「ふむ、合格したか」
家に帰り食事をとって、テレビで温泉旅館特集を見ていると合格通知が届いた。
これ不合格だとそもそも通知が届かないらしいのでその時点で不合格という一日ドキドキして待っていないといけないという心臓に悪いものらしい。
一般的にはだが。
私は、まあ合格してるだろうと思っていたし、そもそも長生きしているので今更この程度でドキドキしない。
というか、私の愛馬が三冠取れるかどうかで緊張していた時を超えるドキドキが無いせいで大抵のことでは動じれない。
日本からの遠征でアメリカ三冠と欧州三冠の時を超えるドキドキって無いよ本当。
ん? 変な夢を見たのは緊張からだって? そんなこともあったな。
『流石兄さんだね。現役一発合格。俺も二年後そっちでトレーナーになるから待っててよ!』
「ああ、お前飛び級でもうトレーナーだもんな。才能あり過ぎて兄さんお前が色んな意味で怖いよ」
弟はアメリカに留学しており、向こうで飛び級して半年でトレーナー免許を取得した。
前の世界では同じ大学だったがこの世界では私と早く競い合いたいという理由で向こうに留学して飛び級したらしい。
我が弟ながら才能に溢れている。
既に向こうでサブトレーナーとしてウマ娘の面倒を見ており自分の担当の子を二歳G1で勝たせているらしい、しかもBC。
いやこの世界では二歳じゃないけど。
「兄さんはお前ほど才能は無いから期待しすぎてガッカリしないで欲しいな」
『しないよ! どんな兄さんでも俺の自慢の兄さんさ!』
「相変わらず良い弟で兄さん泣きそうだよ」
しかし家族と言っても本来の世界でもこの世界でも異常に好感度の高い弟である。
本来の世界では弟の会社に副社長として誘われたし、そこまで評価されるとむず痒いので断ったが彼の何がそこまで駆り立てるのであろうか。
不思議なものだ。
「まあこっちもほどほどに頑張るさ。そっちも担当している子に勝利の栄冠をプレゼントしてあげなさい」
『勿論だよ。目指すは三冠! ビッグレッドの再来さ!』
「セクレタリアトとは大きく出たもんだ。そういえばこちらも勉学で忙しくてよく調べてなかったんだが担当の子の名前どんな名前なんだ?」
そう聞くと、弟は知らなかったのかと意外そうな声音で言う。
『兄さんにしては勉強不足だね』
「流石に海外にまで目を向ける時間は無かったよ」
『それなら仕方ないか、フリンスキーって名前だよ。将来の三冠ウマ娘さ』
「………………………グハッ」
弟の口から出てきた名前は俺にダメージを与えた。
フリンスキー、ウィニングポストをやっていた時になんかそれっぽいという理由で適当につけた名前だ。
過去の自分が自分を刺しに来た気分だ。
しかもフリンスキーはアメリカで三冠どころかG1を20勝以上上げている。
サウジドバイなんて何連覇したことやら。
この世界ではどうなるか分からないが、正直三冠くらいは平気で取ってきそうである。
「そ、そうか、お前がそこまで言うなら相当なんだろうな。結果を日本で楽しみにしてるよ」
『ああ! もう世代最強、いや歴代最高の風格を備えているフリンスキーなら兄さんにいい報告できると確信してる! それじゃあ長電話しちゃったしもう切るね! 国際電話、電話代やばいし!』
「ああ、たぶん請求書でお前は顔を真っ青にすると思う」
『だろうね! じゃ! 頑張ってね!』
そう言って電話が切れた。
インターネットの普及しまくっていた時代ってのは凄いんだなと思いつつ、フリンスキーのことを考え目を瞑る。
(フリンスキーがいるということはフタマタスキーやサイコンスキー、シロウトスキーもいるかもしれないな、ちょっと本気で申し訳ない気持ちになってきた)
フリンスキーで牝馬の系統を確立させていたのでフリンスキー一族がいるのかもしれないと思うと本気で申し訳ないと思ったがゲームの名前にそんな本気で名前考えるの最初だけだろ! と思い自分の罪悪感を無理やり打ち消す。
まあ最初も同僚から語れる同士が欲しいと無理矢理押し付けられた名作エロゲのキャラから取った名前だったから本気で考えていたかは怪しいが。
「可哀想な名前の子が名前のせいで担当トレーナー見つけられなかったら俺が引き取るか、実力主義らしいトレセンなら気にしないだろうけど流石にな」
大概変な名前の馬って名馬だしな私のウィニングポスト。
とりあえず私のカルマをこの世界に感じたよ。
合格通知より心が揺れた一日だった。