IS《無力な僕は空を逝く》   作:砂肝串

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「頑張ったって結果が出るとは限らんが、少なくとも結果を出した奴は頑張ってる」

柊四四八

(相州戦神館學園主人公)


CODE:32

 

「はぁ……」

 

 そして、その時はやってきた。

 トーナメント当日。いつも賑やかなIS学園だが、今日はいつにも増して活気で溢れている。まるでお祭り騒ぎだ。ほんと、元気だよね皆。

 そんな周囲とは反対に、僕は緊張とか不安とかで、気分がすこぶる悪かった。

 僕と一夏は今、アリーナに隣接したピットの中にいる。これからトーナメント表が決定し、試合相手が発表されるからだ。

 思わず漏らしてしまった僕のため息をすぐ近くで聞いていた一夏が苦笑を浮かべる。

 

「大丈夫だって廉太郎。なるようになるさ」

「……うん」

 

 あれから、僕なりに、"僕自身の強さ"というものを考えてみた。

 あの日、篠ノ之さんに言われた言葉が、今でも僕の耳に残っている。僕は僕でしかなく、僕にしかなれない。だから、僕自身の強さを見つけろ。

 その言葉に僕は、強く、とても強く心を打たれた。自分の弱さを何よりも許せなかった僕は、いつからか僕のヒーローでもある"一夏"のことばかりを追いかけていた。……でも、それだけじゃダメだったんだ。僕は僕でしかないんだから。一夏になることなんて、不可能なんだから。

 だから、考えた。何度も何度も考えた。僕の強さって何なんだろう、と。

 

「……はぁ」

 

 結局、答えは出なかったけど。

 

「それは何のため息だ、藤井?」

「あ、織斑先生……」

 

 二度目のため息に応えたのは、僕がため息を吐いたのと同時にピットに入ってきた、織斑先生だった。

 

「いえ、少し考え事を」

「ふむ。……まぁ、難しいことをあまり考えすぎるなよ。試合前なんだ、余計なことは除けておけ」

「……はい」

 

 少しの間を起き、僕は織斑先生に思い切って質問を投げかけた。もしかしたら、この人なら解決に繋がる何かを教えてくれるかもしれない。そんな気がしたから。

 

「せ、先生っ。……先生から見る、僕の強さとはいったいなんですか?」

「藤井の強さ、か?」

「はいっ」

 

 先生の答えに期待を膨らませる、が。

 

「さて、な。教えてやらん」

「え、えぇっ!?」

「己の強さとは自分で見つけ、自分で伸ばしていくものだよ、藤井」

「……はい」

 

 ダメか……でも、そうだよな。僕自身で見つけなくちゃいけないんだよな。

 こればっかりは、人に甘えちゃいけないことなんだ。

 よし、また考え直さなきゃ。

 

「────だが、私はこれでも教職者だからな。悩める生徒には手を差し伸べてやらなければならない。だから、少しだけヒントを与えよう」

 

 再び思考の海に飛び込もうとした僕を止めるかのように、織斑先生はそんなことを僕に言う。

 

「ヒント、ですか?」

「餌のとり方は教えてやるが、餌そのものは与えてやらん。教師とは本来、そういうものだ。……藤井、お前の強さの本分は"戦い"にはない。それがどういう意味なのかを、よく考えろ」

「……」

 

 僕の強さは、戦いの中にはない……? それって、いったいどういうことなんだろう。戦いの中にない強さって、"強さ"と呼べるのか? 僕が欲しいのは、皆を護るだけの力。皆の役に立てる力。なのに、戦いの中にないんじゃ意味が無いのではないか?

 

「よく考え、そして存分に悩めよ少年。……だが、今は目の前のことに集中しろ。それで見えてくるものもあるはずだ」

「は、はいっ!」

 

 でもきっと、この人の言ってることは正しいのだろう。ならば、その強さをどう活かすのかということがきっと大切なんだ。

 

「って、何か用か千冬姉?」

「織斑先生と呼べ。……いや、なに。トーナメントを前にお前達がどんな様子かを見に来ただけだ。ここ最近、お前達がなにやら悩んでいる様子が多く見れたからな」

「お前達って、一夏も?」

「……まあ、な」

 

 ちょっとだけ複雑そうな顔を浮かべる一夏。彼もまた、何かを悩んでいたというのか。

 

「今回の試合で何かが掴めるような気がするんだ。……いや、掴んでやる。だから俺はこのトーナメント、全力でいくよ」

「一夏……」

「当たり前だな。手を抜くなど言語道断だ。せいぜい励むといい」

 

