馬は好きだ   作:ははもり

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出会い

 今トレセン学園に私はいる。

 個人事業主みたいなものなので入社式は無かった。

 いやあったはあったが、どちらかというと一人一人面談があるのでちっこい学園長の秋川やよいが非常に短く、「歓迎! 鋭意努力! 期待する!」と短く伝え終わった。

 手短過ぎて皆唖然とした。

 私もその一人である。

 そして面談だ。

 新規のトレーナーは非常に数が少なく10人いないくらいだったので面談も直ぐに自分の番が来た。

 ドアをノックして入る、とかはなく扉は最初から開いており私の姿を見た段階で秋川やよい学園長は部屋に入って椅子に座りたまえと言ったので遠慮なく椅子に座ったテキパキと仕事を進めたい性格なのだろうか。

 学園長の直ぐ斜め後ろに緑の服を着た秘書がいるが、にこにこしているだけで特になにも言わない。

 ただのサポート要員なのだろう、とは思ったがこの際早く終わるならその方がいい。

 

 「歓迎! ようこそ我がトレセン学園へ!」

 

 「ありがとうございます」

 

 「うむ。さっそくだが、君はこの学園で成し遂げたい夢はあるか!」

 

 夢か、無いかな。

 高給取りでかつレースの賞金の一部を貰えるとのことだからな。

 親に恥ずかしくない職として選んでいるから夢という夢がない。

 トレーナー免許が取れた時点で目的は達成されている。

 競馬ということなら夢は幾らでもあったが、マラソンだからな。

 仕事だから手は抜かんが、まあ目標はあるか。

 

 「夢、というより目標ならありますね。夢は、必要ですか?」

 

 「問題なし! 君の心を燃やしてくれるなら夢であろうが目標であろうが些末! 言ってみてくれ!」

 

 「はい、私の目標は手始めに国内G1の制覇。無敗三冠、無敗古馬王道制覇、アメリカ芝ダート両無敗三冠、芝欧州無敗三冠です。最終目標は全G1の制覇ですね。まあ全G1ともなると四十年はかかりそうですが、そこを短縮できるかどうかは運ですね。巡り合いとしか言いようが無いので。まあ長く見積もって四十年はかかるのではないでしょうか?」

 

 前の世界ではどれくらいかかったかは細かく覚えてないが大体三十年と少しかかった気がするし、なので長く見積もって四十年であろう。

 調教指示は基本私が出していた前回だが今回は私自身が練習を監督する。

 色々なことに慣れるまで一年と見たらまあそんなものであろう。

 あと実績もないから有力バも集まり辛いだろう、実績を積むのに二年から三年かかると思えば本当にそれくらいかかるであろう。

 

 「…………唖然! 君は本気でそれを達成できると思っているのか!?」

 

 「できますね。 ローテーションを過密にし過ぎず大事にトレーニングを積ませればあとは海外に飛び回るだけです」

 

 日本のレースなんて基本ディープインパクトみたいなヤバい馬が出れば回避して海外に飛んでG1取りまくればいいだけだ。

 賞金が少ないから国内G1も取りつつになるけど全て取るつもりならそれくらいはしないといけない。

 海外も日本も避けるべき馬は頭に入ってるし、G1を総ざらいするだけならまあできるな。

 主役になるならトレーナーになった今有力馬もとい有力バにはツバをつけておくべきだな。

 ということは事務員にスカウトにサブトレーナーに医療班と外厩、雇うべき人材に作っておくべきもの、精密検査できる病院の確保とやることは山程あるな、確実に来る銘柄に投資はしているが今は財布が心許ない。

 ある程度未来が分かる私としては大金を稼いでおくに越したことはないが増資するためにも早く給料が欲しいものだ。

 遠征には金もかかるし、海外遠征するなら海外にも拠点は作るべきだ。

 人員も大量に雇用しなければならない。

 やはり金は必要だ。

 最低でも百億は貯めておきたい。

 前回の金をそのままもって来れれば話は早いのだがそんなことできないしな。

 トレーナーはほぼ個人事業主という形態なのは本当に助かるな、副業がしやすいし人員を雇用しやすい。

 金はそのまま自分の担当のパワーになる。

 うむ、やはり金は大事だ。

 

