転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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11掃討作戦開始

 

 

 

 公安対魔特異課襲撃事件が発生してから三日後、ついに決戦の時が来た。俺達特異五課はマキマさんの執務室で勢揃いをし、彼女の言葉を待つ。

 

「沢渡アカネを主犯とする一派の拠点を突き止めた。あとは彼らを捕らえるだけなんだけど、私は特異四課の皆に活躍して欲しいと考えてるの」

 

 マキマさんは俺達の顔を見回すと、続きを話した。

 

「だから特異五課の皆には、少し損な役回りをさせることになる。ごめんね」

 

 申し訳なさそうな顔でマキマさんは謝るが、俺達特異五課は損な役回りに対して不満などない。

 

「それで特異五課の皆には、主に拠点周辺の防衛を頼みたいの。ただしバルエムだけは拠点へ潜入し、敵を制圧して欲しい。よろしくね」

 

 マキマさんより命令を下された俺達は、了承の声を上げた。

 

 

 

 神奈川県某所、俺はビルの屋上で待機をしていた。そこから大通りを挟んだ真向かいのビルを眺める。段々上になった壁のようなそのビルは、何階まであるのか数えるのも億劫なほど巨大であった。

 

「センカイ君、暇そうっすね」

 

 女が話しかけてきたので、俺は気楽に返事を返した。

 

「まあな。正直やることないだろ」

 

「そうっすねぇ。特異四課はそれなりに優秀ですし、問題は起こらなそうっす」

 

「それもあるが、バルエムさんがいる。火炎放射器は入り組んだ室内で最も真価を発揮するものだぞ」

 

「そうなんすか?」

 

「そうだ。恐らくバルエムさん無双だな」

 

「そうなんすね〜」

 

 女はあまり理解していないようだ。実際に見れば納得をするのだろうが、見せる機会が無いので説得のしようもない。

 俺は腕を組むと、あと数時間は待機だなと小さく呟いた。

 

 

 

 ビルの地下一階にある駐車場。そこにはゾンビの悪魔によって、ゾンビに変えられた者達がごまんといた。しかし、彼らは急激に数を減らしていた。

 

「はははははは! なんともまあ〜殊勝なことだな。俺に勝てる見込みは無いというのに」

 

 火炎放射器と化した右腕をなぎ払い、並み居るゾンビを焼き尽くすバルエム。彼はゾンビ達の絶叫に耳を癒やされながらも、散歩をするかの如く歩いていた。

 

 次から次へと押し寄せるゾンビ達に辟易としたバルエムは、足に力を込めて走り出す。そして駐車場の柱を蹴り上げると、火炎を放射しながらゾンビ達の中心へ降り立った。そして両腕を左右に広げ、最大出力で火炎を撒き散らす。

 轟くような燃焼音を伴いながらもノズルからゲル化ガソリンが放たれ、炎上をしながらゾンビ達へと降りかかった。やがて、その場に地獄を作り出したのだ。

 

「いいねえ。とってもいい〜景色だよ!」

 

 爆発的に酸素が消費される中、バルエムはその場でくるくると踊るように回り、全方位へ火炎を放射した。彼は流れてくる景色全てが苦痛に歪みながらも死に絶えるゾンビ達であったため、心から笑うのだった。

 

 

 

 地下一階のゾンビを処理したバルエムは、三階へとやって来ていた。なお、これまで通ってきた道にあったものは全て燃やし尽くしており、何も残されていない。

 

「っ死ねェー!!」

 

「撃て撃て撃てェーーッ!!」

 

「こっちに来んなバケモンがぁッ!!」

 

 ヤクザの下っ端衆が自動小銃を乱射してくる。左右をオフィスに挟まれた廊下は見通しがよく、正面突破は厳しいだろう。だが、バルエムはそこを行く。

 

「少し前に溜め撃ちってのを覚えてねえ。これがまた楽しいんだよな〜」

 

 独り言を呟きながらも廊下へ出たバルエムは、挨拶をするかの如く気楽さで両腕を掲げる。そして、火炎をぶっ放した。

 

 爆発音を伴いながら放たれたゲル化ガソリンは、質量を伴って遥か遠くまで飛散し、下っ端衆を吹き飛ばす。そして全身に燃焼した可燃性液体を被ってしまった彼らは絶叫を上げながらのたうち回るが、決して火が消えることはなくそのまま焼死した。

 

「死ねェェェ!!!」

 

「うおおォォ!!!」

 

 突如としてオフィスの扉が開け放たれ、二人の男が銃を乱射しながら突貫してくる。だがバルエムは冷静に武器化した腕で体を防御し、自らもまた突貫して一人を吹き飛ばした。

 

 数メートルは余裕で吹き飛んだ男が、天井にぶつかっては廊下へと落下する。そしてもう一人はそれを見ており、恐怖を覚えて立ち止まっていた。そのため、バルエムはその隙を突き、彼を殴り飛ばしたのだ。

 