 一夏のその言葉を聞いて安心したのか、先生はそう言った後に、ピットを去って行った。

 何だかんだで優しいんだよな、織斑先生って。

 ちゃんと弟の心配とかとしてるし。

 

「さて、と。もうそろ対戦相手が発表されるみたいだぜ」

「あ、ほんとだ」

 

 ピット内のモニターを、食い入るように僕たちは見る。最初の対戦相手は、誰なのか。

 

「…………」

「なッ」

 

 映し出されるトーナメント表。僕たちの対戦相手の場所には────ラウラ・ボーデヴィッヒと書き込まれていた。

 一戦目、何のいたずらか、僕たちの対戦相手はボーデヴィッヒさんで決定した。

 

「一夏」

「……おう。願ってもねぇ。あいつとは、決着をつけたかったんだ」

「うん。僕も、ボーデヴィッヒさんには勝ちたい」

「勝つぞ、廉太郎」

「うんっ!」

 

 ボーデヴィッヒさんは僕に言った。僕は強い、と。だが、実力はないとも言った。

 強さと実力の違い。僕は、まだそれが分かっていないのかもしれない。

 なら、この試合で、絶対に何かを掴んでやる。……一夏の受け売りだけどね。

 

 

     Φ

 

 

「……」

「……」

 

 無言で対峙し合う一夏とボーデヴィッヒさん。まさに、因縁の対決といった空気だ。

 対する僕の眼前にいるのは…………

 

「……なんで、篠ノ之さんが?」

「……なんだっていいだろ」

 

 そ、そういえば。ペアって最後まで決められなかったらくじ引きで組められなかった人同士組まされるんだったっけ。まさか、いやまさかね。うん。…………凄い睨まれてるからこれ以上この件は考えないようにしよう。

 

「藤井」

「ん?」

「見つかったか?」

 

 それは、僕なりの強さのことだろう。

 

「ううん。……でも、この試合で何かを掴んでみせるつもり」

「そうか」

「うん。だから、全力でいくよ」

「当たり前だ。……お前に偉そうなことは言ったが、私もまだまだ未熟者だ。これを機会に、私もまた強くなってみせる。だから、お互いに全力を尽くそう」

「うんっ」

 

 話は、それで終わり。

 僕と篠ノ之さんも、一夏とボーデヴィッヒさん同様にあと数十秒後に開始される試合に向けての集中に入る。

 大丈夫。今日までに、たくさん特訓してきたんだ。なにもできないまま終わる、だなんてことは多分ないはず。だから、落ち着け、落ち着くんだ。

 一夏も言っていただろ、僕は緊張や不安で余裕がなくなっていると。まずは精神的余裕を保つんだ。でないと、僕は何も変わらないままだ。昔と変わらず、弱いままの僕で終わってしまう。

 そんなの、嫌だ。僕は、僕なりの強さを掴むんだ。

 

 試合開始まで、あと5秒。

 

 4、3、2、1────0。

 

『試合開始ッ!』

 

 アリーナ全体に、試合開始の合図となるブザーとアナウンスが鳴り響く。

 まず最初に動いたのはやはり、この場において一番の実力を持っているであろうボーデヴィッヒさんだ。

 狙いは、一夏。僕の存在など、おそらく視界どころか意識の中にすらないのだろう。

 そうなると、僕の相手は必然的に────

 

「私が相手だッ!!」

 

 そう、篠ノ之さんだ。

 これは、案外ラッキーかもしれない。篠ノ之さんとは稽古で何度か剣を交えているのもあって、彼女がどんな動きをするのかなどがある程度把握出来ている。

 対して、ボーデヴィッヒさんの動きはまったく分からない。1度ボコボコにされただけで、あとは何ら関わりがなかったのだから、わからなくても仕方がないだろう。

 となると、やはりこれはラッキーだ。

 

「はァッ!!」

 

 篠ノ之さんが纏うISは僕と同じ打鉄。互いに近接戦闘型のIS。故にこの試合、彼女との対決は終始近接戦闘となるだろう。

 振り上げられた打鉄のブレードが、鋭い剣閃となって僕に振り下ろされる。その鋭さは、生身の時と何ら変わりない。鬼哭啾啾と僕に襲いかかる。

 僕は咄嗟にブレードを前に突き出し、その一撃をなんとか受け止めた。手が痺れるほどの衝撃。僕は思わず瞠目してしまう。分かっていたはずだが、それでもやはり驚いてしまう。なんて、重い一撃なんだろう。そう何度も受けられるものではないぞ、これは。

 

「まだまだァッ!!」

「う、ぁあっ!!」

 

 続く連撃を、僕はなんとか避けていく。だが、状況はあまり良くない。これはもう、彼女に主導権を握られたも同然である。

 なんとかしてこの状況を打破しなくちゃ。

 タイミングを狙え。それまで耐えるんだ。耐えるのは得意だろう、僕。受けろ、堪えろ、そして、活路を見い出せ……!!

