よう実に"俺"をぶっ込んでみただけのお話   作:信じたい嘘、効かないクスリ

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この物語はフィクションです。現実での出来事とは無関係ですのでご了承ください。
駄文ですが温かい目で見ていただけると光栄でございます。
誤字脱字は発見次第更新します。


"俺"というオリ主の作り方

 皆さんは二次創作品をご存知でしょうか?これを見ているという事はご存知に決まってるだろアホが、と言う言葉が今皆さんの頭の中をよぎった事を俺は知っています。

 

 俺も二次創作品が大好きです。原作には存在しないifストーリーや、他作品のキャラとのコラボレーション、時には自分だけのオリジナルキャラクターを登場させたりなど、二次創作品というコンテンツは多様な姿で我々のオタク心を満たしてくれるものです。死ぬ前は俺も二次創作品を嗜んでいました。

 

 登校中、通勤中、休日の昼間、休憩中など、暇を見つければ誰かが作った二次創作品を見てムフムフしていた俺は、とうとう自分でも二次創作品を作ってみたいと思いました。

 

 そこで利用したのがこのポータルサイト、『ハーメルン』です。様々な作品の二次創作品を、誰でも作る事ができるこのサイトで俺は自分の力でお気に入りの原作の二次創作品を作る事にしました。

 しかし二次創作品というのは中々そう簡単には作れません。ただ執筆して投稿するだけなら誰でも出来ます。しかしその過程には、あらゆる困難があります。例えば、原作をリスペクトせず、そのキャラクターの口調、仕草、性格その他諸々を改変して執筆してしまうと、読者から反感を買う事になります。

 執筆の際の改行の頻度、心内文の文字数や言葉遣い、風景描写の語彙力、物語展開の構成、世間的なモラルや宗教関連への配慮等々、執筆者というのはただ執筆するだけではなく、こういった読み手に寄り添う技術が求められるのです。

 

 俺は普段から小説を読んでいたので、正直言って執筆なんて余裕だと思っていました。しかしそれが甘い考えだったと、初投稿作品での感想欄で思い知らされました。

 

『○○○○の口調が変』

 

『この○○○のシーンこんなんだったっけ?』

 

『この子はこんな事言う子じゃない。原作を馬鹿にしてるのか?』

 

『読みづらい。もっと工夫してほしい』

 

 俺は思い知ったのです。二次創作品の世界は決して甘い世界ではないと。自分の描きたい作品を描く事は、自分の想像よりも遥かに至難の業であるという事を。

 実際今も、敬語を使って話していますが、一人称は『俺』になっています。こういった点でも読み手に読みづらいと思わせてしまう要因になってしまうのです。

 

 俺は悩みました。もう執筆なんてしなくてもいいんじゃないかとすら思いました。

 

 感想欄で叩かれ続け、俺のメンタルはもう崩壊寸前でした。ここで気づきましたが、俺はあまりメンタルが強くない人間だったそうで、感想欄に綴られている文字の列を見るだけで、心臓をギュッと鷲掴みされているかのような感覚に陥ります。

 なんとか仕事を続けてきましたが、ある日俺にも限界が訪れてしまいました。

 

 とある日の朝、いつものように朝の身支度を済ませて家を出て最寄駅に向かいます。通勤です。先程も申し上げました通り、通勤中は二次創作品を見るため、二次創作品投稿サイトを開きます。ログインしてマイページを開くと、そこには新しく届いた感想のお知らせが記載されていました。

 見る必要はありません。しかし俺はまだ希望を捨てていなかったのか、『面白かった』という感想である事を求めて感想欄をタップして昨晩届いた感想を開きます。

 

 〔まもなく〜2番線に、当駅始発、各駅停車、○○○行きがまいります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側でお待ちください〕

 

 聞き慣れたアナウンスが流れる。その後流れる英語のアナウンスも耳馴染みがある。俺が並ぶのはいつも10号車。何故なら目的の駅に降りた時に改札に向かう階段がすぐ近くにあるからだ。それに若い女子高生の集団がいつも乗っているから、という理由もある。

 

 しかし、今日だけはそんなくだらない理由で10号車に並んでいたわけではなかったようだ。無意識に並んだ10号車列。きっとこれは神様の采配であり

 

 ────俺が今日、自殺する事への伏線だったのかもしれない。

 

 

────────────────

 

 

 

***

 

 

────────────────

 

 後々知った事だが、どうやら俺は感想欄を開いた事で完全に希望を失い、溜まっていたストレスに脳を支配されて無意識に線路に落ちてしまったらしい。ちょうど電車が来てしまったので、結果的には人身事故、という形で俺は死んでしまったそうだ。