 「呆然! 凄まじい自信! 驚愕! …………うむ、期待している! 退室してよし!」

 

 「承知しました。とりあえず最初の一年はどこかのサブトレーナーとして実績を積むようにします。まずは仕事に慣れるべきですからね。それでは失礼します」

 

 そうして私は退室した。

 簡単な質問で良かったよ、早く面談が終わってくれるし。

 

 「まずはどこかのトレーナーに土下座でもなんでもしてサブトレーナーとして雇って貰わないと。牧場や調教とは勝手が違うだろうし。そもそも肉体スペックが違うだけのほぼ人間だからな。馬の走りを矯正するのとはわけが違う」

 

 やはり下積みは必要。

 ならば一番忙しいであろうトレーナーの元で忙殺されればいち早く経験を積めるだろう。

 知識はあればあるほど良いがされど経験に勝るものは無い。

 そこら辺は前の世界で馬と向き合いながらよくよく思ったものだ。

 ああ、先の面談で働くのに良さそうなトレーナーの名でも聞いておくべきだったな、勿体ないことをした。

 そんな後悔先に立たずと言うほどでもないがちょっとした未練を抱えながら歩いていると、運動場、というよりコースだなこれは。

 そこにはトレーナーが大挙として集まっていた。

 

 (なんだ?)

 

 コースを見るとそこにはある種皇帝の風格を備えたウマ娘がターフ走っている。

 中々速い。

 他のウマ娘を圧倒的にぶっちぎっており、もはや子供と大人のかけっことでも言わん限りの着差だ。

 私の馬のメイクデビューを思い出す。

 ふむ、将来的にはあのようなウマ娘も担当することになるだろうが。

 

 「今は早い。下積みを積んでからではないとな」

 

 私はそう判断し、担当することはないだろう将来有望なウマ娘をあとに、私はサブトレーナーとして雇って貰えるようなトレーナー探しを再開しようとし、ふと、なにかを感じてターフへと目をやると、先ほど圧倒的な走りをしていたウマ娘と目が合った。

 

 (まあそんなこともあるか)

 

 私は、特に気にせずその場を後にした。

 

 

 

           ★

 

 「君は………新人トレーナー君だね。 もしよければ私のトレーナーになって貰えないだろうか?」

 

 振り返ればそこには体操服を着た美女がいた。

 まあウマ娘は大体美女美少女なんだが。

 しかしいきなりだ。

 私の何が気に入ったのだろうか。

 先ほど目が合っただけだろう、君。

 

 「ああ、今年トレーナーになった新人だが……悪いね、私は下積みのためにサブトレーナーになろうと思っているんだ。いきなりトレーナーなんて重責を背負うには、指導の経験値が足りていない。他にあたったほうが君のためだよ」

 

 私は本心からそう提案をした。

 この子のためだと。

 ただ一瞥するだけで分かる。

 この子はG1を取るだろう。

 それだけの風格を今の時点で放っている。

 私は相馬眼に自信がある。 

 それは足の向きだとか毛艶だとか理論立てたものではなく、雰囲気として感じ取れるものだが、やはり自信がある。

 今確信したが、それはウマ娘にも発揮されるようだ。

 

 「君は恐らくG1を複数取るだろうが、それは適切なトレーナーがついてこそだ。私が見るに君は君だけの能力でG1くらい簡単に取れるだろうが、誰かに見てもらわなければどこかで怪我や挫折を味わう時が来るだろう。やはりベテランに見てもらうほうが良い」

 

 基本的に自分のことは自分がよく知っていると言うが、自分が一番よくわかっていない時だってある。

 怪我や限界などは、やる気があればあるほどに自分を麻痺させ、取り返しのつかない場所まで行ってしまうことがある。

 やはり第三者の指導があるべきだろう。

 それを新人なんていう碌な下積みの無いものより、よく学び経験したベテランや中堅クラスのトレーナーが指導する方が事故も少ないだろう。

 

