転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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14力こそ全て

 

 

 

 佐渡島の中心街へ降り立ったバルエムは、ソードを引き連れて街を散策していた。辺りを見渡しても都会としか思えない風景が広がっており、もしここが離島だと言われても中々信じることは難しいかもしれない。

 

「発展してるねえ〜。それだけ富を生んでる島ってことかなあ」

 

「すげえな! もっと田舎だと思ってたぜ」

 

 ソードはキョロキョロと辺りを見回しては、時折見かける兵隊の悪魔を粉砕する。すでに手慣れたもので、数十体いようとも片手間で処理をしていた。

 

 彼らにとって、兵隊の悪魔は雑魚も同然だ。しかしバルエムは油断しておらず、それは確実に居ると思われるもう一体の悪魔を気にしてのことだった。

 

「ソード君、体調は大丈夫かい?」

 

「おう! こいつらはもう駄目みたいだけどな!」

 

 そう言ってソードは道端で倒れている住民達を指差す。彼らは一様にして眠るように死んでおり、目立った外傷は見当たらなかった。

 

 先ほども似たような場面に出くわしたためバルエムは知っているが、彼らは本当に眠るようにして死ぬのだ。こちらへ覚束ない足取りで歩いてきたかと思えば、自ら地面へと寝転がり、そして死ぬ。バルエムはそれら一部始終を見て、悪魔の力を衰弱、怠惰、永眠あたりなのではないかと予想を立てていた。

 

「俺達は半人半悪魔の至高な存在。だから、悪魔の力の効果が薄いのかもねえ」

 

「なるほど、流石バルエムさんだぜ! ただよお、兄貴は全然平気そうだったぜ?」

 

「ふむ、確かに……」

 

 バルエムは少し考えると、一度高い所へ行くことにした。

 

 

 

 八階建てマンションの屋上へ登ったバルエムは、街を見渡す。彼の隣ではソードが気持ちよさそうに体を伸ばしていた。

 

「なんか知んねえけど、清々しい気分だな……!」

 

「もしかしたら、悪魔の力は空気より重い性質があるのかもしれないね。でも、風で流されている訳じゃない。本体から放射状に出ている? もしくは、力の及ぶ範囲が定められているか……」

 

 顎に手を添え、バルエムは悪魔の力を考察する。だが、どういった能力かは最後まで自信が持てなかった。しかし分かったことはある。

 

「本体が比較的近くにいると考えてもいいかもしれないねえ。島全域に力が作用するほど強力なら、プロペラヘッド君も異変に気付くはずだ」

 

「おお!」

 

「そしてそこまで強力な悪魔なのだとしたら、事前にデビルハンターが気付いていてもおかしくはない。だけど、俺達に寄越した情報は兵隊の悪魔のみで、追加の情報もない。まあ〜情報を伝える前に死んじゃってたら、当てが外れるんだけども」

 

 そこまで考える必要はないかなあ。バルエムはそう言うと、マンションから飛び降りる。そして虱潰しに街を散策し、住民の被害が最も大きい地区を探すのだった。

 

 

 

 中心街から少し離れた林道。バルエム達はそこにいた。生い茂るブナやミヅナラは自然のあるがままの姿を見せており、お世辞にも整備されている道とは言えなかった。

 

 バルエム達が黙々と進んでいると、昼間だというのに霧が立ち込めている池を発見する。乙和池(おとわいけ)だ。周囲の自然林と調和をしたこの池は、立ち込める霧と合わせて神秘的な雰囲気を醸し出している。そして時折、霧が晴れては薄明光線が優しく降り注いでいた。

 

「いやはや、随分と効果範囲が広いじゃないか。なかなか苦労したよ〜? ここに辿り着くのは」

 

「バルエムさ〜ん、俺もうダリィ〜よぉ〜」

 

「気を強く持ちたまえ、そのままだと永眠する羽目になるぞ〜?」

 

「うお〜!!」

 

 辛うじて立っているソードは気合で両腕を掲げるが、そもそも腰が曲がっているため前方にしか腕が伸びていない。不格好なクワガタのような姿だ。

 

「バルエムさんは何でそんなに元気なんだよ〜」

 

