馬は好きだ   作:ははもり

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主人公の競馬知識はゲームとウィニングポスト風味の世界の知識しかないので非常に偏った競馬知識しかないです。


メイクデビュー

 六月の一週目。

 阪神競馬場もといレース場。

 今日はルドルフのメイクデビューの日だ。

 

 「散歩中に気が向いてふらっとここに着いちゃったんだけどさ。今日はルドルフのメイクデビューの日なんだね? 言ってくれたら一緒に来たのに」

 

 そう言って私の肩に腕を置いてくる彼女に私は自分でも分かるくらい面倒と言った顔そちらに向ける。

 

 「ミスターシービー、私は確信持って言うが君は間違いなく来ない。きっとどこかに寄り道して、やって来る頃にはレースが終わった時に来ている。あと君にはメイクデビューの日は伝えている」

 

 「あー……じゃあ忘れてたねー。でも直前に言ってくれれば流石のアタシもルドルフのメイクデビューにはついていったよ。なにせアタシの弟子みたいなもんでしょ?」

 

 弟子? なにを言っているんだコイツは。

 

 「君には併走を頼んだだけだろう? 師匠と言うには君はいなさすぎだ。カツラギエース君やマルゼンスキー君の方がよっぽど師匠だったよ」

 

 「えーあんなにもアタシに併走を頼み込んでたのに?」

 

 「君のトレーナーに頼んだら君に直接頼んだほうが早いと言われてね」

 

 「あー……あのトレーナーならそう言うか……」

 

 「そういうことだ」

 

 何故私がミスターシービーとこんなにも気安く会話をしているのか、それは先ほどの会話でも言った通り併走相手にミスターシービーを選んだからだ。

 

 「まあ今回は流石に負ける要素がない。彼女には当たり前のように凱旋してもらう」

 

 「まあそうだろうねー。この時期の完成度じゃないよ、今のルドルフは。それにそのおかげでアタシも一段と強くなったし」

 

 そう言ってシービーは私の肩に置いていた腕を除けるとどこか興味深そうに俺見る。

 なにを考えているのかは知らんが、私の事情を話す義理はないぞ。

 

 「なんだ?」

 

 「んーん。それよりほら、あのレジェンド……レジェンド……なんだっけ?」

 

 「レジェンド豪華併せウマ娘だ」

 

 「それそれ、その変な名前の併走のやつ、あれ、ヤバいね。アタシもエースも間違いなく一段上に成長したとんでもない練習法、アタシのトレーナーが細かいこと聞きたがってたよ」

 

 それはそうだろうな。

 私も前の世界ではその調教の獲得に苦労したんだ。

 どれほど時間がかかったか、覚えている限り最低でも十年はかかっている。

 

 「流石においそれと教えられんな。というより教えるにあたって私なりのルールがある」

 

 「ルールって?」

 

 「ああ。それはなレーティング130以上のウマ娘を世に送り出したトレーナーにのみ教えるというルールだ。超えていても聞いてこない限り教えんが」

 

 「…………冗談?」

 

 「ガチだ。そしてこれでも優しい方だよ」

 

 本来は前の世界の謎VR技術で歴代最強の馬のデータを持ち馬で倒す必要があった。

 それを考えればだいぶ優しい難易度であろう。

 是非ともあのバグとしか思えない壊れたニジンスキーを倒していただきたい。

 本当に時間がかかったんだ……。

 しかしまあなんだ、ルドルフ、彼女にミスターシービーや他のトップウマ娘とコネがあって本当に助かった。

 そう、あれはルドルフが無敵化した一月後のことだ。

 

        ★

 

 五月の初週。

 私達は悩んでいた。

 

 「不味いな」

 

 「ああ、よくない」

 

 私とルドルフは二人とも体の前で腕を組みながらお互い顔を突き合わせて悩んでいた。

 基礎トレーニングは順調にやれている。

 海外芝に適応するため、パワーを上げるためにシンザン鉄などを用意してパワーに偏らせた基礎トレーニングをさせていた。

 追い込み、坂路、ゲート訓練と色々つまんではいるが全て順調。

 だが、足りていないものがある。

 

 「君についてこれる併走相手がいない」

 

