いで断ってしまった。
みんなが「?」って顔をする中、わたしは手を振ってごまかす。
だって、このままじゃセリカちゃんに嫌われたまま今日が終わっちゃう。
◇◇◇
そうしてひとりになったわたしは、アビドスの商店街をうろうろしていた。
砂漠の街に似つかわしくないくらい賑やかで、お土産品や日用品の店が並んでいる。
「えっと……セリカちゃんへ贈るもの……」
改めて口にすると、頭が真っ白になった。
なにを渡せばいいの!?バイト先で邪魔してゴメンってお詫びのプレゼント!?
謝罪の品って、何!?現代日本でもわからないのにキヴォトス仕様は難易度が高すぎる!
お菓子?……いや、ノノミさんあたりなら喜んでくれそうだけど、セリカちゃんは「太る」とか言って受け取ってくれなさそう……。
アクセサリー?……いやいや、重すぎ!告白じゃん!
お花?……砂漠に花屋なんてあるのかな!?っていうか持ち歩いてたらキザな人みたいだし……。
でも。
それでも。
セリカちゃんの「ホント嫌い!」が、まだ耳に残ってて。
嫌いって言われたまま放置なんて、もっと嫌だった。
「なにか……見つけなきゃ……」
必死に視線を巡らせる。
そのとき――店先のガラスに並んだ、ある物が目に入った。
――オルゴール。
掌に収まるくらいの小さな木箱。
中からは、静かで落ち着いた旋律が流れていた。
忙しなく回る心臓の鼓動を、そっと撫でてくれるような音色。
セリカちゃん、毎日バイトして学校のことも頑張って、きっと休む暇なんてない。
そんな彼女に、せめて少しでも落ち着ける時間を……。
胸がドキンと跳ねた。
なんだかよくわからないけど、直感で、これだ!って思った。
「よし……」
購入した後、紙袋から小箱を取り出し、胸の奥に大事にしまう。
シャツの下に隠すと、まるでお守りみたいに心が温かくなる。
「明日……ちゃんと渡そう」
口にした瞬間、頬が熱くなる。
これって、ほとんど告白じゃない?いやいやいや、そんなつもりは……!
「わ、わたしはただ……友達になりたいだけで!」
商店街の真ん中で顔を覆ってしゃがみ込む。
通りすがりの人にジロジロ見られて、余計に恥ずかしい。
……でも、いいんだ。
ちゃんと、セリカちゃんに渡そう。
そのときに、わたしの想いが少しでも届けば。
◇◇◇
色んな店を見て回っていたからか、気づけば空は群青に染まり始めていた。
砂漠の街の夜は早い。
いつのまにか店のシャッターも半分閉じていて、人通りもなくなっていた。
「……ちょっと時間かけすぎちゃったかな」
胸にしまった小さなオルゴールの感触を確かめながら、足早に帰路につく。
まだ校舎にホシノさん達は残っているかな……?
……もしかしたらセリカちゃんにも会えるかもしれない。そう思うと、不思議と胸が温かくなる。
だけど――その瞬間。
「……!」
路地裏の影が、不自然に揺れた。
振り返ると、暗がりから数人の人影が浮かび上がる。
「こいつで間違いないな?アビドスに協力してるっていう連邦生徒会の生徒は」
「そうだ。……ヘイローを持っていないから銃は使うな、丁寧に扱えよ」
……ヘ、ヘルメット団!?
全身を冷や汗が流れ落ちる。
逃げなきゃ――!
「ひっ……!」
踵を返して走り出そうとした瞬間、背後から腕をつかまれた。
鋼鉄のように硬い力が、わたしの体をあっさりと押さえ込む。
「お願い、離して……っ!」
必死に叫んでも、夜の街はあまりにも静かで。
もがけばもがくほど、腕や足を縛られていく。
胸にしまったオルゴールが、かすかに音を立てた。
まるで「まだ渡してないのに」って抗議してるみたいに。
「連れて行け」
無機質な声と共に、わたしの視界は黒い影に覆われていった。
セリカではなくれな子を誘拐する展開に変更しました。
最強のセコムがすぐに向かうので皆様しばらくお待ちください。
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