エルフとトロール 〜三流魔法使いのトロール、メスガキエルフの下僕になる〜   作:ルブク

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イメージとしてはゲーム最初のチュートリアル的な感じで。
まずはライトに、ゆくゆくはディープな話を書ければなと思います。

第一章の人物紹介はこちら
https://syosetu.org/novel/385833/1.html


第二話 流れゆくは疾風怒濤

――ざくり。

 

「ほらほらどうしたの? 離れてるし魔法で狙い放題だよ?」

 

 両腕を大きく広げ、土くれの道を踏み締めながら歩み寄るエルフの少女。人懐こそうな微笑みは友好的の一言に尽きる。

 右手に細身の片手剣を握り締めている以外は。

 

 ――ざくり。

 

「ああそれとも、小娘相手じゃアレって感じ?」

 

 彼女の額の紅玉が妖しく輝く。ヒトの血を吸ったかのような鮮赤に、底のしれない圧力をトロールの青年は覚える。

 

「もう少し……平和的に解決できないか?」

 

 杖を両手で構えたまま、トロールの青年が答えた。額を伝って流れ落ちる汗の筋が一条、また一条と増えていく。

 

「そういうのはお互い対等な立場の時に言うもんだよ。私は狩る側、キミ狩られる側。違う?」

「言いがかりにも程があるだろう」

 

 むしろ偶然通りがかっただけの貰い事故である。まさか敵意はおろか殺意を向けられるなど、一体誰が想像できようか。

 相手は既に剣を抜いて臨戦態勢を整えている。可能ならば事を荒立てずに収めたいが、最早望み薄だろう。

 

「ま、運が悪かったって感じで」

「他人事のように……」

 

 足を止めての奇妙な腹の探りあいが続く。和やかなものとはとても言えず、隙でも見せようものなら刃が飛んでくる緊迫感。

 トロールは魔法の杖を片手ずつ握り直す。山間の長閑な丘陵。その大地に転がるは死んで間もない男女二名。三人目に入るかどうかの瀬戸際であり、視線を逸らすことなくエルフをじっと睨む。

 

「他人だし。ところでさぁ――」

 

 ふふっとエルフが歯を見せて顔を綻ばせた。

 

「もうい〜い? 私も暇じゃないから」

 

 にかっと笑う口に全く笑っていない碧眼が乗る。見逃してくれるつもりは毛頭ないようだった。

 エルフは近すぎず遠すぎず、絶妙な距離感を保っている。トロールを舐め腐っているような言動だが、その実は相手の出方を見極めようと目を輝かせていた。挑発に乗って迂闊に手を出せば、たちまちに懐に潜り込まれることだろう。

 

「お〜いっ。聞いてる〜?」

 

 トロールは浅く、早くなっていた呼吸を元に戻す。

 

 ――まともにやりあったところで太刀打ちできん。

 

 巨体故に動きが緩慢となりやすいトロールである。はしこいエルフに接近されれば一巻の終わりというのは明白。

 魔法が拙いことも見透かされている。隠し球を警戒しているのか、すぐには仕掛けてこない。とはいえ絶体絶命の状況に変わりはないが。

 

「仕方ないなぁ」

 

 痺れを切らしたのか、はたまた手っ取り早く終わらせようとしたのか。エルフが両足を前後に広げ、ゆっくり腰を落とす。上目遣いの視線が鋭くトロールを射竦める。

 

 狙うならば――。

 

 トロールの体の奥底より透明な魔力の流れが湧き起こる。それは手練の者からすれば、取るに足らない小川のせせらぎだろう。しかしか細くとも一筋の魔力であり、腕から指へ、そして杖にと集まってゆく。

 精神を乱さず、意識を明瞭に。狙うはただ刹那。

 

「すぐに終わらせるから――」

 

 地面を踏み込むエルフの足がわずかに動く。

 

「ねっ!」『空弾(くうだん)!』

 

 杖から迸る空気の塊。圧縮された衝撃弾が唸りを上げてエルフに襲いかかった。

 動こうとした瞬間を狙ってのカウンター。有効打を与えられるとすれば、最早それのみ。いくら敏捷な彼女といえど、動いた瞬間では回避のしようもない。まさに一縷(いちる)の望みに賭けたのだ。

 

 ザッ!