 

 桜の花が舞う道路、窓から吹き流れ込んでくる優しい春風、気温がちょうどいいのでバス車内は冷房や暖房は一切つけておらず、俺と運転手の沈黙の空間が広がる。これぞまさに、沈黙の春ってやつかな。え、全然違うって?そんな事分かってるよ。

 

 説明が遅れて申し訳ない。俺は今高校の入学式に向かっている最中で、学校に向かうバスに早く乗ってしまって暇を持て余している。先程電車との事故で死んでしまった、と俺は言った。それは間違いない事実だ。決して夢の中での話をしたわけではない。

 

 じゃあ何でお前は今高校の入学式に向かっているんだ?答えは簡単。俺は"転生"した。

 こんな事あり得ないと思っている人がほとんどだろうけど、これは紛れもない事実で、実際俺は転生した結果、幼稚園、小学校、中学校と人生をやり直し、これから青春ヒャッハーな高校人生もやり直そうとしているわけだ。

 

 もちろん転生したと自覚した頃は自分でも何が起こっているのか理解するのに時間が要したが、よくよく考えれば輪廻転生という言葉が存在している通りの事が起こっただけだなと思い、何故か今はそれで納得している。

 

 しかし不思議な点もいくつかある。それは前世の記憶が残っているという事と、俺が前世の顔そのまんまで生まれ変わっているという事と、明らかにこの世界が『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界であるという事だ。

 

 輪廻転生の理論でいえば前世の記憶が残っている事はおかしい事だと言える。この世の生命は循環して成り立っている理論であれば前世の記憶が残っている事はイレギュラーになるという事だ。

 

 そして前世の顔と同じ顔で生まれ変わっているという事もおかしな話だ。今の両親は前世の両親ではない。顔も違うし苗字も違う。だが、俺の顔は前世の顔と同じだ。まさしく人生をやり直している状況である。今世で前世の俺の両親が今世の俺を見たら死人が蘇ったとでも思うのだろうか。何だかややこしくなってきたのでこの話はこの辺にしておこう。

 

 そして最後に、この世界が『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界であるという事について。

 この事に気づいたのは俺が中学生の時だ。この時の俺は前世の記憶もあったおかげで超頭良い優等生だったので、いつも学年一位の成績をおさめていた。よう実の世界である事に気づいたのは最初の中間試験だ。

 なんか学年二位のところに見覚えのある名前があるなぁと思い、確認のためそいつのクラスを見に行くと、俺が今まで生きてきた三十数年間の中で見たことがないレベルのメインキャラクター感満載なストロベリーブロンドヘアーの美少女がいた。

 名前は一之瀬帆波。胸は中学生にしてはデカい。可愛い。そして確信した。これよう実の世界じゃん。

 

 一之瀬に若干申し訳ない気持ちを持ちつつ、学年一位の成績をキープして俺は『高度育成高等学校』に入学する事になった。

 

 俺は二次創作品が好きだ。結果的にそれが自殺の要因になってしまったが、今思えば、あんなクソ小説しか書けなかった俺が悪いのだ。この世にSNSという匿名性がある時点で心にもないコメントがつく事は防ぎようがない事であり、作者はそれを覚悟して投稿しなければならない。

 

 俺が前世の記憶を持ってよう実の世界に転生した。これはつまり、神様が俺の経験に基づいて二次創作品を描き直せと言っているという事ではないだろうか。

 

 もしもそうなら俺はこのイかれた学校に入学するしかない。そこで登場人物達と関わり、自分の物語を自分で作るしかない。今の俺は執筆者ではなく、読者でもない、この物語を構成する脚本の一部であり、この二次創作品の主人公なのだ。

 

創作させてもらうぜ。よう実さんよぉ

 

「何を創作するの?」

 

「……………………」

 

 しまった。どうやら心の声が漏れてしまっていたようだ。いやどうせ車内は俺と運転手の沈黙の春が続いているもんだと思っていたからブツブツ独り言で話していたっちゃ話してはいたんだが、っていうか人乗ってきてたのかよ気づかなかったって。

 

 落ち着け、慌てすぎて日本語がおかしくなってるぞ俺。一旦深呼吸しよう。もちろん、心の中でね。スーッ……はぁ。

 

「え、む、無視?」

 

「…………あっ……ッスー……ウス」

 

「あ、う、うん……」

 

