おはようございます。
今起きました。
それにしても、お気に入り件数の増加ペースならびに評価付与が一番速いのがなんとこの作品です。読者の皆様ありがとうございます。
これはもう、他の作品も気分で書けということなのか…………?
寮の部屋に戻るなり、僕は机に向かう。
更識先輩は生徒会の仕事があるのかまだ帰ってきていない。
「……自分の力でやるしかない、か」
僕は早速先生に言われたとおり、分厚い冊子に目を通す。頭では理解しているつもり……なのだが。それを実際にやれと言われるとできない。それはつまり理解していないということだ。
「もっとだ……もっと頑張らないと…………!!」
努力すること以外に、僕にはもう道がないのだから。
Φ
それから数時間が経ち、更識先輩が帰ってきた。
「あら、偉いわね。ちゃんと勉強してるだなんて」
「おかえりなさい」
「ただいま」
ふうー……っと、長い息を吐きながら彼女は自身のベッドに座る。
疲れているのだろうか?だとしたら、迷惑はかけられないな。
「今日の授業、どうだった?」
「……………………」
ついていけなかった、なんて言ったらまた彼女に迷惑をかけてしまう。
本当のことは、言えない。
「……ついて、いけました。先輩のおかげです。ありがとうございました」
「そう!ならよかった♪」
「…………」
そう言えば、一夏は今頃何をしているのであろうか。
先ほど特訓だと篠ノ之さんに引っ張られて剣道場に連れ去られていたけど。
ちゃんと勉強もしているのであろうか。
「あ、そうそう。君、来週の月曜日に代表候補生のセシリア=オルコットさんと戦うんだってね」
「は、はい」
どこで聞きつけたのだろう?
何だかこの人に隠し事はできなさそうだ。
「実技は大丈夫?」
「……全然ですよ。ISを動かしたのなんて、最初に触れた時と入試の時ぐらいなんですから」
入試の結果も散々だった。
何もできずに教官に一方的に射撃され、終了。
本来ならここで落とされる筈なのだが、僕と一夏の場合入学が確定していたためそれは関係のないこと。あくまでも、形だけの入学だったのだ。
「なら、私がレクチャーしてあげようか?」
「先輩が、ですか?」
「こう見えても私、ロシアの国家代表なのよ?」
「代表……代表!?代表候補生じゃなくて代表なんですか!?」
「ええ、そうよ♪」
ふふん♪と誇らしげに胸を張る更識先輩。
僕は慌てて携帯端末を使い、更識先輩について調べる。すると、まあ出てくる出てくる。ロシア代表としての彼女の情報が。
「す、すごい……」
「ありがとう♪」
「本当に、おねがいしてもいいんですか……?迷惑になりませんか……?」
「大丈夫大丈夫。私がやりたいからやってることだしさ」
「あ、ありがとうございます!」
ロシア代表のレクチャーがあれば、あるいは……!!
Φ
翌日の放課後、"打鉄"と呼ばれる第二世代ISを身にまとってアリーナにやって来た。
向かいにはISスーツを着用した更識先輩が悠然と立っている。
「あ、あの……本当によかったんですかね?僕が優先的に打鉄とアリーナを使っていいだなんて…………」
「いいのいいの。生徒会長権限よ♪」
「は、はぁ……」
周りの目をチラチラと気にする。
案の定、何人かが僕のことを白い目で見ていた。
それもそうだろう。打鉄の貸し出しは予約制で、何日も待たなければならないのにそれをすっ飛ばしていきなり使っているのだから。アリーナに関しても、真ん中の一番いい位置を独占している。
…………もしこれで、更識先輩と一緒にいるのが一夏だったら皆の反応は違ったのだろうか?