 

 しかしエルフは前ではなく横に跳んだ。空間を歪ませながら進む衝撃弾は、(かす)りもせずにまったくの見当違いの方向へ。

 

『――空弾!!』

 

 もう一度。

 弧を描きながら疾走するエルフに向けて放つ。

 

 ズガァン!

 

 衝撃弾が大地を(えぐ)り、土くれを吹き飛ばす。エルフはというと、着弾の前に切り返して方向を変えていた。動きが完全に読まれている。

 エルフの双眸は常にトロールに向けられている。そこには(おご)りも殺意も何もなく、ただただ相手の一挙手一投足を読み取ろうとするのみ。その様相は狩りをする猛獣のごとく。

 彼女に串刺しにされた自らの姿が思い浮かび、トロールの背筋に悪寒が走る。ものの数秒もすれば、それは現実となるに違いないだろう。

 

(何か手は――)

 

 普通に魔法を放っても避けられる。かといって何もしなければ距離を詰められてしまう。少なくとも、動きを止めさせなければ文字通り手も足も出ない。

 脳裏で何通りもの方法を思考するトロール。しかしどれも非現実的であり、行き着く先は自身の死。様々なイメージが次から次へと変わる中、ただ一つ可能性の灯りがわずかに見えるものがあった。

 

(――やってみなければ分からん)

 

 それは蝋燭よりもか細い、消えかけの種火のようなもの。だが、その火はまだ消えていない。勢いよく燃え上がる篝火(かがりび)となるか、ただの燃えカスとなるか。

 最早躊躇している暇はない。トロールは杖の先を足元の地面に向けた。

 

『散弾!』

 

 無数に放たれる粒状(りゅうじょう)の圧縮弾。

 地面を抉り取ると共に空気が弾けて、その勢いで土煙が舞い上がる。二射、三射と繰り返すと周囲がたちまちに黄土色に覆われた。

 

「悪いが逃げさせてもらう!」

 

 トロールは声を上げる。

 そして尖った耳をそばだて、エルフの反応を待つ。

 

「え〜? これから良いトコだったのに〜」

 

 土煙の向こうから聞こえる、あからさまに落胆したエルフの声。

 

(乗ってくれたか!)

 

 トロールは奥歯を噛み締めその身を屈める。

 逃げるのはただの方便。まともに逃げたところですぐに追いつかれるのが関の山である。ならば、エルフが足を止めた隙を狙って打って出るのみ。

 

「意外にコスいことするんだねぇ」

 

 ケリを付けるとしたら土煙が晴れるまで。幸いなことに、声からエルフがいる方向はある程度見当がつけられる。

 完全に打ち倒せずとも、多少なりとも手傷を負わせることができれば。打ち所が悪ければ命に至るかもしれないが……。

 

(――悪く思わないでくれ)

 

 トロールは右肩を前に、腰を深く落とした。杖は妨げにならないよう両手でしっかりと握り締める。

 一つ、二つと頭の中で数えた。全身の筋肉が猛々しく隆起した次の瞬間、弾けんばかりの勢いで飛び出す。全身に土埃を(まと)いながら、山肌を転がり落ちる巨岩のごとく。

 拓けた視界にトロールは目を凝らす。立ち向かうべきエルフは何処かと――。

 

(いない!?)

