因習村の姫に転生したんだが   作:TSしか書かないマン

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第2話 能力

 あれから3日間、眠り続けていたらしい。

 獣道で振り返り左目を失った。その時に出血で気を失ってしまったらしく、眠り続けた。

 そして今日、こうして目を覚ました。

 

「こ、こは?」

 

 布団の上で意識が戻った白夜。

 そして、そんな白夜の姿をみて、一瞬困惑し、すぐに感情がこみあげてきたのか泣きじゃくる使用人。

 

「うぇぇぇぇん!!よかったぁぁぁぁぁ!!!死んじゃったかと思いましたぁぁぁぁ」

 

 しばらく放心していたが、最後に見たあの恐ろしい光景から、おおよそ今の状況を理解する。が、戸惑う。

 こういう時はどうすればいいのだろうか。

 『わたしは大丈夫』の一言でも投げかけてやればいいのだろうか。

 しかし、なんかそれは恥ずかしい気がする。

 

 結局、使用人の頭をなでてやるだけに済ます。 

 するとなんとなく安心したのか、『すいません、取り乱してしまいました』と平静に戻った。

 それから、彼女はいくらか白夜の世話や他愛もない話をした後、すぐに戻りますと言い残して部屋を出て行った。

 先ほどの取り乱し具合からは信じられないほど落ち着いた背中であった。賢者タイムだろうか。

 

 一人部屋に取り残された白夜は、深呼吸し、リラックス。

 上体を起こし、辺りを見渡す。

 

(左側が、みえない……)

 

 やはり、視界はおかしかった。

 右側は正確に今まで通り見えるのだが、左側は完全に闇だ。

 

 心に、自分への許せなさがこみあげてくる。

 どうして今までこの世界が、元居た世界と同じだと思っていたのだろうか。

 愚か極まりない。

 転生という超自然的な体験をしておきながら、どうして幽霊がいないと思っていたのだろうか。

 いや、思い込んでしまっていた。 

 

 因習村の連中は、神や幽霊なんていう存在を信じ込んでいて、それだけでなく自分を姫として束縛し続けた。だから、腹が立っていた。 

 故に、連中と同じにはなりたくない、そう思っていたのだ。

 だが、それが間違いだった。

 完全に、完璧に、間違いだった。

 

(……ああ、クソ)

 

 イライラする。

 間違っていたのはむしろ自分だ。

 この左目は、そんな自分への罰。

 慢心していた自分への罰なのだ。

 

 

「……この姿は、見せられないな」

 

 たぶん今は酷い顔をしている。

 っていうか、絶対してる。

 

 そろそろ彼女(使用人)も帰って来るだろう。

 落ち着かなければ。

 わたしはこの家の姫で、糸月白夜という人間なのだから前世のあれこれを持ち込んだ感情を見せることはご法度。悟られちゃいけない。

 深呼吸する。

 そして、いつもの表情に戻した。

 

 

▽▲▽▲

 

 あれから5日が経過した。

 いろいろな事があったが、今はもう既に日常を送っていていつもの儀式だってしている。

 

 ちなみに失った左目についてだが、包帯を巻いて隠している。

 もしも前世でこれをやったら痛い中二ファッションなのだが、ところがどっこい今世では美少女。

 なぜだか包帯まで似合ってしまうのだ。

 白夜自身、結構包帯ファッションというのは気に入っていた。

 ただし、一昨日包帯を巻いたまま風呂に入り、ぐっちゃぐちゃにするという事件があったのはここだけの秘密だったりする。

 

 ……ここまでが、これまであった日常。

 それともう一つ、非日常な出来事があった。

 

 というのも、どういう訳か幽霊が見えるようになったのだ。

 最初はぼんやりと、ゆらゆらしたものでよく見えなかったのだが、次第に輪郭を結び始め、実態として見えるように。

 

 ついにこの前、使用人の肩にこぶし大の変な芋虫がのっかっている所が見えてしまったのだ。

 しかも本人は気づいていない様子。

 

(これ……わたしだけが見えてるのか?)

 

 試しに本人に聞いてみたのだが、やはり何も見えていないとの事。

 つまるところ、白夜だけがその芋虫が見えているのだ。

 見えない、ということはつまり幽霊。

 

 ドキリ、と心臓の鼓動が早くなる。

 

 

 どういう訳か、自分だけ幽霊を見れるようになっていたのだ。

 

 

▽▲▽▲

 

 さらにそれから3日。

 幽霊について分かってきたことがある。

 

 先ず、幽霊が見えるというのは特殊な事らしい。

 出来るだけ幽霊が見えるという事実は伏せて、使用人たちに探りを入れてみたのだが誰一人として見えていないっぽい。

 どうして、いきなり一人だけ見えるようになったのかは分からないがとりあえず事実として受け入れることにした。

 

 それから、もう一つ。

 幽霊を殺すと、力が強くなるということ。

 

 それに気づいたのは、とある実験をしている時だった。

 

(あの芋虫は肩の上に乗ってたよな。じゃあ、潰したら肩こりが治るとかあるのか?)

 

 そんな疑問を抱いた白夜は、試しに使用人の肩に乗っかている芋虫を、”肩マッサージ”を口実に潰してみたのだ。

 こぶし大ほどで中々大きく握りこむのに苦労するが、いざ力を入れてみると柔らかく、簡単にグジュリと潰れてしまった。

 

 その後使用人に訊いてみたところ、曰く、肩が軽くなったとかなんだとか。

 やはり肩の上に乗っている幽霊を潰したら方が軽くなるらしい。

 

(ハッ、ありがちなテンプレ幽霊だな)

 

 内心、苦笑を浮かべつつ、もう一つの変化に気づく。

 というのも、使用人の肩だけでなくこちらの肩まで軽くなったのだ。

 

(どういうことだ?肩の上に乗っている幽霊を殺したら、呪われている側だけじゃなくて殺した側も軽くなるのだろうか?)

 

 しかし、何度も同じような事を繰り返してみると、それは間違いだという事に気づく。

 肩だけでなく、体全体の能力が向上していたのだ。

 

 走りはより早く、ジャンプはより高く、パンチはより強く。

 どういう訳か幽霊を殺せば、こちらが強くなるのだ。

 

 

 

 どうやら、左目を失った代わりに、別の能力を授かったらしい。

 しかも普通の能力じゃない。霊が見える力と、霊を殺せば力が手に入る能力。

 

 

 正直に言えば、ワクワクしてしまっていた。

 なにせこんな中二心くすぐられる能力が現実にあるのだ。

 心がうずいてしまうのも仕方がなかった。




二話と三話は、統合しました。話が繋がってるんで。
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