 この時期だとスズマッハやニシノライデンなどの同期がいるのだが、明らかに実力が乖離している。

 まるで相手にならない。

 ということは練習にならない。

 本気を出せなければ、それは練習ではない。

 

 「ふむ、トレーナー君。君の言う…………なんだ? レジェンド……」

 

 「レジェンド豪華併わせ馬だ。この場合レジェンド豪華併せウマ娘か?」

 

 「…………ネーミングはどうにかならなかったのかな?」

 

 「ん? カッコよくないか? こう、プレミア感あるだろ? 勿論前の世界でもプレミアものの訓練だが」

 

 「…………ああ、カッコいいと思うよ……まあ君が言うなら相当有用なものなんだろうね。それは置いておいて、併走だからやはり同格かそれ以上の相手が必要なのかな?」

 

 「必要だ。そして必要なのはルドルフ、君だ。あまり格上になると相手側の練習効果は薄いが、メイクデビューすらしていない君には効果覿面だ。だから必要だ。私の若い持ち馬達もよくそれで調教していたよ」

 

 前の世界ではそもそも新馬戦の前の馬に格上が併せ馬をし、成長したら同格と併せ馬させるという手法だったから気づかなかったが、この世界では持ち馬がいないので併走相手に非常に難儀することになった。

 同格かそれ以上の馬がいる厩舎、というかウマ娘のいるチームにコネがないこの世界では相手探しがなんとも難しい。

 現状思ったより能力の伸びが悪い気がする。

 これがゲームなら相性の査定が見えるし成功や大成功の文字が出てくるだけで済む。

 前の世界なら持ち馬がそこそこいたから相手に困らなかったのだが…………やはり色々コネが欲しいものだ。

 悩んでいるとルドルフが「なら」と提案してくる。

 

 「なら、私の友人に声をかけてもいいだろうか?」

 

 ルドルフはそう言うと、組んでいた腕を解き、言う。

 

 「恐らく君も知っているウマ娘だ。ミスターシービーという気まぐれだが相当やるやつだ」

 

 「ああ、あの凄く真面目そうでしっかりしたトレーナーのところの子か、そこのトレーナーなら知っている。この前挨拶周りで煎餅と茶葉を持っていった所のトレーナーだな」

 

 挨拶周りで色々な所のトレーナーにいい所の煎餅と茶葉を持って行った記憶がある。

 ミスターシービーのトレーナーもその一人だ。

 しかしどこかで見たことあるようなトレーナーもいた気がするんだがな……前の世界のジョッキーに似た顔をしていたりしたが……まあ他人の空似かもしれん。

 

 「君は引っ越しの挨拶みたいなことをしていたんだな……。いや、知っているなら話が早い、ミスターシービーに頼むのはどうだろうか?」

 

 「あー…………ミスターシービーか……」

 

 「なにか不都合でもあるのかい?」

 

 不都合はないが不都合しかないと言った所だ。

 是非とも併走相手になって欲しいのだが……。

 

 「既に彼女のトレーナーにはお願いしているんだ。だがミスターシービーに直接聞いてくれと言われてな……彼女がやりたがらないとやれないと言われたんだ。それで直接頼もうとしたんだが、常に散歩でどこかに行っているのかいかんせん捕まらん。彼女とトレーナーの練習中では見かけるんだが、終わった瞬間どこかに消えていてな。流石に練習中に声をかけるわけにはいかんし、困っているんだ」

 

 普通に声をかけるタイミングが皆無なのだ。

 若輩の私が先輩トレーナーの練習中に割って入るのも酷く失礼だしな、本当タイミングがないのだ。

 そもそも私が忙しいのもある。

 

 「ああ、彼女は普段の生活でも神出鬼没だからね。わかった、彼女とは毎日どこかで話すから私から話を通しておこう」

 

 「すまない。一応これもトレーナーの仕事なんでね。できれば私からも話を通しておきたい頼めるか」

 

 「かまわないさ、我が魔術師殿が困っているんだ。それくらいは任せてもらおう」

 

 「その魔術師って言うのやめないか?」

 