 

 目の前には草の絨毯(じゅうたん)が広がり、その向こうには豊かに茂る木々が立ち並ぶばかり。あのエルフの姿は影も形もなかった。

 よもや勘付かれていたか。体当たりの勢いを殺して立ち止まり、矢継ぎ早に周りに目をやる。彼女は一体どこへ。

 

『硬化きょ――』

 

 いずれにせよ次の一手を。トロールは新たに魔法を発動させようとした。

 今この瞬間にも恐らくどこかで目を輝かせながら見ているはず。どう出てくるか予想もつかないが、少なくとも棒立ちでいるよりかは幾分マシである。

 

 しかし。

 

「ハイそこまで」

 

 背中の左後ろ、法衣越しに鋭利なモノを押し付けられる。

 

「動かないでね。トロールでもこっからなら一突きだから――とりあえず杖は地面に置いてもらおっか」

 

 トロールは言われるがままに杖を手放した。がらんがらんと地面を転がってゆくのを名残惜しく眺める。

 

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 剣を突きつけられている場所はおおよそ左の脇腹から斜め上。そのまままっすぐ刺し通せば心臓にも届くだろう。

 

「キミ度胸あるね。逃げても良かったのに」

「……どうするつもりだ」

「とりあえず質問に答えてくれる?」

「……分かった」

 

 生殺与奪の権を握るのはエルフ。ここは大人しく言うことに従う他なかった。相討ち覚悟でなら一矢報えるだろうが、相手の位置が正しく確認できない以上分が悪い賭けだった。

 

「向こうに転がってるあの二人。何か関係ある?」

「……いや、ない。道を聞いただけだ」

 

 トロールの息が一瞬詰まった。衣服越しに、剣の切っ先が体に食い込んだためだった。

 

「それは確か?」

「確かだ」

 

 エルフはしばしの間沈黙する。下手に動けないトロールは後ろの状況が分からず、せめてもと視線を後ろに向けようと四苦八苦を繰り返す。

 

「――うん分かった。私が聞いてるのもヒトの男女二人組だし、それとも合ってる」

 

 脇腹への剣の感覚が消え、小さい金属音が後ろで鳴った。

 

「驚かせちゃってごめんね。もうこっち向いていいよ」

 

 その言葉を信じていいのかどうか。ひしひしと感じていた圧がなくなったのは事実である。

 トロールは杖を拾いつつ、ゆっくりと振り返った。件のエルフは剣を納めており、少なくとも敵対関係ではないように見える。

 

「あの連中、ここら辺を根城にしてる野盗崩れでさ。退治してくれって頼まれてたんだよね〜」

「待ってくれ。あの二人が? とてもそうには見えなかったが……」

「女が体調悪いと見せて油断させて、殺れそうな相手ならコレ(・・)

 

 エルフは親指で自らの喉首を掻き切る仕草をした。

 

「んで、金目の物を頂戴って流れ。ちなみに金持ってなさそうならそのまま素通りさせるんだって」

 

 二人共、至って素朴な若者だった。エルフが言うような血塗れの所業を繰り返しているとはまるで想像がつかない。

 

「だが、私には何も……」

「トロールと真正面からやりあう馬鹿はいないでしょ? それに貧乏そうじゃんキミ」

 

 トロールは会った瞬間のことを思い返す。確かに一瞬、たじろいだかのようには見えたが。

 

(にわか)には信じられん」

 

 トロールは全身の土埃をはたき落とし、地面に転がる亡骸(なきがら)に改めて歩み寄った。血の気を失い、すっかり冷たくなった二人の側で膝をつく。

 

(これを狙ってやったと……)

 

 背筋に寒いものが走る。

 男は背骨を紙一重で避け血管と気管のみ斬り裂かれ、女は刃を寝かせ体をも貫通する一突き。どちらも致命傷の一撃であり、間違いなく手慣れている形跡だった。

 

「ちょっとどいてくれる? やることまだ残ってるから」

「あ、ああ……」

 

 言われるがままエルフにその場を譲る。彼女の片手には小振りのナイフが握られていた。

 

「じゃ。証拠を、と……めんどいなぁ」

 