 「うん、やはり私は君がいいんだ。一目見て君しかいないと私のウマソウルが囁いている。君が頷くまで、私は君を蛇のように追いかけ回すよ。それでも頷かないかい?」

 

 ウマソウル。

 トレーナーの勉強をしている時に出てきた単語ではあるがたしか『ウマ娘が別の世界の魂を受け継いで走る』みたいな不思議なものだったはず。

 なんでそうなるのかは世界の仕様としか言いようがないものだ。

 

 「はは、まるでストーカーじゃないか。私のどこが気に入ったのかは知らないが少し興味が湧いた。君、名前は?」

 

 うすうす……気づいてはいる……。

 私に縁がある元競走馬なのだろう。

 つまりウィニングポスト関係か前の世界関係。

 そしてこんなにも丁寧かつ強烈なキャラの馬を私は前の世界では所持していないので恐らくウィニングポストであろう。

 果たしてだれであろうか。

 

 「私はシンボリルドルフ、全てのウマ娘が幸せに暮らせる世を作りたいと思っている。しがないただの学生だ」

 

 違った。

 ウィニングポスト関係じゃなかった。

 意気揚々と果たして誰だろうか? なんてよく言えたものだ。

 なんか恥ずかしいな。

 というかシンボリルドルフとは大物が出てきたな。

 あのレースの結果も納得だ。

 前の世界ではライオンみたいな性格とは聞いていたが押しの強さはその辺りが反映されているのだろうか。

 いやしかし、なんで私とシンボリルドルフとの間にウマソウルなる共鳴のようなものがあるのか。

 前回も本来の世界も種付依頼出しまくってたくらいの縁しかないぞ。

 

 「なんだろうな。君には感謝の気持ちが沸き上がってくるんだ。本当に何故かわからないけど、ウマソウルがそう言っている」

 

 種付依頼だな。

 これ絶対にそれだ。

 名牝や美人系の牝馬でお願いしまくってたからだ。

 それで彼の息子が中々の成績上げてたからだな間違いない。

 下世話だなウマソウル。

 

 「なんでだろうね。君とならどんなG1でも勝てる気がするんだ」

 

 ウィニングポストだった。

 彼を使って百傑馬トップスリーまでいったからだ。

 下世話なのは私だった。

 高評価なのはありがたい。

 ありがたいが待ったをかけさせていただく。

 

 「まあ少し待て、私には経験が圧倒的に不足している。君を管理徹底できるほどの腕前はまだ育ってはいないと思うが」

 

 「なら一緒に成長すればいいさ。なに、そのせいで怪我をしても私が悪い、自己責任というやつだ。だが、私は思うんだ。君となら日本のウマ娘が届かなかった場所へ手が届く。そんな気がしている」

 

 「ふむ」

 

 まいったな。

 下積み時代を経ることが順当でかつ一番正しい道のりであろう。

 だが隗より始めよとも言う。

 これは正しく成長のチャンスであろう。

 だがこれほどの名馬……もとい名バを実験台のように扱っても良いのであろうか。

 

 「ふむ」

 

 彼女の顔を見る。

 真っ直ぐな瞳だ。

 強い意志を感じる。

 私は何気に押しに弱い男だ。

 いや、押しというより情と言うべきか。

 前の世界でも新人に父が病気だから勝つところを見せたいと頼み込まれ、うちの馬に乗せたジョッキーもいた。

 まあそんなことができたのも金に余裕があったからではあるが。

 しかし……幼少より貯めた金で投資は既に行なっているが、十全な設備を揃えることや海外遠征をするには少々心許ない資金でもある。

 これほどの逸材是非とも大暴れさせたいものだがな。

 

 「では、君には私の大きなデメリットを言おう。もしそれでもと言うなら引き受けよう」

 

 未だ未熟な私をトレーナーにしたと言うなら私を使うデメリット正しく認識して貰わないとないけないだろう。

 なにせ私は何もかもが足りていないのだから。

 

 「剛毅直諒。ふふ、誠実なのだな、君は。それともそこまでして担当したくないのか、少し悲しくなってくるな」

 