 地面へ向かってソードが話す。

 

「はは、俺には長く険しい道のりが待ち受ける野望があるからねえ。この程度でへこたれてちゃ、夢は叶わないさ」

 

 バルエムはそう言うと、肩を竦める。なおバルエムの言った野望とは、武器人間の国を作ることだ。国民全員が武器人間であり、農業などの一次産業で国庫を潤わせては、国ぐるみで傭兵稼業を成り立たせる。間違いなく多くの国へ依存することになるため、外交に力を入れる必要があるだろう。バルエムはその国の宗主として、辣腕を振るいたいと考えていたのだ。

 

 

 

 池の周りを観察するバルエムは異変を見つける。粘性のある体液が池から森の方へと続いていたのだ。悪魔がいると確信したバルエムは、そちらの方へ歩き始めた。

 

 大きな大樹の根本に悪魔はいた。枯れ葉や苔を全身に纏ったカタツムリのような姿で、微動だにしない。しかし、唯一触覚だけがゆっくりと動いていた。

 

「お〜い、そこの悪魔さん。君が住民を衰弱死させてる犯人かい?」

 

 武器化したバルエムはそう問いかける。すると、悪魔が喋りだした。

 

『知らん……我は、ただ存在するのみ……』

 

「そうなのか。じゃあ兵隊の悪魔と協力してる訳じゃなさそうだなあ。ちなみになんていう悪魔なのかな?」

 

『我は……怠惰の悪魔……』

 

「なるほどぉ、かなりのネームドだ。でも知ってるよ〜? 怠惰の悪魔は生きることも死ぬことも能力を使うことさえも、怠惰だと思ってるってねえ〜」

 

 バルエムは一度口を噤むと考え込む。やがて、もう一度口を開いた。

 

「君は人間と契約を結べるのかな?」

 

『対価さえ、払えば……いいだろう……』

 

「ふむ、なら永遠の平穏を与えよう。そこでは殺されることはなく、ただひたすらに虚無だ。ただし、思う存分怠惰を謳歌できるだろうねえ。よかったら、公安に来るかい?」

 

『怠惰であれるなら……構わない……』

 

「君、結構話し通じるね? まあいいや、それじゃ〜上に掛け合ってみるよ」

 

「バ、バルエムさんすげえ……! 悪魔と対等に渡り合うなんて!!」

 

 ソードが腰を曲げながら、キラキラとした目でバルエムを見つめる。そんな中、バルエムは上司であるマキマに連絡するのだった。

 

 

 

 無事に怠惰の悪魔は公安に飼われることとなった。移送に関しては全面的に押し付け、バルエムはプロペラヘッドと連絡を取ろうとする。だがその時、ほど近い場所から爆発音が轟いたのだ。

 

 バルエムは瞬時に悟る。これはプロペラヘッドの爆撃音だと。より詳しく言うなら、五百キロ爆弾の炸裂音だと。バルエムは無線機を取り出すと、すぐさまプロペラヘッドと無線を繋いだ。

 

「やあ、プロペラヘッド。こっちは無事に片付いたよ。そっちはどうかな?」

 

『あまり状況が良くないナ。兵隊の悪魔の本体はデカイ骸骨で、俺の機銃じゃ対処できないんダ』

 

 やけに後ろ向きな言葉を聞き、バルエムは兵隊の悪魔が予想以上に強大な悪魔だと知った。

 

『航空支援を呼んだ方がいいかも知れン。一度姿を確認してくレ』

 

「オーケー。すぐに移動するよ」

 

 バルエムはソードを伴って林道を駆けた。なお、怠惰の悪魔には力を抑えてもらっているためもう被害が出ることはない。バルエムはつくづく話が通じる悪魔だなと独白した。

 

 

 

 開けた場所に出たバルエム達は、兵隊の悪魔とプロペラヘッドを視認した。大空を舞うプロペラヘッドは巧みな操縦捌きで攻撃を回避している。だが、決定的な有効打を与えることは難しそうな状況だ。対する兵隊の悪魔はもはや巨人と言って差し支えない大きさであり、森をすり潰しながらも海の方へと下っていく。