 ぶつくさ不満そうに呟く様は悪戯を言い咎められた子供そのものだった。呑気な口調とは裏腹に男女の片耳を切り取ってゆくのである。

 それは草を刈るかのように、ごく自然な手つきで。切り取った耳は布の端切れで包み、腰のポシェットへ適当に収めた。

 

「さて、終わり終わりぃ」

 

 ナイフを収め、腰を後ろに反らして大きく伸びる。

 

「――そういえば、キミ。何で引き返してきたの? 迷った?」

「麓にある街に行くつもりだったのだが……」

「ああ、それなら道違うよ。私も依頼主に報告しないといけないから――丁度いいや、案内したげる」

 

 渡りに船と言いたいところだが、少し前に襲いかかってきた人物である。結局は何もなかったとはいえ、安易に信用していいものかどうか。

 

「お詫びにさ、街に着いたら宿を手配してあげるよ。それでどう?」

 

 返答を渋っているとエルフから再びの提案。

 初めて訪れる地での宿探しは難儀することが多い。屋根のある場所ですぐに落ち着くことができるのであれば、不安な部分は多いが背に腹は代えられなかった。

 

「……分かった。道案内をお願いしたい」

「おっけー。私はリュミエ。キミは?」

「ヴィンセント」

「ヴィンセント、ね。じゃあこっちだから着いといで」

 

 トロールことヴィンセントに背を向け、スタスタと歩いてゆくエルフの少女、リュミエ。天真爛漫さでいっぱいの彼女が、数刻前には容赦なく他者を殺害している。

 同一人物とはまるで思えない。警戒心がどうしても拭えず、ヴィンセントは少し間隔を取って後を追っていった。

 

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 ヴィンセントはリュミエの案内の元、尾根伝いに山を抜け、下りの山路に差し掛かっていた。彼女の言によればもう少し歩けば街が遠巻きに見えてくるという。

 

「……」

「……」

 

 会話はほとんどなく、聴こえるのは大地を踏み締める音、木々の葉擦れ、小鳥の(さえず)り。一見するといかにも可愛らしいエルフの少女に道案内をされる、全くもって羨ましいトロールである。

 実のところはリュミエに危うく殺されかけ、その上でやむを得ない事情で同行しているのだ。その状況では会話など弾む訳もなく。

 ひとまずは街に着きさえすればいい。宿を手配してもらい、そこでめでたく手切れという形に。

 

「――ねえヴィンセント」

 

 やにわにリュミエが足を止めて振り返った。

 

「やっぱ気になることがあるから聞いていい?」

「……答えられることなら」

 

 丸みを帯びた切れ長の瞳が好奇心に輝いている。爛漫(らんまん)な子供のソレであり、これが彼女の本質なのかもしれない。良くも悪くも純真無垢――身構えているヴィンセントの方が気疲れしかねなかった。

 

「――キミ、魔法使いになる前は何してたの? 何でなろうと思ったの?」

「何故そんなことを」

「死体を見てもそこまで驚いてなかったというか、傷痕調べてたよね? 何か慣れてるっぽかったし、魔法の才能ないの自覚してるっぽいし」

 

 リュミエの言葉に悪意は感じられない。罵詈雑言を浴びせるでもなく、悪意を塗りたくる訳でもなく、ごくごく単純な問いかけだった。それが逆にヴィンセントの心を大きく抉るのであるが。

 

「わざわざ向いてもない魔法使いになってるのが不思議でさ。相手によっちゃ普通に殺されちゃうよ?」

「……すまないが、その質問には答えられない」

 

 ヴィンセントは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。

 

「そっか、なら別にいいや。ごめんね変なこと聞いて」

 

 特に執着する素振りも見せず、くるりと向き直ってリュミエは再び歩き始めた。右に左に無邪気に揺れるポニーテールを見ながら、一体彼女は何者なのかと小さく唸る。

 鷹揚(おうよう)でありながら目聡く、更にその上で持つ残酷さ。ヴィンセントの作戦を看破し、死体の傷痕を調べていたことを感づく彗眼(すいがん)を持つ。また見た目相応のあどけなさもあるという。