 彼女はわざとらしく悲しそうな顔をしたが、どのような事を言われても構わないと言った表情だ。

 だが、恐らく彼女は私の話を聞いて困ったような表情をするだろう。

 

 「第一にこれは先ほども言ったが経験不足だ」

 

 「それには私も先ほど言ったが一緒に成長していこうと私は返させていただく」

 

 「ああ、それと第二に君を海外遠征させる資金が乏しい。私は未だ蓄財の身でね大きく結果がでるにはあと二年はかかるとみている」

 

 「…………ん?」

 

 彼女の表情が何を言っているのかわからないといったふうに固まる。

 うん、やはり財布の心許なさは不安であろう。

 更に畳み掛けるように私は言葉を発する。

 

 「第三に資金が乏しいということはサブトレーナーを雇う金も、事務員を雇う金もないつまり君を見れる時間が減る。それと君の疲れを取る設備や整体師を用意することもまだ難しい。君たちウマ娘のような負担と怪我が隣り合わせの存在には必ずチームで当たる必要性がある、が、現状それを私一人でするしかない。つまり怪我をした場合その発見が遅れる可能性がある。それでも構わないというなら引き受けよう」

 

 うむ、ここまで言えば流石に彼女も身を引くであろう。

 トレセン学園は設備は充実しているが金回りは意外とシビアだ。

 海外遠征は自己負担だし、海外で練習する場所のツテもあまりない。

 つまり金を積まなければならない。

 アメリカならば弟のツテを使えばなんとかなりそうだが欧州や豪州、香港は無理だ。

 この学園に保健室はあるが保健室に一体何ができるのか絆創膏とかシップ渡して終わりだろう。

 情報をまとめるにも最新のPCを用意しておきたいし、設備投資は必須。

 酸素カプセルも欲しいしできるなら酸素ルームが欲しい。

 わかりやすく情報を纏めるのにサブトレーナーが欲しいし、細かい書類や金銭面に関しても税理士や事務員を雇いたいし、纏まった情報を私に上げてくる秘書も欲しい。

 やはり金は幾らあっても困らない。

 幸い大きな病院などには幼少よりツテがあるのでそこを使えば良いが他がおざなりだ。

 うむ、私はやはりデメリットしかないな。

 やはりそこら辺をなんとかしているであろうベテランに面倒を見てもらうほうがいいだろう。

 そんなことを思っていると彼女は困ったような表情をして言った。

 

 「一つ聞いてもいいだろうか」

 

 「ああ、何でも聞いてくれ」

 

 あまり足掻いてもデメリットは変わらないと思うが。

 

 「君は私が海外でも勝てると確信してるのか?」

 

 「ん? それは勝てるだろう? もし私に金があればまず初年度から欧州やアメリカでG1を走らせるつもりだったが」

 

 「―――っ」

 

 「そしてクラシックは国内で三冠できれば無敗でを取る。そしてシニアではドバイに行くか香港でトリプルクラウンを目指し、凱旋門からBCターフへ、最後に有馬記念のつもりだったな、まあ凱旋門前にフォア賞を叩いても良いが。その翌年はまだ衰えていなければ古馬王道制覇。そして引退だ」

 

 「君には私にそれができると?」

 

 「できるさ、君はシンボリルドルフだろ? できないほうがおかしい」

 

 そもそも前の世界の私の馬にだってできたことだ。

 だというのにあの碌な設備もない時代で無敗三冠を取った馬の生まれ変わりができないはずがないだろう。

 しかもウィニングポストの影響のあるこの世界だぞ? ウィニングポストではもっとキツめのローテで走っていたし当たり前のようにできるだろう。

 やはり金が無いのが惜しい、これでは百傑の上位に食い込むなんて出来そうにない、まあこの世界には無いんだが。

 

 「もう一つ聞いてもいいだろうか?」

 

 「ああ、なんでも聞いてくれ」

 

 「では、チームでウマ娘を見ると言うが、この学園は設備も充実しているし、保健室も中々の腕を持った医師がいる」

 

 「ああ、練習設備は充実しているだろうし医師の腕も悪くはないのだろうがやはり酸素カプセルやマッサージををする整体師は欲しい。ベテラントレーナーなら全て揃えてるんだろう?」

 

 「そんなに自己で揃えようとするトレーナーは見たことがないが」

 

 「え?」

 

 じゃあ他のトレーナーはどうしているんだ?