 とりあえず会釈。コミュ障の俺はこれが精一杯なのだよ。っていうかコイツ一之瀬じゃん。中学以来だから久しぶりって感じは全くしないけど、多分俺の事なんて知らないだろうなー。三年間一緒の学校でもクラス一緒になった事ないし、そもそも俺コミュ障すぎて一之瀬に話しかけた事ないし。

 

 今思えば一之瀬万引き事件の時に話しかけて救ってあげて、俺に依存させるのアリだったかもなー。そしたら綾小路のリトル小路が一之瀬の万引き万万に入る前に俺がワンチャン…………いや何言ってんだ俺。コミュ障陰キャの俺がそんな事できるわけないだろ。

 

 っていうか気まず。早く他の人乗ってきてくれないかなー。運転手と俺だけなら居心地悪くなかったんだけど、そこに一之瀬が加わって起こる沈黙の春は居心地悪いって。厳しいって。俺弱いって。

 

 一之瀬どこの席に座ったんだろ。鞄開けるフリして後ろ振り返って見てみるか。

 

 俺は自身の腿の上に乗せていた鞄を横に置いて開けて中身を漁るフリをして後ろを見る。

 なるほど、俺の座ってる席の対角線上にある席に座ったのね。ワンチャンすぐ後ろに座ってくれてるかなーって思ったけど、まぁそんな事ないよね。別にいいけどさ。うん、いやほんとに別に気にしてないけどさ。

 

「ふあ〜っ…………はぁ〜……」

 

「………………」

 

「………………」

 

「………………」

 

「………………」

 

 きっつ。急に欠伸したと思ったら胸デカすぎてガン見しちゃったし。しかもガン見してたの気づかれたし。きっつってかマジで気まずっ。

 

「…………」

 

「…………あ〜…………ねぇ?」

 

「…………」

 

 対角線上の席にいる一之瀬が俺に話しかけてきた。流石に向かうもこの気まずい雰囲気に耐えれなくなってきたのかもしれない。だとしたらここは話しかけないのがベストな判断だぞ一之瀬よ。これ以上俺の神域に足を踏み入れるような真似をするのであれば、今ここまでお前の弱みをガチホールドしている事をバラすぞオラ。

 

「…………ねぇ、おーい?」

 

「…………」

 

「あの、同じ学校だよね?」

 

「…………あ、はい」

 

 返事してしまったー。中学三年間一緒だった女子との初会話が高校の入学式に向かうバスの車内ってどゆことー。ここまできたら会話するしかないな。

 

「よかったー!同じ制服なのに無視されたから、赤の他人だったらどうしようかと思ったよ〜」

 

「あ、赤の他人か。確かに赤の制服だけどね。は、ハハッ」

 

「え?」

 

「ごめんなさい」

 

 はっず。距離縮めようとして言ってみたジョークが通じなかった時ってこんなに恥ずかしいものなんだ。赤の他人ならぬ赤の制服、なんつって。恥ずかしすぎて俺の顔も赤い、なんつって。しにてぇ。

 

「にゃ、にゃはは。も〜急に何言うの〜?」

 

「あ、あはは、っすね〜」

 

「ねぇ知ってる?この学校さ、全寮制でカラオケとか映画館とか飲食店とかお洋服屋さんとか、色々な施設が完備されてるらしいよ!」

 

「へ〜、そうなんすね〜」

 

「うんうん、楽しみだよね〜!」

 

「っすね〜」

 

 さっきから人体の部位しか言えないの悲しすぎる。会社のスーツさえ着れば社会人モード入って他人とも会話できるんだけど、高校の制服だとどうしても高校時代の陰キャ俺さんが出てきてしまう。悲しいな。

 

「それとさ〜、っと。いっぱい人乗ってきたから、また後で話そうね!」

 

「あ、はい」

 

 確かに急に人がたくさん乗ってきたな。どうやら美少女との会話のキャッチボールもここまでのようだ。キャッチボールというより打者がいない一方的なピッチングという方が正しいかもしれないが。

 

 たくさん人が乗ってきて、その中には何度も見たことがある顔がチラホラと見受けられる。改めてこの世界が『よう実』の世界である事を再認識したが、先程の調子で高校人生を謳歌できるか心配になってきた。

 

 陰キャすぎる自分を殴りたい気持ちでいっぱいだ。二次創作品が作れるレベルで経験を積むためには、原作知識使って無双して陽キャになるしかなさそうだな。

 

 

 

 




ちなみに主人公の名前はまだ決まってないので何かかっこいい名前を感想欄にて募集します。刺さる名前がなかったら自分で考えたやつにします。

次回作は評価次第で決めます
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