やめろ、やめるんだ僕。そんな汚いことを考えちゃいけない。
「それじゃあ始めましょう?」
「はい……」
何だか、乗り気じゃないな…………。
Φ
一通りの訓練が終わり、僕は息を切らせながらピットへと戻る。更識先輩も着いてきた。
「大丈夫?いきなりで疲れたかしら」
「い、いや……大丈夫、です。これくらい……いや、これ以上頑張らないと、僕は皆についていけないんで…………」
はっきりいって、訓練途中の僕は酷い有様だった。
満足にISも動かせず、中々順調に進まなかったのだ。
「慌てなくてもいいわ。貴方はISというものに関しては素人もいいところなんだから」
「……はい」
「まずはISに慣れていきましょう?」
「はいっ」
悔しい。
何も出来ない自分が、悔し過ぎる。
Φ
翌日の早朝。時刻は再び四時。
僕は家から持ってきていたジャージを着用し、走り込みを始める。
更識先輩にはメモ書きを残しておいたので何とかなるだろう。
昨日のことを反省し、僕は取り敢えず体力をつけようと走り込みをすることにしたのだ。
「はっ……はっ……」
少し、肌寒いけど、でも直ぐに体温が上がって温まるだろう。
「…………」
そういえば。
打鉄は刀型のブレードがあったよな。
昨日はまだ取り出した程度で、実際に使ってはいなかったわけだけど……もっただけでも、ずしりと重さがかかった感じがした。正直、あれを振るうとなると大変そうだ。
(篠ノ之さんって、剣道で凄い人って話だもんな。刀の振り方とか教えてもらおうかな…………)
まずは、頼んでみようかな。
Φ
「剣を教えて欲しい、だと?」
「う、うん。ダメ……かな?」
篠ノ之さん、怖いなぁ。
美人ではあるけど、目がそれこそ刀のように鋭い。
「何で私がお前に」
「その……来週の月曜日にクラス代表を決める話があったよね?それで、その……僕って格闘経験とかないから。経験ある人に教わりたいなあって思って…………」
すると、彼女はより一層目を鋭くして一言。
「だから、何で私がお前にそんなことをしなければならない?他を当たれ」
無論、僕の勝手なお願いだ。彼女には何の利もないだろうさ。でも、それでもあんな言い方って酷くないかな。幼馴染みだかなんだか知らないけれど一夏相手になら快く引き受けるのに。いや、それはいいさ。でも、流石にあの断り方はあんまりだ。
「僕の、何がいけないのかな…………?」
態度?無力さ?顔?雰囲気?なら、僕はどうしたらいいんだ。どんな態度をとればいい?頑張っても力がつかない僕はどうしたらいい?ルックスなんてどうしようもないじゃないか。整形しろというのか。雰囲気に関しては最早自分じゃあ分からないし。
分からない。
分からないことだらけだ。
もう、全部分からないよ………………。
Φ
「あ、よかった。まだいたんですね。藤井くん、ちょっといいですか?」
「はい?」
その日の放課後、僕は山田先生に呼ばれてとある場所へと連れていかれた。それは、ISの格納庫。専用機ではない、量産型のIS打鉄やラファール・リヴァイヴが保管されている場所だ。
「あの、ここで何を?」
「今から藤井くんの専用機を用意しますね」
「せ、専用機ですか?」
初耳だ。
そんな話がでてたなんて。
「この中にある打鉄かラファールのどちらかの一機を藤井くんの専用機として用意します」
「ほ、本当ですかっ」
「ええ。どちらがいいですか?」
「えっと、じゃあ…………」
昨日先輩との特訓で使ったのは打鉄だ。
射撃が難しそうだと思ったからだ。
なら、答えは一つかな。
「打鉄でお願いします」
「分かりました。では、打鉄を着用してこちらへ来てください」
言われたとおり打鉄を着用。
山田先生の元へと向かう。
すると、何本ものケーブルを打鉄へと繋げた。
タイピング音だけが、虚しく格納庫に響く。
「……よしっと。これでこの打鉄は藤井くんの専用機です。装備やスペックに関しては他の打鉄と何ら変わらないですが、待機形態にはできるのでいつも持ち歩いていてくださいね?」
「分かりました」
多分、護身的な意味もあるんだろう。
一夏にも与えられるのかな……?
何にせよ、今度の決闘に向けて頑張らなくちゃな。