 

「でけえ! あれ倒せんのかよ?」

 

「いやはや、兵隊の悪魔を名乗っておきながら個人が強いのはどうかと思うねえ〜」

 

 バルエムはプロペラヘッドへ無線を繋げると、次のように話した。航空支援を要請する、戦闘機を二機手配しようと。プロペラヘッドはそれに了承し、時間を稼ぐと言葉を返してきた。

 

「さて、ソード君はプロペラヘッド君の援護に行ってくれ。俺は航空支援を要請してから行くよ」

 

「分かったぜ! うお〜!! 兄貴〜!! 待っててくれ〜!!!」

 

 ソードが野山を駆け降りていく中、バルエムは折りたたまないタイプのガラケーを取り出す。そして、電話を掛けた。

 

 

 

 とある駐屯地。そこではある一人の隊員が昼食を取っていた。彼は同僚と和やかに会話を楽しみながらも食事をしている最中だ。だが、その時。

 

 ──ジリリリリリ!!

 

 けたたましい着信音が鳴った。上司がすぐさま受話器を取り、数言会話を交わす。そしてこちらへ振り向くと、即座に言葉を告げたのだ。

 

「スクランブル、スクランブルだ」

 

 気を引き締めた隊員は食事を切り上げて走り出し、同僚と共に格納庫へと向かっていった。

 

 大音量のサイレンを伴って格納庫の扉が開かれる中、隊員は自身の担当する戦闘機へ飛び乗った。同僚は梯子を外しており、仲間の整備士達は最終チェックをしている。既にジェットエンジンを始動させていた隊員は、ゴーサインが出ると同時に滑走路へと進んだ。

 

 隊員はスロットルを倒し、ジェットエンジンを吹かす。徐々に轟音となっていくジェットエンジンは空気を切り裂きながらも機体を押し出し、やがて大空へと旅立った。

 

 

 

 兵隊の悪魔と戦闘を開始してから、おおよそ二十分ほど。なんとかして兵隊の悪魔を食い止めていたが、そろそろ海にほど近い町へ到達しそうであった。

 

『バルエムさん、航空支援はまだカ! これ以上は厳しいゾ!』

 

「そろそろ来ると思うんだけどねえ〜!!」

 

 ガス欠も承知で異形の姿へと変身した俺は、兵隊の悪魔の頭部に張り付き注意を引いていた。一応鋭利な爪で攻撃をしているのだが、あまりにも硬すぎて効果がない。

 

『うおオっ!!?』

 

「兄貴ー!?」

 

 無理が祟ったのか、俺は兵隊の悪魔にがっしりと掴まれてしまった。そしてそのまま握り潰されては、町の方へと投げられる。

 

 俺は空を飛んだ。そう思った瞬間──家屋を轢き潰しながらも大地へ衝突した。

 

『痛ェ……!』

 

 残骸から体を起こし、俺は無理を承知でプロペラを回す。だが、既に体が悲鳴を上げていた。もし再生に血を消費すれば、五分と立たずに動けなくなってしまうだろう。つまるところ、俺はもう詰みだったのだ。

 

 これ以上は。そう思った時、上空から二機の戦闘機が迫っていた。彼らは高度を下げながらも、兵隊の悪魔へ狙いを定めるように機体を傾ける。そして、空対魔ミサイルを発射したのだ。

 

 各一機が一発発射をし、それはターボジェットエンジンを吹かしながら、目標へと一直線に飛んでいく。やがて白い尾を引く空対魔ミサイルは寸分違わず兵隊の悪魔へ直撃し──頭部を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

 爆風と共に粉砕された頭部が辺り一帯に吹き飛び、それらを失った兵隊の悪魔が力なく倒れる。俺は上空の戦闘機が旋回をする中、兵隊の悪魔を見定めるが……明らかに息絶えていた。

 

『ハハ、現代兵器様々だナ』

 

「兄貴〜大丈夫か〜!?」

 

『あア、大丈夫ダ。心配をかけたナ』

 

 ソードが駆け寄ってきたので声を掛け、俺は轟音を立てながら空を舞う戦闘機に手を振るのだった。

 

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