 

「……ッ!」

 

 見つけた。一瞬ともとれる、篠ノ之さんのほんの僅かな隙。攻撃するなら、今だッ!!

 

「うオオオオッ!!」

 

 本気で振り下ろしたブレードの一撃。

 

「ッ!?」

 

 しかしそれは、謎の遮蔽物によって、遮られてしまった。その遮蔽物とは、打鉄に追加武装として備えられている物理シールドだ。まさか、僕が隙をついて攻撃してくるとふんで、展開したというのか。

 

「お前ならそうくると思ったよ、藤井……!!」

 

 なんて馬鹿なんだ僕は! 僕が彼女の行動パターンを把握しているのだから、それと同様彼女もまた僕の行動パターンを把握しているのは当たり前のことだろう!

 それなのに、何で僕はそれが僕だけのアドバンテージなのだと思い込んでいたんだ。阿呆か。馬鹿か。痴愚にもほどがあるぞ。

 まずい、僕の攻撃は基本大振り、しかも今の一撃は本気の力を込めた一撃だ。今の僕は、あまりにも隙が大きい。体勢を取り戻した篠ノ之さんがこちらを向き、刀を構える。

 

「私も鍛錬を積んできたんだ。悪いが、勝たせてもらうぞッ!!」

「くっ!?」

 

 これは、まずい。間に合うか……? いや、間に合わせる。回避はどう足掻いても無理だ、間に合わない。でも、防御ならまだ何とかなる。

 防御は僕の領分だ。攻撃も、回避も下手な僕は受けることしかできない。だったら、徹底的に防御してやるまでだッ!!

 

「く、あァッ!!」

「ちぃっ!?」

 

 間に合った!

 無理矢理跳ね上げたブレードで、篠ノ之さんの一撃を辛うじて防いだ僕。

 やっぱり、篠ノ之さんは凄い。刀の扱い方を心あているだけあって、攻撃の芯が凄まじい。斬撃を受けた時、思わずブレードを取り落としそうになってしまった。

 

「まだまだァッ!!」

「僕だってェッ!!」

 

 再び振りかぶった篠ノ之さんのブレードによる斬撃を僕は真っ向から受け、鍔迫り合いの形になる。

 ブレードとブレードがぶつかり合うことによって起こる甲高い悲鳴が辺りに響き、僕と篠ノ之さんの間にその余波として火花が飛び散る。

 互いに一歩も譲らない、均衡が保たれた状態。ずっと続くと思われたその均衡は、しかし僕の手によって壊される。

 

「はァッ!」

「なっ」

 

 正面に向けていたブレードを寝かせ、篠ノ之さんの斬撃を"受け流す"。

 篠ノ之さんに剣道の稽古をしてもらっていた時に、彼女が扱っていた技……というか技術の1つだ。見よう見真似で下手くそだし、かなりぞんざいな感じになっちゃったけど、一応は成功した。

 再び隙が生じた篠ノ之さん。この角度なら物理シールドで防ぐこともできないはずだ。今度こそ、当ててみせるッ!!

 

「ぜやァァァァッ!!」

「ぐぁっ!?」

 

 斜めに切り上げた一閃が、篠ノ之さんのシールドバリアを切り裂く。完全にシールドエネルギーを奪ったわけではないが、それでもダメージを与えることはできた。……っていうか、篠ノ之さんから1本取れたのって、何気にこれが初めてかもしれない。

 

「……やるな、藤井。いや、驚いたよ。油断していたつもりは無かったが、まさかこの私から1本取るとはな」

「僕も、負けるわけにはいかないからね」

 

 そう、負けるわけにはいかないんだ。何が何でも勝ちたいとか、そういうわけじゃないけど、これ以上負け続けるのは嫌だ。弱い自分に甘えるんじゃなくて、むしろ矮小な自分を、僕は超えていきたいんだっ!!

 

「……」

 

 油断するな。気を抜くな。まだたったの一撃だ。倒したわけでもないし、致命傷を与えたわけでもない。戦いはまだ、始まったばかりだ。

 落ち着け、落ち着くんだ。いける。落ち着いていけば、勝てる。勝つぞ。勝つんだ。勝つ────

 

「どうきた、気が乱れているぞッ!!」

「くぅっ!?」

 

 振り下ろされた斬撃を、再三度僕はブレードで受け止める。相変わらず、重い……!!