 複数人が立ち代わりで演じているとさえ錯覚してしまうほどだった。

 

「もう少し行くとちっちゃい湖に出るよ。そこでひと休憩しようか」

「構わないが……街までは後どの程度かかる?」

「半分は過ぎてんじゃないかな? 残り三分の一って感じ」

 

 脇目も振らずに邁進(まいしん)した甲斐もあり、道中は至って順調だった。道を確認しながら進んでいたのが馬鹿らしく思えるほどに。

 更にしばらく歩くと、漂う土や草木の薫りの中に、かすかにに水の雰囲気が感じられた。何だかんだで歩き通しであるため、喉の強い渇きを覚える。

 リュミエの先導で更に山路を進む。やがて木々の間から満々と水を湛える湖が覗き見えた。心なしか足取りも軽くなる。

 

「よーし、じゃあきゅうけ……!」

 

 さていよいよ、という所だった。何故か湖の手前で、リュミエが片手を挙げながら急に足を止めたのである。

 

「――ちょっと静かに」

「一体どうしたと……」

 

 押し黙ったまま、彼女は湖畔を指し示した。その指の向こうには灰色の巨大な岩石が一つ転がっている。

 

「あれは……岩?」

 

 ざっと眺めた限り、てっぺんが尖ってゴツゴツした岩のようにも。少し場違いさも感じられたが、しばし様子を窺っていると急にもそもそ動き出した。

 

「動いた……!?」

「アレね、猪。多分」

 

 目を凝らすと、巨岩に短くも太く逞しい四肢が付属していた。そして岩肌に見えていたのは艶のある鈍色(にびいろ)の毛皮。

 信じられないほどの巨大な猪が、悠々と湖の水を飲んでいたのである。

 

「あそこまで大きい猪が……」

「たまにいるんだよ。ひょんなことで魔力取り込んじゃって巨大化するの。アレはもう魔物って呼んでもいいね」

「――まさか」

 

 猪の魔物は水を飲むため、水面に突っ込んでいた顔を上げた。そして鼻をひくつかせながら、そそり立つ牙を誇示するかのように周囲を伺う。

 どうやらまだ、エルフとトロール二人組の存在は関知していない模様だった。

 

「……ということで。先客さんの貸し切りみたいだから」

 

 舌を覗かせながら大げさに肩を竦めてみせるリュミエ。無言の目配せを受け、ヴィンセントも押し黙ったまま頷いた。

 触らぬ神に祟りなし。あのような魔物を二人で、大した得物もない状態で仕留めるのは困難を極める。ましてや襲った側と襲われた側という、良好とはとても言えない間柄。(はな)から不可能にも等しかった。

 

 びゅう――。

 

 しかし運命の悪戯は非情なもの。

 突如、巨木の後ろで控える二人の背後から一陣の風が駆け抜けていった。見目麗しきエルフと粗雑なトロール、両名の匂いが風に乗って猪の魔物に届く。

 

「あ〜ぁ……」

 

 リュミエが忌々しく吐き捨てたのと同時に、魔物のひくつく鼻の動きがピタリと止まる。やおらに体の向きを変え、正面を二人に向ける。

 爛々と輝く目は紅蓮の色。その上、第三の眼が額で睨みを利かせている。

 

 ゴアアアアアァッ!

 

 咆哮一閃、望まぬ闖入(ちんにゅう)者に明確な敵意を向ける魔物。ギョロリと第三の眼が大きく見開かれた。前脚の重厚な蹄で大地を激しく抉り、不快さを露わにしている。

 

【挿絵表示】

 

「――おあとがよろしいようで……」

 

 地獄の底から響くような、小柄な体躯に似ても似つかない低い声。ありったけの顰めっ面で、リュミエが吐き捨てるように一人ごちたのだった。

 




次話はチュートリアルのボス戦的な話。
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