 高額賞金を咥えて帰って来るウマ娘に投資しないなんてありえるのか?

 前の世界では高級車を何台も買える金額が動く動物の生まれ変わりだぞ?

 

 「そもそも学園の設備が充実しているから自前で揃える必要性が皆無だ。海外遠征も今の学園長になってから補助が出るようになった」

 

 設備は置いておいて、それは勉強不足だった。

 補助出るようになったのか……。

 優しすぎないか?

 前の世界は招待系以外は基本自前で持ち出しだったぞ。

 

 「あと基本事務処理はトレーナー一人かサブトレーナーでやっている所ばかりだ」

 

 「アホなのかね?」

 

 明らかに膨大な事務処理を一人でやっていると?

 面倒を見るウマ娘が増えたらどうするつもりだ。

 過労で死ぬぞ。

 

 「だから実績あるベテランはサブトレーナーを沢山雇うんだ。事務処理や雑事を任せたりね。そもそも実績が無いとサブトレーナーも集まらない」

 

 なるほど。

 しかしそれサブトレーナー育つのかね?

 あとサブトレーナーは自分の担当を面倒見きれるのか?

 それとも沢山雇うことでローテーションさせているのか?

 トレーニングの管理と事務処理、雑事で日々交代制なのか? 

 弱小厩舎と強豪の違い、よりも格差がありそうだな。

 

 「実績のないトレーナーは担当を持つと地獄をみないか?」

 

 「ああ、だから最初は一人だけを集中して見るトレーナーが多いようだね。まあそもそも実績の無いトレーナーは人気が無いからそこまでウマ娘も集まらないよ」

 

 なるほどね。

 そりゃ実績のあるトレーナーの所に行きたがるのが人情か、それに実績の無いトレーナーの元にウマ娘が沢山いても流石に面倒見切れない。

 というより過労死する。

 

 「話が逸れたが、私から言わせれば君は私にとってなんの問題もない。むしろ未来設計聞かされて君しかいないと思ったよ」

 

 「そうか、なら仕方ないか。私の未来設計は少々早まることになったが君の面倒を見よう」

 

 「ありがとうトレーナー君。ああ、それとまだ聞いていないことがあるのだが」

 

 「なにかな?」

 

 特に今の話で問題が無いのであれば私から言うことは特には無いのだが。

 そう思っていると彼女、シンボリルドルフは楽しみだと言った表情で聞く。

 

 「デメリットは聞いたがメリットはないのかい?」

 

 ああなるほど、まあデメリットだけ言ってもフェアじゃないか、とは言っても当然のことだが。

 

 「ああ、とは言っても君になら簡単にできることだ」

 

 そう、前の世界でもそうだ。

 未来の遥か彼方まで、日本のこの競技世界に、競馬に、レースに関わっているものはその名前を知るだろう。

 

 「日本中に、いや、世界に。君が走っているこの時代はシンボリルドルフの時代であったと刻み込む指導ができる」

 

 そう言うと彼女は、深く瞑目したかと思えば、小刻みに震えだし、大きく笑った。

 

 「ふふ、ははは、アッハッハッハッ!!! そうか! 私の時代か! それも世界に!」

 

 「ああ、地球皇帝シンボリルドルフとして世界に刻む」

 

 「それは是非ともやめて欲しい」

 

 ダメか。

 本来の世界の同僚から押し付けられたエロゲの地球皇帝さん、響きが素晴らしいからいつか誰かの二つ名にしたいと思っていたが、ダメか。

 しかしどんなトレーナーでも君を受け持つなら達成できそうな目標だがな。

 なんて思いながら私の言葉を理解した上で構わないというなら受け持つしかあるまい。

 こうして私は地球皇帝シンボリルドルフの担当となった。

 とりあえず事務員を最低一人は募集したい。

 

 




ウマ娘と出会うのに何文字かかってんだ
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