首を落とされたボムが地上へと落下する。それを見ていた野茂は内ポケットから羽毛を取り出すと、空中へばら撒いた。
「羽の悪魔よ、俺に羽を授けろ」
すると、野茂の手には大きな羽毛が一枚顕現をした。それを掴んだ野茂はゆっくりと自由落下をする。やがて地上へ降り立った彼は、大地に衝突したボムへと近づいた。
ボムの身体は悲惨の一言であり、手足が複雑に折れ曲がっている。また、脇に転がる悪魔の頭部はピクリとも動く様子がなかった。
「……念の為バラしておくか」
肩の力を抜いた野茂はそう言うと刀と共に差していた脇差しを抜き放つ。そしてよりボムの身体へと近づいた。だが、その時。
ボムの身体が跳ね起き、野茂に抱き着いたのだ。彼はすぐさま引き剥がそうとするが──もはや手遅れだった。
ボムの身体が膨張したかと思えば大爆発をする。それは野茂を巻き込みながらも周囲一帯を吹き飛ばし、大地に大きなヘコみを作っていた。
「ああもう、油断した」
爆心地から平然とボムが起き上がり、ボソリと呟く。その後、彼女は全裸であることに気付くと全身に大火傷を負った野茂からカッターシャツを剥ぎ取り、そして身に纏った。
「ちょっと舐めてたかも。だけどもう油断はしない」
シャツのボタンを留めながらも彼女はそう呟く。しかし、そこへ新たな人物が訪れた。
「野茂さんッ……!!」
早川アキだ。彼は悲痛な声を上げて野茂を見るが、彼はピクリとも動かない。その事実を知ったアキは怒りに震え、飛び出そうとする。しかし、彼は一度踏みとどまると深呼吸をし、覚悟を決めた表情で刀を引き抜いたのだ。
「なに? もしかして敵討ち? ごめんけど今機嫌悪いの、殺しちゃうよ?」
「死ぬ覚悟はできている」
「……はぁ」
ため息をついたボムは後方を爆破し、瞬時にアキへと迫る。そして前方へ両腕を掲げ、最大威力の爆破を繰り出した。
前方より死が迫る。目にも止まらぬ速度で武器人間が迫って来る。だが、アキの心は凪のように落ち着いていた。
刀を大上段に構え、斬撃の悪魔に希う。
──最高の一太刀を捧げよう。その代わりに、全てを切り開く力を与えてくれ。
悪魔は願いを聞き届け、刀身が光り輝く。アキは一度目を瞑ると、覚悟を決めた。そして大地を強く踏みしめ、刀を振り下ろす。
眼前に広がる眩いばかりの爆炎。それは剣閃が走るとともに割断された。そして、最奥にいたボムを真っ向から切り裂く。ボムは驚愕した表情を浮かべた瞬間──大量の血を吹き出していた。
「ガっ、ア、ありえないっ……!? 人間如きが私を上回るわけ……!?」
「お前は人間でありながら、人間を見くびっていた。ただそれだけのことだ」
ボムは狼狽えながらも、縦に切り裂かれた傷跡から血を吹き出し続ける。そしてよろよろと後ろへ下がっては、今起こった事実を受け入れられずにいた。
そこへ、ある一人の少年が現れる。
「痛くて死にそ〜って思いながら、俺のこんがらがった脳みそでよォ〜く思い返して見たんだけどよ〜。──俺の知り合う女がさあ!! 全員オレん事殺そうとしてんだけど!!」
デンジがいた。しかし、彼はヤケクソとなっていた。
「みんなチェンソーの心臓欲しがっちゃって! デンジーの心臓は欲しかねえのか!? あ〜!?」
「……私が、デンジ君を好きなのは本当だよ」
「えっマジ……?」
思わず聞き返したデンジだったが、アキに諭されすぐに正気に戻る。
「はっ! 危ね〜な!! 危うく騙されるトコだったぜ!! もういい、レゼ!! お前を逮捕!! 逮捕する!!」
「……なら、こっちに来てみなよ!!」
レゼは傷を再生させると、両腕を爆破させて空を飛んだ。そしてそのまま街の方へと飛んで行く。デンジはすぐに追いかけようとするが、アキに引き止められた。
「ああ!? なんだよ!!」
「落ち着け! 今無線がきた。あれに飛び乗れ!」
アキが指差した方向。そこにはエンジン音を轟かせるプロペラヘッドがいた。彼は低空飛行でこちらへ迫っており、爆弾倉を開いたかと思えば、フラップをめいいっぱい下ろして速度を落とす。
「覚悟があるなら乗レ!」
彼はそう言うと、限界ギリギリまで高度を下げ、後部を地に擦り付けながらやってきた。デンジは迷う事なく爆弾倉へ手を掛けると、大空へと飛び立つ。
「ギャハハハ!! 初めて飛行機に乗ったぜ〜!!」
デンジはどんどんと離れていく地上を見下ろしながら、純粋に笑った。
爆弾の武器人間、レゼを追いかけるプロペラヘッドはデンジを伴い空を飛んでいた。既に夜中であるため世界は暗く、人口の明かりだけが光り輝く。そんな中、レゼの爆破が否が応でも目立っていた。
「かなり低空を飛んでるナ、近づくゾ」
「おう! 頼んだぜプロペラ頭!」
ブロペラヘッドは機体を傾け、レゼへと迫る。段々と彼女へ近づいていくが、ここで予想外の出来事が起こった。レゼが猛スピードで近づいてきたのだ。
プロペラヘッドは冷静に見極める。レゼは爆破を応用して近づいてくる訳ではないようだ。よくよく見れば、足にミサイルを生やしてはロケットエンジンを吹かし、掌から爆破を繰り出しては異次元の機動を描いて迫ってきている。
プロペラヘッドは悟る。これは逃げれない奴だと。間違いなく爆散する奴だと。
彼の判断は早かった。機体を反転させ、墜落するが如く地上へと一直線に迫る。デンジが驚きの声を上げるが、それを無視してプロペラを回していた。
「おいデンジィ! 手を離す準備をしておケェ!!」
「あ!? なんでだよ!!」
「間違いなく逃げられなイ。俺は死ヌ!!!」
「諦めんなよ!?」
既に後方にはレゼが迫っていた。しかし、地上も程近い。プロペラヘッドは高速道路に沿いながら飛行し、デンジへ落ちるように言った。
「早く行ケ!! これ以上は無理ダ!?」
「だあ、クソォォォッ!!?」
デンジは飛び降りた。そして、次の瞬間──。
高速道路を車で爆走していた早川アキは、前方の空を注視していた。そこにはエンジン音を轟かせ、低空飛行をするプロペラヘッドがいる。だが、その時。
轟音を鳴り響かせるレゼが、アキの真上を通り過ぎていった。彼女はプロペラヘッドよりも二倍近い速度で飛翔しており、すぐさま彼へと到達する。そして──プロペラヘッドに直撃した。
空中で大爆発が起こり、プロペラヘッドが木っ端微塵に粉砕される。そして大量の血と臓物、工業部品が流星のように地上へと降り注いだ。
「おいおいおい……!」
「これはヤバいかもね……!」
「チェンソー様ああああ!!?」
アキと天使が冷や汗を流し、ビームがデンジを心配して大声を上げる。アキは事態は一刻を争うと判断し、クラッチペダルを踏み込みギアを一段下げると、アクセルペダルを床まで踏み抜いた。