 男の僕が女の子に力負けするだなんて、情けない話だ。けど、事実僕は篠ノ之さんよりも非力。力勝負で勝てるとは思うな僕!!

 落ち着け、落ち着け、落ち着け……まだ始まったばかり。僕は負けてないし、むしろアドバンテージは稼げている。このまま、押しきれば、勝てる。勝つぞ。勝つんだ。負けるわけには、

 

「いかないんだァッ!!」

 

 卑怯かもしれないけれど、僕は篠ノ之さんの斬撃を受け止めつつ、彼女に向けて蹴りを放った。でも、別に反則じゃあないよね。これは剣道じゃあないんだし。

 篠ノ之さんの動きは、どうしても剣道の動きに似通ってしまう。故に、基本ブレードでしか攻撃してこなく、こういった格闘攻撃はしかけてこない。

 彼女がやらないのなら、僕がやるまでだ。

 

「くっ」

「いくよ、篠ノ之さんっ!」

「舐めるなよッ!!」

「ッ!?」

 

 僕が放った横薙ぎの一閃を、しかし篠ノ之さんはブレードで受け止め、続いて切り払うことで僕の手からブレードを弾き飛ばした。落下していく僕のブレード。まずい、あれがなければ、僕は戦うことが出来ない! 射撃はおろか、まともに格闘攻撃すらできないのに、どうやって戦えと!?

 まずい、まずい、まずいまずいまずいまずいまずい。まずいよ、これは。

 負ける? また、また負けるのか僕は?

 ああやっぱりダメだったのか。僕は、僕はいつまで経っても勝てないんだ。僕なりの強さ? ……そんなもの、初めから存在してなんかいなかったん────

 

「どうした、藤井」

 

 篠ノ之さんの問いかけにより、僕の思考が止まる。

 見ると、そこにはブレードの切っ先をこちらに向けた篠ノ之さんがいた。

 何故、止めを刺さないのだろう。

 

「最初は良かった。私も舌を巻くほどにな。だが、途中からの焦りようはなんだ? 集中が途切れていたぞ。まさか私がお前の蹴りを警戒していないとでも思っていたのか?」

「うっ……」

「何を焦っているのか知らんが、そんな乱れた様じゃいつまで経っても勝てないぞ」

 

 僕が、焦っている?

 ……いや、篠ノ之さんの言う通りだ。思えば、僕はいつもそうだ。事ある毎に焦って、テンパって、その結果いつも上手くいかないんだ。

 ちょっと前に、一夏とした会話を思い出す。

 

 

『なんていうか、廉太郎には力があると思うんだ。今まで培ってきた力が。努力を積み重ねてきた力が。……でも、今はそれをうまく使いこなせていないって感じに見える』

『うまく使いこなせてない、か…………』

『ああ。なんか、落ち着きがなくなってるっていうか、余裕がないって感じかな?』

 

 そう、僕には余裕が無かった。いつもいつも慌てて焦ってて、そんでもって空回って。

 緊張とか、使命感とか義務感とか、そういったものを勝手に1人で抱え込んで。なんだか、馬鹿みたいだ。

 

『落ち着いてやらないと、できることも出来なくなるからな。試合が始まる前に1回、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてみるのはどうだ?』

 

 そうだ。

 一夏はあの時、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてみればと、僕にそう言ってくれたんだ。

 なのに、僕といえばそれをやることさえ忘れて、また空振って……ああ、もう! どうしようもないくらいに愚図だな、僕はっ!!

 …………今からでも、遅くないよね。

 

 

「すぅぅ…………ふぅぅ…………」

 

 

 深い深い深呼吸。

 吐かれた息と一緒に、僕の中にあった色々な面倒くさい物が抜け落ちていったような、そんな気がした。

 なんだか、あれだけ騒がしかった僕の心が、今はとてと穏やかだ。起伏なく、真っ平で、静か。

 ……うん、やっと落ち着けた。

 一夏、やっぱり君は、僕にとってのヒーローだよ。

 

「ありがとう、篠ノ之さん。目が覚めたよ」

「そうか。なら、良かったよ」

「でも、いいの? 敵に塩を送るような真似しちゃってさ。止め、刺しちゃえばよかったのに」

「ふん、本調子じゃない相手に勝っても何の意味もないからな。それに、目が覚めたからと言って、この状況が変わるわけじゃあない。武器を無くした今、お前にできることは何も無いぞ藤井」