 頭から血を流しながらも起き上がろうとする男に、バルエムは火炎放射器のノズルを向けた。そして──。

 

「グッバ〜イ」

 

「待っ──」

 

 容赦無く火炎を放射した。男が火達磨となり絶叫を上げながらのたうち回るが、もはや助かる術などない。男は地獄の苦しみからか涙を流すが、それは瞬時に蒸発しそのまま焼け死んだ。

 

「ん〜! 実に良いソロ演奏だったよ。次はコーラスが聞きたいなあ」

 

 そんなことを言って肩を竦めたバルエムは、武器化した腕で両サイドのオフィスを燃やしながらも、歩き始めるのだった。

 

 

 

 ゴウンゴウンと音を立てながら、エレベーターが上へと昇っていく。エレベーター内には早川アキを始めとして、姫野、デンジ、パワーがいた。

 

「俺達の目的は沢渡アカネとサムライソードの確保だ。間違っても殺すなよ」

 

「お姉さんに任せなさい! ぱぱっと捕まえて、祝勝会開いちゃうぞ〜!」

 

「姫野先輩、真面目に」

 

「サムライソードは俺がぶっ殺してやるぜ〜!!」

 

「殺すな馬鹿!!」

 

「ワシがまとめて二人を殺すんじゃああああ!!!」

 

「殺すなっつってんだろ!! 人の話を聞け!!!」

 

「あはははははは!!」

 

 姫野が腹を抱えて笑う中、アキは我慢が出来ずにデンジとパワーを怒鳴りつけた。しかし、二人は迷惑そうな顔で耳を塞ぐだけだ。

 

「分かってんよお!」

 

「ウヌはうるさい男じゃの〜!」

 

「お前らッ……!」

 

 額に青筋を浮かべたアキが二人へ歩み寄ろうとする。だが、その時。エレベーターが七階で止まり、扉が開いたのだ。

 

 アキが何事かと振り向くと、廊下に二人の男女が立っている。咄嗟に誰何を問おうとしたアキだったが、若い女がこちらへ指を突きつけてきた。そして、呟く。

 

「ヘビ、丸呑み」

 

 その声と共に巨大な口が現れ、それは猛烈な勢いでアキ達へと迫ってきた。アキは逃げ場がないと判断し、瞬時にデンジの胸元のスターターを引く。そしてそれを援護するように、パワーがデンジを蹴り飛ばした。

 

「いけええ! デンジィィ!!」

 

「パワーてめぇぇえ!?」

 

 エレベーターから蹴り出されたデンジは一瞬でヘビに丸呑みにされてしまった。しかし、次の瞬間。ヘビの内側からチェンソーが生えたかと思えば、中からチェンソーの武器人間が突き破って出てきたのだ。

 

「後で覚えとけよおおお!!」

 

 その結果、ヘビは内側から頭部を切り刻まれ絶命した。それに伴い悪魔の肉体が煙のように消え、男女の一人、沢渡アカネが驚愕した表情を浮かべる。

 

「そ、そんな。ヘビが」

  

「お前はすっこんでろッ……!」

 

 彼女の隣にはもう一人の男、サムライソードがいた。彼は刀の武器人間と化しており、足に力を溜めるようにしゃがみ込んでいる。そして──力を解放したのだ。

 

 目にも止まらぬ速さで廊下を駆け抜け、サムライソードがデンジを両断していた。それによってデンジは胴体が泣き別れてしまい、戦闘不能へと陥ってしまう。

 

「ウヌはなんて情けないんじゃ!?」

 

「元はお前のせいだろ〜が!?」

 

「お前ら、集中しろ!」

 

 アキが二人に注意を飛ばす中、サムライソードがデンジを鷲掴んだ。そして、やってきた道へと全力で引きずり始めたのだ。

  

「うおおおおおお!?」

 

「沢渡、捕まれ!」

 

「あ、ああ。ありがとう……!」

 

 やがてサムライソードが沢渡アカネを抱えると、二人が即座に離脱していく。

 

「姫野先輩!」

 

「ぬぅ〜ん!!」

 

 しかし、そんなことは認められない。アキが素早く姫野へ指示を出すと、彼女は契約している幽霊の悪魔の力、“見えざる手”を使いデンジを掴もうとした。

 

 間もなくしてデンジを掴むことに成功した彼女であったが、掴む場所があまりよろしくなかった。

 

「ぎゃあああああああ!!?」

 

「ごめ〜ん!?」

 

 デンジの内臓がサムライソードが離れるたびにズルズルと引き抜かれていき、それに伴って血がレッドカーペットのようにぶち撒けられていく。しかし姫野はデンジを離すことができず、サムライソードもまた立ち止まることができない。そのためデンジがどんどんと小さくなっていった。

 

 冷や汗を流すアキは冷静に状況を見極め、何が最良かを導き出す。右手で狐の形を作り、指の隙間からデンジを見つめた。そして──。

 

 ──コン。

 

 巨大な狐の頭部を生み出したのだ。

 

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