 ターフの魔術師とかの二つ名ならカッコいいが、日常的に、しかも身内のみで言われると背中が痒くなる。

 中学生の時に自分は堕天使だと言っていた柔道部の田口君をみている感覚になる。

 あの時の友人はきっと思い出しては悶えていることだろう。

 しかしルドルフは不服なようで、顔にありありと不満が漏れている。

 

 「魔術師、カッコいいじゃないか」

 

 「じゃあ私は君のことをこれから地球皇帝シンボリルドルフと呼ぶことにするよ」

 

 「…………やめておこうか人の嫌がることをしてはいけないからね」

 

 「そうして貰えると助かる」

 

 そんな無駄な一悶着はあったものの、ルドルフを通してミスターシービーへのアポイントが取れたのだが、普通はトレーナーを通してアポイントを取れば良かったのでは……とふと思いついてしまい、結構時間を無駄にしたなと後悔した。

 そうして彼女、ミスターシービーへとアポイントが取れ、彼女に併走相手を頼むと普通に快諾された。

 されはしたんだが……。

 次の日。

 普通にこなかった。

 どこかに散歩に行ったらしい。

 その次の日もいなかった。

 同文。

 その次の日は気分が向いたのか思い出したのか現れた。

 気分屋が過ぎて頭が痛くなった。

 まさしく神出鬼没で、その日その日とアドリブで練習内容を変えざる経なかったもののルドルフはメキメキと実力をつけ、併走相手のミスターシービーも得るものがあったのか目に見えて実力をつけていった。

 そしてその話をどこで聞きつけたのかカツラギエースがやってきて勝手に併走相手になったりもし、ルドルフの友人のマルゼンスキーが見学に来ては見学に来た日は必ずと言っていいほど併走相手になってくれたりもした。

 練習相手の比率としてはミスターシービーが2カツラギエースが4マルゼンスキー4と言ったところか。

 最初からマルゼンスキーとカツラギエースに頼みたかったなと私は何度も思った。

 

             ★

 

 「あっ、ルドルフがゲートに入ったよ」

 

 私はミスターシービーの言葉で意識を現実に戻した。

 まあ後悔はしてないと言ったら嘘だがミスターシービーに頼んで良かったとも思っている。

 逃げのカツラギエースに先行逃げどちらもできるマルゼンスキー、そして追い込みのミスターシービー。

 色々な脚質のウマ娘と走れたのは大きいと思っている。

 なので感謝はしているがそれはそれとして練習には来い。

 

 「あら、魔術師殿そんなに見つめられたら視線が痛いわ」

 

 「どこで知ったんだその魔術師」

 

 「君とルドルフがメロドラマみたいなことをしていた夜の時」

 

 「はー……やっぱり誰かに聞かれていたか……頭が痛い……」

 

 「大丈夫だよ、あの日聞いてたのはたぶんアタシ含めてたぶん三人くらいさ」

 

 「三人も聞いているのか……ちなみに誰か分かるか?」

 

 「たづなさんとエースだね」

 

 「頭痛い……」

 

 カツラギエースはもうこの際いい。

 なんか併走中たまに私を見ては顔を赤くしていたので学生にモテる先生とはこういう気持ちか……とは思っていたのだが全然違っていたのはこの際横に置いておく。

 それよりも学園長の秘書に目撃されていたのは普通に頭痛案件だ。

 今の今までで特になにも言ってないと言うことは勘違いしていないということだと思いたいが…………もうこの際それも脇に置いておこう。

 よくはないが。

 

 「もうこの際私の醜聞がどうなろうと構わん、今更その程度で動じるほど若くはない」

 

 「いやまだ二十代でしょ?」

 

 「…………人生経験豊富なんだ」

 

 また頭の中で学園長が走り出そうとしていたがギリギリなんとかなったと思いたい。

 私は、もう気にすまいとゲートを見るとちょうど全ウマ娘がゲートに入場を完了したところだった。

 

 「さて、練習の成果を見せてもらおうか」

 

 「心が折れないといいんだけどねー」

 

 「どちらがだ?」

 

 「ルドルフ以外の子」

 

 そう、ミスターシービーが言った瞬間、バンッとゲートが開いた。




カツラギエース持ってないのでようつべで口調とストーリーの勉強中
ウィニングポスト、個人的に最強はオグリかアグネスデジタルだと思っています
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