「……」

 

 確かに。

 今の僕には、まともに使える武器がない。

 でも。

 

「武器がなくても、できることはあるよ、篠ノ之さん」

 

 そう言って僕は、物理シールドを展開する。

 強がりで言っているわけじゃない。これがあれば、僕にだってまだ出来ることはある。

 

「……お前は、武器よりも盾の方が似合うな。───ああ、気を悪くしないでくれよ。馬鹿にしているわけじゃないんだ。ただ藤井は、攻撃よりも防御が似合っているような、そんな気がするんだ」

「奇遇だね。僕自身も、凄くそう思う」

 

 僕は弱いから。武器とかそんな物騒なもの、似合うわけがないんだ。

 だから、これ。弱虫な僕にはお似合いだろう。

 でも、弱虫には弱虫なりに、戦い方ってものがあるんだ。それをまずは、篠ノ之さんに見せつけてやる。

 

「行くよ、篠ノ之さん」

「ああ、言われずとも……!」

 

 風を切り裂き、僕を両断せんと放たれた篠ノ之の一撃を、僕はシールドバリアではなく物理シールドで受けきる。やはり防御に特化したからか、先程よりもずっと衝撃は緩和されている。この程度の衝撃なら、僕でもまだ耐えられるぞ。しかし、

 

「受け止めているだけじゃ勝てんぞっ!!」

 

 そう。このままじゃ、負けることはなくても勝つことは出来ない。それじゃあ意味が無いんだ。これは試合なのだから、やはり勝たなくてはいけない。特に今回は、一夏っていうペアがいるのだから。

 でも、負ける気は毛頭ないよ篠ノ之さん。僕は全力で君に、勝ちを取りに行く!!

 

「はああああぁぁぁぁァァァァッ!!」

 

 最大出力。

 僕は、盾を前に構えたまま、全速力で篠ノ之さんに向けて飛翔した。

 

「なっ!?」

 

 距離はそこまで離れてはいない。故に、突如僕が行った暴挙に、篠ノ之さんは咄嗟に動くことができない。

 これなら、いけるっ……!!

 

「くらえェッ!!」

「う、うわぁっ!?」

 

 当たり前なことだが、篠ノ之さんに向かって真っ直ぐ飛んだのだから、結果は正面からの衝突。だが、篠ノ之さんが受けたダメージの割に、僕へのダメージは少ない。何故ならそれは、僕がシールドを構えていたから。

 これぞ僕の考えた秘策、シールドを使った特攻……もとい、体当たりだ!!

 

「う、ぁっ」

 

 よし、篠ノ之さんはまだ体勢を整えられていない。

 その隙をついて、僕は地面に急降下し、先程落としてしまったブレードを急いで拾い上げる。

 

「よしっ」

 

 あとは篠ノ之さんの攻撃を防ぎつつ、こちらから攻めることが出来れば……時間はかかるが、勝てるはずだ。

 攻撃を受けることだけには絶対的な自身がある故に、負ける気がしない。

 油断はしない。でも、決して弱気にはならない。

 

「さあ、勝負はこれからだ、篠ノ之さんっ!!」

 

 

 僕がそう宣言した、その時。

 

 

 

「いいや、勝負はこれまでだ」

 

 

 

 そんな冷たい声が、僕の耳に届いた。

 

「えっ?」

 

 見ると、そこにはボーデヴィッヒさんがいた。一夏の首を掴み、軽々と持ち上げている、ボーデヴィッヒさんの姿があったのだ。

 

「い、一夏っ!?」

 

 これにより、戦況は一転した。

 

 

 




長らくお待たせ致しました。
本当に長らくお待たせ致しました。
ごめんなさい、言い訳になってしまうのは重々承知していますが、凄く忙しくて……本当にごめんなさい。重ね重ねごめんなさい。

それにしても、年明けちゃいましたね……今更感はありますが、あけましておめでとうございます。今年もどうかこの不出来な僕を宜しくお願い申し上げます。

ここで重要な報告をば、
実は作者、ただいま凄く取り込んでいまして、まともに執筆できる状況下にありません。本っ当に、まことに申しわけないのですが、作者の身勝手な都合により、今年の3月後半、もしくは4月前半になるまで更新を停止させていただくことになりました。
続きを楽しみにしていた方々には、本当になんとお詫びしたらいいか……
しかし、必ず完結はさせます。
ですので、図々しいと思われるかもしれませんが、最後まで応援してもらえる嬉しい限りです……

では、また3月後半、もしくは4月前半に会えることを願って。
また次の話で会いましょう!
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